魔法力0の騎士

犬威

文字の大きさ
54 / 104
第二章 アルテア大陸

side カナリア=ファンネル ~裏切り~

しおりを挟む
 ねぇ… なんでこういう風になっちゃったのかな…


 巨大な斧は顔のスレスレを風を切るように掠めていく、あれに切られたらひとたまりもないことは誰にだってわかる。
 そのまま打ち下ろされると爆ぜるように地面から水が噴き出し、そのままの勢いで切り上げを行う。

 何度も見てきているからわかる、アルフレアの得意とする攻撃。
 ひらりと避け、バックステップで大きく距離を取る。


「チッ」


 赤い髪はとても綺麗な色をしていて、高い身長は私の憧れだった。

 アルフレアは赤い髪を振り上げ、その手に持つ巨大な斧で再び私に近づこうと接近する。


「アイスニードル!!」


 アルフレアは身軽な身のこなしで無数の氷柱を次々と避けていく。


「サンガー!!」


 避けた隙を狙い、音速の雷撃を飛ばす、普通ならば避けるのに気を取られ、雷撃の反応に遅れる。
 だが、アルフレアは持っている巨大な斧を高速で回転させることによって、雷撃をも防いでいく。


「その攻撃は想定内のうちさね」


 そうだよね、防がれるよね、
 だって…あんなに一緒に魔法対策の摸擬戦をした仲だもの…


「今度はこっちの番だよ、ハイスプラッシュエレメント!ハイスピーダー!!」


 高等の水属性付加魔法、スピードの強化、ほんとに、私を殺す気なのねアルフレア…

 水の奔流が巨大な斧に纏わりつく、それを眺め、思い出す。
 私はアルフレアの水魔法が綺麗だと話したことがあったよね…

 アルフレアは実は繊細で可愛いものが好きで、でもそれを似合わないからと言って隠していたっけ。
 中でも水魔法はアルフレアが一番得意とする魔法で、細やかな水を操る技術はとても綺麗だった。


「フライ!!コンセントレイト!!」


 私が一番知っていた。
 その技も、仕草も、一番近くで見てきたから。

 だから私も本気でいくよ。


「ようやく本気かい、浮いてからが怖いのはアタシもよく知っているさ」


 一瞬だけアルフレアの表情が曇った、すぐに突っ込んでくる様子はなく、おそらく次の攻撃はこう来る。


「ウォタガ!!」
「フレア!!」


 同時に展開された爆炎と豪水魔法は衝突し、激しい水蒸気となり、離散する。
 その勢いは辺りの家屋を吹き飛ばしかねない威力だった。

 辺りには水蒸気が舞い、とても濃い濃霧となる。

 その濃霧はアルフレアにとって有利に働きすぎる。

 濃霧で辺りは何も見えず、だが水の弾丸が私を貫こうと幾度も撃ち込まれる。
 それを買い潜るように飛翔し、幾度もギリギリで躱していく。

 風を切るように、空中へ飛び上がり、濃霧を晴らすため下に向かい手をかざす。


「トルネド!!」


 巨大な竜巻が下に向かい噴出される。
 もうこの付近にいるのは私とアルフレアしかいない、躊躇って今まで使わなかった攻撃じゃないとアルフレアは倒せないわ!!

 竜巻は真っすぐ、その威力を持って霧を晴らし、アルフレアに向かい突き進む。


「マッドストリーム!!!」


 振り上げた巨大な斧の先からとてつもない水圧の濁流が竜巻に向かい噴出される。

 すごい攻撃、あの巨大な竜巻が押されていく、だけど攻撃に集中しすぎて足が止まっているわよアルフレア!!
 片手を風魔法の維持で固定したまま、もう片方の手を振り上げる。


「クエイク!!」

「グゥウウウ!!!」

 アルフレアのいる地面から無数の槍が飛び出し、アルフレアの体を次々と突き刺していく。


「ガハッ… に、二重… 魔法…」


 私の得意とする二重魔法、まさかこんなことで使わなきゃならない時が来るなんてね…


 体を貫かれたアルフレアは力無く崩れ落ちて壁にもたれかかる。

 中空でそれを眺めていた私は、涙が流れていた。

 ねぇ、なんでこんなことになっちゃったのかな…
 私は大切な仲間を傷つけたくなかったのに…

 はっと気づいて地面に降り立ち、慌ててアルフレアの元に駆け寄る。

 もうわかっている。

 だけど駆け寄らずにはいられなかった。

 私のせいなのに…


「ハイヒール!!」


 血だらけのアルフレアに駆け寄り、大きく空いた空洞を塞ぐ為に触って回復魔法をかける。
 血はどんどん溢れ出て、魔力の少ない状態では一向に塞がる気配を見せない。

 ダメだ!塞がらない!!
 こんなはずじゃ…
 こんな… はずじゃ… なかったのに…


「ハイヒー… あうっ!?…」


 意識の残っていたアルフレアに思い切り突き飛ばされ、地面に転がる。


「やめ… ろ… もう…  いい、アタシは… たすから… ないよ」


 振り絞りだした声は今にも途絶えてしまいそうだった。


「ダメよ!!まだ助かる!!」

「ばか やろ… 余計な… こと… するな」


 ふと突き飛ばされた時にアルフレアに何か一緒に送り付けられた気がした。
 そこには血に濡れた一つの鍵があった。

 顔を上げアルフレアを見ると少し微笑んだような顔をし、血まみれの腕で髪を触る。


 そこで全てわかってしまった。


 気づいてしまった。


 アルフレアはとても口下手で、嘘をつくときの癖がある。


 隠し事がいつも下手な私の親友。


 嘘をつくとき、いつも髪をいじる癖がある。


 私だけが知っていた。


 最初から嘘をついていた。


 私を怒らせ、戦わせる為に…


 どうして今になって気づいちゃったのかな…

 立ち上がり、鍵を握りしめ、前を向く。
 私の親友を最後に目に焼き付けるために。


「反逆者…め… 牢屋に… ぶちこまれ… ろ」

「私達は絶対に捕まらないわ!!」

「そう… か」


 あまりにも下手すぎる嘘。アルフレアは少し微笑んでそれから目を閉じる。
 握られた手のひらは痛いほど血が滲み、私はくるりと向きを変え門の外へ走る。


 走れ。


 走れ。

「うっ…うぅうううぅう」

 涙が止まらない、それでも進むしか今はないんだ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

処理中です...