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「ただいまー」
自分の家のものでもない重厚で大きなドアを当たり前のように合鍵を使って開く。
すると焼きたてのクッキーの香りと共にお手伝いのカヨ子さんが迎えてくれた。
「おかえりなさい芽愛さん。慈雨さんならお部屋ですよ」
「ただいまカヨ子さん。おじちゃんとおばちゃんはお仕事?」
「はい。お二人とも明日の夜まで戻らないそうです。私も今日はあと10分ほどで失礼しますね」
「そっかぁおじちゃんにこの前の舞台の感想言いたかったのに残念。おばちゃんにも会いたかったなぁ」
元々の家の持ち主だったおばあさんが亡くなってこの広い家に住んでるのはジウちゃんとジウちゃんのご両親3人だけだ。
お仕事の忙しいおじちゃんとおばちゃんは、それでもジウちゃんが中学生になるまでは絶対夜はお仕事をしなかったけれど、13才になったジウちゃんに「もういい」と言われてからは思う存分世界を飛び回っている。
この家に引っ越してきた時から通ってくれているカヨ子さんも夜ご飯の支度が終われば帰ってしまう。
「お魚の煮付けとサラダとお味噌汁多めに作ってありますので芽愛さんも召し上がってくださいね」
「わーい! カヨ子さんの煮付けだぁ!」
ふんわりと味の染みたお魚を想像しながらうきうきと2階への階段を上がる。
晩御飯は煮付けだし、おっぱいが大きくなる方法も知れたし、今日は本当に良い日だ。
「ジウちゃんただいまー」
ノックもそこそこに返事を待たずにドアを開ける。
スッキリと片付いた部屋の中でジウちゃんは机に向かって雑誌を読んでいた。
「おかえり芽愛」
微笑んだジウちゃんが雑誌を置いて両手を広げる。
その腕の中にいつものように飛び込んで、お月さまの夜の匂いのする身体を抱き締めた。
「今日は一緒に帰れなかったけど大丈夫だった? 芽愛を一人にしてごめんね?」
「おばちゃんの会社に忘れ物を届けに行ったんだから仕方ないよ。それに教室でお喋りしてただけで繁華街とか行ってないからヘーキ」
「芽愛みたいに可愛い子が女の子だけで出掛けたら危ないからね。買い物に行くときは絶対俺と一緒じゃなきゃ駄目だよ?」
心配性な幼なじみの言葉が照れくさくてぐりぐりと頭を引き締まった胸元に押し付ける。
「そんなこと言うのジウちゃんだけだよ。これおばちゃんのデザインしたアクセサリーの特集記事?」
「そう。最近二十歳前後の女の子向けのブランドを新しく立ち上げたみたいだよ。母さんは未来の娘に甘いからね。芽愛も読む?」
おばちゃん、新しく娘を生む予定でもあるんだろうか。
ヒトミちゃんの言うこともムズカシイけれど、ジウちゃんの言うことも時々よくわからない。
「んーん。あとにする」
「そ?」
私が雑誌を断ると、ジウちゃんはフワリと私をお姫様抱っこにしてベッドまで運んでくれた。学校が終わったあとは二人でゴロゴロとベッドに寝転んでそのままお昼寝をしてしまうのがいつもの私たちのパターンだ。
「まだおかえりのキスをしていなかったから……」
ちゅっ……とおでこに柔らかいくちびるを落とされて私もお返しにジウちゃんのほっぺに口づける。
つむじにキスをされながら優しく髪をすかれるとそれだけで条件反射で眠くなってしまう。ジウちゃんの腕の中ほど安心できて温かい場所を私は知らない。
「寝るなら電気消そうか?」
私を腕に抱いたまま器用に片手でブラインド閉めたジウちゃんが囁く。
「ん……」
ウトウトと心地好い眠りに落ちそうになってハッと気がつく。今日はお昼寝をしに来たんじゃなかったんだ!
「あ、あのね! ジウちゃんっ」
「うん?」
「今日すごいこと知ったの!」
「すごいこと……何かな?」
緑の星が散らばる薄茶の瞳に問われて急にちょっと恥ずかしくなる。
「……ほら、私──ぃ、小さいでしょう?」
「……い?」
「ぉっぱぃ……」
言い直した単語を聞き取ってジウちゃんの視線が私の胸に移動する。
「最近は直接見てないけど小ぶりな芽愛の胸も可愛いよ。と言うかどんな胸でも芽愛は可愛い」
仔猫をあやすみたいに喉を撫でられて顎にもジウちゃんのくちびるが触れる。
「でもねっヒトミちゃんに教えて貰ったんだけどね! 彼氏ができるとおっぱい大きくなるんだって!」
「───へぇ?」
「だから私、ジウちゃんに教えて貰おうと思って!」
「……良いの? 教えて。俺が、芽愛におっぱい大きくする方法……。それは、俺が芽愛の彼氏になるって言うこと?」
プチプチと長くて白い指が私の制服のボタンを外す。シャツから覗いた鎖骨に熱いジウちゃんの舌が這う。
「ん、違うっ、違うの!」
「……違う?」
「教えて欲しいのは合コンのやり方なの! 私、合コンで彼氏作るの!」
言った瞬間、何故か部屋の温度が急に下がった気がした。
寒気を感じてぶるりと体を震わせる。
「──今、なんて?」
初めて聞くジウちゃんの低い声がズシンと鼓膜に届く。
「芽愛が、俺以外に彼氏を作る? ──俺以外の男に、胸を大きくして貰う?」
ギラギラと琥珀のような瞳が緑に燃えた。
「だ、だってジウちゃんは大事な幼なじみだもんっ。よくわかんない彼氏なんかとは違うもん……っ」
自分でも何に怯えているかわからないのにイヤイヤをする子供の仕草で否定する。
「──あぁそうか。俺が今まで芽愛に教えなさ過ぎたんだね? ごめん、俺の責任だ」
責任はちゃんととらないとね?
「ひぅっ」
「緊張してるの? 大丈夫。合コンなんか行かなくても、俺が、ちゃんと芽愛のおっぱい大きくしてあげる」
二つ目まで外されていたボタンを更に下へと右手だけで外される。
「……ペールグリーン。意外。芽愛はピンクとかかと思ってた。この、フリルが可愛い。昔はくまちゃん柄とかだったのに……大人になったんだね」
「そんなに見られたら恥ずかしいよぉ……っ」
「どうして? 芽愛のおっぱい大きくするためなんだからちゃんと観察しないと……」
「やっ」
制止しようとした手を簡単に頭の上で束ねられて、私を拘束する手とは反対の手の指がフロントホックを引っかける。プチン……と呆気ない音で私の貧相な胸は琥珀色に映し出されてしまった。
じっ……といつかのお人形のような瞳が、バクバクと煩い音を立てる心臓の上の皮膚を凝視する。荒い呼吸で忙しなく上下する薄い丘はきっと滑稽だろう。
「……ミルクに浮かぶ、サクランボみたいだね。凄く、美味しそう……。おっぱい、大きくするために、芽愛の胸の機能が正常か、ちゃんと俺が確かめてあげる……」
「きゃぅっ?!」
美味しそう。という言葉通りに、淡く色づいた先端を食べられて背中がしなる。最初はくすぐったかっただけのその感触が、何度も何度も吸い上げられると泣きたいぐらいの疼きに変わる。
「──うん。ちゃんとたってきた」
よくできました。
問題集が解けたあとのご褒美をくれる時みたいな言葉とは裏腹に『たってきた場所』を強く爪で弾かれる。
「───!!」
悲鳴をあげそうになった口をジウちゃんのくちびるで塞がれて熱い舌をねじ込まれた。ぬるぬると歯の裏側を探られて唾液が溢れる。肉食獣みたいなキスはいつまでも終わらない。
「べろ、出して」
酸欠でボーッとする私に届くジウちゃんの言葉はまるで王様の命令だ。赤く腫れぼったくなった舌を従順に差し出す。
緑の光に視線を捕らわれたままお互いの舌を繰り返し擦り合わせた。
永遠に続きそうなキスの最中も、大きな掌は私の胸を点検することは忘れない。引っ張られて、摘ままれて、押し潰される。
もはやどんな刺激にもビクビクと動いてしまう身体は回路の壊れた玩具のよう。声だって甘ったるく鳴くことしかできない。
「も、や……っ。ジウちゃん、もう、やらよぉ……っ!」
「もっとえっちな声出して芽愛。じゃないとおっぱい大きくならないよ?」
芽愛が俺以外の男におっぱい触らせようなんて、思わなくなるまでやめないよ。まだまだこれからなんだから。
そう言ってジウちゃんは私に跨がったままカットソーを脱ぎ捨てる。
「──胸の機能は正常みたいだ。でも、こっちはどうかな……?」
「やっ、ジウちゃん、やっ! そこは、おしっこするところだよ?!」
「芽愛違うよ。ここは、おしっこするとこじゃなくて、赤ちゃん産むための場所。おっぱい大きくするためには、この赤ちゃんの場所も大事なんだよ」
下着のクロッチ部分をずらした指がねちょねちょと音を立ててそこをタップする。自分の中指に絡み付いた透明なとろみを確認したジウちゃんは満足そうに微笑んだ。
「まだ触られてないのにこんなに濡らしちゃう芽愛は才能が有るね」
「っ!」
わからないけど。ジウちゃんが言ってることの半分も理解できないけれど。何かとても恥ずかしいことを言われていることだけはわかって涙が滲む。
「キツいけど……こんなにヌルヌルだったら2本でも平気かな?」
「ひぅっ?!」
さっきは表面を撫でるだけだった指が、今度はずぶりと埋められ小刻みに動かされる。ヒリヒリと痛いはずなのに気がつけば腰が揺れていた。
「んっ、ん、んぁ……っ」
「気持ちいい? 芽愛」
「わか、なっ、わかんない……けどっ」
「けど?」
「ジウちゃんの、指、もっと、もっとぐちゃぐちゃってしてぇ……っ」
「芽愛が望むなら」
蕩けるように目を細めたジウちゃんが私のお願い通りにお漏らしみたいに濡れてるそこを掻き回す。
「芽愛がとっても上手におねだりできたから……もっと気持ちいい場所教えあげる」
「────っ?!」
ジウちゃんの親指がコリコリと『それ』に触れた瞬間────目の前がチカチカと白く弾けた。
「さすが俺の芽愛だね。このままなら、すぐにおっぱい大きくなるよ」
「ほ、本当……?」
「うん。あとは『コレ』で、芽愛の気持ち良くてえっちなとこ、いっぱいグリグリすれば完璧……」
言葉と同時に硬い塊が太ももに当てられる。
「頑張れる? 芽愛」
「んっ、がんばる。ジウちゃんが、そう言うならがんばる……っ」
「大好きだよ芽愛」
「わたし、もっ、ジウちゃんのこと大好き……!」
「今日はまだ──をするけれど、卒業したらすぐにでも赤ちゃん作ろうね」
熱い楔に貫かれながら聞いた囁きの意味はよくわからなかったけれど、ジウちゃんさえそばにいてくれれば何も心配はない。そう思った。
*
「え。芽愛、棟方くんの家で暮らしてるの?!」
「うん。なんか『慈雨くん来月18才になるからもういいや』ってうちのお母さんが。意味不明だよね」
机の上に広げられたスナック菓子をポリポリとつまみながら答えると「本当にな?! 芽愛のお母さんの教育方針、常人には理解できないな?! 放任主義にも程があるよ?! ていうか棟方家もスゴいな?!」とヒトミちゃんはうめきながら額を押さえた。
「それで最近、守護魔神様の機嫌が良いのか……」
「ヒトミちゃん、何言ってるの?」
「──うん。守護魔神って、なんのことかな?」
不意に背後から声がして、首を傾げる私の耳を白くて綺麗な手が柔らかく塞ぐ。
「ヒィィィィィッ! ムナカタくんっ! ゴ、ゴゴゴキゲンヨウ?!」
今日も汗なんてかく気候じゃないのに、ダラダラと汗を流しながらヒトミちゃんは壁に貼り付いた。
「ごきげんよう林さん? 先日は、芽愛がお世話になったみたいで────ありがとう?」
ジウちゃんがそう微笑むと、何故か私たちの会話に注目していた教室中の生徒がひきつった悲鳴を上げる。
「今回は丸く収まったから良いけど……次はわかってるよね?」
わかってます! わかってます! とヒトミちゃんが叫ぶたびにヒトミちゃんの巨乳がブルブルと揺れる。私にはなんのことだかサッパリわからないのに、ジウちゃんとヒトミちゃんの意思の疎通はバッチリみたいだ。
「──どうしたの? 芽愛。そんなにほっぺを膨らませて」
「……なんでもないっ。ジウちゃん、日直の仕事終わったの?」
「うん。芽愛を待たせてごめんね。帰ろうか?」
「あ、でもまだヒトミちゃんと話してるとちゅ……」
「ワーーーーッ! ごめん芽愛?! わたし、家の金魚が牛乳飲みたいって言ってたの急に思い出したから急いで牛乳買って帰らなきゃ?! また明日ね?!」
金魚って牛乳飲むの? そう聞くより早くヒトミちゃんは机の上を片付けて教室を飛び出して行く。
その後ろ姿を見送ってジウちゃんが両手を広げた。
いつものように安心する腕の中に飛び込んで手を繋いで昇降口へと向かう。
「す、末永くお幸せに!」
「何があっても別れるなよ!」
「いやホント本気で別れないでくださいお願いします!」
「俺たち二人の未来を真剣に応援してますっっ!」
並んで歩く私たちへ同級生から祝福の声が次々にかけられる。ジウちゃんは本当にこの学校の人気者だ。
そんな自慢の幼なじみ──ううん、自慢の未来の旦那様の手をギュッと握る。
強く握り返してくれたこの手を、どうか、どうかずっと繋いでいられますように!
fin
自分の家のものでもない重厚で大きなドアを当たり前のように合鍵を使って開く。
すると焼きたてのクッキーの香りと共にお手伝いのカヨ子さんが迎えてくれた。
「おかえりなさい芽愛さん。慈雨さんならお部屋ですよ」
「ただいまカヨ子さん。おじちゃんとおばちゃんはお仕事?」
「はい。お二人とも明日の夜まで戻らないそうです。私も今日はあと10分ほどで失礼しますね」
「そっかぁおじちゃんにこの前の舞台の感想言いたかったのに残念。おばちゃんにも会いたかったなぁ」
元々の家の持ち主だったおばあさんが亡くなってこの広い家に住んでるのはジウちゃんとジウちゃんのご両親3人だけだ。
お仕事の忙しいおじちゃんとおばちゃんは、それでもジウちゃんが中学生になるまでは絶対夜はお仕事をしなかったけれど、13才になったジウちゃんに「もういい」と言われてからは思う存分世界を飛び回っている。
この家に引っ越してきた時から通ってくれているカヨ子さんも夜ご飯の支度が終われば帰ってしまう。
「お魚の煮付けとサラダとお味噌汁多めに作ってありますので芽愛さんも召し上がってくださいね」
「わーい! カヨ子さんの煮付けだぁ!」
ふんわりと味の染みたお魚を想像しながらうきうきと2階への階段を上がる。
晩御飯は煮付けだし、おっぱいが大きくなる方法も知れたし、今日は本当に良い日だ。
「ジウちゃんただいまー」
ノックもそこそこに返事を待たずにドアを開ける。
スッキリと片付いた部屋の中でジウちゃんは机に向かって雑誌を読んでいた。
「おかえり芽愛」
微笑んだジウちゃんが雑誌を置いて両手を広げる。
その腕の中にいつものように飛び込んで、お月さまの夜の匂いのする身体を抱き締めた。
「今日は一緒に帰れなかったけど大丈夫だった? 芽愛を一人にしてごめんね?」
「おばちゃんの会社に忘れ物を届けに行ったんだから仕方ないよ。それに教室でお喋りしてただけで繁華街とか行ってないからヘーキ」
「芽愛みたいに可愛い子が女の子だけで出掛けたら危ないからね。買い物に行くときは絶対俺と一緒じゃなきゃ駄目だよ?」
心配性な幼なじみの言葉が照れくさくてぐりぐりと頭を引き締まった胸元に押し付ける。
「そんなこと言うのジウちゃんだけだよ。これおばちゃんのデザインしたアクセサリーの特集記事?」
「そう。最近二十歳前後の女の子向けのブランドを新しく立ち上げたみたいだよ。母さんは未来の娘に甘いからね。芽愛も読む?」
おばちゃん、新しく娘を生む予定でもあるんだろうか。
ヒトミちゃんの言うこともムズカシイけれど、ジウちゃんの言うことも時々よくわからない。
「んーん。あとにする」
「そ?」
私が雑誌を断ると、ジウちゃんはフワリと私をお姫様抱っこにしてベッドまで運んでくれた。学校が終わったあとは二人でゴロゴロとベッドに寝転んでそのままお昼寝をしてしまうのがいつもの私たちのパターンだ。
「まだおかえりのキスをしていなかったから……」
ちゅっ……とおでこに柔らかいくちびるを落とされて私もお返しにジウちゃんのほっぺに口づける。
つむじにキスをされながら優しく髪をすかれるとそれだけで条件反射で眠くなってしまう。ジウちゃんの腕の中ほど安心できて温かい場所を私は知らない。
「寝るなら電気消そうか?」
私を腕に抱いたまま器用に片手でブラインド閉めたジウちゃんが囁く。
「ん……」
ウトウトと心地好い眠りに落ちそうになってハッと気がつく。今日はお昼寝をしに来たんじゃなかったんだ!
「あ、あのね! ジウちゃんっ」
「うん?」
「今日すごいこと知ったの!」
「すごいこと……何かな?」
緑の星が散らばる薄茶の瞳に問われて急にちょっと恥ずかしくなる。
「……ほら、私──ぃ、小さいでしょう?」
「……い?」
「ぉっぱぃ……」
言い直した単語を聞き取ってジウちゃんの視線が私の胸に移動する。
「最近は直接見てないけど小ぶりな芽愛の胸も可愛いよ。と言うかどんな胸でも芽愛は可愛い」
仔猫をあやすみたいに喉を撫でられて顎にもジウちゃんのくちびるが触れる。
「でもねっヒトミちゃんに教えて貰ったんだけどね! 彼氏ができるとおっぱい大きくなるんだって!」
「───へぇ?」
「だから私、ジウちゃんに教えて貰おうと思って!」
「……良いの? 教えて。俺が、芽愛におっぱい大きくする方法……。それは、俺が芽愛の彼氏になるって言うこと?」
プチプチと長くて白い指が私の制服のボタンを外す。シャツから覗いた鎖骨に熱いジウちゃんの舌が這う。
「ん、違うっ、違うの!」
「……違う?」
「教えて欲しいのは合コンのやり方なの! 私、合コンで彼氏作るの!」
言った瞬間、何故か部屋の温度が急に下がった気がした。
寒気を感じてぶるりと体を震わせる。
「──今、なんて?」
初めて聞くジウちゃんの低い声がズシンと鼓膜に届く。
「芽愛が、俺以外に彼氏を作る? ──俺以外の男に、胸を大きくして貰う?」
ギラギラと琥珀のような瞳が緑に燃えた。
「だ、だってジウちゃんは大事な幼なじみだもんっ。よくわかんない彼氏なんかとは違うもん……っ」
自分でも何に怯えているかわからないのにイヤイヤをする子供の仕草で否定する。
「──あぁそうか。俺が今まで芽愛に教えなさ過ぎたんだね? ごめん、俺の責任だ」
責任はちゃんととらないとね?
「ひぅっ」
「緊張してるの? 大丈夫。合コンなんか行かなくても、俺が、ちゃんと芽愛のおっぱい大きくしてあげる」
二つ目まで外されていたボタンを更に下へと右手だけで外される。
「……ペールグリーン。意外。芽愛はピンクとかかと思ってた。この、フリルが可愛い。昔はくまちゃん柄とかだったのに……大人になったんだね」
「そんなに見られたら恥ずかしいよぉ……っ」
「どうして? 芽愛のおっぱい大きくするためなんだからちゃんと観察しないと……」
「やっ」
制止しようとした手を簡単に頭の上で束ねられて、私を拘束する手とは反対の手の指がフロントホックを引っかける。プチン……と呆気ない音で私の貧相な胸は琥珀色に映し出されてしまった。
じっ……といつかのお人形のような瞳が、バクバクと煩い音を立てる心臓の上の皮膚を凝視する。荒い呼吸で忙しなく上下する薄い丘はきっと滑稽だろう。
「……ミルクに浮かぶ、サクランボみたいだね。凄く、美味しそう……。おっぱい、大きくするために、芽愛の胸の機能が正常か、ちゃんと俺が確かめてあげる……」
「きゃぅっ?!」
美味しそう。という言葉通りに、淡く色づいた先端を食べられて背中がしなる。最初はくすぐったかっただけのその感触が、何度も何度も吸い上げられると泣きたいぐらいの疼きに変わる。
「──うん。ちゃんとたってきた」
よくできました。
問題集が解けたあとのご褒美をくれる時みたいな言葉とは裏腹に『たってきた場所』を強く爪で弾かれる。
「───!!」
悲鳴をあげそうになった口をジウちゃんのくちびるで塞がれて熱い舌をねじ込まれた。ぬるぬると歯の裏側を探られて唾液が溢れる。肉食獣みたいなキスはいつまでも終わらない。
「べろ、出して」
酸欠でボーッとする私に届くジウちゃんの言葉はまるで王様の命令だ。赤く腫れぼったくなった舌を従順に差し出す。
緑の光に視線を捕らわれたままお互いの舌を繰り返し擦り合わせた。
永遠に続きそうなキスの最中も、大きな掌は私の胸を点検することは忘れない。引っ張られて、摘ままれて、押し潰される。
もはやどんな刺激にもビクビクと動いてしまう身体は回路の壊れた玩具のよう。声だって甘ったるく鳴くことしかできない。
「も、や……っ。ジウちゃん、もう、やらよぉ……っ!」
「もっとえっちな声出して芽愛。じゃないとおっぱい大きくならないよ?」
芽愛が俺以外の男におっぱい触らせようなんて、思わなくなるまでやめないよ。まだまだこれからなんだから。
そう言ってジウちゃんは私に跨がったままカットソーを脱ぎ捨てる。
「──胸の機能は正常みたいだ。でも、こっちはどうかな……?」
「やっ、ジウちゃん、やっ! そこは、おしっこするところだよ?!」
「芽愛違うよ。ここは、おしっこするとこじゃなくて、赤ちゃん産むための場所。おっぱい大きくするためには、この赤ちゃんの場所も大事なんだよ」
下着のクロッチ部分をずらした指がねちょねちょと音を立ててそこをタップする。自分の中指に絡み付いた透明なとろみを確認したジウちゃんは満足そうに微笑んだ。
「まだ触られてないのにこんなに濡らしちゃう芽愛は才能が有るね」
「っ!」
わからないけど。ジウちゃんが言ってることの半分も理解できないけれど。何かとても恥ずかしいことを言われていることだけはわかって涙が滲む。
「キツいけど……こんなにヌルヌルだったら2本でも平気かな?」
「ひぅっ?!」
さっきは表面を撫でるだけだった指が、今度はずぶりと埋められ小刻みに動かされる。ヒリヒリと痛いはずなのに気がつけば腰が揺れていた。
「んっ、ん、んぁ……っ」
「気持ちいい? 芽愛」
「わか、なっ、わかんない……けどっ」
「けど?」
「ジウちゃんの、指、もっと、もっとぐちゃぐちゃってしてぇ……っ」
「芽愛が望むなら」
蕩けるように目を細めたジウちゃんが私のお願い通りにお漏らしみたいに濡れてるそこを掻き回す。
「芽愛がとっても上手におねだりできたから……もっと気持ちいい場所教えあげる」
「────っ?!」
ジウちゃんの親指がコリコリと『それ』に触れた瞬間────目の前がチカチカと白く弾けた。
「さすが俺の芽愛だね。このままなら、すぐにおっぱい大きくなるよ」
「ほ、本当……?」
「うん。あとは『コレ』で、芽愛の気持ち良くてえっちなとこ、いっぱいグリグリすれば完璧……」
言葉と同時に硬い塊が太ももに当てられる。
「頑張れる? 芽愛」
「んっ、がんばる。ジウちゃんが、そう言うならがんばる……っ」
「大好きだよ芽愛」
「わたし、もっ、ジウちゃんのこと大好き……!」
「今日はまだ──をするけれど、卒業したらすぐにでも赤ちゃん作ろうね」
熱い楔に貫かれながら聞いた囁きの意味はよくわからなかったけれど、ジウちゃんさえそばにいてくれれば何も心配はない。そう思った。
*
「え。芽愛、棟方くんの家で暮らしてるの?!」
「うん。なんか『慈雨くん来月18才になるからもういいや』ってうちのお母さんが。意味不明だよね」
机の上に広げられたスナック菓子をポリポリとつまみながら答えると「本当にな?! 芽愛のお母さんの教育方針、常人には理解できないな?! 放任主義にも程があるよ?! ていうか棟方家もスゴいな?!」とヒトミちゃんはうめきながら額を押さえた。
「それで最近、守護魔神様の機嫌が良いのか……」
「ヒトミちゃん、何言ってるの?」
「──うん。守護魔神って、なんのことかな?」
不意に背後から声がして、首を傾げる私の耳を白くて綺麗な手が柔らかく塞ぐ。
「ヒィィィィィッ! ムナカタくんっ! ゴ、ゴゴゴキゲンヨウ?!」
今日も汗なんてかく気候じゃないのに、ダラダラと汗を流しながらヒトミちゃんは壁に貼り付いた。
「ごきげんよう林さん? 先日は、芽愛がお世話になったみたいで────ありがとう?」
ジウちゃんがそう微笑むと、何故か私たちの会話に注目していた教室中の生徒がひきつった悲鳴を上げる。
「今回は丸く収まったから良いけど……次はわかってるよね?」
わかってます! わかってます! とヒトミちゃんが叫ぶたびにヒトミちゃんの巨乳がブルブルと揺れる。私にはなんのことだかサッパリわからないのに、ジウちゃんとヒトミちゃんの意思の疎通はバッチリみたいだ。
「──どうしたの? 芽愛。そんなにほっぺを膨らませて」
「……なんでもないっ。ジウちゃん、日直の仕事終わったの?」
「うん。芽愛を待たせてごめんね。帰ろうか?」
「あ、でもまだヒトミちゃんと話してるとちゅ……」
「ワーーーーッ! ごめん芽愛?! わたし、家の金魚が牛乳飲みたいって言ってたの急に思い出したから急いで牛乳買って帰らなきゃ?! また明日ね?!」
金魚って牛乳飲むの? そう聞くより早くヒトミちゃんは机の上を片付けて教室を飛び出して行く。
その後ろ姿を見送ってジウちゃんが両手を広げた。
いつものように安心する腕の中に飛び込んで手を繋いで昇降口へと向かう。
「す、末永くお幸せに!」
「何があっても別れるなよ!」
「いやホント本気で別れないでくださいお願いします!」
「俺たち二人の未来を真剣に応援してますっっ!」
並んで歩く私たちへ同級生から祝福の声が次々にかけられる。ジウちゃんは本当にこの学校の人気者だ。
そんな自慢の幼なじみ──ううん、自慢の未来の旦那様の手をギュッと握る。
強く握り返してくれたこの手を、どうか、どうかずっと繋いでいられますように!
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