ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

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018 セフィリア

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「……はぁ……流石に肝を冷やしたな……」
「はい……エッグベアーはあまり数の多い魔物ではないので、怖かったです……」
「こ、ここはいったい……」

 足を負傷している女性は驚きを隠せていないが、取り敢えず今は靴を脱がせて室内に上がる。マリーのベッドに寝かせる。マイホームの持つ自動回復や浄化でどれだけマシになるか分からないけど、あいにく俺たちには薬草の知識も回復魔法を使うこともできない。

「聞きたいことはあれこれあるだろうが、取り敢えずこっちからだ。鑑定、させてもらっていいか?」
「……鑑定持ちなのね。どうぞ」

 女性は少しだけ驚いたが、すんなり了承してくれた。

名前:セフィリア
年齢:48
種族:ハーフエルフ
職業:風術士
レベル:18
HP:174/480
MP:113/512
攻撃力:38
防御力:51(+25)
素早さ:46
魔法力:77
精神力:68
器用さ:56
アクティブスキル:風魔術(小) 短弓術(微) 短杖術(序)
パッシブスキル:風耐性(下) 毒耐性(小) 歌唱(微) 詠唱短縮(微)
装備:魔織布の服(破損)、簡素な矢筒付ベルト、大角鹿革のブーツ、魔晶石の指輪、精霊樹のタリスマン

 レベル18か。後衛職といえどそのレベルじゃエッグベアーは倒せないのか。レベル一桁の俺たちが今生きているのはけっこうな僥倖なんじゃ?
 というか……。

「48歳……?」
「ハーフエルフは二十歳過ぎから老化が緩やかになる。純血の人間の年齢に合わせると……23歳くらいだろうか」

 セフィリアが長い銀髪を耳にかける。エルフほど尖ってもいないが、単純な人間よりは尖っている気がする。

「じゃあ、俺は25歳だから近いな」
「それなら私の事は呼び捨てにしてちょうだい。鑑定して分かっていると思うけど、私はセフィリア。あなた達を何て呼べば良いかしら?」
「ああ、俺の事はレックスと呼んでくれ。よろしくな、セフィリア」
「私はマリーです。よろしくお願いします、セフィリアさん!」

 マリーもぺこりと頭を下げる。にしてもセフィリア、HPが大分減っているわりに気丈に振る舞うなぁ。自分には見えていないからか? 

「さて、レックスにマリー。助けてくれてありがとう。あのままだったらきっと死んでいたわ。本当に感謝しているわ。……で、ここはなに?」

 セフィリアは部屋の中を見回す。俺のマイホームは、なんというか、こっちの世界では目にしないものが多々あるんだろう。壁紙だってそうだ。異世界の家は石とか木材とかそういう壁材が一般的で、クロス張りとか見ないし。そもそも床だって、靴を脱いで過ごすようにはなっていない。土間か板張りだ。この部屋はフローリングだから見た目には板張りだが、質感が全然違うし。

「そういえばここがどういう空間なのか、私もあまり理解してなくて……」

 マリーが控えめにそう言うが、確かにそうだ。マリーもピンチな状況をここに逃げ込んできたわけで。

「まぁ、俺がスキルで創った空間だ。あんまり詳しい説明はできない。悪い」

 何がきっかけで異世界人だとバレるか分からない以上、むやみやたらなことは言えない。この二人に教えたからといって、何かが変わるとは思わないけど。取り敢えず、どこから話していいかもわからないからね。急に異世界とか言い出されても、俺の精神が疑われそうだ。

「取り敢えず、命拾いしたことを今は喜ぶよ。少しずつではあるが、傷も癒え始めているようだ。……ここは本当に不思議な場所だ。この世の空間とは思えないほど静謐で、神秘的だ」

 セフィリアは自分の身体を確認しながら、感嘆の声を漏らす。自動回復が効果を発揮できているようで何よりだ。
 にしても困った。このマイホームは発動した場所から離れた場所に移動することはできないのだ。俺は盾を、マリーは剣を失っている。装備が不十分なこの状況で、森を抜けて草原を越えスタル村まで帰れるだろうか。

「セフィリアは風魔術が使えるんだろう? 杖とかはないのか? あと弓も」
「杖は逃げている途中で落とした。弓はエッグベアーに折られてしまったわ……」
「……森を抜けるのは難しそうだな」
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