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第一章 ガルディア都市
特例任務
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『すまない私だ、これから重要な話をしたい。 都市内にいるものは至急騎士団本部団長室に来てくれないか』
酔いをセレスに覚ましてもらった直後に頭の中にシーレスが響く。 隣を伺うとカナリアも真剣な表情で耳元を抑えている。 これはおそらく隊長にしか発信されてないのだろう。
セレスは突然動きを止めた私たちに戸惑っていたが、すぐに察して理解してくれたみたいだ。
「ありがとうセレス、私たちは騎士団長と会議にこれから参加するから先に帰っていておくれ、呼んでしまったのにすまないな」
セレスを突然呼び出しておきながら今度は先に帰ってくれというのはさすがに罪悪感が募る。
ダメな兄さんで苦労を掛けるよ……
「いえいえ、兄様が無事ならそれでいいです、では兄様、カナリアさん、また」
「ええ、ごきげんよう」
「じゃあな」
ほんとにセレスは良くできた子だよ…… 感心してるとカナリアからのジト目の視線が怖かったので足早に店を出ることにした。
外に出るともう夕暮れになっていて長い時間飲んでいたことに乾いた笑いが出る。
そしてこの時間の夕焼けが私はとても好きだ。 夕焼けが街に溶けて物悲しい幻想的な雰囲気を出してくれてとても落ち着く。
「何をぼーっとしてるかしら、というか酒臭さが全然抜けてないわね、仕方ない…… クリーン」
白い光が私を包んでいく。 私の体からアルコール独特の匂いが無くなった気がするな……
このクリーンという魔法ちょっと便利すぎじゃないかな……
「ほら、これでいいわ」
「あ、ありがとな、カナリア」
「これぐらい気にしなくてもいいかしら、それにしてもあなたの妹には毎回驚かされるわ、飛行魔法も覚えているし、魔力も凄い、戦わないで魔法で負けたと思ったのはこれが初めてよ」
「カナリアよりも上なのかセレスは……」
「まだ戦闘訓練が少ないだけで力は間違いなく隊長クラスよ」
カナリアがこんなにも悔しそうな表情するのは初めて見るかもしれないな……
「さぁ早く行きましょう」
「ああ」
■ ■ ■ ■ ■
いつも通り本部に着き受付の人の案内で騎士団長の部屋までやってきた。
ドアを二回ノックする。
「入ってくれ」
ガチャリとドアノブを回し中に入ると団長のトリシアさんの他に第三部隊隊長カルマンさんと、第五部隊隊長アルフレアさんが椅子に座り待っていた。
「第一部隊隊長アリア=シュタイン及び第六部隊隊長カナリア=ファンネル集合致しました」
「今都市に残っている隊長は君たちで最後だ、とりあえず座って話をしようじゃないか」
普段はあまり使用したことがないこの大きな机に椅子を並べいかにも会議室みたいになっているが、これはトリシアさんが持ってきた私物なのだろうか。
トリシアさんを見ると待ってましたとばかりに咳ばらいを一つする。
「では、今回都市に残っている者に集まってもらったのには理由がある。 郊外に出ているストライフとキールは情報は伝えているがいまはそっちを優先してもらいたくてね。 今は戦時中で隣のアルテア大陸とリーゼア大陸をガルディアンナイトが国土を広げるため行軍している。 そして今回連絡があり、左の大陸であるアルテア大陸の主要都市アルタを落とすことに成功し、我がガルディアンナイトが勝利を納めたそうだ」
「!?」
一堂に衝撃が走る、これまで目立った行軍がされてなかったガルディアンナイトだったがついに行軍し、主要都市であるアルタを手に入れたのか…… 前であったら素直に喜ぶことができたがアルテア大陸はシェリアの故郷なのだ、そして王族であるシェリアの住んでいたであろう都市アルタが落ちたということはシェリアの身内も殺されてしまった可能性が高く素直に喜べない……
「現在ガルディアンナイト団長テオのもと民衆の暴動を抑制し、管理下に置いているという。 とりあえずここを第二拠点として活動するらしい、そしてこのことをガルディアに住む民に伝えるために国王自ら演説を行う話が出ている。 君たちにやってもらいたいのは当日の国王演説の護衛だよ」
「また多くの血が流れたんですのね」
「あーアルテア大陸は獣人の種族の大陸だったよな?」
「そうだ、主に首都に住んでいるのは、動物的特徴のあるケモッテ族と鳥類的特徴のあるアンバー族が暮らしている」
「しかしこんな急に決着がつくなんてねぇ…… 今まで膠着状態でお互い決定打にかけていたのに突然どうしたんだぃ」
「ああ、そのことなんだがどうやら送られてきた情報によると、どうやら内乱が起こっていたらしくてね、特に名高いアンバー族の騎跳団は空中での戦いを得意としていて、苦戦していたのだが、そこも内部分裂していたらしくてね、そこを好機と見たガルディアンナイト団長テオが指揮を執り、制圧にかかったというのが今回の話さ」
内部分裂…… 内乱…… それでこんなにも早く制圧できたのか…… だが……
「すみません、アルテア大陸のほうでも勇者召喚は行われていたんですよね? その勇者は倒したということなのでしょうか? それにしては早いような気もします」
「ふむ、たしかにな…… 勇者がでてくるとなるとさすがに普通は苦戦するらしいのだが、情報によるとなんでもアルテアの勇者は王族の護衛として王族軍と逃亡している最中で今は捜索中で見つかっていないらしいんだ」
「!? 」
良かった。 まだ王族が全員殺されたわけではないのか……
「その捜索範囲を広げる前に一回今回のことを国王の演説として民衆や兵士に伝えることで士気を高める狙いがある」
「なるほど」
「その演説が行われるのが五日後の昼、そして演説と同時にガルディアンナイト団長テオの表彰も行われる。 ガルディア都市のガイム広場に舞台を設置し、演説が行われる予定だ。 当日は多くの人達が見に集まるため警戒をしてもらいたい」
ガイム広場はガルディア都市のほぼ中央に位置する場所にあり、普段は大きなイベント会場として使われている、多くの人達が見に集まるのはほぼそこしかないなと思われる大きめの広場である。
「舞台の建設は五日で間に合うものなんか?」
「その点に関しては心配はいらない、この催しのために各地から建設に携わる方達が非常に協力的でね、五日で仕上げられるそうだ」
「そりゃすげぇな」
「当日のアタシ達の配置場所はどこになるんだぃ?」
「アリア及び第一部隊は国王の背後の区域を警戒、カルマン率いる第三部隊は東区域周辺の警戒、アルフレア率いる第五部隊は西区域周辺、カナリアと第六部隊は緊急に何かあった場合のために医療班として私と一緒に行動してもらう」
「「「「了解しました」」」」
国王の背後にあたる位置が今回の配置場所か…… 背後はとても狙われやすい気を引き締めて警戒にあたるとしよう。
「とりあえずは以上が今回の特例任務だ。 詳しいことは後で追って連絡するよ、まだこの書類達を終わらせないといけなくてね、はぁ、……今回は多くの人が集まるため厳戒な警戒をよろしく頼む」
疲れた顔をしているトリシアさんを見るとまだ机の上には山のように書類が積み重なっている。 これを今から処理するのかと思うと気が滅入るのも仕方ないなと思ってしまう。
騎士団本部を後にした私はそのままターナーの家へ向かうことにした。
すでに毎回通うのが日課になりつつあるが、日々実力をつけていくシェリアを教えるのは私としても一つの息抜きとなっている節がある。
「やあ、ターナーさん、シェリア」
「あ、待っていましたよアリアさん、シェリアは待ちきれずに着替えて準備万端ですよ」
「アリア様! 修行を開始しましょう!」
璃々として目を輝かせるシェリアの上に目をスライドさせると耳がピコピコ動いている。 なんだろう、癒されるな、まぁ修行もするが今は話さないといけないことがある。
「修行の前に今回シェリアに話しておかないといけないことがある」
「なんでしょう?」
「さっきの情報なんだが、シェリアの故郷であるアルテア大陸の主要都市アルタが我が都市のガルディアンナイトの騎士団により制圧された」
「……嘘……」
シェリアは驚愕に目を見開き持っていた武器を落としてしまった。 カランという乾いた音だけが響く。
「王族軍は勇者を護衛に逃走をしているらしくまだ捕縛はされていないらしいのだが、王族軍はシェリアの家族もいるんだろう?」
「……はい、お父さんが指揮をとっている部隊です。 私はその勇者召喚が行われる前に連れ去らわれたのでその勇者のことは知りませんが、あまり良い状態であるといえませんね」
「多分だが捕縛されれば君のお父さんの命はないだろう……」
「そうですよね、それはわかっています……」
落ち込むシェリアに何か声をかけてあげたいがこればかりは私には何もできることがない……
「話の腰を折るようで悪いんだけどさ、もう少しで転移を可能とするマジックアイテムができそうなんだ、それがあればもしかしたら助けられる可能性があるかもしれないよ」
「なっ!? それは本当か!?」
「ああ、結構時間を食ってしまったけど近日中には完成できる。 多分二回しか転移はできないかもしれないけど行って帰って匿うくらいは可能なんじゃないかな? ちなみに転移の調整は方角と距離を設定して連れて行きたい人数を繋ぐことで可能となるはずだよ。 まぁそれの本格的な説明はできたときにでも話すよ」
さすがターナーさんだこのタイミングで願ってもないものを創り出してくれる。
「それとアリアさんにはこれを」
「これは二つ目の次元収納の指輪か?」
「ご明察! 中にとりあえず使えそうな武器は入れてあるから役立たせて」
「ありがとう! ターナーさん!」
「僕にはこれぐらいのサポートしかできないからね、それとアルテア大陸に行くためにシェリアちゃんのちゃんとした防具ももう少しで完成できるから」
「い、いろいろとなんとお礼したらいいか……」
シェリアが目に涙を溜めてターナーさんの手を握る。
「幸いなことに五日後にこの都市で国王の演説が行われる。 それまでの間の捜索はあまりされないと思うんだ」
「なるほどね、五日後以降か、それくらいまでならこっちも頑張って終わらせられそうだよ」
期限は五日後以降演説が終わり次第ガルディアンナイト団長であるテオが前線に帰還するまでに転移アイテムを使いシェリアの家族を救いここへ戻ってくるシナリオだ。
シェリアなら土地勘もあるだろうし、きっと見つけ出せるはずだ。
ただ前線には多くのガルディアンナイトの騎士がいることだろう、シェリアの実力を早急にあげなくては……
「それまで大変になるかもしれないが修行のペースをあげるぞシェリア」
「はい!!」
シェリアは武器を拾い直し、奥のいつも練習として使う部屋へ駆けていった。
私も後に続こうとするとターナーさんから呼び止められた。
「いつもアリアさんが帰った後も一人で訓練しているんだ。 シェリアちゃんの気持ちは本気だよ…… 本気で強くなろうとしてる、いままでは安全性を考慮した武器を使っていたけど今回はそう甘いことをいっちゃいけないことをしようとしてるんだ。 今日は僕の作った安全な武器じゃないほうを使って教えてあげてよ」
「ああ、わかった、加減はするけど回復薬は大丈夫なんですか?」
「この日のために多めに作ってあるから、ただほんとに加減はしてね」
注意喚起をされ、ターナーさんは回復薬を取りに走っていった。
私は次元収納から盾と剣を取り出し、奥の部屋へと向かった。
部屋に入ると中央にシェリアが目を閉じ集中して立っている。
「今日こそアリア様に一手ダメージを与えます!」
「今日は私はいつも使っている武器を使う、反撃もするからそのつもりでいてくれ」
二人の言葉はほぼ同時だった。
シェリアがえ? と驚く。
「ペースをあげるためだ、より実践に近い形で行う」
「わかりました」
一瞬驚きはしたシェリアだったがすぐに気を取り直したようで、剣を構える。
「コンセントレイト、スピーダー」
綺麗に紡がれた言葉は魔法となりシェリアの体を光が一瞬包む。 魔法は集中力、スピードの増加の効果。
盾を少し前に出し迎撃の構えをとる、これまで訓練してきてシェリアには驚かされてきたことが何度もある、まずそれはこの初激の速さだ。
トンと軽い踏み込みで一気にシェリアは距離を詰める、態勢を低くし、わずか三秒足らずで目前まで迫る、だが今回はいつもとは少し違うようで私の反撃を警戒してか攪乱させるような動きで左右を移動する。
「!?」
後ろから放たれたナイフを読んでいて盾で弾く、それで攪乱させた気になっているがまだ甘い。
「ハイウィンド!」
これは暴風か、強力な風の中級魔法だ、いつの間にこの魔法を覚えたんだ……
二つ目の驚きはその学習能力の速さだ。 シェリアは学ぼうと色々な本を読んでいた。 数日前に図書館で借りた魔法の中級の本を二日で読破し、そして理解もしている、こうやって実戦で使えるまでの成長を現に見せている。
「クッ」
盾を持つ手が暴風に持っていかれないように引き寄せる。 そこを待っていたかのようにシェリアが切り込んでくる。
「だが安直すぎるぞシェリア」
切り込んだ剣を盾で弾き、剣を持ち替え裏でシェリアのがら空きとなった腹部を殴る。
「かはっ!?」
軽く吹き飛ばされ地面を転がるシェリア、痛みをこらえているが無理もない、今までは反撃もせず、武器も安全性のある武器を使用していた。 防具をしてるとはいえその痛みに抗うのはなかなかつらいものがある。
「次に何がくるかイメージして向かうんだ」
「っ…… はい!」
立ち上がり、即座に魔法を放つ。
「ウォタラ!」
剣を一閃し、辺りに水しぶきが飛び散る、これはカナンも得意とした攻撃だったな。
たしか、その効果は触れたものを水に閉じ込めるんだったか……
「ハイアクアショット!」
大粒の水の弾丸が散弾のごとく向かってくる。 一つ一つが重い一撃なので必然的に動かないといけないのか…… だが……
次元収納から大楯を取り出し地面に固定するように構える。 これなら問題なく動かず対処できる。
「それを待ってました!」
シェリアが叫ぶが私も知っている。 そう大楯の欠点はその大きさで視界を遮るというものだ。
距離を一気に詰めるシェリア、だがこれの欠点を補えるだけの次元収納の収納スピードをシェリアは知らない。
水の弾丸が打ち止めになり、すぐに次元収納に大楯をしまい込む。
「いない!?」
左右を見渡し盾を構える、射ち終わりの直後ではそれほど移動できるわけがないはずだが、直後に異変に気付いた私は大きく後退する。
直後私のいた位置に大きなハンマーを振り下ろしたシェリアが落ちてきて地面を粉砕していた。
「アリア様をついに動かしましたよ!!!」
にこりと笑顔で答えるシェリア、そして本番はここからであった。
酔いをセレスに覚ましてもらった直後に頭の中にシーレスが響く。 隣を伺うとカナリアも真剣な表情で耳元を抑えている。 これはおそらく隊長にしか発信されてないのだろう。
セレスは突然動きを止めた私たちに戸惑っていたが、すぐに察して理解してくれたみたいだ。
「ありがとうセレス、私たちは騎士団長と会議にこれから参加するから先に帰っていておくれ、呼んでしまったのにすまないな」
セレスを突然呼び出しておきながら今度は先に帰ってくれというのはさすがに罪悪感が募る。
ダメな兄さんで苦労を掛けるよ……
「いえいえ、兄様が無事ならそれでいいです、では兄様、カナリアさん、また」
「ええ、ごきげんよう」
「じゃあな」
ほんとにセレスは良くできた子だよ…… 感心してるとカナリアからのジト目の視線が怖かったので足早に店を出ることにした。
外に出るともう夕暮れになっていて長い時間飲んでいたことに乾いた笑いが出る。
そしてこの時間の夕焼けが私はとても好きだ。 夕焼けが街に溶けて物悲しい幻想的な雰囲気を出してくれてとても落ち着く。
「何をぼーっとしてるかしら、というか酒臭さが全然抜けてないわね、仕方ない…… クリーン」
白い光が私を包んでいく。 私の体からアルコール独特の匂いが無くなった気がするな……
このクリーンという魔法ちょっと便利すぎじゃないかな……
「ほら、これでいいわ」
「あ、ありがとな、カナリア」
「これぐらい気にしなくてもいいかしら、それにしてもあなたの妹には毎回驚かされるわ、飛行魔法も覚えているし、魔力も凄い、戦わないで魔法で負けたと思ったのはこれが初めてよ」
「カナリアよりも上なのかセレスは……」
「まだ戦闘訓練が少ないだけで力は間違いなく隊長クラスよ」
カナリアがこんなにも悔しそうな表情するのは初めて見るかもしれないな……
「さぁ早く行きましょう」
「ああ」
■ ■ ■ ■ ■
いつも通り本部に着き受付の人の案内で騎士団長の部屋までやってきた。
ドアを二回ノックする。
「入ってくれ」
ガチャリとドアノブを回し中に入ると団長のトリシアさんの他に第三部隊隊長カルマンさんと、第五部隊隊長アルフレアさんが椅子に座り待っていた。
「第一部隊隊長アリア=シュタイン及び第六部隊隊長カナリア=ファンネル集合致しました」
「今都市に残っている隊長は君たちで最後だ、とりあえず座って話をしようじゃないか」
普段はあまり使用したことがないこの大きな机に椅子を並べいかにも会議室みたいになっているが、これはトリシアさんが持ってきた私物なのだろうか。
トリシアさんを見ると待ってましたとばかりに咳ばらいを一つする。
「では、今回都市に残っている者に集まってもらったのには理由がある。 郊外に出ているストライフとキールは情報は伝えているがいまはそっちを優先してもらいたくてね。 今は戦時中で隣のアルテア大陸とリーゼア大陸をガルディアンナイトが国土を広げるため行軍している。 そして今回連絡があり、左の大陸であるアルテア大陸の主要都市アルタを落とすことに成功し、我がガルディアンナイトが勝利を納めたそうだ」
「!?」
一堂に衝撃が走る、これまで目立った行軍がされてなかったガルディアンナイトだったがついに行軍し、主要都市であるアルタを手に入れたのか…… 前であったら素直に喜ぶことができたがアルテア大陸はシェリアの故郷なのだ、そして王族であるシェリアの住んでいたであろう都市アルタが落ちたということはシェリアの身内も殺されてしまった可能性が高く素直に喜べない……
「現在ガルディアンナイト団長テオのもと民衆の暴動を抑制し、管理下に置いているという。 とりあえずここを第二拠点として活動するらしい、そしてこのことをガルディアに住む民に伝えるために国王自ら演説を行う話が出ている。 君たちにやってもらいたいのは当日の国王演説の護衛だよ」
「また多くの血が流れたんですのね」
「あーアルテア大陸は獣人の種族の大陸だったよな?」
「そうだ、主に首都に住んでいるのは、動物的特徴のあるケモッテ族と鳥類的特徴のあるアンバー族が暮らしている」
「しかしこんな急に決着がつくなんてねぇ…… 今まで膠着状態でお互い決定打にかけていたのに突然どうしたんだぃ」
「ああ、そのことなんだがどうやら送られてきた情報によると、どうやら内乱が起こっていたらしくてね、特に名高いアンバー族の騎跳団は空中での戦いを得意としていて、苦戦していたのだが、そこも内部分裂していたらしくてね、そこを好機と見たガルディアンナイト団長テオが指揮を執り、制圧にかかったというのが今回の話さ」
内部分裂…… 内乱…… それでこんなにも早く制圧できたのか…… だが……
「すみません、アルテア大陸のほうでも勇者召喚は行われていたんですよね? その勇者は倒したということなのでしょうか? それにしては早いような気もします」
「ふむ、たしかにな…… 勇者がでてくるとなるとさすがに普通は苦戦するらしいのだが、情報によるとなんでもアルテアの勇者は王族の護衛として王族軍と逃亡している最中で今は捜索中で見つかっていないらしいんだ」
「!? 」
良かった。 まだ王族が全員殺されたわけではないのか……
「その捜索範囲を広げる前に一回今回のことを国王の演説として民衆や兵士に伝えることで士気を高める狙いがある」
「なるほど」
「その演説が行われるのが五日後の昼、そして演説と同時にガルディアンナイト団長テオの表彰も行われる。 ガルディア都市のガイム広場に舞台を設置し、演説が行われる予定だ。 当日は多くの人達が見に集まるため警戒をしてもらいたい」
ガイム広場はガルディア都市のほぼ中央に位置する場所にあり、普段は大きなイベント会場として使われている、多くの人達が見に集まるのはほぼそこしかないなと思われる大きめの広場である。
「舞台の建設は五日で間に合うものなんか?」
「その点に関しては心配はいらない、この催しのために各地から建設に携わる方達が非常に協力的でね、五日で仕上げられるそうだ」
「そりゃすげぇな」
「当日のアタシ達の配置場所はどこになるんだぃ?」
「アリア及び第一部隊は国王の背後の区域を警戒、カルマン率いる第三部隊は東区域周辺の警戒、アルフレア率いる第五部隊は西区域周辺、カナリアと第六部隊は緊急に何かあった場合のために医療班として私と一緒に行動してもらう」
「「「「了解しました」」」」
国王の背後にあたる位置が今回の配置場所か…… 背後はとても狙われやすい気を引き締めて警戒にあたるとしよう。
「とりあえずは以上が今回の特例任務だ。 詳しいことは後で追って連絡するよ、まだこの書類達を終わらせないといけなくてね、はぁ、……今回は多くの人が集まるため厳戒な警戒をよろしく頼む」
疲れた顔をしているトリシアさんを見るとまだ机の上には山のように書類が積み重なっている。 これを今から処理するのかと思うと気が滅入るのも仕方ないなと思ってしまう。
騎士団本部を後にした私はそのままターナーの家へ向かうことにした。
すでに毎回通うのが日課になりつつあるが、日々実力をつけていくシェリアを教えるのは私としても一つの息抜きとなっている節がある。
「やあ、ターナーさん、シェリア」
「あ、待っていましたよアリアさん、シェリアは待ちきれずに着替えて準備万端ですよ」
「アリア様! 修行を開始しましょう!」
璃々として目を輝かせるシェリアの上に目をスライドさせると耳がピコピコ動いている。 なんだろう、癒されるな、まぁ修行もするが今は話さないといけないことがある。
「修行の前に今回シェリアに話しておかないといけないことがある」
「なんでしょう?」
「さっきの情報なんだが、シェリアの故郷であるアルテア大陸の主要都市アルタが我が都市のガルディアンナイトの騎士団により制圧された」
「……嘘……」
シェリアは驚愕に目を見開き持っていた武器を落としてしまった。 カランという乾いた音だけが響く。
「王族軍は勇者を護衛に逃走をしているらしくまだ捕縛はされていないらしいのだが、王族軍はシェリアの家族もいるんだろう?」
「……はい、お父さんが指揮をとっている部隊です。 私はその勇者召喚が行われる前に連れ去らわれたのでその勇者のことは知りませんが、あまり良い状態であるといえませんね」
「多分だが捕縛されれば君のお父さんの命はないだろう……」
「そうですよね、それはわかっています……」
落ち込むシェリアに何か声をかけてあげたいがこればかりは私には何もできることがない……
「話の腰を折るようで悪いんだけどさ、もう少しで転移を可能とするマジックアイテムができそうなんだ、それがあればもしかしたら助けられる可能性があるかもしれないよ」
「なっ!? それは本当か!?」
「ああ、結構時間を食ってしまったけど近日中には完成できる。 多分二回しか転移はできないかもしれないけど行って帰って匿うくらいは可能なんじゃないかな? ちなみに転移の調整は方角と距離を設定して連れて行きたい人数を繋ぐことで可能となるはずだよ。 まぁそれの本格的な説明はできたときにでも話すよ」
さすがターナーさんだこのタイミングで願ってもないものを創り出してくれる。
「それとアリアさんにはこれを」
「これは二つ目の次元収納の指輪か?」
「ご明察! 中にとりあえず使えそうな武器は入れてあるから役立たせて」
「ありがとう! ターナーさん!」
「僕にはこれぐらいのサポートしかできないからね、それとアルテア大陸に行くためにシェリアちゃんのちゃんとした防具ももう少しで完成できるから」
「い、いろいろとなんとお礼したらいいか……」
シェリアが目に涙を溜めてターナーさんの手を握る。
「幸いなことに五日後にこの都市で国王の演説が行われる。 それまでの間の捜索はあまりされないと思うんだ」
「なるほどね、五日後以降か、それくらいまでならこっちも頑張って終わらせられそうだよ」
期限は五日後以降演説が終わり次第ガルディアンナイト団長であるテオが前線に帰還するまでに転移アイテムを使いシェリアの家族を救いここへ戻ってくるシナリオだ。
シェリアなら土地勘もあるだろうし、きっと見つけ出せるはずだ。
ただ前線には多くのガルディアンナイトの騎士がいることだろう、シェリアの実力を早急にあげなくては……
「それまで大変になるかもしれないが修行のペースをあげるぞシェリア」
「はい!!」
シェリアは武器を拾い直し、奥のいつも練習として使う部屋へ駆けていった。
私も後に続こうとするとターナーさんから呼び止められた。
「いつもアリアさんが帰った後も一人で訓練しているんだ。 シェリアちゃんの気持ちは本気だよ…… 本気で強くなろうとしてる、いままでは安全性を考慮した武器を使っていたけど今回はそう甘いことをいっちゃいけないことをしようとしてるんだ。 今日は僕の作った安全な武器じゃないほうを使って教えてあげてよ」
「ああ、わかった、加減はするけど回復薬は大丈夫なんですか?」
「この日のために多めに作ってあるから、ただほんとに加減はしてね」
注意喚起をされ、ターナーさんは回復薬を取りに走っていった。
私は次元収納から盾と剣を取り出し、奥の部屋へと向かった。
部屋に入ると中央にシェリアが目を閉じ集中して立っている。
「今日こそアリア様に一手ダメージを与えます!」
「今日は私はいつも使っている武器を使う、反撃もするからそのつもりでいてくれ」
二人の言葉はほぼ同時だった。
シェリアがえ? と驚く。
「ペースをあげるためだ、より実践に近い形で行う」
「わかりました」
一瞬驚きはしたシェリアだったがすぐに気を取り直したようで、剣を構える。
「コンセントレイト、スピーダー」
綺麗に紡がれた言葉は魔法となりシェリアの体を光が一瞬包む。 魔法は集中力、スピードの増加の効果。
盾を少し前に出し迎撃の構えをとる、これまで訓練してきてシェリアには驚かされてきたことが何度もある、まずそれはこの初激の速さだ。
トンと軽い踏み込みで一気にシェリアは距離を詰める、態勢を低くし、わずか三秒足らずで目前まで迫る、だが今回はいつもとは少し違うようで私の反撃を警戒してか攪乱させるような動きで左右を移動する。
「!?」
後ろから放たれたナイフを読んでいて盾で弾く、それで攪乱させた気になっているがまだ甘い。
「ハイウィンド!」
これは暴風か、強力な風の中級魔法だ、いつの間にこの魔法を覚えたんだ……
二つ目の驚きはその学習能力の速さだ。 シェリアは学ぼうと色々な本を読んでいた。 数日前に図書館で借りた魔法の中級の本を二日で読破し、そして理解もしている、こうやって実戦で使えるまでの成長を現に見せている。
「クッ」
盾を持つ手が暴風に持っていかれないように引き寄せる。 そこを待っていたかのようにシェリアが切り込んでくる。
「だが安直すぎるぞシェリア」
切り込んだ剣を盾で弾き、剣を持ち替え裏でシェリアのがら空きとなった腹部を殴る。
「かはっ!?」
軽く吹き飛ばされ地面を転がるシェリア、痛みをこらえているが無理もない、今までは反撃もせず、武器も安全性のある武器を使用していた。 防具をしてるとはいえその痛みに抗うのはなかなかつらいものがある。
「次に何がくるかイメージして向かうんだ」
「っ…… はい!」
立ち上がり、即座に魔法を放つ。
「ウォタラ!」
剣を一閃し、辺りに水しぶきが飛び散る、これはカナンも得意とした攻撃だったな。
たしか、その効果は触れたものを水に閉じ込めるんだったか……
「ハイアクアショット!」
大粒の水の弾丸が散弾のごとく向かってくる。 一つ一つが重い一撃なので必然的に動かないといけないのか…… だが……
次元収納から大楯を取り出し地面に固定するように構える。 これなら問題なく動かず対処できる。
「それを待ってました!」
シェリアが叫ぶが私も知っている。 そう大楯の欠点はその大きさで視界を遮るというものだ。
距離を一気に詰めるシェリア、だがこれの欠点を補えるだけの次元収納の収納スピードをシェリアは知らない。
水の弾丸が打ち止めになり、すぐに次元収納に大楯をしまい込む。
「いない!?」
左右を見渡し盾を構える、射ち終わりの直後ではそれほど移動できるわけがないはずだが、直後に異変に気付いた私は大きく後退する。
直後私のいた位置に大きなハンマーを振り下ろしたシェリアが落ちてきて地面を粉砕していた。
「アリア様をついに動かしましたよ!!!」
にこりと笑顔で答えるシェリア、そして本番はここからであった。
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===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
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【5話ごとのサクッと読める構成です!】
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
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