その口づけに魔法をかけて

楠富 つかさ

文字の大きさ
4 / 12

#4 魔力酔い

しおりを挟む
「――――ん、うぅ」
「あ、起きました? 大丈夫?」

 ゆっくりと身体を起こすと、私が自室に運ばれていたことに気付いた。

「寿奈、結構力持ち?」
「へ? そんなんじゃないですよ。綾乃ちゃんが軽すぎます」

 普段からあんまり食事に気配りしないせいか……細く貧相な身体になってしまった。そんな自分に軽く苦笑してると、寿奈が両手をパンっと叩いて口を開いた。

「思ったんですけど、ベッド大きいですよね」
「セミダブルだと思うけど? そんなに大きくないわ」
「そうなんだぁ。私のシングルベッドが小さいのかな? あ、椅子借りてるよ」

 ベッドの横に椅子を置いて座っていた寿奈の顎に手をあてて、

「一緒に寝る?」

 なんて囁いてみた。さっきの行為を思い出して顔を赤らめる寿奈に、

「コンビを組むなら、一緒に住むのもいいと思うの。どう?」

 少し真剣な眼差しを向ける。

「でも、せっかく借りたマンションの家賃とか……」
「それなら平気よ。このマンションの管理人、私の親戚だから。言えばなんとかしてもらえるはずだよ」

 ……正確ではないが、嘘でもないはず。

「そっか。じゃあ……えへへ、お願いします」
「その代わり」
「はい?」
「……家事、頼めるかしら?」
「うん! 私、頑張るね」

 こうして私と寿奈の同居が決まったのだが、

「そうだ。綾乃ちゃんが寝ている間にお粥作ったの」

 同居しようがしまいが、寿奈に家事を任せていただろう。

「ところで、私……どれくらい寝てたの?」

 カーテン越しに差し込む光がほとんど無いことに気付いて、聞きそびれたことを思い出す。大事なことだ。

「えっと、少し揺すっても起きなかったから、ベッドに運んで……本読んで、少しお掃除してみたり……お粥作ったり、また本何冊か読んだりして……。あと、テレビも見てて……6時間くらいかなぁ? もうちょっとかも」

 6時間半くらいとしておこう。……そんなに長い時間気を失うなんて。やっぱり性質が近いからって身体に馴染んで私の魔力にはならないのか……。だとしたら……。って、その前に。

「その、ごめんね。迷惑かけちゃった」
「ううん。気にしないで。コンビ、なんでしょう? ちょっと気が早いけど」
「そう、ね。あぁ、それじゃ、お粥……いただこうかな」
「うん、分かった。温め直すね。あ、立てる?」

 ベッドから降りて立ち上がる。少し頭痛が残ってはいるが、取り敢えずは大丈夫だ。

「多分、魔力の吸い過ぎだと思う……」
「綾乃ちゃん、すごい勢いで吸ってたね。私、なんだかふわふわしちゃって」
「……ごめん」
「気にしないで。……その、気持ちよかったし」

 伏し目がちに呟く寿奈。なんか、ちょっと変な雰囲気になっちゃった。

「そ、そんなことより、お粥!」
「う、うん! そうだよね!」

 二人ぎこちなく、寝室を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

処理中です...