魔法力0の騎士

犬威

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第一章 ガルディア都市

アリアVSシェリア

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 辺りに砂塵さじんが舞う。
 さっきまで私が居た位置にはシェリアが大きなハンマーを振り下ろし、地面を大きく爆ぜさせていた。
 剣での対処法を考えていた私だったが、まさか上からハンマーで来るとは……


「そうかシェリアもターナーさんから次元収納の指輪を貰っていたのだな」

「そうです、一応奥の手だったので避けられて少し悔しいですけど」


 シェリアはハンマーを次元収納にしまうと剣と盾を取り出した。


「次は一撃当てます!」


「ウィンドエレメント!」


 風属性付加魔法か、シェリアはどうやら風属性が一番適性があるみたいだな。


 シェリアは左に軽くステップし、切り込むモーションに入る。下から低い姿勢で繰り出す突きは風属性の恩恵もあり、鋭い。
 咄嗟に盾で弾くが、シェリアはぶれずに二撃目を放つ。
 いい攻撃だ。 的確に防御し辛いところを狙ってくる。


 今度はタイミングが合い、力を乗せて大きく突進と合わせて弾く。


「っつ!?」


 大きく吹き飛ばされたシェリアは武器を離さず。 力を逃すためにゴロゴロと転がる。


「まだまだ!」


 起き上がり、シェリアは手に持っていた盾をブーメランの要領で鋭く投げる。
 盾を投げることに若干驚いているが、シェリアの応用力は私をも超える。
 弧を描いて飛来する盾を避けると、その盾にはチェーンが巻き付いていた。

「!!」


 シェリアのほうを見るとチェーンを片手に持ち、槍を構え、突進してきていた。

 シェリアがチェーンを引っ張り、避けた盾を引き寄せる。 盾は再び私に向かい迫る。
 正面ではシェリアが風属性をまとった槍を狙いを定め投げる。

 二つの攻撃が同時に迫る。 この時の対処法は……


「なっ!? 上!?」


 そう大きく跳躍ちょうやくすること。


 高く跳躍した私は次元収納からナックルとチェーンアームを取り出し、ナックルを装着、チェーンアームはシェリアに向かい発射した。
 シェリアは咄嗟にチェーンを避けるが、私が狙っていたのはシェリアではない。

 チェーンは地面に突き刺さり、私をその場所へ一気に引っ張られる。
 瞬時に私が移動してきたことに驚きを隠せていないシェリアが焦った顔で魔法を紡ぐ。


「ハ、ハイウィンド!!」


 至近距離すぎる為威力がそんなにでていない、それをシェリアもわかっているようで次元収納から小剣を二本取り出す。
 二刀か、私もまだ教えていないというのに、知識だけでわかるというのか。


 踏み込み、右、左と拳を打ち込んでいく、威力も抑え、スピードも抑えてはいるがちゃんと防御して撃ちもらしは今のところない、しかし慣れない二刀の為か防御がやっとで、攻撃には移れそうになさそうだな。


 そして私が拳を打ち込むことだけに注意を取られすぎている。
 先ほどと同じモーションで今度はシェリアの腕を掴みに行く。
 防御にまわっていた為咄嗟とっさの掴みに対応が遅れるシェリア、そのまま引き寄せ、シェリアの鎧の上部分を掴み、背負い投げの要領で投げる。


「ひゃぅ!!」


 ドンという音と共に背中から落ちたシェリアは苦悶の声を上げた。


「ぅう……悔しい…」

「だが、だいぶ強くなったなシェリア」

「一撃も当てられなかった……」

「そんなことはないぞ」

「え?」


 そうシェリアは一撃も攻撃を当てれなかったわけじゃない、最後の投げられる直前最後まで離さなかった剣が私の頬をかすめていた。 勝利への執念、最後まで諦めなかった一撃がちゃんと当たっていたのだ。


「嘘…… 当てられた…… やった……」

「シェリアは努力の天才だよ」


 毎日遅くまで魔法を勉強し、模擬戦では私の動きを真似ようと自分に取り入れていき、何度も私が帰った後反復して覚えている。


「よく頑張ったな」


 シェリアは瞳に涙を溜め、痛む体を抑えながら力強く頷く。


「はい! ありがとうございます!」


 フラフラで立つこともままならないのか足を痛めたのかシェリアは少しふらついている。


「ほら」

「え!?」


 しゃがみ込み背中をシェリアに向ける。


「あまり無理をするものではない、ターナーさんがいるところまで連れて行くから乗るといい」

「い、いえそんなっ!?」

「何を遠慮してるんだ? 立っているのがやっとだろう?」

「あ、ありがとうございます……」


 遠慮がちに乗ってくるシェリアを背負い、ターナーさんのもとへ向かうが、しかしシェリアは軽いな、鎧を着こんでるにしてもそんなに重量を感じないな。


「シェリア、ちゃんと食べているか?」

「え?食べてますけど、どうしてですか?」

「軽すぎる気がしてな、心配になった」

「アリア様、デリカシーがかけていますよ……」

「え!?」

「女性は気にする話題です、気を付けてください」

「あ、ああ、すまない」


 少し不機嫌になったシェリアを連れ、部屋を後にするとターナーさんが回復薬を抱えて武器庫から出てきた。


「大丈夫だった? シェリアちゃん」

「アリア様に殴られたり投げ飛ばされたりしましたけど一撃入れましたよ!」


 ターナーさんがジロりと見てくるが安心してくれ! 加減してるから!


「そうか! 一撃入れられるようになったんだね! すごいすごい! でも本当にお疲れ様、まずは怪我の治療をしないとね」


 私はシェリアを下ろし椅子に座らせるとターナーさんから包帯と回復薬を渡された。
 回復薬はそのままシェリアに飲んでもらい、足を怪我しているシェリアに包帯をくるくると巻いていく。


「手慣れていますね」

「ああ、騎士になる前に一通りの応急措置の技術は学んである」

「なるほど、それでですか」

「私は魔法が使えないからな、当然回復魔法なんてないし、怪我したときは自分で治さなきゃいけなかった。 回復魔法は便利で瞬間的だ、だがそれは一時的に過ぎないし魔力も大きく失う。 こうした応急措置の技術や回復薬は時間はかかるが確実性があるんだよ」

「私も覚えておきます!」

「ああ、覚えておいて損はないからな」


 そんな話をしているうちにシェリアに包帯が巻き終わった。


「これで明日にはちゃんと動けるようになるだろう」

「ありがとうございます、アリア様」


 ターナーさんをちらりと見ると穏やかな優しい目をしていた。 シェリアのことが心配だったのだろう。 それでもこの回復薬の量は持ってきすぎというかなんというか……


「それにしてもターナーさんがシェリアに次元収納の指輪をあげているなんて思いませんでしたよ」

「それは僕がシェリアちゃんにあげたサプライズプレゼントなんだ! なんでもアリアさんと同じもの…… もがが……」

「それはいまはいいです! ターナーさん!!」


 シェリアに口元を抑えられ慌てるターナーさん、シェリアはなんだか顔を真っ赤にして怒っているがこれも聞いたらダメな話題だろうな。


「そしてもうひとつシェリアちゃんに僕からプレゼントだよ!」


 はいっとシェリアに手渡されたのは立派な可愛い鎧だ。


「待ってる間にね大急ぎで作っていたんだ、材料はアリアさんと同じ素材のアルマタイトを使った軽くてすごく硬い素材なんだ」

「ターナーさん…… ありがとう……」


 ぎゅっと自分の新しい防具装備を胸に抱え、今にも泣きそうな顔をするシェリア。


「きっとシェリアちゃんに似合うと思ってね、ちょっと着てみてもらえるかな?」

「わかった」


 シェリアは着替えるために奥の部屋に入っていく。



「あ、シェリアちゃんの防具装備の金額はアリアさんの分からちゃんと引いたから安心していいよ」

「うん…… そうだと思ったから…… いいよ」


 わかっていた、あんな高価な金属を使っているんだ。 私の給料はこれでほぼ無くなった気がするな……



 数分後着替えたシェリアがおずおずと奥の部屋から出てきた。


「どう…… かな?」



 不安そうにぺたんと耳が折れているが、そんなことはない十分に可愛い仕上がりになっている。
 色は鎧の部分がシルバーと薄い青色で彩られ、緑を基調とした色合いのマントや布の割合がどちらかといえば多いがターナーさんの【武器創造】で布の割合にもアルマタイトを織り込んでいるようだ。 そして鎧の中心に緑の宝石が埋め込まれている。
 下はスカートになっていてとても動きやすい作りになっているみたいだ。
 これにアルマタイトより一つ下の金属を使った黒いロングブーツを履いている。

 なんだか私の防具よりもいいのを使ってるし高いんじゃないかな……


「うん!  僕の見立ての通りばっちり可愛いのができたね! それに硬度も凄いし、胸の宝石は風属性の技を強化する宝石を使ってるんだ!」

「たしかにとても可愛いし高性能だ」

「か、可愛いだなんて……」


 頬を赤らめるシェリアだったが、ターナーさんは逆に悲しそうな顔をした。


「これでシェリアちゃんの為にやれるべきことはあとは転移アイテムだけになったわけだね」


 ターナーさんはわかっているのだろう、シェリアが元の大陸に戻り家族を助けた後はここには戻らないことを…… だから転移アイテムの使い方を教えようとして別の大陸に逃げれるように……

 きっとターナーさんのことだここの座標なんて教えないはずだ……
 私はシェリア達を逃がした後ガルディアンナイトの陣地に赴きテオに話をして、船を借りればいいだけで、シェリアの父が指揮する王族軍はシェリアが話をつけてくれるだろう。



「ターナーさん!こんないいものを作ってくれてありがとうございます!」

「シェリアちゃんの為さ! かまわないよ! 家族は大事だからね! ちゃんと助けてあげておくれ」



 努めて明るく振舞おうとするターナーさんに心が痛んだ。

「ええ、ターナーさんはもう私にとって大切な家族の一人です! ちゃんとお父さんと合流できたらターナーさんを紹介しますよ!」

「シェリアちゃん……」

「えっ!? どうしたんですか? ターナーさん!」

「だ…… だんでも…… ない…… よ」


 大粒の涙を流しながらシェリアに抱き着くターナーさんはとても嬉しそうに見えた。
 家族を目の前で失ったターナーさんだからこそ家族の大事さを一番わかっている。 そんなターナーさんをこの短い期間でもシェリアは家族として思ってくれていたことに嬉しくないわけがない。


「生きていて…… 良かった…… よう」

「大袈裟ですよ…… 私のほうこそターナーさんには色々と貰いっぱなしじゃないですか」

「今の言葉だけで僕は十分満足したよ……」

「いいや、ダメです! いつか恩返しさせてくださいね!」

「!! わかったよ…… ありがとうシェリアちゃん」


 涙を拭い再び笑いあう二人は本当に微笑ましい。
 そんな光景をいつまでも見ていたいと思うのであった。









 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 場所は変わり、とある屋敷にて二人の男が酒を飲み話していた。


「どうした?テオよ、お前の功績だ、もっと喜んだらどうだ?」

「いえ、まだ安心はできません、暴動も一時的に鎮圧できただけに過ぎないので引き続き部下と対策を取る所存です」


 カランとグラスの中の氷が揺れる音が室内に響く。


「まあ飲みたまえよ、着々と計画が進んでいることは喜ばしいことだ」


 とくとくとグラスに酒が注がれる。


「ですが次の段階に移っても本当に良いのですか? 戦力を削ぐためにこのような」

「計画に支障はない、でしゃばるなテオよ」

「出過ぎた真似をお許しください」

「よい、あいつはもう不要だろう、私の失敗作だ。 早めに処分しときたいんでな頼むぞテオよ」

「……はい」


 渡された酒をちびりと飲んでいく、喉が焼けるように熱いのはアルコール度数が極めて高いからだろう。


「それでどうだった? 騎跳軍は?」

「問題なく内部分裂を起こしてくれたみたいで、難なく」

「そうか、クハハハッ」

「恐ろしい力です、まるで人が変わったかのような振る舞いになったと聞きます……」

「当たり前だろう、アイツの力で記憶を捏造ねつぞうしているんだからな」

「味方でよかったとこれほど思ったことはありません」

「クハハハッお前も安心しきってるんじゃないぞ? アイツを扱えるのは私だけだということを忘れるなよ? いつでもお前の記憶を捏造できるんだからなぁ」

「わかっております」

「クハハハ、次でさらに大きく動くぞ、従うものは部下にし、拒絶するものは破棄しろ」

「はい、仰せの通りに」

「まずは五日後、ここから私は表舞台に立ち世界を支配する」

「……」



「全ては世界統合の名のもとに王は私一人でいい」


 室内には男の笑い声が響き、外はゆっくり夜の闇に沈んでいった。


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