魔法力0の騎士

犬威

文字の大きさ
87 / 104
第二章 アルテア大陸

魔人

しおりを挟む
 
 魔人、それは40年前の魔王が世界を脅かした時に魔王が従えていた種族。
 その力は強大で、人類は全滅の手前までに追いやられるほど圧倒的だったと言われる。
 後に現れた勇者によって魔王が倒されてからはその眷属であった魔族もなぜか忽然と姿を消したのだと文献に残っている。


 魔人の姿はギガント種よりも大きく、4枚の翼を持ち、黒い肌をしていたと言われる。

 鳥人アンバーであった兄と呼ばれた男は、最初の姿はベージュ色の髪と翼をしていたが、あの十字架を使用した後には体が肥大し、4メートルの大きさに、翼は4枚になり、体の色も黒く染まっている。


 まるで文献にあった魔人の姿に瓜二つじゃないか…


 先ほどの最上級暴風魔法ストームサイスにより、自我が確実に崩壊したようで、今は全てを破壊する化け物と化した。


「グゥァアアアアアアアア!!!!」


 3階に当たる右側の壁は吹き飛び、瓦礫が下に落ちていく。

 どうやら再び雨が降ってきているらしくバラバラと塔の内部に降り注ぐ。

 なんとか落ちずに済んだ私は、瓦礫の裏に隠れ様子をうかがっていた。


 あの十字架はいったいなんなんだ…
 シェリアの母親が魔物にされたものとは少しデザインも違うように見えるが、人を人ざらなる者に変える力があるようだ…

 あんなものが複数存在していたらまずい…
 それこそ魔王がいる時代と同じになってしまうじゃないか。

 ここは崩れてしまったが上の階はまだ無事なようだ、だが、このまま激しく戦っていたらこの塔だって崩れてしまう…


 上では激しい戦闘音が聞こえる。


 カインやアインも頑張ってるんだ、私も頑張らなくては…

 ちらりと瓦礫の隙間から魔人を見ると、まだ私を探してるようであたりのものを大鎌で壊しまくっている所だった。

 どうやらここにいるのがバレていないのか、知力が低下したことに影響があるのか、勝ち目はあるのかもしれない。


 次元収納から槍を取り出し、後ろを向いている魔人に向けて投擲とうてきする。

 勢いよく投げられた槍はまっすぐ飛んでいくが、危険を察知した魔人は大鎌でその槍を弾いてしまった。
 ズガンという音とともに弾かれた槍は地面にそのまま突き刺さった。

 場所がわかった魔人は羽ばたき、一直線にこちらに突っ込んでくる。


「くっ!!」


 大鎌がさっきまで私がいた場所に突き刺さる。
 転がることによって避け、反対側の場所まで急いで移動する。

 すぐさま大鎌を引き抜いた魔人はまたも直線的に突っ込んで大鎌を振りかぶる。


「ぐぅっ!!」


 避けきれなかったか!!
 かろうじで避けはしたものの、足に切り傷を負ってしまった。


「まだだ!!」


 チェーンアームを次元収納から取り出し、対角線上に向け放つ、大鎌の攻撃をなんとか搔い潜り、対角線側に飛ぶ。

 すぐに追ってきた魔人の一撃を次元収納から盾を取り出し、受け流す。
 大鎌はまたしても深く地面に突き刺さり、その隙に痛む足に鞭を打って反対側に走る。


「ギャォオオオオオオオ!!!」


 先ほどから幾度も躱されたことに怒りを感じているのだろうか魔人は雄たけびを上げ、憤っている。

 反対側にたどり着くと同時に中央に向け、すぐさま転がる。
 直後、先ほどまでいた位置に荒い息をした魔人が攻撃を繰り出していて、その余波で地面がえぐれていた。

 アリアは落ちていた槍を拾い、迫る魔人の渾身の一撃を跳躍することによって再び躱す。

 魔人の攻撃により、中央の地面が勢いよく崩壊した。


「!!??」


 四隅に亀裂を作ることによってもろくなった地面は一気に崩壊し、瓦礫と共に魔人もバランスを崩し落ちる。


「これなら避けれないだろ!!」


 空中で反転し、落ちている魔人の腹部めがけ、槍を投擲とうてきする。


「グゥォオオオオオオ!!」


 勢いよく投げられた槍は見事に魔人の腹部に突き刺さる。


「これで、止めだぁああああ!!」


 次元収納から大きめのハンマーを振りかぶった状態で取り出し、突き刺さった槍に向けて渾身の一撃を振り下ろす。


「ギャァアアアアアア!!!」


 魔人の断末魔の叫びと共に、おびただしい黒い血を噴出させて、魔人は砂のように離散した。

 瓦礫が次々に落ち、瓦礫に当たらないようにチェーンアームを使い2階へと降りる。


「はぁ… はぁ… 倒した…」


 自我を失っていたおかげで怒りのままに行動してくれた。
 もし、自我を失ってはおらず、魔法も使えていたとしたら勝機はなかっただろう…


「だいぶ落ちてきてしまったな」


 上を見上げると遥か上に先ほどまでいた場所が見える。
 塔は思ったよりも頑丈だったおかげで未だに崩壊せずに済んでいるが、所々に大きく破壊され、穴が開き、予断を許さない状況になっている。


「そうだ、カインとアインの加勢にいかなくては」


 次元収納からチェーンアームを取り出そうとした時、大きな爆発と共に4階の建物自体が勢いよく崩壊し、崩れてくる。


「なっ!?」


 ここにいては瓦礫の下敷きだ!

 瓦礫の山を縫うように飛び越え、窓から身を投げ出した。

 直後激しい音と共に塔が崩れ去っていく。


「うぉおおおおお!!」


 飛び出した直後にチェーンアームで他の建物に飛び、なんとか崩壊には巻き込まれずには済んだが…

 カインとアイン、それにガイアスさんは無事なのか!?


 砂塵があたりを包み、その様子を探ろうとするが視界が悪く、まともに見えやしない。
 雨は勢いを増し、体に当たるたび傷口に染みる。


「っつ…」


 まさか、あの崩落に巻き込まれて…


「カイン!!アイン!!いるなら返事をしてくれ!!」


 声は雨音にかき消され、崩落した塔はガラガラと音を立てているのみだ。

 そんな… 何も救えなかったというのか…


「おいおい、あまり叫ぶなよ、敵が寄ってきたらどうするんだ」


 慌てて上を見上げるとアインがガイアスを持ち上げ、カインがゆっくり降りてくる。
 足場などないというのにまるでそこに足場があるように。


「い、生きていたのか!」


 それになんだか、アインもカインも傷だらけであるが、姿が少し違う。
 より、獣の姿に近いというか、それに淡い青色の魔力を全身にめぐらせている。

 この姿はいったい…


「ああ、苦戦しちまったけどやってやったぜ」

「こうしてガイアスさんもつれて戻ることができましたからね」


 ガイアスさんは気絶してはいるものの無事なようだ。


「よくやったな!そしてさっきから気になってたんだが、その姿は一体何なんだ?」

「ええ、古来獣人に伝わる秘儀『幻獣化』です」


 地面に二人がたどり着くと、煙が渦巻くように元の姿に戻っていった。


「『幻獣化』!?」

「あまり長時間この姿になることはできないんですけど、この力のおかげで倒すことができましたよ」

「説明は後だろ、今の崩壊の音を聞きつけて多くの兵たちも戻ってくるぞ、どこかに隠れるのが先だろ」

「そ、そうだな、行こう」


 大きな音をたてて塔は崩れたのだ、必ずガルディアの兵は戻ってくるはずだ、私は何を浮かれていたんだ…
 まだ終わったわけではないというのに…


 ひとまず一旦民家に隠れることにした私達は、崩壊した塔を背に雨が降りしきる中走り始めた。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

処理中です...