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第二章 アルテア大陸
side カイン ~双子VS弟~
しおりを挟む4階にたどり着いた俺達は、シェリアを逃がし、二手に分かれ戦闘に入っていた。
「どうした!こんなもんか王族軍のエースの実力ってのは!!」
「ぐっ… アインもっと下がるんだ!」
こいつ思った以上に身体能力が発達してやがる。
長い棍を巧みに操り、二人同時攻撃をあっさり躱す弟と呼ばれる者。
「そらそらそらぁ!!」
「っつ、ぐぅ」
俺らに勝るとも劣らないスピード、俺の爪が簡単に弾かれ、カウンターをそのまま食らう。
「アイン俺らも身体強化を!!」
「わかってる!!」
「させるわけないだろぉ!!」
「クッ… アイン!!」
俺の脇を搔い潜り、瞬時にアインの目の前まで羽ばたく。
くそっ!こうも翻弄されちまうなんて!!
「ハイスピー… ぐぁっ」
重い薙ぎ払いによりアインは激しく吹き飛ばされる。
「アイン!!!」
「がっかりだよ、お前たちには期待してたんだがな、とんだ期待外れだ」
「なんだと!!なめやがってぶっ殺してやる!!」
「がはっ… カイン!!落ち着けっ!!」
「っつ…」
いけない、怒りに身を任せたんじゃ意味がねぇ…
単純な攻撃ほど読まれやすいのはおっさん相手の組み手でよく知ってるじゃねぇか…
「どうした?来ないのか腰抜けめ」
「ああっ!!」
「カイン!!」
「チッ… わーってるよ、冷静なお前がいてくれて助かる」
俺はどうも挑発に乗りやすい、だけど冷静な双子の弟であるアインがいるからこそ踏みとどまれる。
俺もまだ冷静な判断で戦える。
もっとよく考えろ、相手は一人こっちは二人だ。
その時後ろで激しい音がして、慌てて振り返る。
そっちはアリアが戦っていた場所だ。
4階の地面が割れ、アリアと共に兄と呼ばれる者も一緒に落ちていく。
「アリア!!」
「どこを見てるんだ」
「っつ…」
くそっ… よそ見なんてするもんじゃないな…
攻撃を瞬時にしゃがむことで躱し、そのまま飛び、アインの元まで移動する。
アリアは… まぁ… 無事だろ、うん、あれでなかなか頑丈だしな。
「アイン、動けるか?」
「大丈夫、まだ動けるさ」
「ちょこまかと逃げよって!まぁいい、遊びはここまでだ」
男は懐から十字架のような物を取り出した。
なんだ?見たことのないアイテムだ…
アインのほうをちらりと見るが、どうやらアインの方も見たことのない代物らしい。
「クハハハ、全て破壊してくれる… グブッ…」
なっ!?自決しただと!?
男は自らの胸に十字架を突き立てると、夥しい血を溢れさせどさりと地面に倒れる。
「いったいなんなんだ…」
ビクリと男の体が跳ね、男の体がボコボコと不気味に形を変えていく。
「アイン、あれは一体なんだよ…」
「なっ… 僕にもわからないよ…」
それはどんどん肥大していき、4メートルの大きさになった頃に突然むくりと起き上がる。
体は黒く、異常なまでに発達した筋肉、翼が4枚になり、悪魔のような顔はもはや先ほどまでの鳥人とは別物だ。
「グゥオォォオオオオオオ!!!」
化け物の咆哮が響き渡る。
「ぐっ…」
「うっ…」
咄嗟に耳を抑えるが、だめだ、ガンガンと耳鳴りがやまない!!
聴覚が鋭すぎるせいで、この大きな咆哮が大きなダメージになる。
ドンッという音と共に化け物は一歩踏み出すと耳を押さえてる俺の目の前までやってきていた。
やば…
「ぐぅう!!ガハッ」
咄嗟にガードしていたが殴られ、思い切り吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。
「カイン!!」
なんて威力だ… あの化け物…
「ゲホッ… ゲホッ…」
壁にはヒビが入り今にも崩れ落ちそうだ。
下で激しい崩壊音が聞こえる。アリアの方もだいぶ苦戦してるみたいだな…
結構頑丈でよかったぜ俺…
痛む体を無理やり立たせ、しっかりと前を向く。
アインも避けるのがギリギリってとこだな…
あの化け物、さらに腕力とスピードも上がっていやがる。
「ハハハハ、チカラガミナギッテクルゥォオオオ!!」
「サンガー!!っつ、なんて速さなんだ」
雷撃の中でも特に速い魔法を軽々と避け、拳による攻撃を次々叩き込んでくる。
アインも必死で避けるが限界もある、どうする、この状況を打破するきっかけは…
「おらぁあああああ!!」
だめだ、わからん。
アインに当たりそうな攻撃をなんとかずらし、反撃に転じる。
くそっ!!びくともしねぇ!
異常なまでに硬い筋肉は俺の爪を弾いてしまう。
八方ふさがりだ、こんな時はアインに頼るっきゃねぇ!
「アイン、こいつ倒す方法なんかあるか?」
「わからん」
おいぃいいいい!!俺と同じかよ!!
お前、頭脳担当じゃなかったのかよ!やめろ、どや顔でこっち見んな!
「嘘だよ、ちゃんと秘策が持ってきてる」
さすが頭脳担当のアインだ!疑って悪かった。
「オドナジグジネェエエエエエ!!!」
「くっ…」
「ぐっ…」
辛うじて避けるのが精いっぱい、それに段々こいつも速くなってきてる。
「はぁ、はぁ、カイン受け取れっ!!」
「おわっ…とと!? おまっこれ宝珠か!?」
アインから投げ渡されたのは王国の秘宝である青色に輝く宝珠だ。
「くすねてきた!」
どや顔で親指を立てて笑うアイン。
お前、段々仕草がおっさんと似てきてるぞ…
「だけどでかしたな、これなら勝てるかもしれねぇ!!」
王国の秘宝であるこの宝珠は数はそんなに多くないが、その石に込められた魔力は特殊で、なんでも獣人の崇める『幻獣』の力の源らしい。
古の対戦では獣人はこの秘宝を用いて幻獣の力を宿し、戦うことができる獣人の機密情報だ。
いまでは国家指定の厳重な管理下に置かれ、ホーソンが守っている代物だが、アイツよく持ってこれたな…国家遺産だぞ、これ。
まぁだが、こんな時に使わないでいつ使うって話だ。
「ありがたく使わせてもらうぜ!!『幻獣化』!!」
宝珠に魔力を注ぎ込むと、光を放ち、青色の魔力が体に一気に流れ込んでくる。
「ォオオオオオオオ!!!」
「ォオオオオオオオ!!!」
身長が伸び、髪が伸び、耳が長くなり、爪が体の一部のように取り込まれ、硬質化しさらに鋭くなる。
全身に纏うオーラに包まれ、全身が羽のように軽い。
すげぇ…なんだこの力…
アインの方を見ると同じように変化してるようで、クロスボウが取り込まれ、腕から大きな針のようなものが幾重も連なっている。
「グゥウウ、ナンダソノスガタ…」
とんと踏むと驚いたことに空中にそのまま立つことができた。
これがオーラの力ってやつだろう。
「カイン、時間がない一気に決める」
「ああ」
宝珠に保管されている古の魔力はそんなに多くない。
これは時間との戦いだ。
「マァイイ、タタキツブスダケダァアアアア!!!」
化け物は一気に加速し俺たちの前に飛んでくる。
だが、さっきまでの感覚とは違って随分遅く感じる。
振りかぶった一撃を難なく躱し、ステップで背後に瞬時に廻る。
「ナ、二ィ!!」
強力になった爪の攻撃を背中に浴びせると、化け物はぐらりと体制を崩す。
いける、効いてるぞ!!
すぐにその場から離れ、アインが腕から散弾の如く、腕についた大きな針を飛ばす。
ガガガガガという地面を削る音と共に化け物を串刺しにしていく。
「グァアアアアア!!オノレェエエ!!」
傷だらけになりながらもその場から離脱した化け物は俺に向かって突っ込んでくる。
今はこいつの動きがスローに見えて仕方がない、ここで決める。
拳による攻撃を弾き、その無防備な腹に、蹴りを、1撃、2撃、3撃打ち込んで、両腕をダメ押しとばかりに切り落とす。
「ギャアアアアアア!!!」
黒い血しぶきを上げ、両腕は砂のように消え去る。
「アイン、後は任せる」
頭と胴体だけになった化け物はそれでも最後の抵抗を見せた。
「ケジトベェ… フレアバースト!!」
口を大きくあけ最後の魔法を上空にいるアインに向かって放つ。
「トールサンガー!!」
アインはしっかり狙いを定めていたようで、化け物に向けて最上級雷撃魔法を放つ。
大きな爆発が巻き起こり、アインの放った雷撃魔法は化け物の爆炎魔法を貫き、消し炭にした。
爆発の影響で塔が大きく崩れ、崩壊していく。
「一旦ここを出るぞ、アイン!!」
なにか忘れてるような… まぁ勝ったからいいか。
「ガイアスさんのこと忘れてるだろっ!!」
あっ… 戦いに夢中で忘れてた…
鎖を破壊し、アインがガイアスさんを運び塔から脱出。
錠は魔力防壁がかかっているのか攻撃することができなかったが。
上空から眺めると塔がガラガラと大きな音を立てて崩れていく。
雨はオーラ守られている為か、俺たちの体に水滴がつかないのは不思議だった。
「勝ったな、アイン」
「やったな、カイン」
強敵だった。
宝珠の力がなかったら勝てなかった、そんな敵が敵国にはうようよいると思うと寒気がする。
俺達は今後こういった敵と戦わないといけなくなるのか…
「アイン、戻ったらあの十字架のことを調べるぞ、あんなものが量産されてたんじゃ俺達はいずれ負ける、対抗策を考えないと…」
「そうだね、あんなアイテム初めてみたよ… もしかしたら僕達はとんでもない敵と戦っているのかもしれないね」
「ああ、俺達だけじゃない、世界の危機になる代物だ」
「それよりもカイン、今はアリアのとこに行こう」
「ああ、アリアも無事だといいんだけど」
「心配ないよほら、あそこで叫んでるじゃん」
「なっ!? 敵の本拠地で何やってるんだ」
「あはは、アリアらしいな」
「たしかに」
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