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第二章 アルテア大陸
カインとアイン
しおりを挟む「さあ、隠れてないででてきたらどーだい」
「俺らが相手してやんよ!」
本当に瓜二つの双子の銀狼の少年は武器を構え、真っすぐこちらを見る。
気の強そうな方が、カインだったか、そっちが拳に爪付きのナックルを嵌めている。
こっちの物腰柔らかな方が、アインか、手にはクロスボウを持ち、油断なく構えている。
こんなとこに隠れていてももう意味はないな…
シェリアに目配せをして、出ることを決める。
なにも戦いに来たわけじゃない。
「待ってくれ、私たちは君達の敵じゃない!」
手を上げ、戦う意思がないことを示すため、声を上げ木から出る。
万が一のことがあったら困るため、シェリアには私の後ろにいてもらう形で出てきてもらう。
「ようやくお出ましか、アンタら一体何者なんだ?返答次第によっては殺さないといけなくなるが」
「落ち着いてよカイン、こういう時はまずは自己紹介をするものだよ」
「甘いな、アインは、敵だった場合情報を与えることになるじゃねえか」
カインは鋭く私たちを睨みつけてくる。
誤解されないといいんだが…
「私は…」
「私は、アルテアの王女、シェリア=バーン=アルテアです! わけあってガルディアの兵から逃げている所をこの方が助けてくれたんです」
シェリアが私が喋ろうとしたのを手で制して、前に出て話す。
ここは任せたほうがいいか…
「王女だと!?」
「たしか数週間前、王女と王妃が何者かに連れ去らわれたという事件があったよ」
「たしかにお前は赤い髪で、ケモッテの王族の一族に似ているが…」
「あの大事件で国は荒れてみんな既に諦めていたのに、まさか王女が生きていたなんて」
「だが、なぜ王妃のほうはいないんだ?」
一瞬シェリアの顔が曇った、それは一番シェリアが話したくない事だ…
「そ、それは… 母は… 私の目の前で魔物になって… 亡くなりました」
シェリアの耳がぺたんと下がる。
「そうか、そいつは嘘は言ってねぇな、今ので俺はわかった」
「カイン、【真実の目】を使ったんだね」
「ああ、こいつは本物の王女で今の話も本当だ、すまないな、嫌なこと聞いちまって」
「い、いえ」
カインの手に持っているあれが【真実の目】というマジックアイテムだろうか…
「だが、ヒューマンのあんたは、何を思ってるのか全くわからねぇ、【真実の目】が発動しないなんて初めてだ」
急にカインは私に向かい鋭い視線を送る。
「お前は信用できないな、ヒューマン!」
今にも殴りかかってきそうな気迫がビシビシと感じられる、仕方ないか、シェリアとはここで別行動…
「ア、アリア様は!!私の命を救ってくれた恩人なんです!!信じてください!!!」
大きな声を張り上げるように叫ぶシェリア。
それに驚いたのは私だけではないようで、カインとアインもびっくりしたような顔になっている。
「…行くぞ、アイン、お前たちも一緒に来い!」
「え!? いいの? カイン、【真実の目】は使えなかったんでしょ?」
「ばっか! お前、あんなん顔に書いてあるのと一緒じゃねえか!見なくてもわかるわ!」
「え? なにが?」
「アイン、お前普段あんなに鋭く察知したりしてるのにこういうのはわからないとか…」
カインは頭を押さえ、深くため息を吐くと、村へ向かって歩き出した。
「あ、ちょっと待ってよ」
アインもカインの元へ走って追いかけて行った。
「私たちも行くか」
「そ、そうですね」
村は驚くほど静かで、どうやら村の住人は避難した後のようだった。
少し前を歩く双子のカインとアインはこうして改めて見るとほんとによく似ている。
服装は軽装の鱗のような青い鎧と金属を張り合わせて作られた物を着ており、二人とも銀色の髪を同じような長さにしている。
後ろから見るとどっちがどっちかわからないな…
年齢は15歳くらいだろうか… まだあどけなさが抜けきってない顔だちをしている。
片方が振り返り、私に話しかける。
これは…
「言っとくが、俺はアンタを完全に信用したわけじゃないからな!特例だ」
こっちがカインだな。
「特例は今回で二人目になるね」
こっちがアインか。
どうして双子でも口調がこんなに違うんだろうか…
「二人目?」
シェリアが不思議そうに聞いている。
「ああ、アルテアの勇者のことだよ」
そうか、勇者は3大陸で召喚されていたんだったな…
「あいつを入れて例外は二人目ってことだ、元々ヒューマンは毛嫌いしてるんだから感謝してくれよな!」
「ああ、ありがとう」
「そいつもこの村に俺たちと一緒に来てるんだ、本隊とは随分離れてしまったが、食料がこの村に残っているから取りに来たんだ、なんて言うんだっけな…えーと、そだ! シンガイって言うんだ!」
「?」
シンガイ?
「カイン、殿って言いたいの?」
カインは一瞬小さな声で「えっ?」と洩らす。
「わ、わ、わざとだから!! 知ってたよ? こいつらがちゃんとわかるかなーと思ってわざと間違えてやったんだからな!」
カインは汗をかきながら、胸を張り答える。
若干アインは呆れ顔だ。
カインとアインはそのまま近くの民家の中に入ると、ある男に声をかけた。
「おっさーん、戻ったぞ」
「だから、おっさんじゃないと何度言ったらわかるんだ」
振り向いたのは黒く日に焼けた顔、いや、初めて見るな、それよりも黒い肌をしたスキンヘッドの男性、これがアルテアの勇者か。
「客か?それとも捕虜か?」
怪訝な顔をした黒人の男性は、私たちを眺めると、カインとアインに視線を移した。
身長は私より若干低い180㎝くらいだろう。
年齢は40歳代だと思われる。
「こっちはアルテアの王女で、こっちがその王女の命の恩人だそうです」
アインが簡単ながらも軽く説明をする。
「まっ、つまり敵じゃないんだな」
「そゆこと」
ふーと大きく息を吐くと、安心したのか私たちに笑いかける。
「すまんな、挨拶が遅れた、俺はアルテアの勇者なんかをやってる、ロマナ・マーキスって言うんだ。気軽にマーキスと呼んでくれ、よろしくな」
マーキスさんが手を差し出してくる。
「?、握手を知らんのか?」
アクシュ?
不思議そうな顔をしていると私の左手を取り、握ってきた。
「握手ってゆーのはな、まあ、よろしくって意味だ!それでお前たちの名前は?」
「あ、ああ、私の名は… アリアだ」
「私はアルテアの王女をしている、シェリア=バーン=アルテアといいます、こちらもシェリアで構いません」
一瞬考えてしまった。
もうこれからはシュタイン家ではなく、ここにいるのは只のアリアだと。
あんなことがあった後だ、もう家名を必要とはしないだろう。
「アリアにシェリアちゃんね、よし覚えたぞ」
「おっちゃん記憶力はいいもんな」
カインが笑いながら言う。
「おっちゃんじゃなくて父ちゃんと呼べと言っただろう」
「ばっか!誰がお前を父ちゃんだなんて呼ぶか!おっちゃんはおっちゃんだ!」
「こんにゃろー」
マーキスさんはカインの頭を乱暴に撫でまわしながら笑う。
カインは見るからに嫌そうな顔をしているが…
「アリアさん、マーキスさんは僕たちのような孤児の面倒を見てくれているんです」
アインが私達に近づき、目を向け話す。
「勇者召喚の巫女がたまたま僕達の面倒を見てくれていた教会の神父さんだったんです。」
そうか、だからマーキスさんはこの子たちの父親の代わりになろうとしてるのか…
「うっし、そろそろここも出るとするか、早めに本隊に合流しなきゃいけないからな、行方不明の娘と母親をあいつはひどく悲しんでいたからな、無事を伝えてやりたい」
口ぶりからマーキスさんとシェリアの父親は随分と仲がいいように感じられた。
私たちは付近の食べ物が入った荷物を持ち、村を後にするのだった。
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