その口づけに魔法をかけて

楠富 つかさ

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#6 エントリー

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 結局、その日の放課後にプリントに私と寿奈の名前を記入して、職員室横のポストへと投函した。エントリーの方法がこれだけである以上、確かに説明するまでもないというわけだ。随分とアナクロな手段を採用していると返って感心してしまった。そもそも、入学した週に今後の大きな試金石となる新人戦のパートナーを決めろというのが難題なのだろうが。そう思うと、寿奈との出会いは私にとってかなりのアドバンテージだ。

「今日も……その、魔力の調査……するの?」

 帰りのモノレールで寿奈が尋ねた。魔力の調査、それは昨日のキスを正当化するために行った私の良いわけ。流石に逢って数日の同性に、劣情を抱いたと言うのは難しい。

「寿奈さえよければ……したい」
「……うん、いいよ」

 お互いの顔が紅くなるのが見るまでもなく分かった。魔力の調査と言いながら、もっと……淫らなことをするようなやり取りに、つい思考が突飛な方へ進む。唇を介してもかなりの魔力が流れ込んでくるのだから、もし、寿奈の体液を口にしたら……。そうか、キスの時に無意識に舌を絡めたせいで過剰な魔力が流れ込んできたのか。

「寿奈、試したいことがーーーー」
「綾乃ちゃん、降りなきゃ!」

 実験の提案をしようとしたら、最寄り駅に着いていた。慌てて降りると、吹き抜ける風がどこか身体の熱を追い出すような感じがして心地良かった。どうにも興奮していたらしい。いや、発情とかそういう意味ではないのだが。

「それで、試したいことって?」

 ホームを抜けると、寿奈が尋ねてくる。小首をかしげる彼女の首筋に、うっすらと汗が滲んでいるのが見て取れた。

「キスする前に、帰ったらシャワーを浴びましょう」
「ふぇ? あ、私……汗臭いですか? 確かに汗っかきなんですけど……」

 おっと、言い方が悪かったかな。私は慌てる寿奈をなだめつつ、魔力が体液つまり汗にも含まれていることを説明した。

「なるほど! でも唇は汗をかきませんよ?」
「うん。それはそうなんだけど……やっぱりキスって、その……。モラル面の理由もあるけれど、唾液からも魔力が流入したら……昨日みたいに気絶してしまうから」

 言えない。寿奈とのキスが癖になってしまいそうだなんて。

「うーん……」
「どうかしたの?」
「いや、唾液や汗からも魔力が流れ込むんだったら、母乳とか凄そうだなって思っただけ」
「え、出るの!?」

 確かに寿奈みたいな大きなおっぱいの持ち主なら出てもおかしくない……いや、おかしいよ。経産婦でもない限り、母乳が出たら病気を疑ったっていい。

「出ないよ。もう、綾乃ちゃんったら」

 案の定、寿奈は大慌てで首を横に振った。胸も揺れていた。……出ないのか。少し残念に思ってしまった自分が何だかあさましい。

「まぁ、魔力の強さが血縁に影響されるのは、そういった理由かもしれないわね。まぁ、その……生殖器から分泌される液体は血と同じくらい魔力が濃いらしいから」

 言いながら少し恥ずかしくなってしまった。そんな話をしているうちに、私が暮らすマンションに着いた。エレベーターで三階まで上がり、305号室の鍵を取り出し扉を開ける。三階ということもあって、私はエレベーターの待ち時間が長そうなら階段を使うようにしており、寿奈はダイエットのために階段を使っているらしい。もし昨日、たまたまエレベーターが近くに止まっていたら、私と寿奈の出会い方は大きく違っただろう。そう思うと、何だか運命っていうものを信じたくなった。

「あ、ちょっと寿奈」

 私がドアを開けると先に寿奈が部屋に飛び込んでいった。

「お帰りなさい、綾乃ちゃん」
「ただいま、寿奈」

 ただいまって言えること。ありふれているようで私には少し特別で……それが嬉しかった。
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