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第二章 アルテア大陸
side キルア=エンドレア ~VSダルタニアン~
しおりを挟む「まったく随分派手にやってくれたねぇ」
見上げるとあの人をあざ笑うような眼つきの男が翼を広げこちらにやってきていた。
計画は成功したとみていいだろう。
おかげで塔の警備は薄くなったはずだ。
「あーあーまったく、首都が水浸しじゃないか、君達兄妹にはほんとにうんざりさせられる」
ダルタニアンは大仰な仕草でわざとらしく演技する。
ほんとはこんな都市などなんとも思っていないくせに…
「これから私はアレグロモデラートのように活動していくはずだったんだがねぇ…」
「何を言ってるのかさっぱりわからないな」
「これだから知性に乏しい輩は困るのだよ」
はぁとため息を吐きながらダルタニアンはジロリと嘗め回すような視線をこちらに向けてくる。
背筋に悪寒が走り、とっさに身をかばう様に睨みつけた。
「おお、怖いねぇ、それにしても知性は乏しいもののやはりそれに勝るいい身体をしているなぁ」
「貴様に褒められても気持ち悪いだけだ、その下卑た視線を今すぐ止めろ!」
「クハハハ、強気な女を屈服させるほど快感なものはないのだよ? その強気な顔が歪む姿を想像すると笑いがこみあげてくるよ」
「貴様っ!!」
「おい、それじゃあ相手の思うつぼだ、冷静になれ」
マーキスが後ろから声をかける。
もっともだ、こんなことで激高していては…
「私達の楽しいテンポを邪魔しないでもらいたいものだねぇ… 興が冷める」
すっと地面に降り立ったダルタニアンは懐から銀製のレイピアを取り出し、構える。
「さぁ、ワルツを踊ろうか」
空気が振動する。
甲高いキーンという音が頭の中に鳴り響く。
ダルタニアンが得意とする舞闘曲、踊るように攻撃を躱し、鋭い突きで急所を的確につく、その実力は騎鳥軍の中でもトップクラスである。
「くっ… はあっ!!」
「クハハ、当たらない、当たりはしないのだよ」
ひらりひらりと私の剣捌きをステップを刻みながら躱していく。
「君達も踊ろう、エリアバーサーク!」
ダルタニアンが放った魔法は周囲の者を狂人化させる魔法だ。
くそっ… ただでさえ、やっかいな相手なのに…
「「「「うぉおおおおお!!!」」」」
先ほどまで様子を伺っていたガルディアの騎士達の目つきががらりと変わり、雄たけびと共に一斉に武器を手に突っ込んでくる。
「マーキス、援護を頼むっ!!!」
「数が、くっそ!! 任せておけぇええ!!」
入れ替わり立ち代わり凶気の目を孕んだ者たちが襲い掛かってくるのを切り、躱し、奥の方に笑いながら高みの見物をしているダルタニアンの元へ突き進む。
「正々堂々と戦いなさい!!ダルタニアン!!くっ…」
「クハハ、どうした? 私はこちらだぞ?」
「おのれ、はぁああああ!!!」
細剣の乱舞と飛翔によって一人、また一人と沈めていく。
「もらったぁあああ!!なっ!?」
あと一歩の所で騎士の男が私に貫かれながら雄たけびをあげ、私の剣を掴む。
こいつ仲間を盾に…
「フェードアウトかな?」
マズイ!!?!
左右からは既に他の騎士が剣を振りかぶってきているのが見える、だが、剣を引き抜こうとするが、この狂気に飲まれた男は痛みを感じないらしく、血が溢れ出ているにもかかわらず、がっちりと固定され動く気配がない。
「【防御破壊】!!!」
間一髪当たる直前にマーキスの特殊能力により、左右の敵が勢いよく吹っ飛んでいく。
「っつ…す、すまない、助かった」
「はぁ… はぁ… 気にするな、だがもう今日分の力は全部打っちまった」
頼みの綱の一つであったマーキスの特殊能力は一日に使用回数があることは聞いていた。
先ほどから危ないところを何度もその能力によって救われている。
あまり時間は残されていないのかもしれないな。
減らない騎士、疲労も限界に近い、その姿を見てあざ笑うダルタニアン…
「クハハ、いい音色だぁ… なるほど君の力で水門を破壊したのだねぇ、しかしそのとっておきももう使い切ってしまったようだねぇ…」
「そんなんなくても俺は倒れはしないんだよ、オラァ!!」
マーキスは襲い掛かってくる男達を殴り飛ばし、拳を突き出し掲げる。
「シャイニングエレメント!!」
両手と両足に光属性の力が集まっていくのがわかる。
これが勇者が扱えるとされる光魔法なのか…
「俺はまだまだ速くなれるぞ」
マーキスの体がかき消えた!? いや、違う、ものすごく速くなってその動きを捉えることができないのか!?
次々と群がっていた騎士達が勢いよく弾き飛ばされていく。
「チッ… やっかいな速さだ… くらえ、マッドウォール!!」
「なっ!?地面が… くっ」
水魔法と土魔法の合成魔法だと!?
地面がいきなり泥沼化し、泥の壁が勢いよくマーキスに降り注ぐ。
「マーキス!!」
「おぉおおおお!!!」
ぬかるみ足を取られたマーキスは勢いよく蹴り上げることによって泥を弾き飛ばしていく。
「ライトブロー!!!」
そのまま拳の肩を後ろに引いて一瞬溜め、突き刺すような右の一撃が光を伴い、泥の壁を打ち消していく。
そのままマーキスは宙返りすると沼を抜け出し、地面に降り立つとクンという一瞬の加速と共に再び周りの敵を弾き飛ばしていく。
「なんて力だ、だが、シェマンドの貴方を見ているとそれも長くは続きませんねぇ」
たしかにさっきまでのマーキスとは明らかに様子が違う…
マーキスは残った騎士を全て殴り倒すと地面に大の字になり寝そべった。
「もー無理、腹が減って動けん… キルア、後よろしくな」
「なっ!? だが、おかげでこいつとようやく一対一で戦える」
地面の上に立っている敵はダルタニアンただ一人。
マーキスの協力無しではここまでうまくいかなかっただろう。
「はぁ… ここに残ってる者達の実力ではこの程度でしょうね、まぁいいでしょう、そんなボロボロの姿で私に勝てると思っているのなら実に面白い」
息も上がり、体は傷だらけだ、疲労もかなり溜まっている。
足も思うように動いてくれない。
翼なんて今は飾りのように動かすことができない始末だ。
でも、それでも、こいつのした事を許すことなどできない。
家族であった仲間を裏切り、都市を壊滅に追い込んだ元凶。
兄を罠にはめ、民の命を弄んだ罪この私が許しはしない。
「このキルア=エンドレア必ず貴様を葬ってくれる!!」
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