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序章
#05
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いよいよ新人戦だ。フィールドにいるのは、私たち佐々木隊の五人と清都隊の五人そして審判の教員が三人。
新人戦は三十分間のバトルで、残った人数の多い方が勝ちというルール。痛打を受けたと審判が判断した人から退場していくのだ。
「始め!!!」
試合開始の宣言とともに十人が一斉に動き出す。私のターゲットは市来澪、薙刀使いのお嬢様は刀使いの護衛とツーマンセルで動き出したようだ。その護衛の気をティアが引いて、なんとか一対一に持ち込まなければ。
視界に主従を捉えながら走り続けると、恋ちゃんの声が鋭く飛んできた。
「恵鈴さん!」
咄嗟に首を振ると魔導器によるものと思しき弾丸が飛んできた。それを寸でのところで回避すると、ユニコーンに乗った恋ちゃんとグリフォンに乗ったヘティちゃんが駆け抜けていった。なるほど、あれがヘティちゃんのパペットか。
「ひゃあ!!」
グリフォンの飛び蹴りとユニコーンの突進に森さんの体勢が崩れる。今のうちに市来さんに肉薄する。どうやらティアがすでに石橋さんと市来さんの二人を相手取っているようだ。
私は突き出た岩の陰に身を隠しながら、水魔法の詠唱を始める。
「水球よ、疾く敵を穿て――アクアバレット!!」
完全に不意を突いたと思った魔法は、市来さんの薙刀であっさりと撃ち落されてしまった。けれど、まだまだこれから!!
「水の刃よ、集い切り裂き押し流せ!! ウォーターエッジ!」
水でブーメラン状の刃を形成し射出する。アクアバレットは一撃だったけど、ウォーターエッジで発生する水の刃は三つ、回避すれば斜線上にいる石橋さんにあたるから、市来さんは踏み込みながら一つずつ切り裂く。狙い通りこちらに接近してきている。
右手に構えた剣にも魔力を込めながら、私は仕上げとばかりに魔法をもう一つ詠唱する。
「崩落の波濤、湧き上がりて汝を拒む――リキッドウォール!!」
突如としてせり上がる水の壁に市来さんがたたらを踏む。しかし冷静に薙刀を横薙ぎして壁をかき消す、そこに隙が生じる。叩き込む!!
「せりゃぁあ、流洪斬!!」
水の魔力で強化された剣の振り下ろし、薙刀の柄に起動をかすかに逸らされるが、踏み込んで剣を振り上げる。
「っぐぅ!!」
剣の刀身と薙刀の柄がぶつかり合う。しかし体勢は私に不利で、無防備な腹部に市来さんの蹴りが突き刺さる。なんて足癖の悪いお嬢様なんだ。
「うふふ、自己紹介が必要かしら?」
「必要ないよ、市来澪さん。あの市来商会の娘さんでしょう?」
「まぁ、創業者の弟の家系なのだけれどね。そういうあなたは誰かしら?」
「しがない一般市民の東恵鈴だよ。覚えてもらえたら光栄だね」
そんな会話をしていると、会場にアナウンスが響く。
『森カノン 退場』
どうやら恋ちゃんとヘティちゃんが頑張ってくれたようだ。清都さんがどこで誰とマッチアップしているか次第だけれど、作戦通りって感じだ。
「あららカノンったら。さぁて、貴女はいつまで残れるかしらね!!」
薙刀による刺突、斬撃、石月による殴打、それらが舞うように連続して繰り出される。
魔力を込めた技ではない、単純な武技を剣一本でしのぎ切るのはシンプルに困難で、徐々に消耗していく。さらに……。
「うふふ、水の刃よ、集い切り裂き押し流せ――ウォーターエッジ」
私が使った魔法を意地の悪いことにより高度に使いこなす。私が三つしか出せない水の刃が、五つ襲い掛かってくる。
「ぬわぁあ!!」
水刃の一つが直撃して吹き飛ばされる。なんとか立ち上がって体勢を整えるが……。
『桃井ヘンリエッタ 退場』
『仲藤伊澄 退場』
『大橋はやて 退場』
どうやら少し離れた位置で激戦が繰り広げられていたらしい。恋ちゃんは清都さんを抑え込めているようだが……。
「来ないのかしら。水球よ、疾く敵を穿て――アクアバレット!」
私の撃つものより速い! 剣を垂直に構え体内に廻る魔力を集中して防御を固める。それでもなお吹き飛ばされるほどの威力、武技も魔法を私より大分格上だ。挙句、本気を出している感がまったくない。
「悔しいったらありゃしないよ……」
『小澤てぃあら 退場』
そのアナウンスと、背後から闘気を感じるのはほぼ同時だった。ティアが敗れたってことは……すなわち。
「……うそ」
「手柄を横取りしてしまったか?」
『東恵鈴 退場』
石橋千奈の一刀で私は力なく倒れ伏したのだった。
新人戦は三十分間のバトルで、残った人数の多い方が勝ちというルール。痛打を受けたと審判が判断した人から退場していくのだ。
「始め!!!」
試合開始の宣言とともに十人が一斉に動き出す。私のターゲットは市来澪、薙刀使いのお嬢様は刀使いの護衛とツーマンセルで動き出したようだ。その護衛の気をティアが引いて、なんとか一対一に持ち込まなければ。
視界に主従を捉えながら走り続けると、恋ちゃんの声が鋭く飛んできた。
「恵鈴さん!」
咄嗟に首を振ると魔導器によるものと思しき弾丸が飛んできた。それを寸でのところで回避すると、ユニコーンに乗った恋ちゃんとグリフォンに乗ったヘティちゃんが駆け抜けていった。なるほど、あれがヘティちゃんのパペットか。
「ひゃあ!!」
グリフォンの飛び蹴りとユニコーンの突進に森さんの体勢が崩れる。今のうちに市来さんに肉薄する。どうやらティアがすでに石橋さんと市来さんの二人を相手取っているようだ。
私は突き出た岩の陰に身を隠しながら、水魔法の詠唱を始める。
「水球よ、疾く敵を穿て――アクアバレット!!」
完全に不意を突いたと思った魔法は、市来さんの薙刀であっさりと撃ち落されてしまった。けれど、まだまだこれから!!
「水の刃よ、集い切り裂き押し流せ!! ウォーターエッジ!」
水でブーメラン状の刃を形成し射出する。アクアバレットは一撃だったけど、ウォーターエッジで発生する水の刃は三つ、回避すれば斜線上にいる石橋さんにあたるから、市来さんは踏み込みながら一つずつ切り裂く。狙い通りこちらに接近してきている。
右手に構えた剣にも魔力を込めながら、私は仕上げとばかりに魔法をもう一つ詠唱する。
「崩落の波濤、湧き上がりて汝を拒む――リキッドウォール!!」
突如としてせり上がる水の壁に市来さんがたたらを踏む。しかし冷静に薙刀を横薙ぎして壁をかき消す、そこに隙が生じる。叩き込む!!
「せりゃぁあ、流洪斬!!」
水の魔力で強化された剣の振り下ろし、薙刀の柄に起動をかすかに逸らされるが、踏み込んで剣を振り上げる。
「っぐぅ!!」
剣の刀身と薙刀の柄がぶつかり合う。しかし体勢は私に不利で、無防備な腹部に市来さんの蹴りが突き刺さる。なんて足癖の悪いお嬢様なんだ。
「うふふ、自己紹介が必要かしら?」
「必要ないよ、市来澪さん。あの市来商会の娘さんでしょう?」
「まぁ、創業者の弟の家系なのだけれどね。そういうあなたは誰かしら?」
「しがない一般市民の東恵鈴だよ。覚えてもらえたら光栄だね」
そんな会話をしていると、会場にアナウンスが響く。
『森カノン 退場』
どうやら恋ちゃんとヘティちゃんが頑張ってくれたようだ。清都さんがどこで誰とマッチアップしているか次第だけれど、作戦通りって感じだ。
「あららカノンったら。さぁて、貴女はいつまで残れるかしらね!!」
薙刀による刺突、斬撃、石月による殴打、それらが舞うように連続して繰り出される。
魔力を込めた技ではない、単純な武技を剣一本でしのぎ切るのはシンプルに困難で、徐々に消耗していく。さらに……。
「うふふ、水の刃よ、集い切り裂き押し流せ――ウォーターエッジ」
私が使った魔法を意地の悪いことにより高度に使いこなす。私が三つしか出せない水の刃が、五つ襲い掛かってくる。
「ぬわぁあ!!」
水刃の一つが直撃して吹き飛ばされる。なんとか立ち上がって体勢を整えるが……。
『桃井ヘンリエッタ 退場』
『仲藤伊澄 退場』
『大橋はやて 退場』
どうやら少し離れた位置で激戦が繰り広げられていたらしい。恋ちゃんは清都さんを抑え込めているようだが……。
「来ないのかしら。水球よ、疾く敵を穿て――アクアバレット!」
私の撃つものより速い! 剣を垂直に構え体内に廻る魔力を集中して防御を固める。それでもなお吹き飛ばされるほどの威力、武技も魔法を私より大分格上だ。挙句、本気を出している感がまったくない。
「悔しいったらありゃしないよ……」
『小澤てぃあら 退場』
そのアナウンスと、背後から闘気を感じるのはほぼ同時だった。ティアが敗れたってことは……すなわち。
「……うそ」
「手柄を横取りしてしまったか?」
『東恵鈴 退場』
石橋千奈の一刀で私は力なく倒れ伏したのだった。
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