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「めんどくさがりのプリンセス」の末っ子エミリー
夏休みの友
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明日から夏休みだ。
春試験も終わった今、クラス中に夏へと向かうエネルギーとパワーが戻ってきた。
一人一人の顔が明るく輝いているし、教室中に充満するお喋りの声のボリュームが普段より大きい。
そしてここにも元気な人がいる。
親友のマリカ・モローだ。
「海には行くでしょ。去年は行けなかった山にも行きたいわねっ。」
さっきからずっと遊びの計画に夢を馳せている。
マリカには、いろいろと迷惑をかけた。
クリスマス休暇にあったあのお宝事件は、マリカをも巻き込んでしまったのだ。
ロブは公爵領にあるジュニア・ハイに行っているので、この学校でロブの事を知っている人は多くない。
だからエミリーとロブ、双方と親しいマリカに皆の質問が集中していたらしい。
らしいというのは、春頃まで私自身が精神的にいっぱいいっぱいの状態だったので、マリカのことを思いやる余裕がなかったので、そういうことに気づいていなかったからだ。
本当に悪いことをした。
そんな罪滅ぼしの意味も兼ねて、この夏はマリカと目一杯楽しむつもりだ。
まずは楽しむための下準備。
夏休みの宿題である。
これが重しのように頭の上に乗っかっている限り、楽しみや喜びは半減してしまう。
デビ兄などは人間の器が大きいのか鈍感なのかは知らないが、いつも秋の新学年が始まる頃になって慌てて片付けていた。
「どうせ担任が変わるんだから、少々雑に仕上げてたってそう本気で宿題のチェックなんてしないよ。」
などと言うが、新学年になっての最初の先生への印象は大事でしょう。
そういう考えのデビ兄なので、学年どころか学校が変わる今年などは「やったっ!宿題もないし今年はとことん遊ぶぞ!」と張り切っている。
こういう人は放っておいて、夏休み最初の日、エミリーとマリカは勉強会をすることにした。
勿論わからない問題を教えてもらうためにロブを呼びつけている。
「まずは、国語よね。」
「エム、数学からじゃない?」
「でも得意なものを先に済ませたほうが早くない? マリカも私も文系はできるじゃない。」
「でも折角ロブがいるんだし、質問ができる時に片付けときたいのよ。」
「そっか。言えてる。…よし今日は数学と理科をやっつけよう。」
ロブは私たちのことは気にせずに自分の宿題をやっていたが、エミリーとマリカが話しているのを聞いてエミリーの数学の宿題を覗き込んできた。
「最初の奴は方程式か、これは簡単だからこの後ろにある図形問題からやってみたら?」
確かに。
私、図形って苦手なのよね。
最初のひらめきがないというか、どの方向に解いていったらいいのかわからないことがよくある。
よしっ、そうしよう。
マリカと2人で図形問題から取り組むことにする。
しばらくは2人とも集中して次々に問題を解いていっていたが、中級以上の問題になると途端に手が止まる。
「ロブ~。これわかんない。」
「エムもそうなの? 私もその問題飛ばしちゃった。」
ロブは私たちが差し出した問題文をチラッと見たかと思うと、シャーペンで図形の中にスッと1本の線を引いた。
マリカと2人でその線の引かれた図をじっと見る。
「ああーーそうかっ! そうしたらここの角度が何度か出すために、こことここの角度を計算して出せばいいのねっ。」
「はいはい。私もわかった!」
私たちは自分でもう一度その問題に取り組んだ。
「できたっ!」
「わたしもっ!」
「じゃあ、これもできるよ。やってごらん。」
ロブはそう言いながら、レポート用紙に書いた問題を私たちに渡してくれた。
その問題を見て2人とも驚いた。
春試験に出た問題で、うちのクラスで解けた人は数学の得意な何人かだけだった。
ロブは違う学校なのになんでこの問題を知っているんだろう?
「ロブ、なんでこの問題を知ってるの? ロブの学校もこの問題が試験に出たの?」
「えっ、そんなことはないけど…この問題はここの課が理解できているか確かめるのに、丁度いい問題なんだ。エムたちの学校の数学教師は、たぶん全体の生徒の理解度の到達レベルを探るために、こういう問題を出してみたんじゃないかな。」
「「………………。」」
ロブ、凄すぎる。
私達とは次元が違うよ。
教師を教える教師みたい。
ロブのお陰で、数学の宿題が全部終わっただけでなく、その基本の考え方を利用して解ける発展問題の解き方までいくつかレクチャーしてもらえた。
しかし、次に取り組んだ理科はいただけなかった。
ロブが何を言っているのか、エミリーとマリカには訳がわからないのである。
つまりジュニア・ハイの1年生の頭脳では、大学の研究者レベルの話をされても解らないという事だ。
なにせ理科はロブの専門分野だ。
興が乗ってしゃべり始めると止まらない。
とうとう「ちょっと待って、説明を止めて。」と講義を一旦ストップしてもらった。
「レベルが違いすぎるとこういうことになるんだ。」
「うん。私もわかり過ぎるほどわかった。」
マリカと私はやり方を変えた。
2人で相談して理科の宿題を一通りやってしまって、お互いが解らなかった問題の答えだけをロブに聞くことにした。
「ロブ、答えだけでいいからね。その現象が起こる説明や考察は話さなくていいから。その発見をした科学者の人生も語らなくていいからねっ。」と事前に注意して、解答だけを教えてもらった。
「やったぁ! 終わった。」
「うんっ。これで8割がた終わった気分だよっ。」
「あともう1回集まって、他の教科の解らなかった問題だけをつぶせば完了だね。」
「そうだね。他の教科は自習して、今度確認だけしたら早いね。またエムの家に集まるのでいい?」
「いいよ。2人の家から近いもんね。」
持つべきものは、友である。
お互いの頑張りと協力で、私たちは夏への自由なパスポートを手に入れた。
さぁ、心置きなくサマーバケイションの始まりだっ!
春試験も終わった今、クラス中に夏へと向かうエネルギーとパワーが戻ってきた。
一人一人の顔が明るく輝いているし、教室中に充満するお喋りの声のボリュームが普段より大きい。
そしてここにも元気な人がいる。
親友のマリカ・モローだ。
「海には行くでしょ。去年は行けなかった山にも行きたいわねっ。」
さっきからずっと遊びの計画に夢を馳せている。
マリカには、いろいろと迷惑をかけた。
クリスマス休暇にあったあのお宝事件は、マリカをも巻き込んでしまったのだ。
ロブは公爵領にあるジュニア・ハイに行っているので、この学校でロブの事を知っている人は多くない。
だからエミリーとロブ、双方と親しいマリカに皆の質問が集中していたらしい。
らしいというのは、春頃まで私自身が精神的にいっぱいいっぱいの状態だったので、マリカのことを思いやる余裕がなかったので、そういうことに気づいていなかったからだ。
本当に悪いことをした。
そんな罪滅ぼしの意味も兼ねて、この夏はマリカと目一杯楽しむつもりだ。
まずは楽しむための下準備。
夏休みの宿題である。
これが重しのように頭の上に乗っかっている限り、楽しみや喜びは半減してしまう。
デビ兄などは人間の器が大きいのか鈍感なのかは知らないが、いつも秋の新学年が始まる頃になって慌てて片付けていた。
「どうせ担任が変わるんだから、少々雑に仕上げてたってそう本気で宿題のチェックなんてしないよ。」
などと言うが、新学年になっての最初の先生への印象は大事でしょう。
そういう考えのデビ兄なので、学年どころか学校が変わる今年などは「やったっ!宿題もないし今年はとことん遊ぶぞ!」と張り切っている。
こういう人は放っておいて、夏休み最初の日、エミリーとマリカは勉強会をすることにした。
勿論わからない問題を教えてもらうためにロブを呼びつけている。
「まずは、国語よね。」
「エム、数学からじゃない?」
「でも得意なものを先に済ませたほうが早くない? マリカも私も文系はできるじゃない。」
「でも折角ロブがいるんだし、質問ができる時に片付けときたいのよ。」
「そっか。言えてる。…よし今日は数学と理科をやっつけよう。」
ロブは私たちのことは気にせずに自分の宿題をやっていたが、エミリーとマリカが話しているのを聞いてエミリーの数学の宿題を覗き込んできた。
「最初の奴は方程式か、これは簡単だからこの後ろにある図形問題からやってみたら?」
確かに。
私、図形って苦手なのよね。
最初のひらめきがないというか、どの方向に解いていったらいいのかわからないことがよくある。
よしっ、そうしよう。
マリカと2人で図形問題から取り組むことにする。
しばらくは2人とも集中して次々に問題を解いていっていたが、中級以上の問題になると途端に手が止まる。
「ロブ~。これわかんない。」
「エムもそうなの? 私もその問題飛ばしちゃった。」
ロブは私たちが差し出した問題文をチラッと見たかと思うと、シャーペンで図形の中にスッと1本の線を引いた。
マリカと2人でその線の引かれた図をじっと見る。
「ああーーそうかっ! そうしたらここの角度が何度か出すために、こことここの角度を計算して出せばいいのねっ。」
「はいはい。私もわかった!」
私たちは自分でもう一度その問題に取り組んだ。
「できたっ!」
「わたしもっ!」
「じゃあ、これもできるよ。やってごらん。」
ロブはそう言いながら、レポート用紙に書いた問題を私たちに渡してくれた。
その問題を見て2人とも驚いた。
春試験に出た問題で、うちのクラスで解けた人は数学の得意な何人かだけだった。
ロブは違う学校なのになんでこの問題を知っているんだろう?
「ロブ、なんでこの問題を知ってるの? ロブの学校もこの問題が試験に出たの?」
「えっ、そんなことはないけど…この問題はここの課が理解できているか確かめるのに、丁度いい問題なんだ。エムたちの学校の数学教師は、たぶん全体の生徒の理解度の到達レベルを探るために、こういう問題を出してみたんじゃないかな。」
「「………………。」」
ロブ、凄すぎる。
私達とは次元が違うよ。
教師を教える教師みたい。
ロブのお陰で、数学の宿題が全部終わっただけでなく、その基本の考え方を利用して解ける発展問題の解き方までいくつかレクチャーしてもらえた。
しかし、次に取り組んだ理科はいただけなかった。
ロブが何を言っているのか、エミリーとマリカには訳がわからないのである。
つまりジュニア・ハイの1年生の頭脳では、大学の研究者レベルの話をされても解らないという事だ。
なにせ理科はロブの専門分野だ。
興が乗ってしゃべり始めると止まらない。
とうとう「ちょっと待って、説明を止めて。」と講義を一旦ストップしてもらった。
「レベルが違いすぎるとこういうことになるんだ。」
「うん。私もわかり過ぎるほどわかった。」
マリカと私はやり方を変えた。
2人で相談して理科の宿題を一通りやってしまって、お互いが解らなかった問題の答えだけをロブに聞くことにした。
「ロブ、答えだけでいいからね。その現象が起こる説明や考察は話さなくていいから。その発見をした科学者の人生も語らなくていいからねっ。」と事前に注意して、解答だけを教えてもらった。
「やったぁ! 終わった。」
「うんっ。これで8割がた終わった気分だよっ。」
「あともう1回集まって、他の教科の解らなかった問題だけをつぶせば完了だね。」
「そうだね。他の教科は自習して、今度確認だけしたら早いね。またエムの家に集まるのでいい?」
「いいよ。2人の家から近いもんね。」
持つべきものは、友である。
お互いの頑張りと協力で、私たちは夏への自由なパスポートを手に入れた。
さぁ、心置きなくサマーバケイションの始まりだっ!
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