魔法力0の騎士

犬威

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第一章 ガルディア都市

隠れ家

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 私達はダンジョンを上へと駆け上がり、ようやく出口に差し掛かった。
 魔物もいくつか遭遇はしたが数も少なく、連携して倒せるくらいだったのでカナンとジャスティンに任せ、私はシェリアをおぶったまま出口まで出てきた。

 外へ出るとすっかり日は落ちていて、あたりはすでに街灯が灯っており、行き交う人々もだいぶ少なくなっていた。


「だいぶ長いこと潜っていたみたいだな……」


 辺りは静寂せいじゃくに包まれ、長いことダンジョンに潜っていたのだと実感させられる。


「お腹すいたっすね……」


 グゥウーという間の抜けた音をお腹から鳴らしてジャスティンはつぶやく。
 無理もない、今日は緊急での案件が多すぎてまともに食事をとれていなかったのだ。


「もうこんな時間だからやってる店なんかないんじゃないか?」

「うぇーマジっすかー流石に死ぬっすー」


 がくりとうなだれるジャスティンは相当お腹が減っていたようだ。


「私はこれからシェリアを安全な所に匿ってもらいに行くのと騎士団長に報告に戻るから、一旦別行動になるが…… あーなんだ…… ジャスティン達はよかったら私たちの屋敷で食事でもしていくか? もう店もやっていないし今回お前たちはよく頑張ってくれたからな、連絡はセレス…… お願いしてもいいか?」

「はい、兄様、ノイトラに美味しいご飯を作ってもらえるように手配しておきますね」

「やったっす!! ノイトラさんの料理が食べられるなんて久々っす!! 前に食べさしてもらったときはほっぺが落ちそうなくらい美味かったっすから楽しみっすねカナン!!」

「セレス!!! ロコモコはあるのか!? ロコモコは!!」

「ちょっ!? ちょっと待ってくださいカナンさん! ロコモコ好きすぎじゃないですか!? パトラも何か好きなものがあったら言って…… パトラ?」


 和気藹々わきあいあいとした雰囲気から外れるように一人少し離れたとこにいたパトラはうつむいている。 いつもの明るい表情からはうって変わって暗い表情をしていた。

そういえばダンジョンを駆け上がってる際一言も喋っていない。 パトラにしては珍しすぎる。


「え!? ……ああ料理ね! うーん…… 私はノイトラさんが作ってくれるものならなんでも美味しいから任せるよ!」

「パトラ…」


 セレスは心配そうな顔をパトラに向けた。


「そんな顔しないでセレス! それじゃ私たちは先にセレスの家に行ってますからねたいちょー」

「ああ、気をつけてな、私も先を急ぐとしよう」


何かと不安感が残るが面倒見の良いセレスの事だ、なんとかしてくれるだろう。


■ ■ ■ ■

 第一部隊の面々から別れ、都市の南区の路地をシェリアを背負い進む。


「ん…… ここは?」

「あ…… 起きたかい? シェリア」


 シェリアは私に背負われていた間疲労と精神的不安定から寝てしまっていたが、どうやら揺れで起きてしまったようだ。


「アリア様!? すいません!! 寝てしまって! もう大丈夫です自分で歩けますので」


 背中から飛び降りたシェリアは顔を真っ赤にしてぶんぶんと手を振り、その赤い猫耳をピコピコと動かしていた。
 なんとも可愛らしいしぐさについ頬がゆるみそうになる。


「ずいぶんと疲れも溜まっていたことだし仕方ないよ」

「やはり夢ではなかったのですね…… 夢だったらどんなによかったことか……」


 とたんに急に暗くなってしまった、だが無理もないだろう目の前で母親を異形な物に変えられその心のストレスは尋常なものではなかっただろう。かける言葉も今は見つからないでいた。


「そして今はどこに向かっているんですか?」

「ああ、今はこの都市でおそらく一番安全な所に君をかくまってもらう話をするためにそこに向かっている」

「アリア様にはなんとお礼を申し上げてよいのやら…… 本当にありがとう」


 ぺこりと頭を下げてお礼をするシェリアは目元に涙を潤ませていた。


「ほら、そろそろ見えてきたよ……」

「え? 私には普通の民家と壁にしか見えませんが……」

「そうだったね。 ちょっとシェリアこれを持っていてくれるかな」


 アリアは懐から黒い光沢のある石を取り出しシェリアに渡す。


「これはいったい?…… え!? こんなとこにドアができてる」


 さっきまでシェリアには見えていなかったのであろう。 今そこには壁にしか見えない。
 だが、この黒い石を持つとその壁にはドアが出現する仕組みになっている。
 そうこの扉の先は異世界人の孫であるターナー=タチバナさんの家である。彼女の家は認識疎外魔法が常にかけられていて、知り合いであるごく一部の人しか持っていないこの黒い石が唯一カギになり、ドアを出現させてくれる。この石にも認識疎外がかけられていて、この石を持ってる人じゃないと石を持っていること自体を認識できなくなっている。

 ちなみに落としたりしたらまず探せない。


「この認識疎外があるからここは比較的安全だよ。 そしてここの住人であるターナーさんは異世界人の孫でこの都市で常に狙われていた身。 他の大陸の人を嫌ったりなんかもしないから安心してくれていいよ」

「ありがとう。 アリア様」

「それじゃあ中に入ろうか」

「はい」


 木目調の軽い音とともにドアを開けると中にはまだ灯りが付いており、中の工房でターナーさんが武器を加工しているところだった。
 金属を打ち直す音が響き渡る。


「お邪魔します!」

「ん? あれ?どうしたんですアリアさんこんな遅い時間帯に」


 奥で作業していたターナーさんはひょこっと顔を動かしてこちらを確認すると不思議そうに聞いてきた。


「夜分遅くにすみません、実はターナーさんにお願いがあってきました」

「あ、ちょっと待ってね」


 ターナーさんはパタパタと奥に再び引っ込んでまた出てきた。どうやら着替えてきたらしく今は上下の灰色のつなぎを着ていた。


「お待たせしたね、おや? ここら辺では見ない顔の子がいるね」

「ああ、この子の事でちょっとお願いがあってきたんだ」

「初めましてターナーさん、私はシェリア=バーン=アルテアといいます」


 ぺこりとお辞儀をして耳をピコピコ動かすのを見るとどうやら緊張しているようだ。 表情もどこか固い。


「初めまして、シェリアちゃんでいいかな? 僕はターナー=タチバナって言うんだ。 この店で武器屋をやって隠れて暮らしているんだ。 君のその猫耳を見る限りどうやらこの大陸にはいない種族みたいだね、察するとかくまってほしいとそんなとこじゃないかな? 違ったかな?」

「は、はい私は隣の大陸のアルテア大陸出身です」

「正解だよ、驚いたな。 そうなんだこの子はとある奴隷商に捕まっていたのを助けたんだが、今は戦争中でこの大陸に置いておくのはまずい、だが海を渡るという危険を冒すよりはこの隠蔽魔法いんぺいまほうに守られているここが安全だと思ってね連れてきてみたんだよ」

「なるほどね、事情はよく分かったよ! 命の恩人であるアリアさんの頼みだ喜んで引き受けるよ」

「助かるよターナーさん」

「ありがとうございますターナーさん」

「しばらくはここで生活すればこの辺りの人には遭遇しないし安全に暮らせると思うよそれにしても猫耳かわいいねぇ~触ってもいい?」

「あっ!? ちょっとダメです!」


 さっとシェリアはその猫耳を手で押さえ顔を赤くしながらかたくなに守っていた。


「アリア様にはいいですけど、ターナーさんはダメです」

「おやおやずるいねぇ、アリアさんこんな可愛い子の猫耳を触り放題なんて羨ましいよ」

「いや、触ってないからね」


 ぶーとねた様子のターナーさんはそういいながらもどこか楽しそうに見えた。


「シェリアを頼むよターナーさん」

「かしこまりました! こんな可愛い子と生活なんて色々はかどっちゃうな!」

「私もちょくちょくここには顔を出すから」

「アリア様、その時にでも剣を教えてくれませんか? どうしても力をつけたいんです」


 さっきまでの表情とは違いその言葉には重みと真剣さが伝わっている。


「少しでも君の力になれるよう私も協力するよ、だが見つからないで修行となると場所がな……」

「それならこの店の奥を使うといいよ、最近増築してみたんだよ。 それなりの広さもあるし、まだそこには何も置いてないからぴったりじゃないかな?」

「すごいな、どうやって増築したんだ……」

「んーそれは秘密かな」


 ターナーさんは能力で色々なものを作り出せる。 それは武器に始まり、防具やアイテムであっても、見たこともないような物も色々作っているので増築くらいはできても不思議はないのかもしれないな。


「それでは私は他にも寄るとこがあるのでこの辺で失礼させてもらうよ、明日またここに来るから」

「ああ、また来てくれアリアさん」

「アリア様色々してくださりありがとうございました! 明日もよろしくお願いしますね! おやすみなさい」

「ああ、おやすみシェリア、ターナーさん」


 ターナー=タチバナの店を後にするとそのまま報告の為に騎士団の本部へと向かって一歩踏み出した。
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