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「お邪魔……します」
「家に誰もいないって言ったのに律儀なのね」
「いや、だって初めて彼女の家にお邪魔するんだし……」
少し垂れた目元を赤く染めて高橋が靴を脱ぐ。
チラリと時計を確認すると午後九時四十五分だった。
「俺の仕事が終わるの、待っててくれてありがとね」
「大丈夫。今日は夜ご飯も作らなくて良い日だったから。私の部屋、こっち」
落ち着きなくキョロキョロと家の中を見回す高橋を誘導し廊下を進む。
「いつもは美也子ちゃんがご飯作ってるんだよね? 外食とかしないの?」
「ほとんどしない。だから、さっき行ったファミレスも斬新だったわ」
「あはは。難しい顔してナポリタン食べてたもんねぇ」
本当なら外食も、兄以外の誰かと食事をすることも好きでなかったが、時間を調節するためだったから仕方がない。
「どうぞ」
「うわ~、あの、黒飛さんの部屋に入ったなんて言ったら店じゅうの男に殴られそー」
「部屋ぐらいで、変な人」
そわそわと体を揺する高橋をベッドに座らせた。
「え……っと、やっぱこーゆー時の定番って、高校の卒アルとか……っ!!」
言葉を遮って唇を塞ぐ。狼狽える様子を無視して舌を差し込む。
「ちょ、美也子ちゃん?!」
「私、律也君と、したいの」
直接的な言葉に真っ赤になった高橋の喉が鳴った。
「いや、でもっこんなイキナリ?! 俺達まだデートもそんなしてないし」
「ゴムは有るから大丈夫」
「も、もしかして美也子ちゃんは初めてじゃない……の?」
へにょりと高橋の眉尻が下がる。
「……私じゃ、嫌?」
上目使いに高橋を見つめ、その手をブラウスの胸へと押し付ける。
ゴクリ。
また大きく高橋の喉が鳴る。
自分に惚れている男の理性を崩すことなど、簡単だ。
ゆっくりと近づいてくる高橋の顔を見ながら、美也子は口の端を吊り上げた――。
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