28 / 100
「めんどくさがりのプリンセス」の末っ子エミリー
タバサの功労
しおりを挟む
観光に生かせそうな歴史上の発見が一つは見つかりそうなので、だいぶ気分が上向いてきた。
微々たるものかもしれないが、この研究旅行の成果を出せたようで、エミリーとしては単純に嬉しい。
お腹が空いてきたので、エミリーとロブはこの先の商店街でお昼を食べることにした。
都市部とは違いやっと車がすれ違えるくらいの狭い道幅だが、それがかえって人々の親密感をよんでいるようで、人通りは多かった。
両側に並ぶ店の中にも、大勢のお客さんが入っている。
「観光地としても充分賑わってるね。冬場でこれなら、あんまり手助けをしなくても経済的には大丈夫そうだね、キャンベル家の民宿。」
「そうだな。まぁそれが判っただけでも、来て良かったじゃないか。帰っておじさま達にそう伝えられるだろ?」
「うん。ところで何食べる? 折角アイルランドに来たんだから、こっちの名物がいいかな?」
「ハギスとか?」
ロブが意地悪く笑いながら、エミリーに問いかけてきた。
「もうっ、私が内臓系のお肉は苦手だって知ってるくせに。」
外がひどく寒かったので、早くどこかに入った方がよさそうだ。
山小屋風の雰囲気がよさそうな店があったので、中に入ってから注文するメニューを考えることにした。
「やっぱりなにか暖かい物がいいよね。」
「うん。僕はソーダブレッドとテールスープとグラタン。」
「早っ。こういうことは決めるの早いのね。えーと私は…私もスープがいいかな。この地元野菜のスープと、ミートパイ。後はデザートに、ルバーブパイ。」
「相変わらずパイが好きだな。太るぞ。」
「いいのっ。タバサは何にする?」
「わたしは、ブラウンシチューとパンとサラダのランチセットをいただきます。」
全体的にみて、この店に入ったのは正解だった。
店の奥では泥炭、ピートがゆらゆらとした不思議な炎をあげて旅情を誘ってくれる。
料理も全部おいしかった。
お腹が一杯になったので身体がぽかぽかと温かくなってくる。
欲を言えば私としてはルバーブパイにもう少しお砂糖を入れて欲しかったが、ロベルトさんは懐かしいおふくろの味だ、とおおいに感激してルバーブパイを褒めたたえていた。
◇◇◇
お腹が満足したので、もうひと頑張りと気合を入れて、一気にお城に行くことにした。
お城は、山を背にして少し小高い所から村を見下ろすように建っている。
坂道を登っていく途中でお城の全容が見えてくると、ロベルトさんが言った。
(これはだいぶ違うな。まず私の知っている建物はこの半分ぐらいしかない。東側翼のあの部分が主だった。昔は城と言ってもこの辺りのものは、砦に領主館の機能を付けたようなものだったからな。)
「後から付け足ししながらこの大きさになったんだろうね。領史によるとハンニガム候に嫁いだといわれている、オリガさんが産んだ子どもが建てた翼もあるらしい。」
(それはぜひ見てみたい。私の孫の施策ともいえるな。)
エミリーたちは、お城に向かう坂を登り切ってから自転車を降りた。
ロブの言っていた建物は、ロベルトさんの知っている東翼の建物に続いて、更に東側に向かって付け足されていた。
この土地は後ろの崖の方へ斜めに下り気味になっている。
山際のせいか、先日のクリスマス前から降っていた雪が、アイスバーンのようになって建物の裏に残っていた。
「エム、足元に気をつけろよ。」
ロブがすぐにエミリーの手を繋いで、そろそろと坂を下ってくれる。
こういう紳士的なマナーはいかにも公爵家の息子だよね。
(おいおい、私の孫は何を考えてあそこに壁なんて建てたんだ?)
「どこの壁?」
(ほら、そこだよ…。)
ロベルトさんが言いかけた途端に、物凄い悲鳴が聞こえた。
「ぎゃーーーー、止まらないっ!! 坊ちゃまーー誰かっ誰かっ止めてぇーーーー!!」
私達の横を物凄いスピードで自転車が通り過ぎていく。
タバサだ!
タバサの自転車はアイスバーンで滑ったためか、なんとか建物への激突は避けられた。
しかしその横にあったボロボロに崩れかけていた壁に勢いよくぶつかって、はね飛んだ。
壁の方も衝撃で向こう側にドミノ倒しのように崩れていく。
ドサッドスッという石が崩れていく重い音と土煙が、タバサの周りを包んでいた。
「タバサっ!大丈夫かっ?!」
「ゲホッ、ケホンッ…坊ちゃま…痛いです。手がっ、手が動かない。」
「手だけかっ? 他は? …立てるか? ちょっと立ってみろ。」
ロブに寄りかかって、なんとかタバサは立ち上がれた。
よくこれだけで済んだものだ。
タバサよりも壁の方が酷いことになったようだ。
この壁が崩れてくれたおかげで、衝突の衝撃が少しは緩和されたのかもしれない。
「『ほら見ろ! ……やはりな。』」
「何ですかお2人とも?」
タバサは不思議そうだが、目の前にはタバサのことなど気にもならない程のものが露出していた。
「金塊だっ!!!」
ロブはタバサを掴んだまま、打ち震えている。
「なんでこんなところに金の塊があるの?」
(ここは宝物庫のあった場所だ。後ろが崖に、横が山に囲まれてるから、泥棒からお宝を守りやすかったんだ。しかし、ここに壁を建てたことで、かえってそれが判らなくなったんだろうな。これが壁でなく建物であったなら、後の世で既に何者かに盗まれていただろう。)
驚天動地とはこういう状況の事を言うのだろう。
それからの騒ぎが凄かった。
金塊を発見したラッキーな3人として、大々的にマスコミに報道されることになったのだ。
私達は何度テレビカメラの前に立ち、何度新聞社や雑誌のインタビューに答えたことだろう。
手の骨が折れたタバサも、病院までマスコミに押しかけられて、しつこいほど何度も質問されていた。
エミリーは、今度の旅行の顛末が一冊の本になると聞いたときには驚いた。
ロブの被害は甚大だった。
元々公爵家の嫡男でネームバリューもあったことから、王族関係のパパラッチにも暫く追われることになったのだ。
そのために情報を公的に公開した方がいいと、このような本が出ることになったのだろう。
エミリーが一番びっくりしたのは、ワイドショー番組の取材の細かさだ。
あの日昼食を食べたレストランが映っていて、「これがあの3人が食べたというゴールデンランチです。」とレポーターがしゃべりながら、エミリーたちが食べたものと同じメニューを食べていた。
騒動これに極まれりといった映像だった。
勿論、私たちの当初の目的は達した。
私達が当日泊まっていたことに加えて、この旅行のきっかけにもなった宿屋の名前を知らないイギリス人はいなかった。
そこの跡取り息子がいずれエミリーの義兄になる予定だということで、キャンベルB&Bは一躍世界的に有名になったのだ。
その後、「黄金の恋人たちの宿」と銘打って、B&Bに新しい棟を建て増ししたにも関わらず、半年たった今でも新婚旅行などの宿泊客が途切れないと言っていた。
儲かっているのはいいのだが、忙しすぎてブリーの結婚式が延び延びになっているのが、本末転倒ともいえる。
結婚式がなかなかできないと、ブリーにブチブチと文句を言われているが、結婚を決めるのが早すぎたのだから丁度いい婚約期間ではないだろうか。
エミリーの方は事件より3か月経った春頃から周囲が落ち着いて来て、最近、やっとゆっくり本が読めるようになった。
しかしロブのほうは今だに「ゴールデンプリンス」と言われて、知り合いに揶揄われている。
こういう冒険じみたことは金輪際経験したくないと思う。
自分の意思など尊重されず、大きな波にもみくちゃにされて、ほとほと嫌気がさした。
だから…あの洞窟の事は誰にも、何も、言っていない。
まさかあそこにもお宝があるなんてことは、ないだろうけど……。
多分ね?
微々たるものかもしれないが、この研究旅行の成果を出せたようで、エミリーとしては単純に嬉しい。
お腹が空いてきたので、エミリーとロブはこの先の商店街でお昼を食べることにした。
都市部とは違いやっと車がすれ違えるくらいの狭い道幅だが、それがかえって人々の親密感をよんでいるようで、人通りは多かった。
両側に並ぶ店の中にも、大勢のお客さんが入っている。
「観光地としても充分賑わってるね。冬場でこれなら、あんまり手助けをしなくても経済的には大丈夫そうだね、キャンベル家の民宿。」
「そうだな。まぁそれが判っただけでも、来て良かったじゃないか。帰っておじさま達にそう伝えられるだろ?」
「うん。ところで何食べる? 折角アイルランドに来たんだから、こっちの名物がいいかな?」
「ハギスとか?」
ロブが意地悪く笑いながら、エミリーに問いかけてきた。
「もうっ、私が内臓系のお肉は苦手だって知ってるくせに。」
外がひどく寒かったので、早くどこかに入った方がよさそうだ。
山小屋風の雰囲気がよさそうな店があったので、中に入ってから注文するメニューを考えることにした。
「やっぱりなにか暖かい物がいいよね。」
「うん。僕はソーダブレッドとテールスープとグラタン。」
「早っ。こういうことは決めるの早いのね。えーと私は…私もスープがいいかな。この地元野菜のスープと、ミートパイ。後はデザートに、ルバーブパイ。」
「相変わらずパイが好きだな。太るぞ。」
「いいのっ。タバサは何にする?」
「わたしは、ブラウンシチューとパンとサラダのランチセットをいただきます。」
全体的にみて、この店に入ったのは正解だった。
店の奥では泥炭、ピートがゆらゆらとした不思議な炎をあげて旅情を誘ってくれる。
料理も全部おいしかった。
お腹が一杯になったので身体がぽかぽかと温かくなってくる。
欲を言えば私としてはルバーブパイにもう少しお砂糖を入れて欲しかったが、ロベルトさんは懐かしいおふくろの味だ、とおおいに感激してルバーブパイを褒めたたえていた。
◇◇◇
お腹が満足したので、もうひと頑張りと気合を入れて、一気にお城に行くことにした。
お城は、山を背にして少し小高い所から村を見下ろすように建っている。
坂道を登っていく途中でお城の全容が見えてくると、ロベルトさんが言った。
(これはだいぶ違うな。まず私の知っている建物はこの半分ぐらいしかない。東側翼のあの部分が主だった。昔は城と言ってもこの辺りのものは、砦に領主館の機能を付けたようなものだったからな。)
「後から付け足ししながらこの大きさになったんだろうね。領史によるとハンニガム候に嫁いだといわれている、オリガさんが産んだ子どもが建てた翼もあるらしい。」
(それはぜひ見てみたい。私の孫の施策ともいえるな。)
エミリーたちは、お城に向かう坂を登り切ってから自転車を降りた。
ロブの言っていた建物は、ロベルトさんの知っている東翼の建物に続いて、更に東側に向かって付け足されていた。
この土地は後ろの崖の方へ斜めに下り気味になっている。
山際のせいか、先日のクリスマス前から降っていた雪が、アイスバーンのようになって建物の裏に残っていた。
「エム、足元に気をつけろよ。」
ロブがすぐにエミリーの手を繋いで、そろそろと坂を下ってくれる。
こういう紳士的なマナーはいかにも公爵家の息子だよね。
(おいおい、私の孫は何を考えてあそこに壁なんて建てたんだ?)
「どこの壁?」
(ほら、そこだよ…。)
ロベルトさんが言いかけた途端に、物凄い悲鳴が聞こえた。
「ぎゃーーーー、止まらないっ!! 坊ちゃまーー誰かっ誰かっ止めてぇーーーー!!」
私達の横を物凄いスピードで自転車が通り過ぎていく。
タバサだ!
タバサの自転車はアイスバーンで滑ったためか、なんとか建物への激突は避けられた。
しかしその横にあったボロボロに崩れかけていた壁に勢いよくぶつかって、はね飛んだ。
壁の方も衝撃で向こう側にドミノ倒しのように崩れていく。
ドサッドスッという石が崩れていく重い音と土煙が、タバサの周りを包んでいた。
「タバサっ!大丈夫かっ?!」
「ゲホッ、ケホンッ…坊ちゃま…痛いです。手がっ、手が動かない。」
「手だけかっ? 他は? …立てるか? ちょっと立ってみろ。」
ロブに寄りかかって、なんとかタバサは立ち上がれた。
よくこれだけで済んだものだ。
タバサよりも壁の方が酷いことになったようだ。
この壁が崩れてくれたおかげで、衝突の衝撃が少しは緩和されたのかもしれない。
「『ほら見ろ! ……やはりな。』」
「何ですかお2人とも?」
タバサは不思議そうだが、目の前にはタバサのことなど気にもならない程のものが露出していた。
「金塊だっ!!!」
ロブはタバサを掴んだまま、打ち震えている。
「なんでこんなところに金の塊があるの?」
(ここは宝物庫のあった場所だ。後ろが崖に、横が山に囲まれてるから、泥棒からお宝を守りやすかったんだ。しかし、ここに壁を建てたことで、かえってそれが判らなくなったんだろうな。これが壁でなく建物であったなら、後の世で既に何者かに盗まれていただろう。)
驚天動地とはこういう状況の事を言うのだろう。
それからの騒ぎが凄かった。
金塊を発見したラッキーな3人として、大々的にマスコミに報道されることになったのだ。
私達は何度テレビカメラの前に立ち、何度新聞社や雑誌のインタビューに答えたことだろう。
手の骨が折れたタバサも、病院までマスコミに押しかけられて、しつこいほど何度も質問されていた。
エミリーは、今度の旅行の顛末が一冊の本になると聞いたときには驚いた。
ロブの被害は甚大だった。
元々公爵家の嫡男でネームバリューもあったことから、王族関係のパパラッチにも暫く追われることになったのだ。
そのために情報を公的に公開した方がいいと、このような本が出ることになったのだろう。
エミリーが一番びっくりしたのは、ワイドショー番組の取材の細かさだ。
あの日昼食を食べたレストランが映っていて、「これがあの3人が食べたというゴールデンランチです。」とレポーターがしゃべりながら、エミリーたちが食べたものと同じメニューを食べていた。
騒動これに極まれりといった映像だった。
勿論、私たちの当初の目的は達した。
私達が当日泊まっていたことに加えて、この旅行のきっかけにもなった宿屋の名前を知らないイギリス人はいなかった。
そこの跡取り息子がいずれエミリーの義兄になる予定だということで、キャンベルB&Bは一躍世界的に有名になったのだ。
その後、「黄金の恋人たちの宿」と銘打って、B&Bに新しい棟を建て増ししたにも関わらず、半年たった今でも新婚旅行などの宿泊客が途切れないと言っていた。
儲かっているのはいいのだが、忙しすぎてブリーの結婚式が延び延びになっているのが、本末転倒ともいえる。
結婚式がなかなかできないと、ブリーにブチブチと文句を言われているが、結婚を決めるのが早すぎたのだから丁度いい婚約期間ではないだろうか。
エミリーの方は事件より3か月経った春頃から周囲が落ち着いて来て、最近、やっとゆっくり本が読めるようになった。
しかしロブのほうは今だに「ゴールデンプリンス」と言われて、知り合いに揶揄われている。
こういう冒険じみたことは金輪際経験したくないと思う。
自分の意思など尊重されず、大きな波にもみくちゃにされて、ほとほと嫌気がさした。
だから…あの洞窟の事は誰にも、何も、言っていない。
まさかあそこにもお宝があるなんてことは、ないだろうけど……。
多分ね?
1
あなたにおすすめの小説
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王宮地味女官、只者じゃねぇ
宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。
しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!?
王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。
訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ――
さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。
「おら、案内させてもらいますけんの」
その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。
王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」
副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」
ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」
そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」
けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。
王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。
訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る――
これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。
★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる