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第三章 次女キャサリンの「王子の夢は誰も知らない」
他人の結婚式など何が面白いものか
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8月に入ってすぐに、父マックラム国王陛下の呼び出しを受けた。
リチャード王子は15歳で成人してから、両親や弟妹とは滅多と会わなくなった。
自領地で1人で生活するようになると、わざわざロンドンまで出かけて行くのが億劫になる。
大学は我が家からの方が近いので、今では行事がある時にしかバッキンガムには出かけない。
2週間ぶりの宮殿の中を、リチャードは従者のトンプソンとともに謁見室に急いでいた。
私を呼び出すとは、何事か起きたのだろうか?
普段はメールでやり取りすることが多く、大抵の用事はそれで事足りてしまう。
謁見室には国王だけではなくバーミアン国会議長、スタバイン首相までが彼を待っていた。
「リチャード、よく来てくれた。まぁ座れ。トンプソン、すまんが外で待機しておれ。話が済んだら呼ぶ。」
トンプソンを排しての話とは、よほどの国家機密なのだろうか?
部屋の中に4人だけになると、国王はおもむろに話し始めた。
「話と言うのは他でもない。お前のお后(きさき)問題だ。この秋にはもう大学の3回生になる。王室の場合卒業時には婚約が整っており、卒業と同時に結婚することになっているのはお前も知っての通りだ。これからお后候補の選別に入るのだが、お前の希望などがあれば教えておいてもらいたいと思ってな。バーミアンもスタバインもできるだけお前の希望に近い候補を推薦したいと言っておる。」
「…………。」
いつ来るかいつ来るかと思っていた質問をとうとうされてしまった。
「希望ですか…。希望ではなくて要望ならあります。私の中でお后はもう決まっています。」
そう言っても3人とも驚かなかった。私の頭の中にある人物を知っているようだ。
「そうか。その人物の名前を教えてもらえるかな。」
「キャサリン・サマー。この人以外の女性と結婚するつもりはありません。」
「…そこまでの思いだったのか。」
3人でチラリと顔を見合わした後で、国王はリチャードに向かい合って、今までのアプローチを話し始めた。
「リチャードが高校時代からキャサリンに目を付けていたのは知っていた。そこで、ストランド伯爵を介してキャサリンの考えをそれとなく探ってもらっていた。しかし本人は職業婦人を目指しており、貴族階級に嫁ぐ意思なしと聞いている。女性では珍しく今年大学に入学するのではなかったか?」
「はい陛下、そう伝え聞いております。専攻は経済学とか。」
スタバイン首相が国王の言葉を即座に補足する。
「ということだ。これを聞いてもまだ彼女を后に望むのか?」
「はい。」
「そうか。お前のことだからそう言うのではないかと思っていたよ。しかし相手は手強いぞ。どう攻略するつもりだったのだ。」
「彼女が大学に入る今年を待っていました。この1年で何とかしてみせます。」
そのリチャード王子の返事を、まだ若いなという感じで、3人のつわものたちに苦笑とため息をもって受け止められる。
「リチャード、女は誠意をもって押していくだけでは靡かんぞ。ましてや意志の強い女性だ。少々のことでは自分の考えを変えまい。本人の意思を尊重する形で王室に取り込めないか考えてみなさい。こちらではできるだけの手を打って来た。今年1年の猶予をやる。やれるだけやってみなさい。」
その後、バーミアンとスタバインから現在の情勢を聞かされた。
王子は滅多なことでは驚かないと思っていたが、今までの国家ぐるみの調略の経緯を聞いて、少しキャサリンの家族が気の毒になってきた。
まず、ストランド伯爵家の格を上げるためにデボン公爵に圧力をかけて、嫡子のロベルト・オ・オノラブル・デボンの幼馴染でキャサリンの妹でもあるエミリー・サマーとの婚約を早めさせる。
これによって他の公爵・侯爵家の親戚筋に、サマー子爵家に向かって五月蠅い口を利けなくさせる。
そしてその婚約式に王自らが足を運ぶことで、サマー子爵家・デボン公爵家に重きを置いていることを見せつけておく。
日本の皇太子とキャサリンの姉との縁組も目論んではみたものの、これは失敗に終わったらしい。
しかし思わぬ副産物で、その皇太子とサマー家の嫡男が親しくなったので、まずまずの威光が得られたと思われるそうだ。
「その嫡男、アレックス・サマーと日本人の片岡典子がこの8月13日に結婚式を挙げる。私が出席したいところだが、相手が日本人でイギリスの貴族ではないし、子爵家嫡男の式に直接私が出ては物議をかもす。なのでリチャード、お前がこの式に出なさい。アレックスの後輩という形でなんとか席を取らせようと思っている。そして、キャサリンの家族・親族と親交を深めて来なさい。将を射んと欲すればまず馬を射よだよ。」
こうして、リチャードはよく知らない人たちの結婚式に出ることになってしまった。
◇◇◇
結婚式はストランド伯爵領の主都市にある聖オリガ教会で行われた。
リチャードが教会に着くと、ストランド伯爵とサマー子爵が揃って出迎えてくれた。
ストランド伯爵とは王宮で何度か顔を合わせたことがあるが、サマー子爵はリチャードが小さい頃にオリンピック選手の謁見を受けた折に、その他大勢の1人として顔を合わせたことがあるくらいだ。
本人と直接言葉を交わしたことは、まだない。
「リチャード殿下のご臨席を賜り光栄に存じます。」
「このたびはおめでとう。伯爵にとっては初孫の、子爵にとっては嫡男の結婚だね。我が父も喜んでおられた。よろしく伝えるようにと申し使っております。」
「ははっ。過分なお祝いの言葉を頂き、ありがたき幸せです。どうぞ、こちらに。」
そう言って連れて行かれたのは、教会の貴賓席だった。
少し高い所にある席なので全体を見渡せて眺めはいいのだが、列席者とは距離があり過ぎて、父王の言う親交など誰とも深められそうもない。
「殿下。こちらに来ていただけますか?」
トンプソンが教会内部に通じる扉の奥から私を呼ぶので、立ち上がってそこへ行ってみると、今日の主役だろう花婿と花嫁が挨拶に来ていた。
「リチャード殿下、この度は私ごときの結婚式にご臨席を賜り…。」
「よい、アレックス。みなまで言うな。こちらの方が無理を言って出席させてもらったのだ。すまんな先輩、晴れの日に余計な気を遣わせて。こちらが花嫁か。堂々たる美しい方だ。お2人の幸せを祈っておる。ところで…少々内緒の話をしてもよいか? そちの祖父のストランドは勘づいているとは思うが、私はそなたの妹、キャサリンを后に迎えたいと思っている。」
もう率直にぶつかるしか手がないと思って、直球勝負で手の内をさらした。
すると2人とも驚愕の表情で固まってしまった。
ストランドめ、あいつはタヌキだから自分の所で情報を止めてるな。
この分だとサマー子爵までこちらの思惑は伝わっていないと見える。
んー、どうしたらよいだろう。
「アレックス、すまんが式だけでなく披露宴にも私を呼んでもらえないだろうか? 庭での立食パーティだと聞いた。1人ぐらいならなんとか潜り込めないか?」
アレックスは、少し思案すると言った。
「…殿下、キャサリンはキャリアウーマンを目指しています。貴族に嫁ぐとは思えません。」
「それは承知。こちらも本人の意向に沿う提案をしたいと思っている。けして無理矢理こちらの考えだけを押し付けるつもりはない。どうかこの祝いの席に免じて、私にチャンスを与えてくれないだろうか。」
「そうですか…殿下が無理を通すだけでないとお約束してくださるなら、1度だけお助けしましょう。ただ、この1度だけです。私も妹の夢が叶うように応援してやりたいと思ってますから。」
「わかった。そちとの約束に恥じない行いをすると、ここに誓う。」
「それでは殿下ともう1人、従者の方かエージェントを招待すると母に伝えておきます。」
「かたじけない。この恩は忘れない。」
リチャードがそう言うと、アレックスはニヤリと笑って、去り際に一言だけ残していった。
「恩は忘れて下さって構いません。殿下の思いを断ち切るための場を用意したのかもしれませんよ。」
なるほど…この男、さすがにストランドの孫だけあるな。
結婚式は感動的なものだった。
両家の親族がみな温かく2人を祝福しているのがよくわかった。
2人が一瞬見つめ合った後で、退場するために教会の通路を歩いて行くと、その道々で両側に座っていた人たちが皆立ち上がり、新しく夫婦になった2人に笑顔と心のこもった言葉をかけていった。
今までに出席してきた結婚式ではない情景だ。
自分の周りにいる親族が、いかに形式的で冷たい付き合い方をしているのかを、まざまざと見せつけられた。
リチャードは見知らぬ他人の結婚式など何が面白いものかと思っていたが、今日はショックを受けた。
そして我が身を振り返らされた。
キャサリンへの思いを、もう一度自分の心に問うことにもなった。
はたして自分はキャサリンの幸せを、本当に考えていただろうか…?
リチャード王子は15歳で成人してから、両親や弟妹とは滅多と会わなくなった。
自領地で1人で生活するようになると、わざわざロンドンまで出かけて行くのが億劫になる。
大学は我が家からの方が近いので、今では行事がある時にしかバッキンガムには出かけない。
2週間ぶりの宮殿の中を、リチャードは従者のトンプソンとともに謁見室に急いでいた。
私を呼び出すとは、何事か起きたのだろうか?
普段はメールでやり取りすることが多く、大抵の用事はそれで事足りてしまう。
謁見室には国王だけではなくバーミアン国会議長、スタバイン首相までが彼を待っていた。
「リチャード、よく来てくれた。まぁ座れ。トンプソン、すまんが外で待機しておれ。話が済んだら呼ぶ。」
トンプソンを排しての話とは、よほどの国家機密なのだろうか?
部屋の中に4人だけになると、国王はおもむろに話し始めた。
「話と言うのは他でもない。お前のお后(きさき)問題だ。この秋にはもう大学の3回生になる。王室の場合卒業時には婚約が整っており、卒業と同時に結婚することになっているのはお前も知っての通りだ。これからお后候補の選別に入るのだが、お前の希望などがあれば教えておいてもらいたいと思ってな。バーミアンもスタバインもできるだけお前の希望に近い候補を推薦したいと言っておる。」
「…………。」
いつ来るかいつ来るかと思っていた質問をとうとうされてしまった。
「希望ですか…。希望ではなくて要望ならあります。私の中でお后はもう決まっています。」
そう言っても3人とも驚かなかった。私の頭の中にある人物を知っているようだ。
「そうか。その人物の名前を教えてもらえるかな。」
「キャサリン・サマー。この人以外の女性と結婚するつもりはありません。」
「…そこまでの思いだったのか。」
3人でチラリと顔を見合わした後で、国王はリチャードに向かい合って、今までのアプローチを話し始めた。
「リチャードが高校時代からキャサリンに目を付けていたのは知っていた。そこで、ストランド伯爵を介してキャサリンの考えをそれとなく探ってもらっていた。しかし本人は職業婦人を目指しており、貴族階級に嫁ぐ意思なしと聞いている。女性では珍しく今年大学に入学するのではなかったか?」
「はい陛下、そう伝え聞いております。専攻は経済学とか。」
スタバイン首相が国王の言葉を即座に補足する。
「ということだ。これを聞いてもまだ彼女を后に望むのか?」
「はい。」
「そうか。お前のことだからそう言うのではないかと思っていたよ。しかし相手は手強いぞ。どう攻略するつもりだったのだ。」
「彼女が大学に入る今年を待っていました。この1年で何とかしてみせます。」
そのリチャード王子の返事を、まだ若いなという感じで、3人のつわものたちに苦笑とため息をもって受け止められる。
「リチャード、女は誠意をもって押していくだけでは靡かんぞ。ましてや意志の強い女性だ。少々のことでは自分の考えを変えまい。本人の意思を尊重する形で王室に取り込めないか考えてみなさい。こちらではできるだけの手を打って来た。今年1年の猶予をやる。やれるだけやってみなさい。」
その後、バーミアンとスタバインから現在の情勢を聞かされた。
王子は滅多なことでは驚かないと思っていたが、今までの国家ぐるみの調略の経緯を聞いて、少しキャサリンの家族が気の毒になってきた。
まず、ストランド伯爵家の格を上げるためにデボン公爵に圧力をかけて、嫡子のロベルト・オ・オノラブル・デボンの幼馴染でキャサリンの妹でもあるエミリー・サマーとの婚約を早めさせる。
これによって他の公爵・侯爵家の親戚筋に、サマー子爵家に向かって五月蠅い口を利けなくさせる。
そしてその婚約式に王自らが足を運ぶことで、サマー子爵家・デボン公爵家に重きを置いていることを見せつけておく。
日本の皇太子とキャサリンの姉との縁組も目論んではみたものの、これは失敗に終わったらしい。
しかし思わぬ副産物で、その皇太子とサマー家の嫡男が親しくなったので、まずまずの威光が得られたと思われるそうだ。
「その嫡男、アレックス・サマーと日本人の片岡典子がこの8月13日に結婚式を挙げる。私が出席したいところだが、相手が日本人でイギリスの貴族ではないし、子爵家嫡男の式に直接私が出ては物議をかもす。なのでリチャード、お前がこの式に出なさい。アレックスの後輩という形でなんとか席を取らせようと思っている。そして、キャサリンの家族・親族と親交を深めて来なさい。将を射んと欲すればまず馬を射よだよ。」
こうして、リチャードはよく知らない人たちの結婚式に出ることになってしまった。
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結婚式はストランド伯爵領の主都市にある聖オリガ教会で行われた。
リチャードが教会に着くと、ストランド伯爵とサマー子爵が揃って出迎えてくれた。
ストランド伯爵とは王宮で何度か顔を合わせたことがあるが、サマー子爵はリチャードが小さい頃にオリンピック選手の謁見を受けた折に、その他大勢の1人として顔を合わせたことがあるくらいだ。
本人と直接言葉を交わしたことは、まだない。
「リチャード殿下のご臨席を賜り光栄に存じます。」
「このたびはおめでとう。伯爵にとっては初孫の、子爵にとっては嫡男の結婚だね。我が父も喜んでおられた。よろしく伝えるようにと申し使っております。」
「ははっ。過分なお祝いの言葉を頂き、ありがたき幸せです。どうぞ、こちらに。」
そう言って連れて行かれたのは、教会の貴賓席だった。
少し高い所にある席なので全体を見渡せて眺めはいいのだが、列席者とは距離があり過ぎて、父王の言う親交など誰とも深められそうもない。
「殿下。こちらに来ていただけますか?」
トンプソンが教会内部に通じる扉の奥から私を呼ぶので、立ち上がってそこへ行ってみると、今日の主役だろう花婿と花嫁が挨拶に来ていた。
「リチャード殿下、この度は私ごときの結婚式にご臨席を賜り…。」
「よい、アレックス。みなまで言うな。こちらの方が無理を言って出席させてもらったのだ。すまんな先輩、晴れの日に余計な気を遣わせて。こちらが花嫁か。堂々たる美しい方だ。お2人の幸せを祈っておる。ところで…少々内緒の話をしてもよいか? そちの祖父のストランドは勘づいているとは思うが、私はそなたの妹、キャサリンを后に迎えたいと思っている。」
もう率直にぶつかるしか手がないと思って、直球勝負で手の内をさらした。
すると2人とも驚愕の表情で固まってしまった。
ストランドめ、あいつはタヌキだから自分の所で情報を止めてるな。
この分だとサマー子爵までこちらの思惑は伝わっていないと見える。
んー、どうしたらよいだろう。
「アレックス、すまんが式だけでなく披露宴にも私を呼んでもらえないだろうか? 庭での立食パーティだと聞いた。1人ぐらいならなんとか潜り込めないか?」
アレックスは、少し思案すると言った。
「…殿下、キャサリンはキャリアウーマンを目指しています。貴族に嫁ぐとは思えません。」
「それは承知。こちらも本人の意向に沿う提案をしたいと思っている。けして無理矢理こちらの考えだけを押し付けるつもりはない。どうかこの祝いの席に免じて、私にチャンスを与えてくれないだろうか。」
「そうですか…殿下が無理を通すだけでないとお約束してくださるなら、1度だけお助けしましょう。ただ、この1度だけです。私も妹の夢が叶うように応援してやりたいと思ってますから。」
「わかった。そちとの約束に恥じない行いをすると、ここに誓う。」
「それでは殿下ともう1人、従者の方かエージェントを招待すると母に伝えておきます。」
「かたじけない。この恩は忘れない。」
リチャードがそう言うと、アレックスはニヤリと笑って、去り際に一言だけ残していった。
「恩は忘れて下さって構いません。殿下の思いを断ち切るための場を用意したのかもしれませんよ。」
なるほど…この男、さすがにストランドの孫だけあるな。
結婚式は感動的なものだった。
両家の親族がみな温かく2人を祝福しているのがよくわかった。
2人が一瞬見つめ合った後で、退場するために教会の通路を歩いて行くと、その道々で両側に座っていた人たちが皆立ち上がり、新しく夫婦になった2人に笑顔と心のこもった言葉をかけていった。
今までに出席してきた結婚式ではない情景だ。
自分の周りにいる親族が、いかに形式的で冷たい付き合い方をしているのかを、まざまざと見せつけられた。
リチャードは見知らぬ他人の結婚式など何が面白いものかと思っていたが、今日はショックを受けた。
そして我が身を振り返らされた。
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はたして自分はキャサリンの幸せを、本当に考えていただろうか…?
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