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「ラッ?! ララララララ、ライアス?!」
パウゼヴァング家でこんなふうに気配を消すことができるのはライアスしかいない。
飛び上がりそうなほど驚いて振り向けば、予想通りライアスの顔が間近にあった。
「はい。貴女の忠実なる下僕で執事のライアスですよハイデマリーお嬢様」
24歳に成長したライアスはパウゼヴァング家の優秀な執事だ。
神々しいほどの美貌を持つ184cmの彼が着ると、お仕着せの執事服もオートクチュールのように見える。
この十二年間。みなが幸せになる人生を歩むため、ハイデマリーとライアスは自分たちの持つ力を間違った方向に使わぬよう共に歩んできた。
特にライアスは『面白そうだから』という理由で、自分の才能をハイデマリーの執事として全振りすることを選んだ。
ハイデマリーの食事や服装の好みを完全に暗記し、ハイデマリーの体調の変化に本人よりも先に気がつき、学園にも護衛として付き添う。
そんなふうに、全力でお嬢様命の執事の役割を果たす自分を面白がり楽しんでいるようだった。
(でも、うみチカのライアスもヒロインに心酔してたけど、今ほど吹っ切れたキャラじゃなかった気がする)
ゲームとは違う未来になったことは嬉しいが、ライアスが過保護なためハイデマリーに近づく男子生徒は一人もいない。
「ところで、俺の聞き間違いだとは思うのですが……」
そのライアスが、何故か凄まじい殺気を放ちながらハイデマリーの手首を掴む。
部屋の温度が下がったと感じるほどの殺気なのに、ライアスの表情は完璧な笑顔だ。
「レディであるお嬢様の可憐な口から……」
ライアスがそこで言葉を区切ると、不穏な空気が更に膨れ上がる。
「――貴女の口からセックスなどというふしだらな単語が聞こえた気がするのですが、気のせいでしょうか?」
「いつから私の側にいたのライアス?!」
まさか先ほどのひとり言を聞かれていたなんて。
(今回の『〇〇をしないと出られない部屋作り計画』はライアスには内緒だったのに!)
ハイデマリーには部屋の効果を確認しているところをどうしてもライアスに見られたくない理由がある。
だからハイデマリーはこの計画を思いついてからの数日、ライアスに隠れ一人で行動し準備をしてきたのだ。
しかし暗殺術すら習得しているライアスを撒くことなど不可能だったらしい。
コソコソと行動していたことが完全に裏目に出ている。
(これ、絶対にすごく怒ってるやつーーーー!)
ただでさえ過保護なライアスはハイデマリーが自分の目の届かないところで行動するのを嫌がる。
特にここ数週間は、聖夜祭に乗じてハイデマリーに言い寄る男がいないかを警戒していた。
(私がモテないの、ライアスだって知ってるでしょうにっ)
「お嬢様、この魔力に満ちた部屋を、なんの目的で作ったのか、教えてもらえます? 俺の気のせいでなければ、術者の思うとおりの行動をしないと出られない呪いがかかっているようなのですが?」
「えっと、それはレイモンドと」
レイモンドとアイラを両想いにするため。
そう言い終わる前に、ライアスがハイデマリーを横向きに抱えて持ち上げた。
いわゆるお姫様抱っこだ。
「――おい、マリー。お前さっき、セックスって言ってたよな?」
まるで出会った頃に戻ったような乱暴な口調でライアスが低く唸る。
獲物を食い殺す前の肉食獣に睨まれた気分だ。
「その『セックスをしないと出られない部屋』にレイモンドを誘導するって言ったか? あ?」
「ちが、そうじゃなくて!」
マズい。単語と単語が最悪の化学反応を起こし、何か大変な勘違いをされている。
そのせいでライアスはメチャクチャ怒っている。
「俺があまりにもお嬢様から男を遠ざけるから、こんな部屋を作ってまでセックスをしてみようと思った? そんなにセックスに興味があったんなら、まず俺に言えば良かったじゃないですか」
「だから、違うの……!」
「何が違うんです? この部屋、アンタの魔力のせいで『セックスしないと出られない部屋』になってんだろ? ――なら、俺とセックスするしかありませんね」
ハイデマリーを軽々と抱えるほど逞しく成長したライアスは、スタスタと歩きベッドにハイデマリーを押し倒す。
そして右手でハイデマリーの両手を拘束したまま、左手の白い手袋を嚙んで外した。
「マリー、おしおきの時間です。俺以外に抱かれようなんて、許さない」
パウゼヴァング家でこんなふうに気配を消すことができるのはライアスしかいない。
飛び上がりそうなほど驚いて振り向けば、予想通りライアスの顔が間近にあった。
「はい。貴女の忠実なる下僕で執事のライアスですよハイデマリーお嬢様」
24歳に成長したライアスはパウゼヴァング家の優秀な執事だ。
神々しいほどの美貌を持つ184cmの彼が着ると、お仕着せの執事服もオートクチュールのように見える。
この十二年間。みなが幸せになる人生を歩むため、ハイデマリーとライアスは自分たちの持つ力を間違った方向に使わぬよう共に歩んできた。
特にライアスは『面白そうだから』という理由で、自分の才能をハイデマリーの執事として全振りすることを選んだ。
ハイデマリーの食事や服装の好みを完全に暗記し、ハイデマリーの体調の変化に本人よりも先に気がつき、学園にも護衛として付き添う。
そんなふうに、全力でお嬢様命の執事の役割を果たす自分を面白がり楽しんでいるようだった。
(でも、うみチカのライアスもヒロインに心酔してたけど、今ほど吹っ切れたキャラじゃなかった気がする)
ゲームとは違う未来になったことは嬉しいが、ライアスが過保護なためハイデマリーに近づく男子生徒は一人もいない。
「ところで、俺の聞き間違いだとは思うのですが……」
そのライアスが、何故か凄まじい殺気を放ちながらハイデマリーの手首を掴む。
部屋の温度が下がったと感じるほどの殺気なのに、ライアスの表情は完璧な笑顔だ。
「レディであるお嬢様の可憐な口から……」
ライアスがそこで言葉を区切ると、不穏な空気が更に膨れ上がる。
「――貴女の口からセックスなどというふしだらな単語が聞こえた気がするのですが、気のせいでしょうか?」
「いつから私の側にいたのライアス?!」
まさか先ほどのひとり言を聞かれていたなんて。
(今回の『〇〇をしないと出られない部屋作り計画』はライアスには内緒だったのに!)
ハイデマリーには部屋の効果を確認しているところをどうしてもライアスに見られたくない理由がある。
だからハイデマリーはこの計画を思いついてからの数日、ライアスに隠れ一人で行動し準備をしてきたのだ。
しかし暗殺術すら習得しているライアスを撒くことなど不可能だったらしい。
コソコソと行動していたことが完全に裏目に出ている。
(これ、絶対にすごく怒ってるやつーーーー!)
ただでさえ過保護なライアスはハイデマリーが自分の目の届かないところで行動するのを嫌がる。
特にここ数週間は、聖夜祭に乗じてハイデマリーに言い寄る男がいないかを警戒していた。
(私がモテないの、ライアスだって知ってるでしょうにっ)
「お嬢様、この魔力に満ちた部屋を、なんの目的で作ったのか、教えてもらえます? 俺の気のせいでなければ、術者の思うとおりの行動をしないと出られない呪いがかかっているようなのですが?」
「えっと、それはレイモンドと」
レイモンドとアイラを両想いにするため。
そう言い終わる前に、ライアスがハイデマリーを横向きに抱えて持ち上げた。
いわゆるお姫様抱っこだ。
「――おい、マリー。お前さっき、セックスって言ってたよな?」
まるで出会った頃に戻ったような乱暴な口調でライアスが低く唸る。
獲物を食い殺す前の肉食獣に睨まれた気分だ。
「その『セックスをしないと出られない部屋』にレイモンドを誘導するって言ったか? あ?」
「ちが、そうじゃなくて!」
マズい。単語と単語が最悪の化学反応を起こし、何か大変な勘違いをされている。
そのせいでライアスはメチャクチャ怒っている。
「俺があまりにもお嬢様から男を遠ざけるから、こんな部屋を作ってまでセックスをしてみようと思った? そんなにセックスに興味があったんなら、まず俺に言えば良かったじゃないですか」
「だから、違うの……!」
「何が違うんです? この部屋、アンタの魔力のせいで『セックスしないと出られない部屋』になってんだろ? ――なら、俺とセックスするしかありませんね」
ハイデマリーを軽々と抱えるほど逞しく成長したライアスは、スタスタと歩きベッドにハイデマリーを押し倒す。
そして右手でハイデマリーの両手を拘束したまま、左手の白い手袋を嚙んで外した。
「マリー、おしおきの時間です。俺以外に抱かれようなんて、許さない」
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