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第一章 ガルディア都市
家族
しおりを挟む「なんてことだ!?」
いったい誰の声だ。
意識は曖昧で立っているのか浮いているのかわからない奇妙な感覚に陥る。
音が頭の中を行き交い頭痛がする。
その音は私の頭を抜けると光になり、その光は様々な色を持ち目前をいくつも行き交う。
そこで気づく、ここが凄く白い空間だという事を。
白い。
どこまでも続いているような白い空間に様々な色をした光が私を取り囲むかのようにぐるぐると回っている。
突然その光達は一斉に私に降り注ぐ。
私は避けることもできず光に飲まれた。
突如頭の中に音が溢れかえる。
痛い!!痛い!!なんだ!?なにが起こってるんだ!?
私はもがき、なんとかその光から逃れようと走る。
上も下も前も後ろもわからずただ光から逃れるように
「***、*****!」
「**!!*********!!!」
何もわからない!やめてくれ!!頭がおかしくなりそうだ!!!
その頭痛は酷くなるばかりだ。
「やはり失敗か」
え?
ふいにクリアに聞こえた言葉はやけに聞いたことのある言葉だった。
白い世界は突然終わりを迎え、暗転する。
ーーーーーーー
ーーーー
ー
「っつ…… 私は…」
上体を起こし周囲を確認する。見るとそこは見慣れた武器や棚が立ち並ぶ風景、ターナーさんの家であることが理解できた。
「「アリアさん!」様!」
ターナーさんもシェリアも不安そうな顔で私を見る。
どうやら疲労の為か家に着いた時に意識を失っていたんだな。
今はベッドの上に私は寝ている。このベッドはいつもはシェリアが使っていたものだろうか?私の血で汚れていなければよいが…
そして自分の体を締め付ける違和感に気づき左手で右手があったところを触る。
そこには綺麗に包帯がまかれていた。
「これは…… シェリアがやってくれたのか?」
「はい、酷い怪我だったので」
包帯は綺麗に巻かれ、どうやら塗り薬も塗ってくれたみたいでツンとした薬草の匂いが鼻を刺激した。
服も鎧もクリーンの魔法がかけてあるようで洗ったばかりのように綺麗な状態だった。
いつのまにこんなに応急措置が上手くなったんだ。
「すまないな、ありがとう」
「それで、なにがあったのですか……」
語らなければならない。全ては罠だったことを。
「ああ、それはな、シェリアもターナーさんも今日は何がある日かわかるか?」
「ええと、国王演説がある日でしたよね、私の住んでいた都市を手中に収めた話をする為に」
ターナーさんも同じ意見だったらしく大きく頷いている。
「ああ、その国王演説の最中に国王が殺された」
「!? ええっ、誰がやったのですか!?」
「私に成りすました者が国王を亡き者にした」
「「!?!?」」
「私はその時に警護に当たっていたんだが、敵の…ユーアールの姿を見つけ焦った私が独断行動をしたあげく逃げられないようにされ、その時に私と入れ替わるように私に成りすました者が国王を殺害した」
「つまりアリアさんは冤罪をかけられたわけだね」
「そうだ、すぐに追手がよこされ、そしてその追手が私に武器を教えてくれた師匠だった。必死に私じゃないことを主張したが、師匠も敵側だったみたいでね…」
「その腕は… その時にですか…」
「ああ、まったく歯が立たなかった、仲間が助けて逃がしてくれなかったら今ここに私はいない。そのまま殺されていた」
「仕組まれていたんですね、最初から!!」
シェリアが肩を震わせ怒りで声が大きくなる。
そうか、誰かが私の為に怒ってくれるとこんなにも救われた気持ちになるのか…
「ありがとう、シェリア」
「!? い、いえ、私は何も」
シェリアの頭を優しく撫でる。
シェリアは恥ずかしいのかそっぽを向いてしまってるが、避けもせずそのまま撫でられていた。
「ごほん!! 話が逸れていますが!! つまりアリアさんはこの都市ではお尋ね者になったというわけですか」
ターナーさんが大きく咳払いするとそれに驚いたのかシェリアは猫耳をぴーんと伸ばし背筋を整えていた。
思わずその姿に笑いがこらえられず吹き出してしまった。
「なにを笑ってるんですか!! まあでもちょうど今日に間に合ってよかったです」
だが逃げる最中に見てしまった。捕らえられる第1部隊の仲間の姿を。
必ず助け出さないといけない。
「私は捕らえられた仲間を助けに出てくるよ」
「何を言ってるんですか!!!」
突然声を張り上げたターナーさんに私もシェリアも驚く。
「アリアさんのその正義感は立派です!! ですがもっと自分を大切にしてください! 仲間が必死に逃がしてくれたんでしょう!! その気持ちを踏みにじる気ですか!!!」
「ターナーさん…」
「また死ににいくつもりですか!アリアさんは自分が死んだ後のことを考えたことはありますか?いつだって苦しいのは、辛いのは残された側のほうなんです!!アリアさんも私にとって大切な家族の一人なんですよ!!もう家族が死ぬのは見たくないんだよ!!」
言葉が胸に刺さる。
涙ながらに叫ぶターナーさんを私はただ見ていることしかできなかった。
私はわかった気でいただけだったんだな…
「すみません、取り乱しました。 今は一番危険なシェリアちゃんの家族を助けてあげてください、どちらも危険なことに変わりはないですし、命に優先順位なんてつけてはいけないんだけど、アリアさんの仲間はそんなに頼りなかったですか?アリアさんが今出て行ってもそれはただ死にに行くのと変わりません、それなら違う大陸で助けられる可能性のあるほうを優先してください。シェリアちゃんには僕みたいに家族を全員失ってほしくはないですから…」
「…わかったよ」
「準備はもうすでに終わっていますので行ってください。それとこれも」
ターナーさんが手渡したのは薄手の茶色のロングコートだった。
「アリアさんの今の姿ではシェリアちゃんの家族に誤解されてしまいます。なんの効果もない普通のコートですがその鎧を隠してくれると思いますので」
「ありがとうターナーさん」
隣を見るとシェリアも同じロングコートを渡されたみたいで鎧に着替えに奥の部屋に駆けていった。
「ほとぼりが冷めるまでとは言ったけど、もうシェリアちゃんにも会うのはこれで最後かな」
「やっぱりターナーさんは転移にここを指定してないんだね」
「うん、そのほうがシェリアちゃんにはいいよ、こんな閉鎖された空間にいちゃダメなんだ。お願いだからこのことはシェリアちゃんには内緒にしてくれよ」
「ターナーさんはこれからどうするんだ?」
「うーん… そうだねぇ… 言ってなかったけど僕は、そろそろ終わりが近いんだ」
「え!?」
「魔力を使いすぎちゃったみたいなんだ、だから余生をゆっくりここで過ごすとするよ」
「そんな!? どうしてそれを今まで…」
「誰かが困っていたら助ける! 君に教えてもらったことだよ」
「ターナーさん…」
「次は僕が君を助ける番なんだ、そして今度はシェリアちゃんを助けてあげて」
「すまない、ターナーさん、君を… 自由にして… あげたかった…」
これは不甲斐ない自分に対しての怒りだ!なにもできていない!
悔しさが胸にこみあげてくる。
「泣かないでアリアさん、僕は前にもいったけどもう十分なほど貰っているよ、アリアさんもシェリアちゃんも僕の大切な家族。そして君は僕にとって憧れの正義の味方なんだから、ちゃんと前に進んでおくれ」
「ああ、今度こそ守ると誓うよ」
「それでこそ僕が誇る自慢の家族で僕の憧れた正義の味方だよ」
朗らかな笑顔で笑うターナーさんはどこか大人びた顔をしていた。
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