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第一章 ガルディア都市
トムニ商会
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訓練場から戻り、第一部隊を引き連れて昨日のトムニ商店の前に来ていた。
相変わらずこの周辺の閑散とした路地の雰囲気は未だに慣れない。
あまりにも静かすぎる周囲に警戒の色を強める。
「カナンとジャスティンは入り口で周囲の警戒を頼むよ」
「「はい」っす」
今回は昨日の襲撃のことを考え、武装した状態で来ている。 昨日起こった襲撃は完全に私を狙ったものまた狙われる可能性は極めて高いだろう。 トムニ商会も昨日もらった資料によると商品の購入、販売としか明記されておらず、詳しいことはなにも書いてなかったのだ。 商会の資料としてはあまりにも情報が不足、何かを隠しているのは明白であった。
少し汚れた入り口に掛かった布を手で押し上げ、商店の中に入る。
「失礼する」
中に入ると昨日と同じ中年のエルフの男性が驚くように声をかけてきた。
「昨日の騎士の兄ちゃんじゃねぇか、他にも騎士の方を引き連れて今日はなんの御用で?」
店主は私達の顔を見るなり、少し焦ったような声音で話す。
どうやら再び来るとは思わなかったみたいだ。
「最近この辺りでの犯罪行為が多発していてね、店内視察に協力してもらいたいのだが」
「物騒な世の中だねぇ…… いいよ見て回んな」
アリアは視察申請の書類を掲げ、話すと店主は訝しげな態度を少しとった。 拒否することもできるにはできるが身の潔白を証明したいのであればこの視察申請は断らない方がいい。 それをわかっているようで了承を受け、店内を調べることとなった。
「うひゃー…… これ埃すごいよ…… ゴホッ」
「あまり迂闊に触るんじゃない、パトラ」
「しかし仮にも商品を並べる店なのだから衛生環境はしっかりしてほしいものです」
商品のいくつかには埃が積もっており、劣悪な環境が伺える。 そう店主に伝えると気分を害したのかあからさまに不機嫌になり、睨む様にこちらを眺める。
「こっちもあまり売れ行きがよくなくてね! もう十分だろう?」
しばらく店内を見て回ると中年のエルフは苛ついたように私達に話しかける。
「ええ、ご協力感謝します」
「なら仕事の邪魔だから早くか……」
「そういえば昨日はその棚はありませんでしたよね?」
昨日ここを訪れた時に壁際に無かった棚が増えている。 この物が溢れている状況で入荷したとは到底思えない。 そして決定的なのは……
「今朝入荷したんだよ! だから昨日は見なかったんだ!」
「今朝入荷したばかりの商品がこんなに埃をかぶりますか?」
そうこの棚は埃まみれなのだ、他の棚と同じように。
「し、しょうがないだろ、掃除しなかったら半日で溜まったんだよ」
「この状態を見ればそれもそうですね…… しかしここは衛生環境的にもよろしくないのでお詫びに綺麗にさせてください」
「え!? い、いや騎士の方々にそんなことしてもらわなくても……」
「セレス頼むよ!」
「はい、兄様! クリーン!」
辺りが一面クリーンの魔法で綺麗になっていく。 魔法力の高いセレスの放つクリーンは普通の物とはわけが違う。 杖の中心にまるで集まるかのように辺りの汚れは吸い寄せられていく。
埃が渦を巻きセレスの杖次々とに吸い込まれていく。
「おおーさっすがセレスだねぇ、ピカピカだよ! ん? あれ? あの棚だけまだ埃まみれだよ」
パトラが不思議そうにその棚を眺める。
「くそっ! このまま帰すと…… くぎゅ……」
どさりとエルフの男が倒れた。 中年のエルフが叫ぶよりも先に動き、手刀で気絶させたのだ。
「やはり何かあったなここは、パトラその男はロープで動かないように柱に括り付けておいてくれ」
「はい、たいちょー」
「じゃあこの棚を調べるとするか…… セレス何かわかるか?」
「幻術魔法がかけてありますわね、だからさっきの魔法で綺麗にできなかったのでしょう」
「なるほどちょっと動かしてみるか」
ガガガっと大きな音を立てて棚は動かされる。そこには人が一人通れるくらいの穴が開いており、どこかに続いているようだった。
「中を探ってみよう。 カナン! ジャスティン! そのまま警戒して待っていてくれ、何かあったらシーレスを鳴らして教えてくれ!」
「「了解」っす」
薄暗い穴の中を慎重に進む。距離は結構あるらしく奥には光がさしているようで、それを目指して真っ直ぐ進む。 狭い穴の中をしばらく進むと拓けた場所に出た。
「ここは……」
「これは……」
「奴隷達ですわね……」
大きな檻がいくつもあるこの大きな建物は地下らしく、檻の中には痩せた子供や、体がボロボロになった他種族の奴隷が収監されていた。 腐敗も進んでいるらしく周囲には悪臭が漂う。
「なんてひどい光景だ」
「こんなのあんまりですわ……」
「うっ…… すみません…… ちょっと……」
パトラが青い顔をして壁のほうに走っていく。 無理もないそれだけひどい状態だ。
檻に収監されているのは生きている人間だけではなく、ほとんど腐っているのではないかと思われる遺体や、過剰な拷問を与えられた者、実験されていたのだろう人間と魔物の融合したキメラなんかもいたりしたのだ。
ここは地獄だった。
「タ…… ス…… ケ…… テ」
「ゥオガァアアアアアア!!」
檻の中から泣き叫ぶ声や獣の叫び声が飛び交う。
「うっ!? あ…… 頭が……」
「大丈夫か!? セレス!」
急に頭をかかえうずくまるセレス。 パトラが青い顔をして戻ってきた。
「セレスも大丈夫? たいちょー…… 私もあまり大丈夫じゃないからカナンとジャスティンと見張り交代してくるよ……」
「ああ、気をつけてな」
「すみません兄様……」
しばらく待機するとカナンとジャスティンが入れ替わりで合流してきた。
「うっ!? 隊長…… これは……」
「最悪っすね…… これ……」
カナンもジャスティンもこの光景に悲壮感を漂わせ、さらに警戒した。
「おそらく奴隷商の倉庫なのだろう…… だが…… ここはその中でもより悪化した者を収監する場所のようだ……」
「これはパトラたちが青い顔して戻ってきたのにも納得っす」
「隊長これは倉庫にしてもおかしすぎませんか? こんな重要な情報をたった一人で隠してたなんてことあるわけがないです。 ここにも見張りが一人もいないのはさすがに何かありますよ」
「ああ、見張りがいないのには驚いた。 それに明らかに檻に入ってる奴隷達が興奮状態でいるのがこれが罠じゃないかと思うんだ」
「隊長…… それ、多分あってますよ……」
「や…… やだなーカナン! 怖いこと言うなっすよ!」
「見ろよ…… 檻今全部壊れたからさ」
錆びついた何かが崩れる音とともに奴隷たちが入れられている檻の鍵が一斉に壊れ始める。
「構えろ! 来るぞ!」
「ほんと勘弁してほしいっすよ! ディフェンド!! スピーダー!」
ドスドスと檻の中から興奮して我を失っている奴隷たちが一斉に飛び出してきた。
「ゥゴァアアアアアア!!!」
「クキャキャキャキャ!!」
一番早くアリアのところに到達したのは人と魔物を組み合わせたキメラであった。 子供の顔に様々な魔物がくっついている姿は見るに堪えないものだった。
「なんて悪趣味な…… クソっ! 今楽にしてやるからな……」
ジャスティンは迫りくる腐敗した者どもを盾で吹き飛ばし、剣で薙ぎ払い、後ろにはいかせないように立ち回っている。
カナンは水魔法を駆使しキメラの動きを抑えながら戦っていた。
援護に回りたいが……
「キィシャアアアアア!!」
蛇型のキメラが口から溶解液を飛ばす、横にステップしてそれをかわすと地面が溶け出し、金属を溶かす音があがる。 その避けた場所に狙っていたかのように熊型のキメラが大きな左腕で地面を抉るように迫る。 それを持っていた盾で弾くと金属同士がぶつかる様な甲高い音を置き去りに、仰け反った熊型キメラの腹に剣で逆袈裟切りをくらわす。
「グゥオオオ」
深い傷を負いながらも尚も止まらない熊型キメラは私を掴もうと両手を伸ばす。
次元収納からシルバーの両手長剣を取り出し、円を描くように熊型キメラの両手を切断する。 その複数の腕は青い血しぶきをまき散らしあたりに転がる。
「グルゥウウウウオオオオオオ!!」
切断し終わってシルバーの両手長剣は再び次元収納へと戻した。 両手が急に無くなって叫んでる熊型キメラの腹を蹴り飛ばし、蛇型キメラに詰め寄った。
子供の顔にある目が怪しく光る。滑り込んでがれきの陰に隠れるとさっきまでいたところが瞬時に灰化していた。
「危ないな、あの目を先に潰すか」
次元収納から投げナイフを取り出し、すかさず二本投げる。 蛇型キメラの二個の目を貫通し、蛇型キメラが苦悶の声を上げのたうち回る。
顔からボタボタと青黒い血を吹き出しながら蛇型キメラはこちらに飛び掛かってきた。
「クキャアアアアアアア!!」
次元収納からシルバーの槍を引き抜き槍投げの要領で投げると、蛇型キメラの頭を貫通しながら胴体へと突き刺さりそのまま近くの壁に大きな音を立てて突き刺さった。
ジャスティンは自分に強化魔法をかけながら、敵の攻撃を捌き戦っていたが……
「クッ! タフっすねキメラは……」
こちらにも強化キメラが一体来ていて苦戦を強いられていた。
「グゥルァアアアア!!!」
キメラが鉄の瓦礫を投げつけてくるのを盾で耐えるジャスティン。
「ぐぅうう」
一撃一撃が重く盾に衝撃がはしるがなんとか堪える。 ジャスティンは体力には自信があったが、こうも連戦が続くとさすがのジャスティンでも疲れが見え始めてくる。 息も上がり始め額からは汗が流れ落ちる。
「うらぁああ!」
盾で弾いた鉄の瓦礫を拾って投げつけると、そのままキメラに突進する。
キメラは一瞬ひるんだが、すぐさま向き直り、反撃にうって出ていた。
「オーバーパワー! さらにオーバーパワー!!」
キメラはジャスティンに狙いを定めると、鎌のような大きな爪を振りかざしていた。
「ぎィやらラララ!!」
低く相手の懐に入り込んだジャスティンは攻撃を受けながらも一太刀浴びせる。 鎌は至近距離のせいで力が乗らず肩に浅く刺さっただけにとどまった。
「ぐっ!! 力なら負けないっすよ!」
肩に鋭い痛みが走るのを我慢して放つ渾身の斬撃はキメラの胴体を真っ二つに切断し、キメラは青黒い血をまき散らして絶命した。
「いっつつ、でもやったっすよ!」
その頃カナンは遠距離戦闘を行っていた。
「アクアショット!!」
水の弾丸が迫りくる者共を吹き飛ばし寄せ付けない。 だが問題の小型のキメラを狙い打つも、小型のキメラは動きが早いせいでまったく当たらない。
「くそ! 全く奴に当たらん!!」
「ヒャアアアア!!」
小型のキメラは攻撃しては離れる戦法で、なかなか距離をつかませてもらえていなかった。
そしてことあるごとに腐食した奴隷達が前を邪魔していて余計に当たらなくなった。
「くっ! 邪魔だ! アクアネイル!」
槍を舞踊が如く操り、腐食した奴隷達を屠っていく。 腐食の激しい奴隷達は動きは緩慢なので当てるのは容易い、ただその数が異様に多かった。
「ぐっう!!」
攻撃後の隙を小型キメラに付かれ、カナンの体に切り傷が増えていく。
「くそ! 焦っていてもしょうがないか! ウォタラ!!」
槍の先端に水を帯びた幕が形成されカナンはそれを横に一閃する。
水しぶきを上げ、横に伸びた水が小型キメラに迫るが、キメラはそれをよけ、踏み込んでくる。
「かかったな!」
一歩踏み込んだ先、キメラの足元はカナンの放った水属性魔法により濡れている。 小型キメラが踏み込むと足に付着した水がどんどん小型キメラに付着していき、あっという間に小型キメラは大きな水球に閉じ込められた。
「これで終わりだ! アクアネイル!!」
槍の三連撃の水属性の斬撃は小型キメラの体を三つにスライスしていった。
「そっちは大丈夫か! カナン! ジャスティン!」
「なんとかなってるっす!」
「ああ、まだ戦える!」
合流し、キメラや奴隷を蹴散らしながら、その数を順調に減らしていると前から大きな拍手が響いてきた。
「ガハハハハ、随分とやるではないか、やはり奴隷やキメラ程度では相手にはならんか」
その大柄な男は黒いフルプレートメイルで大きな長剣を担いで現れた。
「暇つぶしだ、ちょっと遊んでやる、かかってこいガキ共」
相変わらずこの周辺の閑散とした路地の雰囲気は未だに慣れない。
あまりにも静かすぎる周囲に警戒の色を強める。
「カナンとジャスティンは入り口で周囲の警戒を頼むよ」
「「はい」っす」
今回は昨日の襲撃のことを考え、武装した状態で来ている。 昨日起こった襲撃は完全に私を狙ったものまた狙われる可能性は極めて高いだろう。 トムニ商会も昨日もらった資料によると商品の購入、販売としか明記されておらず、詳しいことはなにも書いてなかったのだ。 商会の資料としてはあまりにも情報が不足、何かを隠しているのは明白であった。
少し汚れた入り口に掛かった布を手で押し上げ、商店の中に入る。
「失礼する」
中に入ると昨日と同じ中年のエルフの男性が驚くように声をかけてきた。
「昨日の騎士の兄ちゃんじゃねぇか、他にも騎士の方を引き連れて今日はなんの御用で?」
店主は私達の顔を見るなり、少し焦ったような声音で話す。
どうやら再び来るとは思わなかったみたいだ。
「最近この辺りでの犯罪行為が多発していてね、店内視察に協力してもらいたいのだが」
「物騒な世の中だねぇ…… いいよ見て回んな」
アリアは視察申請の書類を掲げ、話すと店主は訝しげな態度を少しとった。 拒否することもできるにはできるが身の潔白を証明したいのであればこの視察申請は断らない方がいい。 それをわかっているようで了承を受け、店内を調べることとなった。
「うひゃー…… これ埃すごいよ…… ゴホッ」
「あまり迂闊に触るんじゃない、パトラ」
「しかし仮にも商品を並べる店なのだから衛生環境はしっかりしてほしいものです」
商品のいくつかには埃が積もっており、劣悪な環境が伺える。 そう店主に伝えると気分を害したのかあからさまに不機嫌になり、睨む様にこちらを眺める。
「こっちもあまり売れ行きがよくなくてね! もう十分だろう?」
しばらく店内を見て回ると中年のエルフは苛ついたように私達に話しかける。
「ええ、ご協力感謝します」
「なら仕事の邪魔だから早くか……」
「そういえば昨日はその棚はありませんでしたよね?」
昨日ここを訪れた時に壁際に無かった棚が増えている。 この物が溢れている状況で入荷したとは到底思えない。 そして決定的なのは……
「今朝入荷したんだよ! だから昨日は見なかったんだ!」
「今朝入荷したばかりの商品がこんなに埃をかぶりますか?」
そうこの棚は埃まみれなのだ、他の棚と同じように。
「し、しょうがないだろ、掃除しなかったら半日で溜まったんだよ」
「この状態を見ればそれもそうですね…… しかしここは衛生環境的にもよろしくないのでお詫びに綺麗にさせてください」
「え!? い、いや騎士の方々にそんなことしてもらわなくても……」
「セレス頼むよ!」
「はい、兄様! クリーン!」
辺りが一面クリーンの魔法で綺麗になっていく。 魔法力の高いセレスの放つクリーンは普通の物とはわけが違う。 杖の中心にまるで集まるかのように辺りの汚れは吸い寄せられていく。
埃が渦を巻きセレスの杖次々とに吸い込まれていく。
「おおーさっすがセレスだねぇ、ピカピカだよ! ん? あれ? あの棚だけまだ埃まみれだよ」
パトラが不思議そうにその棚を眺める。
「くそっ! このまま帰すと…… くぎゅ……」
どさりとエルフの男が倒れた。 中年のエルフが叫ぶよりも先に動き、手刀で気絶させたのだ。
「やはり何かあったなここは、パトラその男はロープで動かないように柱に括り付けておいてくれ」
「はい、たいちょー」
「じゃあこの棚を調べるとするか…… セレス何かわかるか?」
「幻術魔法がかけてありますわね、だからさっきの魔法で綺麗にできなかったのでしょう」
「なるほどちょっと動かしてみるか」
ガガガっと大きな音を立てて棚は動かされる。そこには人が一人通れるくらいの穴が開いており、どこかに続いているようだった。
「中を探ってみよう。 カナン! ジャスティン! そのまま警戒して待っていてくれ、何かあったらシーレスを鳴らして教えてくれ!」
「「了解」っす」
薄暗い穴の中を慎重に進む。距離は結構あるらしく奥には光がさしているようで、それを目指して真っ直ぐ進む。 狭い穴の中をしばらく進むと拓けた場所に出た。
「ここは……」
「これは……」
「奴隷達ですわね……」
大きな檻がいくつもあるこの大きな建物は地下らしく、檻の中には痩せた子供や、体がボロボロになった他種族の奴隷が収監されていた。 腐敗も進んでいるらしく周囲には悪臭が漂う。
「なんてひどい光景だ」
「こんなのあんまりですわ……」
「うっ…… すみません…… ちょっと……」
パトラが青い顔をして壁のほうに走っていく。 無理もないそれだけひどい状態だ。
檻に収監されているのは生きている人間だけではなく、ほとんど腐っているのではないかと思われる遺体や、過剰な拷問を与えられた者、実験されていたのだろう人間と魔物の融合したキメラなんかもいたりしたのだ。
ここは地獄だった。
「タ…… ス…… ケ…… テ」
「ゥオガァアアアアアア!!」
檻の中から泣き叫ぶ声や獣の叫び声が飛び交う。
「うっ!? あ…… 頭が……」
「大丈夫か!? セレス!」
急に頭をかかえうずくまるセレス。 パトラが青い顔をして戻ってきた。
「セレスも大丈夫? たいちょー…… 私もあまり大丈夫じゃないからカナンとジャスティンと見張り交代してくるよ……」
「ああ、気をつけてな」
「すみません兄様……」
しばらく待機するとカナンとジャスティンが入れ替わりで合流してきた。
「うっ!? 隊長…… これは……」
「最悪っすね…… これ……」
カナンもジャスティンもこの光景に悲壮感を漂わせ、さらに警戒した。
「おそらく奴隷商の倉庫なのだろう…… だが…… ここはその中でもより悪化した者を収監する場所のようだ……」
「これはパトラたちが青い顔して戻ってきたのにも納得っす」
「隊長これは倉庫にしてもおかしすぎませんか? こんな重要な情報をたった一人で隠してたなんてことあるわけがないです。 ここにも見張りが一人もいないのはさすがに何かありますよ」
「ああ、見張りがいないのには驚いた。 それに明らかに檻に入ってる奴隷達が興奮状態でいるのがこれが罠じゃないかと思うんだ」
「隊長…… それ、多分あってますよ……」
「や…… やだなーカナン! 怖いこと言うなっすよ!」
「見ろよ…… 檻今全部壊れたからさ」
錆びついた何かが崩れる音とともに奴隷たちが入れられている檻の鍵が一斉に壊れ始める。
「構えろ! 来るぞ!」
「ほんと勘弁してほしいっすよ! ディフェンド!! スピーダー!」
ドスドスと檻の中から興奮して我を失っている奴隷たちが一斉に飛び出してきた。
「ゥゴァアアアアアア!!!」
「クキャキャキャキャ!!」
一番早くアリアのところに到達したのは人と魔物を組み合わせたキメラであった。 子供の顔に様々な魔物がくっついている姿は見るに堪えないものだった。
「なんて悪趣味な…… クソっ! 今楽にしてやるからな……」
ジャスティンは迫りくる腐敗した者どもを盾で吹き飛ばし、剣で薙ぎ払い、後ろにはいかせないように立ち回っている。
カナンは水魔法を駆使しキメラの動きを抑えながら戦っていた。
援護に回りたいが……
「キィシャアアアアア!!」
蛇型のキメラが口から溶解液を飛ばす、横にステップしてそれをかわすと地面が溶け出し、金属を溶かす音があがる。 その避けた場所に狙っていたかのように熊型のキメラが大きな左腕で地面を抉るように迫る。 それを持っていた盾で弾くと金属同士がぶつかる様な甲高い音を置き去りに、仰け反った熊型キメラの腹に剣で逆袈裟切りをくらわす。
「グゥオオオ」
深い傷を負いながらも尚も止まらない熊型キメラは私を掴もうと両手を伸ばす。
次元収納からシルバーの両手長剣を取り出し、円を描くように熊型キメラの両手を切断する。 その複数の腕は青い血しぶきをまき散らしあたりに転がる。
「グルゥウウウウオオオオオオ!!」
切断し終わってシルバーの両手長剣は再び次元収納へと戻した。 両手が急に無くなって叫んでる熊型キメラの腹を蹴り飛ばし、蛇型キメラに詰め寄った。
子供の顔にある目が怪しく光る。滑り込んでがれきの陰に隠れるとさっきまでいたところが瞬時に灰化していた。
「危ないな、あの目を先に潰すか」
次元収納から投げナイフを取り出し、すかさず二本投げる。 蛇型キメラの二個の目を貫通し、蛇型キメラが苦悶の声を上げのたうち回る。
顔からボタボタと青黒い血を吹き出しながら蛇型キメラはこちらに飛び掛かってきた。
「クキャアアアアアアア!!」
次元収納からシルバーの槍を引き抜き槍投げの要領で投げると、蛇型キメラの頭を貫通しながら胴体へと突き刺さりそのまま近くの壁に大きな音を立てて突き刺さった。
ジャスティンは自分に強化魔法をかけながら、敵の攻撃を捌き戦っていたが……
「クッ! タフっすねキメラは……」
こちらにも強化キメラが一体来ていて苦戦を強いられていた。
「グゥルァアアアア!!!」
キメラが鉄の瓦礫を投げつけてくるのを盾で耐えるジャスティン。
「ぐぅうう」
一撃一撃が重く盾に衝撃がはしるがなんとか堪える。 ジャスティンは体力には自信があったが、こうも連戦が続くとさすがのジャスティンでも疲れが見え始めてくる。 息も上がり始め額からは汗が流れ落ちる。
「うらぁああ!」
盾で弾いた鉄の瓦礫を拾って投げつけると、そのままキメラに突進する。
キメラは一瞬ひるんだが、すぐさま向き直り、反撃にうって出ていた。
「オーバーパワー! さらにオーバーパワー!!」
キメラはジャスティンに狙いを定めると、鎌のような大きな爪を振りかざしていた。
「ぎィやらラララ!!」
低く相手の懐に入り込んだジャスティンは攻撃を受けながらも一太刀浴びせる。 鎌は至近距離のせいで力が乗らず肩に浅く刺さっただけにとどまった。
「ぐっ!! 力なら負けないっすよ!」
肩に鋭い痛みが走るのを我慢して放つ渾身の斬撃はキメラの胴体を真っ二つに切断し、キメラは青黒い血をまき散らして絶命した。
「いっつつ、でもやったっすよ!」
その頃カナンは遠距離戦闘を行っていた。
「アクアショット!!」
水の弾丸が迫りくる者共を吹き飛ばし寄せ付けない。 だが問題の小型のキメラを狙い打つも、小型のキメラは動きが早いせいでまったく当たらない。
「くそ! 全く奴に当たらん!!」
「ヒャアアアア!!」
小型のキメラは攻撃しては離れる戦法で、なかなか距離をつかませてもらえていなかった。
そしてことあるごとに腐食した奴隷達が前を邪魔していて余計に当たらなくなった。
「くっ! 邪魔だ! アクアネイル!」
槍を舞踊が如く操り、腐食した奴隷達を屠っていく。 腐食の激しい奴隷達は動きは緩慢なので当てるのは容易い、ただその数が異様に多かった。
「ぐっう!!」
攻撃後の隙を小型キメラに付かれ、カナンの体に切り傷が増えていく。
「くそ! 焦っていてもしょうがないか! ウォタラ!!」
槍の先端に水を帯びた幕が形成されカナンはそれを横に一閃する。
水しぶきを上げ、横に伸びた水が小型キメラに迫るが、キメラはそれをよけ、踏み込んでくる。
「かかったな!」
一歩踏み込んだ先、キメラの足元はカナンの放った水属性魔法により濡れている。 小型キメラが踏み込むと足に付着した水がどんどん小型キメラに付着していき、あっという間に小型キメラは大きな水球に閉じ込められた。
「これで終わりだ! アクアネイル!!」
槍の三連撃の水属性の斬撃は小型キメラの体を三つにスライスしていった。
「そっちは大丈夫か! カナン! ジャスティン!」
「なんとかなってるっす!」
「ああ、まだ戦える!」
合流し、キメラや奴隷を蹴散らしながら、その数を順調に減らしていると前から大きな拍手が響いてきた。
「ガハハハハ、随分とやるではないか、やはり奴隷やキメラ程度では相手にはならんか」
その大柄な男は黒いフルプレートメイルで大きな長剣を担いで現れた。
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
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アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
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9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
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クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
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皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
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