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第五章 聖なる夜をいとし子と
衝撃
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午前中に検診があって、母子ともに健康であるということが証明されたので、午後には退院できることになった。
そこで最初の問題にぶつかったのだ。
結婚するっていっても、私たちはどこに住むの?
セーラはここストランド領に住むつもりで、ロンドンの住まいを引き払って来ている。けれどあてにしていた職場には、断られてしまった。
デビッドは今まで長い独身生活をしていたので、子育てが出来るような所には住んでいない。
けれど選択肢は無いに等しかった。
「とにかく一旦、僕のアパートメントに行こう。落ち着いてから今後のことを考えようよ。レンタカーを借りて来るから待っててくれ。」
そうデビッドが言っていた時だった。病室のドアの軽いノックと共に入って来たのは、昨夜はじめてお会いしたデビッドのお母さまとシルバーブロンドの若い女の人、そして2歳ぐらいの男の子を抱っこした眼鏡をかけた若い男性だった。
その人たちを見た途端にデビッドが舌打ちした。
「エム、ロブ、情報が早いね。」
男の子がいたずらを見つかった時のような口ぶりである。
「デビ兄、クリスマスに母様たちを心配させるなんてどういうこと?」
「エムまあ最初からそんなことを言わなくても。今日退院できるって聞いたから迎えに来たんだ。うちが一番環境が整ってるからね。アレックスのとこの双子は3歳だろ。それに今は日本に行ってるし。うちのトラムのおさがりが一番使いやすいと思ってさ。キャスのとこは、この赤ちゃんと同級生だけど…ちょっとあそこは特殊だからねぇ。」
眼鏡の男の人が冷静に話をすると、デビッドも肩の力を抜いて何やら考え出した。
女の人に向かってエムと言ったから、消去法で行くとこの人がロブなのね。エムという人がデビッドの子沢山の兄弟のうちの一人ということなのかしら?
「ロブ、セーラたちを連れて行くのってビギンガム?」
「ああ、うちのほうがロンドンから近いから便利だろ。デビッドは仕事があるって言ってたから仕事の調整を済ませてうちに来ればいいじゃん。」
「うん。それは助かるな恩にきるよ。」
デビッドは眼鏡をかけている賢そうな顔をしたロブに独断でそう言うと、セーラに向き直って説明をした。
「セーラ、こっちはうちの末の妹夫婦のエミリーとロベルトだ。あのちっこいのが甥のトラム。母様には昨日、会ったよな。実は僕も昨日、仕事を片付けるためにロンドンに帰る予定だったんだ。仕事を調整していろんな準備をしてから迎えに行くから、ちょっとエムの所に行っててくれないか?」
それは質問じゃなくて、命令に近いわね。
…セーラも普段なら物申すところだけど、切羽詰まっている今なら、このまま流されたほうがいいのかもしれない。肩身が狭いのはどこに行っても慣れてるし。
セーラは小さくため息をつくとデビッドに向き直った。
「あなたの事情も知らなくて、大変な迷惑をかけたみたいね。私は言われた通りにします。エミリーさんロベルトさん、年末の忙しい時に予定外のお荷物を背負わせることになってごめんなさい。よろしくお願いします。出来るだけのお手伝いをしますので何でも言いつけて下さいね。」
セーラの言葉に、その場にいた人たちは戸惑っているようだった。
「セーラ、子どもを産んだら1か月は養生しなくては駄目よ。産後の肥立ちというのがあるの。ゆっくりと過ごさないと歳を取ってから婦人科の病気になりやすいですからね。」
デビッドのお母さまにそう諭されたが、セーラのまわりで産後1か月もだらだら過ごしている人は誰もいない。そんな事をしてたら、スナックのベラ姉さんがよく言っている「おまんま食い上げ」だ。
「まぁそんなことはまたエミリーが教えてあげればいいよ。とにかく家に帰って落ち着いてから追々にね。メグおばさま、こちらの荷物はどうします?」
「しばらくセーラに貸しとくわ。ノッコの店に行ってミルクやおしめを買い足しといた方がいいわよ。ここには少ししか持ってきてないから。店の鍵は隣の喫茶店に預けといて。後で私が取りに行きますから。」
デビッドが退院手続きをするために病室を出て行った後は、ロブとマーガレットが部屋の片付けや今後の段取りをつけてくれていた。
セーラが昨日着ていた服に着替え終わると、部屋の隅で男の子を遊ばせていたエミリーが側に寄ってきた。
「セーラ、デビッドの妹のエミリーと言います。よろしくね。お手伝いはあなたが元気になってから頼むから、しばらくはうちでゆっくりしてね。…そのう、私たちはデビッドが母様に説明したことしか知らないから、差し支えない範囲であなたのことを教えていただけると嬉しいんだけど。」
「ええ。私はセーラ・クルーといいます。20歳です。…デビッドはどこまでお母さまに説明したのかしら?」
「教会の前で恋に落ちたから、赤ちゃんを産んだばかりの女性と結婚する。セーラという名前だ。急なお産だったので何も持ち合わせがない。赤ちゃんの服やオムツを中央病院まで持って来て欲しい。…以上よ。」
「………………………。」
何という簡潔な説明。
それって説明にもなっていないわね。
よくそれでお母さまは何も言わずにお世話をしてくださったものだわ。親切な家柄なのね。
セーラが知っている人たちは猜疑心が強くて、初めての人間には警戒する。どこで騙されるのかわからないからだ。
この人たちは、セーラが何者かも知らないのに手を差し伸べてくれている。世の中にはこういう人たちもいるのね。
「デビッドとは昨日初めて会ったの。」
「ええ、それは運転手のヘイズに聞いたわ。彼はデビッド坊っちゃんを一人にするべきではなかったとうろたえているみたい。」
「クスッ、そうでしょうね。大事なお坊ちゃんがどこの馬の骨ともわからない女に引っかかったんだから。…エミリー、私はその言葉通りどこの馬の骨か私自身でさえもわからない女なの。」
「えっ?」
「孤児なのよ。雪の降る寒い日に、教会の裏口に捨てられてたの。それを話したらデビッドも諦めるかと思ったんだけど…彼、結婚したいんですって。身分が違うわよね。私も抗ってみたけれど、生まれて初めて素直になることにしたわ。なんだかデビッドといるのが自然で、昔から知ってた人みたいな感じがするの。」
「…衝撃ね、その話。でも、もしかしたら魂のバディだったのかもね。ああっ、ノッコがここにいたらいいのにっ!」
エミリーは何を考えているのか一人で悔しがっている。
「ノッコ? さっきミセスサマーが仰ってたお店の人?」
「ええ、日本人でね。魂の前世を視ることが出来る人なの。うちの、サマー家の長男の奥さんよ。ストランドで日本製品の雑貨屋をやってるの。」
「その人が経営者なんだったら、私を雇ってもらえないかしら? 私、カフェの店員をしてたから接客とレジは出来るわ!」
「今は仕事をしてないってこと?」
「ええ、子どもが生まれそうになったから、邪魔だってリストラされてね。お客さんの伝手を頼ってここまで来てみたら『ただの雑談を本気にしたの?クリスマスに店員を雇うわけないじゃない。』って冷たくあしらわれて、雪の中を絶望を抱えてトボトボ歩いていたわけ。そのうちにお腹が痛くなっちゃって、今に至るということよ。」
「……壮絶ね。」
「ええ、よくある話。」
「よくある…話か。セーラ、私あなたの力になるわ。お父様とおじい様は私に任せてちょうだい。何とかデビ兄と結婚できるように頑張ってみましょう。」
「エミリー、そのデビ兄だけど何で結婚してないの? ゲーム会社の経営者でいいとこのお坊ちゃんでハンサムで、優良物件に見えるけど。何かおかしなクセでもあるとか?」
「フフッ、おかしなクセはたくさんあるわよ~。」
セーラがギョッとしたのがわかったのか、エミリーは笑いを深めた。
「心配しなくてもそういうんじゃないわよ。優良物件過ぎるのがネックってとこかな。ふぅ~、私とキャス姉が悪いのよね。姉妹の結婚によって家の格が上がり過ぎたのがデビ兄の悲劇を呼んだの。権力欲の強いおかしな女たちに追いかけ回されて、デビ兄は女嫌いになっちゃったって訳。」
「…そこまで良い家に嫁がれたの? 貴族とか?」
正直、貴族のことなんて何も知らない。名前を聞いてもたぶん理解できないと思う。
「そうかー、デビ兄ったらセーラに何も説明していないのね。相変わらず、しょうがないなぁ。セーラ、ここストランド領はうちのおじい様の領地なの。つまりおじい様はストランド伯爵。うちの父親はサマー子爵。私は公爵の跡継ぎ息子に嫁に行ったから、あそこでゴミを集めてるのはビギンガム侯爵なの。次女のキャス、キャサリンのことはあなたも知ってるかもしれないわ。第一王子のリチャード殿下と結婚したキャサリン王太子妃がうちの姉なのよ~。」
「……はぁ?!!!」
セーラは大きな口を開けたままよろめいてベッドに座り込んだ。頭が真っ白になって、耳鳴りがしている。
エミリーは今、なんて言った?
キャサリン王太子妃が姉とかなんとか……貴族なんてものじゃないわ。
王族じゃないーーーーーーーーーーーーーーっ!!!
「う、嘘…。」
「ごめんなさいね、本当なの。」
セーラは、ダメだと思った。
そんな途方もない身分差だとは想像もしなかった。
そこらにいるいいとこのお坊ちゃんとは格が違いすぎる。
やっぱりね。やっぱりクリスマスの夢だったのよ。
心の中で何かのフタをしたセーラは、エミリーに力のない笑顔を向けたのだった。
そこで最初の問題にぶつかったのだ。
結婚するっていっても、私たちはどこに住むの?
セーラはここストランド領に住むつもりで、ロンドンの住まいを引き払って来ている。けれどあてにしていた職場には、断られてしまった。
デビッドは今まで長い独身生活をしていたので、子育てが出来るような所には住んでいない。
けれど選択肢は無いに等しかった。
「とにかく一旦、僕のアパートメントに行こう。落ち着いてから今後のことを考えようよ。レンタカーを借りて来るから待っててくれ。」
そうデビッドが言っていた時だった。病室のドアの軽いノックと共に入って来たのは、昨夜はじめてお会いしたデビッドのお母さまとシルバーブロンドの若い女の人、そして2歳ぐらいの男の子を抱っこした眼鏡をかけた若い男性だった。
その人たちを見た途端にデビッドが舌打ちした。
「エム、ロブ、情報が早いね。」
男の子がいたずらを見つかった時のような口ぶりである。
「デビ兄、クリスマスに母様たちを心配させるなんてどういうこと?」
「エムまあ最初からそんなことを言わなくても。今日退院できるって聞いたから迎えに来たんだ。うちが一番環境が整ってるからね。アレックスのとこの双子は3歳だろ。それに今は日本に行ってるし。うちのトラムのおさがりが一番使いやすいと思ってさ。キャスのとこは、この赤ちゃんと同級生だけど…ちょっとあそこは特殊だからねぇ。」
眼鏡の男の人が冷静に話をすると、デビッドも肩の力を抜いて何やら考え出した。
女の人に向かってエムと言ったから、消去法で行くとこの人がロブなのね。エムという人がデビッドの子沢山の兄弟のうちの一人ということなのかしら?
「ロブ、セーラたちを連れて行くのってビギンガム?」
「ああ、うちのほうがロンドンから近いから便利だろ。デビッドは仕事があるって言ってたから仕事の調整を済ませてうちに来ればいいじゃん。」
「うん。それは助かるな恩にきるよ。」
デビッドは眼鏡をかけている賢そうな顔をしたロブに独断でそう言うと、セーラに向き直って説明をした。
「セーラ、こっちはうちの末の妹夫婦のエミリーとロベルトだ。あのちっこいのが甥のトラム。母様には昨日、会ったよな。実は僕も昨日、仕事を片付けるためにロンドンに帰る予定だったんだ。仕事を調整していろんな準備をしてから迎えに行くから、ちょっとエムの所に行っててくれないか?」
それは質問じゃなくて、命令に近いわね。
…セーラも普段なら物申すところだけど、切羽詰まっている今なら、このまま流されたほうがいいのかもしれない。肩身が狭いのはどこに行っても慣れてるし。
セーラは小さくため息をつくとデビッドに向き直った。
「あなたの事情も知らなくて、大変な迷惑をかけたみたいね。私は言われた通りにします。エミリーさんロベルトさん、年末の忙しい時に予定外のお荷物を背負わせることになってごめんなさい。よろしくお願いします。出来るだけのお手伝いをしますので何でも言いつけて下さいね。」
セーラの言葉に、その場にいた人たちは戸惑っているようだった。
「セーラ、子どもを産んだら1か月は養生しなくては駄目よ。産後の肥立ちというのがあるの。ゆっくりと過ごさないと歳を取ってから婦人科の病気になりやすいですからね。」
デビッドのお母さまにそう諭されたが、セーラのまわりで産後1か月もだらだら過ごしている人は誰もいない。そんな事をしてたら、スナックのベラ姉さんがよく言っている「おまんま食い上げ」だ。
「まぁそんなことはまたエミリーが教えてあげればいいよ。とにかく家に帰って落ち着いてから追々にね。メグおばさま、こちらの荷物はどうします?」
「しばらくセーラに貸しとくわ。ノッコの店に行ってミルクやおしめを買い足しといた方がいいわよ。ここには少ししか持ってきてないから。店の鍵は隣の喫茶店に預けといて。後で私が取りに行きますから。」
デビッドが退院手続きをするために病室を出て行った後は、ロブとマーガレットが部屋の片付けや今後の段取りをつけてくれていた。
セーラが昨日着ていた服に着替え終わると、部屋の隅で男の子を遊ばせていたエミリーが側に寄ってきた。
「セーラ、デビッドの妹のエミリーと言います。よろしくね。お手伝いはあなたが元気になってから頼むから、しばらくはうちでゆっくりしてね。…そのう、私たちはデビッドが母様に説明したことしか知らないから、差し支えない範囲であなたのことを教えていただけると嬉しいんだけど。」
「ええ。私はセーラ・クルーといいます。20歳です。…デビッドはどこまでお母さまに説明したのかしら?」
「教会の前で恋に落ちたから、赤ちゃんを産んだばかりの女性と結婚する。セーラという名前だ。急なお産だったので何も持ち合わせがない。赤ちゃんの服やオムツを中央病院まで持って来て欲しい。…以上よ。」
「………………………。」
何という簡潔な説明。
それって説明にもなっていないわね。
よくそれでお母さまは何も言わずにお世話をしてくださったものだわ。親切な家柄なのね。
セーラが知っている人たちは猜疑心が強くて、初めての人間には警戒する。どこで騙されるのかわからないからだ。
この人たちは、セーラが何者かも知らないのに手を差し伸べてくれている。世の中にはこういう人たちもいるのね。
「デビッドとは昨日初めて会ったの。」
「ええ、それは運転手のヘイズに聞いたわ。彼はデビッド坊っちゃんを一人にするべきではなかったとうろたえているみたい。」
「クスッ、そうでしょうね。大事なお坊ちゃんがどこの馬の骨ともわからない女に引っかかったんだから。…エミリー、私はその言葉通りどこの馬の骨か私自身でさえもわからない女なの。」
「えっ?」
「孤児なのよ。雪の降る寒い日に、教会の裏口に捨てられてたの。それを話したらデビッドも諦めるかと思ったんだけど…彼、結婚したいんですって。身分が違うわよね。私も抗ってみたけれど、生まれて初めて素直になることにしたわ。なんだかデビッドといるのが自然で、昔から知ってた人みたいな感じがするの。」
「…衝撃ね、その話。でも、もしかしたら魂のバディだったのかもね。ああっ、ノッコがここにいたらいいのにっ!」
エミリーは何を考えているのか一人で悔しがっている。
「ノッコ? さっきミセスサマーが仰ってたお店の人?」
「ええ、日本人でね。魂の前世を視ることが出来る人なの。うちの、サマー家の長男の奥さんよ。ストランドで日本製品の雑貨屋をやってるの。」
「その人が経営者なんだったら、私を雇ってもらえないかしら? 私、カフェの店員をしてたから接客とレジは出来るわ!」
「今は仕事をしてないってこと?」
「ええ、子どもが生まれそうになったから、邪魔だってリストラされてね。お客さんの伝手を頼ってここまで来てみたら『ただの雑談を本気にしたの?クリスマスに店員を雇うわけないじゃない。』って冷たくあしらわれて、雪の中を絶望を抱えてトボトボ歩いていたわけ。そのうちにお腹が痛くなっちゃって、今に至るということよ。」
「……壮絶ね。」
「ええ、よくある話。」
「よくある…話か。セーラ、私あなたの力になるわ。お父様とおじい様は私に任せてちょうだい。何とかデビ兄と結婚できるように頑張ってみましょう。」
「エミリー、そのデビ兄だけど何で結婚してないの? ゲーム会社の経営者でいいとこのお坊ちゃんでハンサムで、優良物件に見えるけど。何かおかしなクセでもあるとか?」
「フフッ、おかしなクセはたくさんあるわよ~。」
セーラがギョッとしたのがわかったのか、エミリーは笑いを深めた。
「心配しなくてもそういうんじゃないわよ。優良物件過ぎるのがネックってとこかな。ふぅ~、私とキャス姉が悪いのよね。姉妹の結婚によって家の格が上がり過ぎたのがデビ兄の悲劇を呼んだの。権力欲の強いおかしな女たちに追いかけ回されて、デビ兄は女嫌いになっちゃったって訳。」
「…そこまで良い家に嫁がれたの? 貴族とか?」
正直、貴族のことなんて何も知らない。名前を聞いてもたぶん理解できないと思う。
「そうかー、デビ兄ったらセーラに何も説明していないのね。相変わらず、しょうがないなぁ。セーラ、ここストランド領はうちのおじい様の領地なの。つまりおじい様はストランド伯爵。うちの父親はサマー子爵。私は公爵の跡継ぎ息子に嫁に行ったから、あそこでゴミを集めてるのはビギンガム侯爵なの。次女のキャス、キャサリンのことはあなたも知ってるかもしれないわ。第一王子のリチャード殿下と結婚したキャサリン王太子妃がうちの姉なのよ~。」
「……はぁ?!!!」
セーラは大きな口を開けたままよろめいてベッドに座り込んだ。頭が真っ白になって、耳鳴りがしている。
エミリーは今、なんて言った?
キャサリン王太子妃が姉とかなんとか……貴族なんてものじゃないわ。
王族じゃないーーーーーーーーーーーーーーっ!!!
「う、嘘…。」
「ごめんなさいね、本当なの。」
セーラは、ダメだと思った。
そんな途方もない身分差だとは想像もしなかった。
そこらにいるいいとこのお坊ちゃんとは格が違いすぎる。
やっぱりね。やっぱりクリスマスの夢だったのよ。
心の中で何かのフタをしたセーラは、エミリーに力のない笑顔を向けたのだった。
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