魔法力0の騎士

犬威

文字の大きさ
24 / 104
第一章 ガルディア都市

勇者の能力

しおりを挟む
 アリア達が戦っている一方、上ではトロン率いる第四部隊とオクムラは黒いフードを被った者達と激しい戦いを繰り広げていた。


「なんて強さだこいつ」

「気を付けろ、こっちの勇者は魔法を的確に防いでくるぞ!」


 トロンは二刀を振り、属性の違った魔法を付加してフードの男二人を相手に戦う。


「シャイニングエレメント!ハァアアアア!!」


 二刀での連撃は相手に魔法を打つ暇を与えず、敵は防戦一方になっていた。


「ウィンド!!ちぃ!まただ!またあの光の壁が邪魔をする!」

「魔法は俺の特殊能力でほとんど封じた!おとなしくするんだな」


 オクムラは特殊能力であるという【円天の防御】を使っている。

 異世界人であるオクムラタダシは召喚された時に一つの恩恵を授かっていた。

 どの異世界人にも必ずと言っていいほどオクムラのように特殊能力を持って召喚される。
 オクムラの場合はこの【円天の防御】をさずかった。
 この能力はオクムラの認識している視覚の空間範囲での光の壁による防御、転移阻害を行うものであり、守りに特化した能力であった。


「助かる!オクムラ!そっちは任せるぞ!」

「はっはー!任されました!」


 オクムラは剣に光属性を付加させると女の魔法特化の敵に向かって駆けていく。
 第四部隊のメンバーは五人、遠距離の攻撃魔法や弓での迎撃が得意なものが多く、連携して敵を近づけさせないように上手く立ち回っていた。


「チッ、このままじゃらちがあかねぇ!! 狭い空間じゃまともに近づけやしねぇ」

「俺がここを突破する!ぐはっ!!」

「悪いが、お前の相手はこの俺がしてやるよ」


 トロンが相手の大男の剣をはじいて突き飛ばす。
 トロンの部隊は皆遠距離ということもあり、唯一の近接であるトロンが敵を引き付けるのが本来のトロン達第四部隊の戦い方であった。


「サイクロン!!」

「アイスニードル!!」


 二人の魔導士によって紡がれた魔法はオクムラの前に突如とつじょ出現した光の壁を破壊することはできない。
 光の壁にぶち当たり、魔法は離散してゆく。


「しばらくおとなしくしてください!」


 オクムラは剣の腹で次々と魔導士達を気絶させていった。


「ほんと反則みたいな能力だなそれ」

「いやー使いこなすのちょー疲れるんですよ、おまけに難しいし魔力もガンガン減るんであまり使いたくはないんですけどね」

「でも、さすが勇者って感じだな」

「ええ」……この力があれば……」

「ん? なんか言ったか?」

「いえ? 言ってませんよ何も」


 オクムラが発した小さな声はトロンには聞こえていなかったようだ。

 戦闘はオクムラの能力とトロンの多属性の攻撃で優勢になっていた。


「これで最後だ!」


 最後に残ったフードの男を気絶させたトロンは剣をさやにしまい大きく息を吐いた。


「なんとか倒せて良かったな、オクムラは期待以上のはた……」


 振り向こうとしたトロンの口からパタタタと血が流れ出る。


「「「「「隊長!!!」」」」」

「お…… 前なに…… してんだ…… よ…… オクムラァァアアアアア!!」


 
 トロンの胸部からは剣が突き出て、大量の出血が地面へと流れ落ちる。


「あまり叫ぶとすぐ死んじゃいますよ?」


 ズブズブと突き刺した腹からはボタボタと血がとめどなく流れていて血だまりを作っていた。 さらにオクムラは剣を捻じるようにして奥に奥につき進めていく。


「お…… 前……」

「ようやく絶好のタイミングで経験値が手に入るんでちょっと利用させてもらいましたわ」

「がはっ…… ゼヒュ…… 何が…… 目的…… ゼヒュ…… だ?」


トロンの肺は潰されているようで漏れ出る血を吐き出しながら辛うじて言葉を口にする。


「目的ですかーんー?経験値を稼ぐことと、ある男からお前を消せと言われたことくらいかな」

「……お前に ……なんのメリットが ……あった ……ゼヒュ ……んだ?」

「いやーまさか国王の地位をくれるしこの国をくれるっていうんで、男なら最強を目指したいでしょうよ! でも自分演技とか苦手ですごく不安だったんですけど上手くやれてよかったーというか」


 トロンはまともに息を吸うことができない。 血も流しすぎたし、何よりも剣が体を貫通してしまっているので内臓系はほぼ機能しない。

 トロンの視界がかすんでいく。 

 第4部隊の皆は隊長を救い出そうと動くが、トロンを盾にされているせいでまともに動くことができないでいた。


「これで隊長格の一人を倒しましたし俺もかなりレベルが上がりましたよ。 感謝してますよトロンさん…… あれ? トロンさん? おーい?   ……なんだ死んだのか」


 心底つまらなそうにトロンを床に落としたオクムラは第4部隊に再び目を向ける。


「貴様! 隊長をよくも!!!」


 皆憤怒の形相ぎょうそうで攻撃魔法や弓を放つ、だが弓はかわされ、魔法はオクムラの【円天の防御】によって防がれる。


「君たちも貴重な経験値だ!僕のかてとなれ!」

 そこからの殺戮さつりくはひどいものであった。
 基本的に能力が高いオクムラは身体能力で弓の攻撃をかわし続け、魔法による攻撃はオクムラの能力【円天の防御】によって全て防がれていき、トロンのいない部隊のまさに穴をついた攻撃で一人また一人と切り殺されていった。
 あるものは逃げ道を円天の防御で防がれ、オクムラの手によって原型がわからないほど切り刻まれる。
 新しい魔法の実験に身を焼かれる者も。


 そして気絶していたフードの者らもオクムラの手によって一人残らず無残にも殺されていった。


「ふーこれだけ派手にやるとさすがにバレるよな一応綺麗にしとくか、オールクリーン!!」


 飛び散った血や肉片は綺麗さっぱり暗闇に飲まれ、クリーンの強化版であるオールクリーンは死体をも綺麗に飲み込んでいった。


「完全なる証拠隠滅ってすごいなーっと、と忘れるとこだった」


 オクムラは慌てて自分の腕と足に剣で傷を作っていく。


「いっててててて…… ひー超痛い、でもカモフラはしとかないと」


 あとはアリアたちを待ちながらダンジョンの出口に向けてよれよれで歩いていけばいいだけだ。
 邪悪な笑みがオクムラの顔からのぞいた。


 ■ ■ ■ ■


 シェリアを担いだアリアと第1部隊は急ぎ足で階段を駆け上がり、戦っているであろうトロン達とオクムラを探した。


「いない?ここで戦ってるはずだったんだが…」

「隊長!奥に誰かが足を引きづって歩いてるっす!!」

「あれは…… オクムラか? どうして一人で? とりあえず行こう!」


 走り寄り、オクムラを確認する。どうやら深くやられているらしく全身ボロボロであった。


「オクムラ!!どうした!いったい何があったんだセレス!ヒールを!」

「はい!ヒール!」


 みるみるうちにオクムラの傷が治っていった。


「ありがとうございます。 ……あ ……アリアさん…… 戦っていたら急に凄腕の奴が現れて、俺が狙われて、奮闘したんですけど全然ダメで…第4部隊の女性の方が連れ去らわれて、トロンさん達が彼女を助けようと敵の転移魔法に飛び乗りついていきました。俺は見てることしかできなかった!」


 握り拳を足にたたきつけオクムラは悔しがっていた。


「そうか…… トロン達なら大丈夫だ。 彼らは強い、私たちは彼女を送り届けてから本部に報告に行く、君は先に本部に戻っていてくれないか?」

「わかりました…… もう自力でも歩けるので大丈夫です…… ありがとうございました」

「ああ! 君も気を付けて、上の魔物達は先に片づけておくから安心してくれ!」

「はい」


 アリア達はオクムラを追い抜き、先に階段を上がって地上に向かっていった。
 アリア達の足音が遠く聞こえなくなった頃オクムラはポツリと言葉を漏らした。


「……ちょろいわ隊長サン」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

処理中です...