ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ

文字の大きさ
56 / 84

056 プチ歓迎会

しおりを挟む
 ブラウンホーンと戦う時、これまで俺たちは比較的脆いとされる関節を狙ってダメージを与えてきた。風属性に少しだけ耐性があるブラウンホーンを相手に、セフィリアは弓で牽制しつつ、時折は目を狙って攻撃をしてもらっていた。その隙に俺かマリーが頭と胴の隙間を狙って剣を突き立てていた。これにエリックが加わると……。

「ど、せぇい!!」

 メイスのフルスイングを顎の下から叩き込むことでブラウンホーンがのけぞる。そこに俺たちが斬りかかることで、ブラウンホーンがひっくり返ったのだ。地球のカブトムシもそうだが、こういった手合いはひっくり返ると自力で起き上がることができないものもいる。そこをあとは袋叩きにしてやれば、あっけなく討伐というわけだ。しかも素材となる角や甲殻にはほとんど傷がつかない状態で。これはありがたい。

「レックスは収納持ちかあ。うらやましいぜ」

 マイホームスキルの全てを明かすわけにはいかないというのが俺とマリーとセフィリアの共通認識ということもあり、取り敢えずは収納の部分だけを明るみにしている。そうでないと冒険があまりにも大変なことになるからだ。普通はこの大変さの中で冒険するのだが。

「よし、次のを探そうか」

 エリックの加入は俺たちのパーティにとって非常に大きかった。これまでこの地域に出現するもののスルーし続けていたロックパペットと戦えるようになったのだ。ロックパペットは石の塊が組み合わさって自我を持ったような魔物で、剣の攻撃はほとんど通用せず、火や風の属性にも強い耐性がある。これまでの俺たちにとっては天敵のような存在だったが、エリックのメイスと俺の水魔法でなんとか討伐できるようになった。

「ロックパペットは時折貴重な鉱石を宿していることがあるっていうしな。剣士が倒したい敵なのに剣士には倒しづらいっていうのが厄介だぜ」

 バラバラになったロックパペットからめぼしい石を探す。俺もマリーもセフィリアもこの作業に慣れてきた。子供のころにやった砂金探しより正直楽しい。というか、分かりやすい。きらっと光る石を見付けて収納魔法で回収する。

「売って換金したらエリックに多めに渡すよ」
「いや、こういうのはパーッと飲み食いに使う方がいいぜ。あんたらがいいヤツだってもう十分わかったけど、金はもめ事の最たる原因だからな」

 これまでいくつものパーティに参加して旅をしてきたというエリックの言葉は説得力があった。

「じゃあ、ちょっとした歓迎会だな」
「もしくは明日に向けた壮行会かしら」
「おいおい、歓迎してもらうのは嬉しいけど、壮行会をするほどの大仕事じゃないだろうよ」
「じゃあ宿の食堂とは別にお店探しましょうよ」

 マリーの提案に乗り、夕食を宿以外で食べることを決めた俺たちは、日はまだ高いが俺たちは狩りを切り上げ、手に入れた素材の売却をすることにした。明日には出立してしまうので、手数料を多めに支払って急ぎで鑑定してもらい、そのお金で豪華な夕食をとることにした。

「パンが、やわらけぇ」
「ナランハのジャムとも相性抜群ですね」

 流石にマイホームスキルで生成した日本の食パンに比べればまだまだだが、こちらの世界で普通に出させるパンからは驚くほど柔らかい。ナランハのジャムも少量だが味見することができたし、大満足の夕食だった。護衛任務がなければ、こちらの世界に来て初めての飲酒も検討したが……二日酔いにでもなったら仕事にナランハと思い飲まなかった。ついでさっきのギャグも決して口にしなかった。絶対スベるだろうからな。 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...