魔法力0の騎士

犬威

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第一章 ガルディア都市

森の異変2

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「ちょっと張り切りすぎちゃいましたね」


 初夏に入り天気もよく、森で森林浴なども楽しめるであろうこの時期に似つかわしくない轟音の雷鳴がとどろく。

 セレスは穏やかな笑顔を私に向けながらそう答えた。
 いまだに状況を理解できていない頭をフルに働かせ、なんとか周囲の確認をする。

 ウルフの群れはもういない、なぜなら先ほどのセレスの魔法でまとめて灰になったからである。

 いまだに土煙が舞い、視界はよくはない、先ほど落ちた落雷のせいで生い茂っていた木々はそこだけなにもなかったかのように綺麗に取り除かれているみたいだった。


「すごい! すごいよセレス! あんなにいたウルフの群れが一瞬で灰になっちゃったよ! ほんとすごいね!」


 いまだ興奮冷めやらぬパトラはセレスにかけよって抱き着いた。
 それよりもまず一番最初にしなければならないことがあるよパトラ……


「ジャスティン!! 無事か!?」


 私がジャステインのもとに慌てて駆け寄ると、さきほどの音と衝撃で気絶をしているようだった。その顔はなぜか穏やかな顔をしていた。

 大丈夫だぞジャスティン、お前はまだ死んでいないからな……
 ところどころウルフの攻撃を受けていたであろう傷はあるが、これならばセレスの回復魔法やポーションでも十分回復できるだろう。


 後ろを振り返るとセレスが不安そうな顔でこちらをうかがっている。


「ジャスティンさんには当たらないようにコントロールはしたつもりなんですけど、音と衝撃は少し予想外でした。 反省します……」


 シュンと落ち込むセレスにパトラが明るい口調で弾むように答えた。


「私あんなライトニング初めてみたよ! 魔物も一撃で倒しちゃうしその表情からみるとまだ魔力切れってわけではないんでしょ?」

「ええ、まだ魔力はだいぶ残っていますよ」

「まさかこんなに魔法の威力が違うなんて」


 カナンのほうはさっきのスタックの魔法を使い魔力切れを起こしたらしく、座り込んで青い顔で話にまざっている。


 カナンとジャスティンがこれでは、しばらくここから動かないほうがいいだろう。

 避難をするにしても木々の生い茂るこの森の中で、いくら軽減魔法をかけ背負いながら移動ができるとしても、さっき以上の事態や咄嗟の判断が非常に困難になり、守れるものも守れなくなる事態におちいってしまうだろう。


「とりあえずジャスティンが目を覚ますまではしばらくここに待機し、安全を確保しようか」

「「「はい!」」」

「カナンはしばらく横になっているといい、携帯食料が少しMPを回復させることができるから、無理せず食べれる範囲で食べるといいよ」

「隊長すみませんお手数をかけます……」

「さっきのスタックの精度も良かったし、このくらいのことは気にしなくても問題ないぞ。」

「ありがとうございます。 隊長」


 セレスのあの魔法を見てからだろう、カナンが少し落ち込んでいるが、カナンの足止めのスタックがなかったらできなかった功績だからな、むしろカナンは最大限頑張ったといえよう。

 さっきの戦いでの連携の取り方は即席だったのにもかかわらず大きい成果をあげられた。 ジャスティンは敵の攻撃を引き付け、カナンが足止めをしてセレスの範囲攻撃で倒すという流れ、これにパトラが支援魔法や援護射撃などを入れたらなかなかいいパーティになるんじゃないかな。 

 対人戦とは違って魔物相手は思考を読み取るのが難しいとされる。 対人戦でできていたことも魔物相手ではうまくいかなかったり、逆もまた然りだが。

 この任務の報告書には今回の戦いも記しておこう。  これからの成長が楽しみである。


 騎士団の部隊編成は基本七隊あり、それぞれが一つのパーティとして動くのが基本である。
 それぞれ部隊長、隊員、非戦闘員がおり、基本非戦闘員は本格的な戦争の際にしか集まらないこととなっている。
 その中でもお互いの得意な攻撃担当がかぶることはよくある話だ。

 ある隊は前衛の攻撃が得意な人達で構成されていたり、援護や回復担当中心の隊であったりと様々だ。
 比較的我が第一部隊はバランスのいい構成になっているといえよう。

 しばらくするとジャスティンが目を覚ました。
 ジャスティンは緩慢な動きでゆっくりと上体を起こすと状況を把握する。


「ほんとに死んだかと思ったっスよ」


 どんよりとした顔を私にむけられてもドンマイとしかいえない……


「でもジャスティンが敵を引き付けてくれなかったら、できない作戦だったからごめんね!」


 ぺこっと謝るセレスにしどろもどろになるジャスティン。 いやー若いなー…… なんだろうなこの置いていかれている感じは…… 少し寂しくも思う。

 私もそんなに年ははなれていないはずなんだがな……

目標も確認できたし、今日はこのあたりでいいだろう。


「今日の郊外訓練はここまでにして戻るとするよ」


そう声を掛けると第一部隊全員がにこやかな笑みを浮かべて答える。


「「「「はい!」」」」

「道中は私が敵の迎撃にあたるから見て参考にするように」

「えっ!? 隊長、今日は見てるだけにするんじゃないっすか?」

「ほんとはそのつもりでいたんだが、セレスの魔法をみて危機感が沸いてしまってね、ちょっと私も訓練しようかとね。 まぁ戻りながら話そうじゃないか」


セレスのライトニングは初めて見たが、下手すればカナリアよりも上なんじゃないかと思うくらいの威力だった。


「たしかにあの魔法をみたら上には上がいるんだなーと思っちゃいますよね、たいちょーもそうでしたか」

「いつのまにあんな初級魔法を上級魔法のようにうてるようになったのか聞きたいものだな」


パトラもカナンも先ほどの光景が忘れられないのだろう。 ジャスティンは…… まぁいいか平気そうだしな。


「私は魔法がいっさい使えないから羨ましいよ、っと」


 話をしながら弓を構え左右四発ずつうち、二百メートル離れた位置にいるゴブリンを四体打ち抜いた。


「えっ!? びっくりしました! 魔法使えないのとか嘘なんじゃないですか? 今の攻撃相当離れた位置にいるのにホークアイも使わず撃ちぬくなんて……」

「早すぎて手の動きが読めなかったっすよ、隊長」


 うーん、テオとの訓練からなのか私の視界は広く感覚も鋭い。二百メートルくらいなら弓であれば撃ち抜く自信はあるのだが。 手を見ればあの時の傷が消えずに残っている。 触れば岩の様に硬い。 これも諦めずに努力したおかげだな……


「おかしすぎて参考にできないんですけどたいちょー」


 パトラがあきれた声で言うがこれぐらいだったら訓練次第でどうにかなると励ましてあげた。


 私は魔法が使えない代わりに様々な武器をテオに教えてもらった。
 テオは魔法と多武器を駆使するのだが、私は複数の武器だけで毎回模擬戦をしている。

 使いやすい武器は弓と剣と鎖鎌と槍だ。まだテオほどマスターしたわけではないのだが、なんとか最近は一方的にやられることはなくなってきている。まあまだ勝てたためしはないのだが……

 ちょうど何体か魔物を遠距離から弓で倒していると、珍しい魔物に出会った。


「グゥオオオオオオオオオオオ!!!」


 二メートルの巨躯、鉄のひづめを持つウルフベアーに


「ちょっとでかいっすねあんなのに勝てるんすか?」

「問題はないよテオの方がずっと大きかったからね、少し離れた位置で見ててよ」

「「「「はい」」」」」

「兄様、私も手伝いましょうか?」


 セレスが思ったよりも大きい魔物だったからだろう心配そうに言う。


「大丈夫だよすぐに片づけるから少し待っててくれないか」


 セレスの頭をポンと撫でる。セレスは顔を真っ赤にして「気をつけてくださいね」と言い、みんなのもとへ戻っていった。


「グォオオオオオオオオオオ!!」

「今日はノイトラにシチューにしてもらおう。」


 おっと心で思ったんだが声にでてしまっていた。 


「ガァアアア!!」


 ウルフベアーが地を蹴り直線的に向かってくる。
 私も手に槍を抱えウルフベアーに向けて走り出す。
 細い木々をなぎ倒しながらウルフベアーは私を視界にとらえ、その大きな腕で殴り殺そうとしてくる。


「ガァアアアアアア!!」


 思いっきりウルフベアーが腕を振るうがもうそこには私はいない。
 槍を地面に突き刺し、槍をバネにしてウルフベアーの頭上へと飛ぶ。
 武器を空中で持ち替え、腰に括り付けていた鎖鎌を取り出す。


「まずはその危ない腕からだな」


 鎖鎌を空振りしたウルフベアーの腕にグルグルと巻き付け交差。


「グゥウウ!!」


 腕が引っ張られ仰向けにドシンと倒れさせられるウルフベアー。
 体制を大きく崩したところに私は剣を素早く二回振るう。

 激しい血しぶきをあげウルフベアーの二本の腕が綺麗に切断される。


「グギャオオオオオ!!!」


 ウルフベアーはこの一瞬の出来事にあっけにとられた後、痛みを取り戻したかのように叫び声をあげる。


「これで終わりだな」


 さっきバネに使った槍を上に飛ばしていて、落ちてきた槍をつかみ、立ち上がらせる暇も与えずウルフベアーの頭に突き刺した。


 ほんの数秒の出来事であった。



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