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第二章 アルテア大陸
side シェリア=バーン=アルテア ~秘めた力~
しおりを挟む突然私の中に鳴り響いた言葉はどこか懐かしく、それでいてその声を聞くと心が温かく感じる。
いったいどこで私はこの声を聞いたんだろう。
『貴方には力があるのに…』
いったいこの声は誰!?
なんで私の頭の中に直接響くの!?
私は自分の頭に手を当て、対話を試みようとした。
『その話はまた後で… ほら来るよ、私の言う通りに動いてみて』
直接私の頭の中に言葉が流れ込んでくる。
でも、不思議と嫌な感じはしない。
直後、目の前にあった建物が大きく吹き飛ぶ。
「コレデ、オワリダ!!!」
さっきよりも数段速く、そして一度でも直撃を受けてしまえば終わってしまう強力な一撃が私の目前へと迫る。
突然建物が吹き飛び、それに驚いた私は初動が遅れてしまった。
こんなに傷ついた身体じゃまともに動けない!
『右後ろに2歩下がって』
咄嗟にその声に反応し、自然な動きで右後ろに2歩下がった。
その瞬間、目前を強烈な一撃が掠めていく。
それは足元に大きなクレーターを作り、瓦礫や破片が勢いよく飛び散った。
普通ならこんな至近距離に立っていたら破片だけでも驚異的な威力を持つ。
でもなぜか、私の立っているこの場所だけ、避けるように破片が当たらない。
『いいね、だけどまだ動きが硬いかな、ちょっとこの身体を借りるよ』
驚きに目を見開いているのは私だけではなかったらしく、完全に仕留めたと思っていたダルタニアンでさえ驚いていた。
直後、意識が切り替わる。
まるで私が私を見ているかのような感覚だ。
自分の身体じゃないように私の意志とは違って動く。
えっ!
ええっ!?
「ヨケタ… ダト…」
腕を地面から引き抜き、そのまま引き絞った3本の腕は再びシェリアの姿を粉々にしようと襲い掛かる。
「よっと」
真横からの速いスイングをまるで柵を飛び越えるような仕草で飛び越えるとシェリアはにかっと笑った。
「オノレェエエエエ!!!」
ブォン、ガォン、と凄まじい攻撃の嵐が繰り出され、辺りの建物を壊しながらシェリアを追い詰めていく。
「フフッ…」
すべて紙一重というところでシェリアは無駄のない動きで躱していく。
「ナゼダ!! ナゼアタラナイィイイ!!」
ダルタニアンの攻撃は凄まじく、建物を一瞬のうちに粉砕し、地形まで変えてしまう。
それに比べ今のシェリアの動きはまるで、その攻撃がどこに来るのかをわかっているかのような動きで、身体の軸をずらしたり、最小限の動きだけで全て躱していく。
「ハズレ、それもハズレ」
「ウォアアアアア!!!」
何故か攻撃はともかく、破片や瓦礫までも綺麗にシェリアには当たらない。
「まずはちゃんと見て覚えるところから」
ダルタニアンの渾身の振り下ろし攻撃をするりと掻い潜り、内側にしゃがむ様に瞬時に移動する。
そのままシェリアは右腕を振り絞り、拳を形作る。
その瞬間、自分の右腕だけが燃えるような真紅の獣の様に様変わりした。
!!?
攻撃後の一瞬の隙を捉え、巨大なダルタニアンの鳩尾めがけ、真紅の拳は風を纏い真っすぐ撃ち込まれる。
「ドラゴンロードドゥーム」
「ゴブォオオアアアアアアアア!!!!」
衝撃と爆風が突き抜け、ダルタニアンの巨体を大きく吹き飛ばしていく。
その威力は凄まじく、建物を破壊し、数10m先まで大きく吹き飛ばした。
なに… これ…
先ほどまでの瀕死の自分が放てるとは思わない一撃に、自分が自分でないような感覚のシェリアは驚きを隠せないでいた。
「あっ、時間切れだ」
えっ?
一瞬で意識がクリアになる。
どうやら元の体に戻ったみたいに、体が動かせる。
そして戻ったと同時に物凄い疲労感と虚脱感が襲い掛かり、思わずその場に倒れこんでしまう。
「はぁっ… はぁっ… いったい… なにが… 」
今まで感じたことのない疲労感に立つことができない。
バシャバシャと煩く私に降り注ぐ雨があるだけで、這いずりながら辛うじて首を動かし、ダルタニアンが吹き飛んだ方向を見るが、瓦礫の山と一瞬舞った砂埃でよく見えない。
今の攻撃で倒せたらいいんだけど…
しばらくその方向を見ているとガラガラと大きな音を立てて、巨大な体のダルタニアンは起き上がる。
「グゥウウウウ! ソンナ… カラダノ… ドコニソンナチカラガ… グフッ…」
やはり… まだ完全に倒せたわけじゃなかった…
先ほどまでの頼もしい声は聞こえては来ず、私の荒い息遣いと激しい雨の音しか聞こえない。
もうあの声を頼れない…
再びあの不思議な力に頼りたかったが、まるで自分の身体が石になってしまったように動いてくれない。
「うぅ… 」
動け! 動け! 私の体!!
かなりのダメージを負ったであろうダルタニアンがこちらの息の根を止めるために近づいてくる。
「よく頑張ったな、シェリア」
その声は…
目の前に着地し、見上げた先に見えるのは…
「遅くなってすまない、後は任せてくれ」
「なんとか間に合ったみたいだな」
「といっても僕達もそんなに戦えないけど…」
「ばっか!アイン、そういうのは言うんじゃねぇよ」
「起きれますか、姫様」
「みんな…」
良かった… みんな無事で…
私には頼もしい仲間がいる…
私は一人で戦ってるわけじゃないんだ…
「ここからは俺が戦う、今まで俺の為に色々としてもらった恩をここで少しでも返したい」
そう言って一歩前に出るのはキルアさんの兄であるガイアスさん。
「わがままを言ってしまってすまない、だが最後くらいは自分の手で決着をつけたいんだ」
「…兄さん」
「わかりました… でも危なくなったら加勢しますので」
「ああ、ありがとう」
ガイアスさんは手にしたハルバードを振り回し、ダルタニアンの待っている所へ歩いていく。
「姫様、移動しますね」
「ありがとう、キルアさん」
キルアさんに背負われ、私は最後の戦いになるであろう二人の戦いを見守ることになった。
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