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第二章 アルテア大陸
名もなき村長
しおりを挟む「あの冒険者達に任せて本当に大丈夫なのか!? あんな魔物見たことがねぇ!今からでも遅くない加勢をしに行くんだ」
「忘れたのかカルマン!!俺達の目的はなんだ! 皆を安全に導く事だろう!目的を見失うんじゃねえ!俺達が抜けたら誰が皆を守るんだ」
「じゃあお前はあいつ等を見捨てろと言うのか!」
「そうだ、犠牲は付き物だ今は何としてでも先に進まねばならない!」
「よさんか、お前ら!!」
胸倉を掴み、今にも殴り合いになろうとしている所に声がかかる。
「爺さん…」
「師匠…」
「まったく見ておれん、村の指揮権はキール、お前に渡す。 早く船を出し、出立しろ」
「爺さんはどこに行くんだよ」
「なに、若い者の未来は昔から儂等の役目と相場は決まっておる。儂が加勢してくるのでな、先に行っておれ」
「すまない、師匠」
「よい、お前は生まれた子と妻を守るのだろう。 儂にも守りたいものがある。 ただそれだけだ」
「爺さんアンタ死ぬつもりなのか、見ただろ、アイツは本当の化け物だ」
「知っておるよ、あんな魔物など見たことがない、だがな、儂にも奥の手というものを隠し持っておる。そう簡単にやられなどしない」
「その決意は本物なんだな」
「フハハ、お前もキールも心配がすぎる、儂はこれでも一時勇者を名乗った身だ、時間ぐらい稼いでみせる」
「わかった。 俺達は俺達のやるべきことを成す、行くぞキール」
「ああ」
村の民を連れ、彼らは行軍を再開するのであった。
やれやれ、あの騎士といい、キールといい、心配が過ぎる節があるからこうでもしないと重い腰を上げれんのう。
腰にさしてあるのは名刀雷華。かつては多くの異世界人がこの世界に現れ、魔王となった魔物を倒すために戦いをしてきたものだ。
懐かしいのう、もうあれから40年程経つのか…
儂の昔の名は、長澤 誠。そして今はただの村長である。
もう召喚前の事はあまり覚えとらんが、召喚された当初の事は今でも鮮明に思い出すものじゃ…
ーーーーーーー
ーーーー
【40年前旧グランディア】
「…以上ここに20名の召喚者を紹介する!」
ずらりと並んだ俺を含める勇者と呼ばれる者たち、その誰もが突然の事に驚きを隠せなかった。
年齢層もバラバラで、国籍も様々だ。
初めは異世界召喚なんて夢のような展開に心が躍った。
ここは現実世界と違って魔法がある世界だ。
俗に言うファンタジー世界ってやつだ。
俺達がここに呼ばれた理由は至ってシンプルで、世界を魔王の手から救ってほしい。
魔王の脅威から民を守ってほしいといういかにもありがちな展開だった。
俺達はこの世界に来た特典みたいなものを各自いくつか貰っていて使命を果たすたびに強化されていく仕組みだった。
それぞれに相性がいい者達といわゆるパーティを組んで協力する流れに自然となっていった。
「よろしくな、同じ日本人なんだからよ」
「ああ、俺の名前は長澤 誠だ。元居た世界では普通の高校生だったよ、アンタは?」
「俺の名は、桜坂 健吾だ。元の世界では消防士をしていたんだ」
気さくに話しかけてきた健吾という同じ日本から来た黒髪短髪のオレンジ色の多分作業服みたいな服を着ている男性だった。
「あっ、すみません、年上ですよね」
「いいんだよ、気にすんな。これから長い付き合いになるんだからよ、お互い敬語は無しにしようじゃないか誠!」
「…わかった、ありがとう健吾」
「いいですねー、友情とはこういうものから始まるんデスよねー」
そこにニヤニヤとした満面の笑みで近づいてくるブロンドの長い髪にアニメのキャラがプリントされた服とジャージを履いた女性。
「はーい、ワタシもいれてほしいのです!ワタシは、エミリー、仲良くしてね」
「あ、ああ、よろしく」
「お前、ここではどの言葉も共通になるのになんでそんなカタコトなんだよ」
「ワタシ、日本が大好きナンですよー、だからこういう話し方のほうが海外キャラっぽくアリませんかー?」
「なるほど、エミリーさんはわざとそんな喋り方なんだ…」
「はーい、そうなのデスよー、これからよろしくですよ、マコト、ケンゴ!」
「こ、個性が強いのが来たな…」
これには健吾もタジタジだった。
他の人達も順当にパーティを作っていくとあまり詳しい説明もされないまま、俺達は魔王を倒すべく行動することとなった。
そして俺達は知ることになる。
いかに時間が足らな過ぎたということを、既に手遅れになるほどにまで魔物の軍勢は近くまで押し寄せてきていたということを。
「なんだよ、これ」
「嘘だろ…」
「冗談にしても笑えない…」
王宮と呼ばれる場所を出ると、そこは既に火の海だった。
瓦礫は崩れ、その下は城下町だったのであろう町も今は見る影もなく炎に包まれている。
「「「「どうか!!私達をお救いください!!!」」」」」
後ろでこの世界の人々が必死に頭を地面に着け、涙を流し頼み込んでいる。
そんな光景に誰が嫌だと答えられただろうか。
そう、この世界はとっくに終わっていたのだ。
「そんな、無茶だろ… だって俺らまだ召喚されたばかりなんだぞ…」
「冗談じゃない! 俺たちを元いる場所に返せ!!」
そんな言葉があちらこちらから聞こえる。
わからなくはない、だが、この人達も必死なのだ。
「お願いです!私達は大切な家族をも生贄として勇者召喚に捧げました!どうか!どうか!この世界を救ってください勇者様方!!!」
その言葉にはどんな重みがあったのだろうか。
家族を生贄にして… 俺らを呼んだのか…
さっきから知りたくもなかった視界の隅にある大きな袋には一体何がはいってるんだ…
「救いマショウ、マコト、ケンゴ、私たちが弱音を吐いてどうするんですか、私達が希望となりこの人達を導くんです!」
「ああ、ただ終わるだけなんてらしくないからな、足掻いて足掻いて、生き残ってやろうじゃないか!」
「わかった、必ず倒そう!魔王を!」
「ああ!!」「ええ!!」
俺達は死に物狂いで3日間ぶっ通して魔物の軍勢に立ち向かった。
それは最初は不利であったが、能力をうまく使い、他のパーティとも連携を取りつつ戦って、なんとか前線まで押し寄せていた魔物を押し返すことができた。
「はぁ… はぁ… 今… 何人残ってる?」
「はぁ… はっ…8人だ、だいぶ殺された」
「そう… デスか、随分減りましたね…」
この3日間で、最初に20人居た召喚者のうちの12人が魔物の手によって殺された。
あるものは能力が攻撃に向いてなく、無残に引き裂かれる光景を目の当たりにして俺は一生のトラウマを刻まれた。
この世界には回復魔法はあっても蘇生魔法はない。
それがいかなることか、わかる通り死んだら終わりなのだ。
「随分離れたとこまで来ちゃったな…」
「少し休みたい、あの小屋を使おう」
見えたのは小さな小屋、まだここにはどうやら魔物の軍勢は押し寄せてはいないみたいで荒れておらず、綺麗なままだった。
「すみませ…」
小屋の中に入り声をかけたその時だった。
「やぁー!!」
「ぅわぁああ!!」
剣が一閃喉元を搔き切るような鋭い一撃が暗闇から繰り出され、思わず俺は尻餅をついてしまう。
「どうした!!」
「わっ!!この人剣持ってるよ!!」
健吾もエミリーも俺の後ろで驚きの声を上げる。
「お前ら魔物なんかに… ってあれ? 魔物じゃない?」
「いったたた…」
見上げると、紫の長い髪をポニーテールにして、剣を突き出してる状態で、戸惑っている美少女がそこには居た。
それが彼女、ライカとの出会いだった。
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本当に、ありがとうございます。
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