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第二十二話 洞窟を突破
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「さぁ、始めるわよ」
両手を胸の前で組み、真紅の瞳を閉じて詠唱を始めるニーナ。火の上位属性である炎属性。その中でもかなり強力な術式を解放するとあって、ニーナの横顔は真剣そのものだ。
「灼熱の劫火、踊れ。荒れ狂う狂乱の宴……ヘルフレア・ライオット!!」
……中二だなぁなんて思ってはいけない。もともと魔術の詠唱は古代言語で行われるのだが、私の場合はレリエから受け取った知識が深すぎて古代言語と現代言語を混同させて記憶している。それゆえに、ニーナが古代言語で行っている詠唱を現代言語に対応させて認識してしまっている。だからこんな中二っぽく聞えているが、実際は違うのだ。あくまで、私の認識……私自身が中二っぽいということなのだ。それはそれでつらいなぁ。
「敵影、六体になりました。全て、ブラックハウンドです!」
ナイフを構え、迫り来るブラックハウンドの喉笛を切り裂く。土術で盛り土をし、転ばせたもう一匹の頭部にナイフを刺す。これで二匹。ステラが手際よく二体を処理し、クレアが二匹纏めてハンドメイスでかっ飛ばす。二体とも岸壁にぶつかった衝撃で絶命したようだ。
「ふぅ、なんてことなかったな」
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「もちろん。じゃあ、進もうか」
かなり焦げ臭い道を進むと、レリエの言っていた通り、縦穴があり見上げれば緑が生い茂るホーランセの空が見える。
「じゃあ、風術で皆さんを上昇させます。円になってください」
レリエが術式を完成させると、ふわりと重力を感じなくなり、ゆっくりと苔むした地面へと着地した。高さ数十メートルはあっただろうか。
「この樹……ここを塞いでいたのかな?」
穴の近くに倒れている大樹。これが穴を塞いでいたとしたら、やっぱり洞窟には何かしら森に悪いものがあるのかもしれない。
「そうねぇ、アリジャスに着いたら報告してみるわ。調査隊が再び結成されるかもしれないわね」
そう言って穴から離れ、歩き始めること数十分。獣道ですらない樹と樹の隙間を縫い歩く。狭さ故に戦闘ではかなりてこずり、余計に時間が掛かってしまった。
「ところで……ここは、どこなのでしょう?」
誰もが道に迷っていることは承知の上だった。それでも、誰かが言うのを待っていた。そして、最初に口を開いたのはクレアだった。
「同じところを回っている、なんてことがないのは確かだな」
ステラが樹皮に浅くナイフを立てながら進んでいるため、それは問題ない。
「あれ、道じゃない?」
樹と樹の隙間と直行する樹が生えていない場所。隙間と違って人が三人くらい横に並ぶことが出来る。つまり、
「道ですね。でも、ここを右へ行くか左へ行くか、困りましたね」
道を間違えればニシェクへ逆戻りだ。ニシェク側へ戻って転移で森を越えるのも手かと思いきや、この森を満たす特異な魔力によって森を越えた転移は不可能らしい。
「空間把握じゃ分からない?」
レリエに聞いてみるも、鬱蒼とした森が広がるばかりで、全方位を見ても街道は見えないらしい。ただ、
「右側に立て看板があるみたいです。案内が書いてあるかもしれません。行きましょう」
取り敢えず、右側に進み始めて十数分。目当ての看板が見えてきた。
「えっと、こっちに進めばアリジャスだそうです」
「良かったぁ。一度休憩にしようよ!」
もうかなりの時間を飲まず食わずで過ごしているせいで空腹が激しいのだ。
「確かに、お腹が空いてきましたね」
「じゃあ、ご飯にしましょうか」
レリエが結界を展開し、それぞれが木の根に腰を下ろす。支配領域から取り出されたパンと干し肉をサンドイッチにして食べる。知らぬ間に汗もかいたようで、干し肉の塩気がたまらない。あっという間に食べ終えてしまった。
「ふぅ、満足だよ。で、も、みんなの唇が恋しいなぁ?」
立ち上がってみんなのほうを向くと、すぐにレリエが駆け寄ってきてくれた。
「わ、私も、お姉ちゃんとキス、したくて……んちゅ、ちゅぅ」
「ん、じゅる……ちゅぷ、んふぅ……えへへ」
レリエのセリフを遮って久々のキス。勇者の力とか関係なく挨拶のように、じっくりと唇を重ね、甘い吐息とともに離れる。
「ご主人様……私も……」
「おいで、クレア。んちゅ、じゅぶ……ん、ちゅぅぅ」
頬を染めたクレアともキスを交わし、今度はニーナと大人のキス。
「じゅぶ、ん、むぅ、ちゅうぅ……んは、んん!」
呼吸の出来ない苦しさすら快楽になりそうなキスは、ぐいっと袖を引っ張られたことで強制終了となった。
「……あたしには、しねぇのか?」
袖を引っ張ったのはステラだった。さっきまでそっぽ向いていたのに。可愛いなぁ、もう。
「するに決まってるじゃん、ね? こっち向いて」
目を合わせてくれないステラの、形のいい耳を一舐め。……勾玉みたいな形のピアスしてる。なんだろう……って、今はキスが先だよね。
「ほら、ちゅ、ん……う、ふぅ……ちゅ」
「ん、ぅん……もう、いいだろ?」
自分からねだっておいて恥ずかしくなったステラに、肩を押され距離を取られる。まぁ、もう十分だからいいけどね。
「うん! みんなごちそうさま。完全復活だよ!」
心身ともに満ちた私に、敵はない!! 一路、聖都アリジャスを目指す。
ユール 魔力量
火:30 炎:0 ?:0 ?:0 ?:0
水:58 ?:0 ?:0 ?:0 ?:0
風:58 ?:0 空:29 ?:0 ?:0
土:22 ?:0 ?:0 ?:0 ?:0
―能力習熟度―
一般常識:★★★★★★★☆☆☆
魔術知識:★★★★★★★☆☆☆
裁縫技術:★★★★☆☆☆☆☆☆
歴史知識:★★★★★★★☆☆☆
短剣技能:★★★★★☆☆☆☆☆
長槍技能:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
金銭感覚:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ユ「私、未だに戦闘で使える術がいんだけど……?」
レ「基本的に戦闘で使用可能な術に消費する魔力は80以上。もう少しの辛抱です」
二「とはいえ、攻撃系の術は120くらい消費するけれど」
ク「生活魔術は10もあれば使えるんですね」
ス「まぁ、あたしらでも使えるくらいだしな」
レ「ちなみに、使い込むと消費魔力量も抑えられるので、頑張りましょうね!」
両手を胸の前で組み、真紅の瞳を閉じて詠唱を始めるニーナ。火の上位属性である炎属性。その中でもかなり強力な術式を解放するとあって、ニーナの横顔は真剣そのものだ。
「灼熱の劫火、踊れ。荒れ狂う狂乱の宴……ヘルフレア・ライオット!!」
……中二だなぁなんて思ってはいけない。もともと魔術の詠唱は古代言語で行われるのだが、私の場合はレリエから受け取った知識が深すぎて古代言語と現代言語を混同させて記憶している。それゆえに、ニーナが古代言語で行っている詠唱を現代言語に対応させて認識してしまっている。だからこんな中二っぽく聞えているが、実際は違うのだ。あくまで、私の認識……私自身が中二っぽいということなのだ。それはそれでつらいなぁ。
「敵影、六体になりました。全て、ブラックハウンドです!」
ナイフを構え、迫り来るブラックハウンドの喉笛を切り裂く。土術で盛り土をし、転ばせたもう一匹の頭部にナイフを刺す。これで二匹。ステラが手際よく二体を処理し、クレアが二匹纏めてハンドメイスでかっ飛ばす。二体とも岸壁にぶつかった衝撃で絶命したようだ。
「ふぅ、なんてことなかったな」
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「もちろん。じゃあ、進もうか」
かなり焦げ臭い道を進むと、レリエの言っていた通り、縦穴があり見上げれば緑が生い茂るホーランセの空が見える。
「じゃあ、風術で皆さんを上昇させます。円になってください」
レリエが術式を完成させると、ふわりと重力を感じなくなり、ゆっくりと苔むした地面へと着地した。高さ数十メートルはあっただろうか。
「この樹……ここを塞いでいたのかな?」
穴の近くに倒れている大樹。これが穴を塞いでいたとしたら、やっぱり洞窟には何かしら森に悪いものがあるのかもしれない。
「そうねぇ、アリジャスに着いたら報告してみるわ。調査隊が再び結成されるかもしれないわね」
そう言って穴から離れ、歩き始めること数十分。獣道ですらない樹と樹の隙間を縫い歩く。狭さ故に戦闘ではかなりてこずり、余計に時間が掛かってしまった。
「ところで……ここは、どこなのでしょう?」
誰もが道に迷っていることは承知の上だった。それでも、誰かが言うのを待っていた。そして、最初に口を開いたのはクレアだった。
「同じところを回っている、なんてことがないのは確かだな」
ステラが樹皮に浅くナイフを立てながら進んでいるため、それは問題ない。
「あれ、道じゃない?」
樹と樹の隙間と直行する樹が生えていない場所。隙間と違って人が三人くらい横に並ぶことが出来る。つまり、
「道ですね。でも、ここを右へ行くか左へ行くか、困りましたね」
道を間違えればニシェクへ逆戻りだ。ニシェク側へ戻って転移で森を越えるのも手かと思いきや、この森を満たす特異な魔力によって森を越えた転移は不可能らしい。
「空間把握じゃ分からない?」
レリエに聞いてみるも、鬱蒼とした森が広がるばかりで、全方位を見ても街道は見えないらしい。ただ、
「右側に立て看板があるみたいです。案内が書いてあるかもしれません。行きましょう」
取り敢えず、右側に進み始めて十数分。目当ての看板が見えてきた。
「えっと、こっちに進めばアリジャスだそうです」
「良かったぁ。一度休憩にしようよ!」
もうかなりの時間を飲まず食わずで過ごしているせいで空腹が激しいのだ。
「確かに、お腹が空いてきましたね」
「じゃあ、ご飯にしましょうか」
レリエが結界を展開し、それぞれが木の根に腰を下ろす。支配領域から取り出されたパンと干し肉をサンドイッチにして食べる。知らぬ間に汗もかいたようで、干し肉の塩気がたまらない。あっという間に食べ終えてしまった。
「ふぅ、満足だよ。で、も、みんなの唇が恋しいなぁ?」
立ち上がってみんなのほうを向くと、すぐにレリエが駆け寄ってきてくれた。
「わ、私も、お姉ちゃんとキス、したくて……んちゅ、ちゅぅ」
「ん、じゅる……ちゅぷ、んふぅ……えへへ」
レリエのセリフを遮って久々のキス。勇者の力とか関係なく挨拶のように、じっくりと唇を重ね、甘い吐息とともに離れる。
「ご主人様……私も……」
「おいで、クレア。んちゅ、じゅぶ……ん、ちゅぅぅ」
頬を染めたクレアともキスを交わし、今度はニーナと大人のキス。
「じゅぶ、ん、むぅ、ちゅうぅ……んは、んん!」
呼吸の出来ない苦しさすら快楽になりそうなキスは、ぐいっと袖を引っ張られたことで強制終了となった。
「……あたしには、しねぇのか?」
袖を引っ張ったのはステラだった。さっきまでそっぽ向いていたのに。可愛いなぁ、もう。
「するに決まってるじゃん、ね? こっち向いて」
目を合わせてくれないステラの、形のいい耳を一舐め。……勾玉みたいな形のピアスしてる。なんだろう……って、今はキスが先だよね。
「ほら、ちゅ、ん……う、ふぅ……ちゅ」
「ん、ぅん……もう、いいだろ?」
自分からねだっておいて恥ずかしくなったステラに、肩を押され距離を取られる。まぁ、もう十分だからいいけどね。
「うん! みんなごちそうさま。完全復活だよ!」
心身ともに満ちた私に、敵はない!! 一路、聖都アリジャスを目指す。
ユール 魔力量
火:30 炎:0 ?:0 ?:0 ?:0
水:58 ?:0 ?:0 ?:0 ?:0
風:58 ?:0 空:29 ?:0 ?:0
土:22 ?:0 ?:0 ?:0 ?:0
―能力習熟度―
一般常識:★★★★★★★☆☆☆
魔術知識:★★★★★★★☆☆☆
裁縫技術:★★★★☆☆☆☆☆☆
歴史知識:★★★★★★★☆☆☆
短剣技能:★★★★★☆☆☆☆☆
長槍技能:★★☆☆☆☆☆☆☆☆
金銭感覚:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ユ「私、未だに戦闘で使える術がいんだけど……?」
レ「基本的に戦闘で使用可能な術に消費する魔力は80以上。もう少しの辛抱です」
二「とはいえ、攻撃系の術は120くらい消費するけれど」
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レ「ちなみに、使い込むと消費魔力量も抑えられるので、頑張りましょうね!」
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