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第一章 ガルディア都市
side サーシャ=ウル=ガルディア
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白い。
真っ白な部屋。
その部屋には本棚とベッド、家族で撮った写真が飾られた写真立て。 それとこの前の誕生日でパパからもらった大きなウサギのぬいぐるみだけが置いてある物寂しい部屋。
それ以外の他の物はもう捨ててしまった。
ちらりと窓を見れば絵の具の黒を零したのかと思うくらい真っ黒。
きっと真夜中という事だろう。
私はこんな時間になっていてもまだ眠れず、小さい頃の写真立てを見ながら昔を思い出していた。
私、サーシャ=ウル=ガルディア は王女であり、勇者召喚の巫女に選ばれた。
ガチャリと部屋が開けられる音がする。そちらを見つめると家政婦であるアンナが困った顔で覗いていた。
「お嬢様…… まだ起きていられたのですね……」
「アンナ…… まだちょっと眠れなくて……」
この王宮に住まうのは、私と私のパパ(国王ナグル=ウル=ガルディア)と家政婦であるアンナ達以外には住んではいない。
あっちの離れの王宮は教皇様とお付きの兵士さんが住んでいるけど、めったにこっちの王宮には来ない。
ちなみにママは私が小さい時に病気で亡くなっちゃったみたいで、顔はあまり思い出せないけど写真立てに私が小さい時に三人で撮った写真から見ると、とても美人な金髪でショートカットの良く似合う女性だったのがわかる。
私もママの髪が遺伝していて金色の髪をしている。
いまは伸ばして肩くらいにまでなっていた。
きっと私が大きくなったらママに似てくるのだろうか?
「お体に触りますから……」
「…… パパはまだ起きてる?」
ちょっと以前よりやせたであろうアンナが心配してくれている。アンナだって最近あまり寝れてないのに……
目の下に隈ができていることは私にだってわかるよ。
「まだ起きていますよ…… 廊下は冷えますからケープを着てくださいね」
「ありがとアンナ」
ピンクのモコモコとしたお気に入りのケープを手渡され、それに身を包み廊下に出る。
廊下はいまは初夏だというのに、夜のせいなのかどこかから入ってくる風が冷たく思わず服の裾を強くつかむ。
少し長めの廊下は今は明かりがついておらずアンナが持ってきていたランプの明かりだけが優しく照らしていた。
ちいさい足取りながらも昔に比べれば大きくなった身長も、いまはこの暗闇にいるおかげであの頃と変わらない感じがして少し懐かしく思った。
私とパパの寝室まではそんなに離れていない、しばらく歩くとパパの寝室にたどり着いた。
「ありがとアンナ、一緒についてきてくれて」
「いえ、お嬢様はお気になさらず」
そのアンナの悲痛な顔を見るのは何度目だろうか。心が締め付けられる。
「おやすみ、アンナ、また明日ね」
にこっと笑顔を作りアンナに手をふり、ドアをトントンと二回叩く。
「入りなさい」
良かった。 いつものパパの声。
大きなパパの寝室のドアを開けると、もうパパは寝るところだったのだろうベッドの横のランプに明かりをともし、私の名前を呼ぶ。
「サーシャ、眠れないのかい……」
優しいいつものパパ、私が眠れないときはいつもパパの部屋に行って一緒に眠るのが昔からの決まりだった。 怖い夢を見た時も、風の音に怯えて眠れない夜もパパといれば安心できた。
「うん…… 一緒に寝てもいい?」
「ああ、もちろんだとも」
穏やかに微笑むパパ。 パパも少し痩せたね……
パパは国王という立場にいる。ある程度は勉強しているのでパパが日中は忙しく一緒にいられない時間が多いのは私でもわかる。ただ夜の寝る時だけは私と一緒にいてくれる時間を作ってくれる。
優しいパパ、そのパパの目元は真っ赤に腫れていた。
髪もいつもなら綺麗な金色の髪を整えているはずなのに、ぼさぼさのままだ。
パパの近くに行き、ベッドに入るとパパは私を思いっきり抱きしめた。
「ごめんな! ごめんな! サーシャ! お前まで私は手放さなければならないのか……」
パパの顔はくしゃくしゃに涙で濡れており、嗚咽まじりの声で叫ぶ。
「うん、パパは何も悪くないよ……」
勇者召喚は巫女の命を代価に行われる。その話は昨日の昼間に知らされた。
パパはすごく反対した。だけどその決定はいくら国王であっても変えることはできなかったみたい。
パパは頑張ったんだよ…… だからそんな顔をしないで……
「運命はなんで 私 から大事な物を奪っていくんだ……」
泣いても泣いても枯れることのない涙は、パパの目から溢れてくる。
私は運命を呪った。 こんな悲しい未来しかない世界。パパだけが取り残されていく。
「勇者様がこの世界を…… うっ、救…… って…… くれるよ……」
あ、あれ…… なんで溢れてくる…… の……
泣かないと決めていたのにいつの間にか目からは大量の涙が溢れていた。
「そんな世界になんの意味がある! お前のいない世界なんて…… 私は…… 私は」
強く抱きしめながらも優しいパパの言葉。私は一生忘れることはないだろう。
パパの匂い。 あったかい体温。 おおきな手。 ずっと…… ずっと覚えていよう。
「ダメだよ…… パパ…… パパはこの国の…… 国王なんでしょ? 戦争で困ってる人たちを守るんでしょ……」
「くっ…… ううぅ…… サーシャすまない……」
「わかってるよ…… ちょっと先にママのところに行ってくるだけだから…… あんまり早くこっちに来ちゃ…… ダメだからね…… ちゃんとみんなを守ってね……」
目元を拭いにこりと微笑む。
パパにはこの先も笑ってもらいたいから。
「うぅううう」
部屋には国王ではなく一人の父親がむせび泣く音だけが響いていた。
世界は残酷だ。いつだって私に優しくない。
私は精一杯生きただろうか? あったら教えてくれるよね…… ママ……
真っ白な部屋。
その部屋には本棚とベッド、家族で撮った写真が飾られた写真立て。 それとこの前の誕生日でパパからもらった大きなウサギのぬいぐるみだけが置いてある物寂しい部屋。
それ以外の他の物はもう捨ててしまった。
ちらりと窓を見れば絵の具の黒を零したのかと思うくらい真っ黒。
きっと真夜中という事だろう。
私はこんな時間になっていてもまだ眠れず、小さい頃の写真立てを見ながら昔を思い出していた。
私、サーシャ=ウル=ガルディア は王女であり、勇者召喚の巫女に選ばれた。
ガチャリと部屋が開けられる音がする。そちらを見つめると家政婦であるアンナが困った顔で覗いていた。
「お嬢様…… まだ起きていられたのですね……」
「アンナ…… まだちょっと眠れなくて……」
この王宮に住まうのは、私と私のパパ(国王ナグル=ウル=ガルディア)と家政婦であるアンナ達以外には住んではいない。
あっちの離れの王宮は教皇様とお付きの兵士さんが住んでいるけど、めったにこっちの王宮には来ない。
ちなみにママは私が小さい時に病気で亡くなっちゃったみたいで、顔はあまり思い出せないけど写真立てに私が小さい時に三人で撮った写真から見ると、とても美人な金髪でショートカットの良く似合う女性だったのがわかる。
私もママの髪が遺伝していて金色の髪をしている。
いまは伸ばして肩くらいにまでなっていた。
きっと私が大きくなったらママに似てくるのだろうか?
「お体に触りますから……」
「…… パパはまだ起きてる?」
ちょっと以前よりやせたであろうアンナが心配してくれている。アンナだって最近あまり寝れてないのに……
目の下に隈ができていることは私にだってわかるよ。
「まだ起きていますよ…… 廊下は冷えますからケープを着てくださいね」
「ありがとアンナ」
ピンクのモコモコとしたお気に入りのケープを手渡され、それに身を包み廊下に出る。
廊下はいまは初夏だというのに、夜のせいなのかどこかから入ってくる風が冷たく思わず服の裾を強くつかむ。
少し長めの廊下は今は明かりがついておらずアンナが持ってきていたランプの明かりだけが優しく照らしていた。
ちいさい足取りながらも昔に比べれば大きくなった身長も、いまはこの暗闇にいるおかげであの頃と変わらない感じがして少し懐かしく思った。
私とパパの寝室まではそんなに離れていない、しばらく歩くとパパの寝室にたどり着いた。
「ありがとアンナ、一緒についてきてくれて」
「いえ、お嬢様はお気になさらず」
そのアンナの悲痛な顔を見るのは何度目だろうか。心が締め付けられる。
「おやすみ、アンナ、また明日ね」
にこっと笑顔を作りアンナに手をふり、ドアをトントンと二回叩く。
「入りなさい」
良かった。 いつものパパの声。
大きなパパの寝室のドアを開けると、もうパパは寝るところだったのだろうベッドの横のランプに明かりをともし、私の名前を呼ぶ。
「サーシャ、眠れないのかい……」
優しいいつものパパ、私が眠れないときはいつもパパの部屋に行って一緒に眠るのが昔からの決まりだった。 怖い夢を見た時も、風の音に怯えて眠れない夜もパパといれば安心できた。
「うん…… 一緒に寝てもいい?」
「ああ、もちろんだとも」
穏やかに微笑むパパ。 パパも少し痩せたね……
パパは国王という立場にいる。ある程度は勉強しているのでパパが日中は忙しく一緒にいられない時間が多いのは私でもわかる。ただ夜の寝る時だけは私と一緒にいてくれる時間を作ってくれる。
優しいパパ、そのパパの目元は真っ赤に腫れていた。
髪もいつもなら綺麗な金色の髪を整えているはずなのに、ぼさぼさのままだ。
パパの近くに行き、ベッドに入るとパパは私を思いっきり抱きしめた。
「ごめんな! ごめんな! サーシャ! お前まで私は手放さなければならないのか……」
パパの顔はくしゃくしゃに涙で濡れており、嗚咽まじりの声で叫ぶ。
「うん、パパは何も悪くないよ……」
勇者召喚は巫女の命を代価に行われる。その話は昨日の昼間に知らされた。
パパはすごく反対した。だけどその決定はいくら国王であっても変えることはできなかったみたい。
パパは頑張ったんだよ…… だからそんな顔をしないで……
「運命はなんで 私 から大事な物を奪っていくんだ……」
泣いても泣いても枯れることのない涙は、パパの目から溢れてくる。
私は運命を呪った。 こんな悲しい未来しかない世界。パパだけが取り残されていく。
「勇者様がこの世界を…… うっ、救…… って…… くれるよ……」
あ、あれ…… なんで溢れてくる…… の……
泣かないと決めていたのにいつの間にか目からは大量の涙が溢れていた。
「そんな世界になんの意味がある! お前のいない世界なんて…… 私は…… 私は」
強く抱きしめながらも優しいパパの言葉。私は一生忘れることはないだろう。
パパの匂い。 あったかい体温。 おおきな手。 ずっと…… ずっと覚えていよう。
「ダメだよ…… パパ…… パパはこの国の…… 国王なんでしょ? 戦争で困ってる人たちを守るんでしょ……」
「くっ…… ううぅ…… サーシャすまない……」
「わかってるよ…… ちょっと先にママのところに行ってくるだけだから…… あんまり早くこっちに来ちゃ…… ダメだからね…… ちゃんとみんなを守ってね……」
目元を拭いにこりと微笑む。
パパにはこの先も笑ってもらいたいから。
「うぅううう」
部屋には国王ではなく一人の父親がむせび泣く音だけが響いていた。
世界は残酷だ。いつだって私に優しくない。
私は精一杯生きただろうか? あったら教えてくれるよね…… ママ……
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