魔法力0の騎士

犬威

文字の大きさ
101 / 104
第二章 アルテア大陸

リーゼア大陸では…

しおりを挟む
【リーゼア大陸 首都ゼアル王宮】


「「ネア様、どうか次のご判断を!!」」


 そう急かすのは長くから儂に仕える二人の騎士達。


「あのガルディアの新たな王は危険すぎます。 行動を速やかに起こし、対策をしていかなければなりません」


 いかにも真面目が取り柄の切りそろえられた前髪、ゼアル騎士団の青の鎧をぴっちり着こなす服装、いつも熱血で暑苦しいくりんと曲がった二本の角が特徴のメアン族の男であるシュラ。


 はぁ、今日はこっちも暑苦しいのじゃ…


「ネア様、停戦協定は決裂したんですよ、アルテアの次は私達の番です。 しっかりとした準備を…… 」


 こちらも普段は大人しいのじゃが、お団子の紫の髪、青い眼鏡をかけ、緑色の淡いローブを身に纏い、分厚い本を手にした同じく、くりんと曲がった二本の角を持つメアン族の女であるモルファ。


「ちゃ、ちゃんと考えておる!少し待つのじゃ」


 二人の勢いに飲まれそうになる…… いけない、こんなことでうろたえるんじゃないぞ儂……


「しかし、もう時間があまりありませぬ、ガルディアの兵の中には強者が多くいると言われています。 一部の大臣達には昨日の件が知れ渡り、私達に詰め寄ってきているのです。 これでは民衆に知れ渡るのも時間の問題です」

「農地拡大している場合では無くなったんです。 まずは資金を集め、国をより強固なものに……」

「わかっておる。 少しだけ時間が欲しいんじゃ、今、畑に実った野菜を収穫したらちゃんと会議もする。 今日が一番収穫にはもってこいの日なんじゃ、マクミラン後を頼む」

「はい、会議打合せは明日の十時、これとこれを各大臣に届けてください。 場所は王宮でいいでしょう。 それと新しい勇者には私が直接伝えますので」


 こういうのはマクミランに頼むのが一番よい。

 マクミランは儂の昔からの部下じゃ。 銀髪の長い髪、異世界の服である黒いすーつなるものを着こなし、落ち着いた雰囲気で短い角のメアン族のイケメン男性じゃ。

 さすがマクミランじゃ、あの熱血漢どもをまとめよったかの。


「わ、わかりました。 マクミラン様」

「さすが仕事の速いマクミラン様だ。 どこかの幼女とは違うな」

「わ、儂は250歳じゃぞ!? て、転生したからこんな見た目になってるのだ! 幼女などではないっ!」

「本当ですか? 8歳児の間違いなんじゃ?」

「ち、違うわいっ」


 儂は見た目は完全に8歳児じゃが、ちゃんと頭脳は引き継がれておる。

 子供服しか入らんからこんな格好をしてるのであって、変身したらちゃんとすごいんじゃぞ! その、建物が壊れちゃうからしないだけであって。

 むむむ…… こいつ等、儂を見た目で判断しおってからに…… 

 いつも手入れをしている藍色の髪は腰まで長く伸ばしているし、服装だって威厳が出るようにごつごつした服を着ている。 

 角が引っ掛からないように服もちゃんと一人で着れるようになった。

 おやつは一日一回に減らしたし、寝る時間だって1時間も遅らせるようになったのじゃぞ。

 まったく儂がいつも優しいから調子に乗っておるな。


「シュラ様、あまりネア様をからかわないで下さい。 確認事項は明日またお伝えするので」

「すみません、わかりました」


 ペコペコと謝る姿はマクミランじゃなくて儂にしてほしいんじゃが……

 まぁ良い、儂は寛大だからな。

 さてさて邪魔者はいなくなったわけじゃし、早いところこの可愛いトマトちゃん達を収穫するかのう。

 うはは~、この愛い奴め~


「ネア様、一旦休憩になさいましょう」

「む? この一帯が収穫し終えたらの」

「そうですか、新しいケーキがあるのですが」


 マクミランは後ろから皿に乗った美味しそうな見た目のけえきをすっと前に持ってくる。

 なにっ!?


「それを早く言わんか! その新しいけえきとやらを食べるのじゃ」

「しかし、いいのですか?この一帯を収穫し終えてからでも」

「いいのじゃ、収穫はいつでもできる。 そうだ、新しい紅茶も淹れておくれ、けえきにはあれが一番合うのじゃ」

「かしこまりました」


 いそいそと手を洗い、王宮の畑を後にすると、儂達は王宮の人が行き交う涼しげな部屋にある簡素なテーブルの前に置いてある椅子に腰かける。


「ネア様、このような他の方に見られる場所でいいのですか?」


 マクミランは落ち着かないのかそわそわと不安げに聞いてくる。


「ん? かまわん、何か問題でもあるのか?」

「い、いえ、今紅茶を沸かしますね」

「うむ」


 変なことを聞くマクミランじゃの~、どこで食べても味は変わらんと思うんじゃがの。

 ほどなくして紅茶のいい香りが鼻をくすぐる。

 そうそう、この香りが堪らないんじゃ~。


 コポコポと赤茶色の紅茶がティーカップに注がれる。
 そこにことりと置かれるのは先ほども見た鮮やかな赤い色のつやっとしたけえきが皿にのせられてテーブルに置かれる。

 王宮の中を行き交う人達もチラチラとその様子を見たりしている。


 ふふふ~、いいだろう~、羨ましいだろうがあげるわけにはいかないのだよ~。


 そんなちょっとした優越感に浸って前を向くとマクミランは何故か大きなため息を吐いている。


「どうした?悩みなら儂が聞くぞ?マクミラン」

「い、いえ」

「そうか?」


 なんか今日は一段とマクミランは変じゃの~。

 まぁよい、さっそくこの可愛いけえきとやらを食べなければいけないからの、儂は忙しいのじゃ。

 フォークで一掬いすると、ふわっと重さを感じることなく掬い上げることができ、その柔らかさに感動を覚える。

 ふぁああ、すっごく柔らかいのじゃぁ…… 

 あ、味は……


 小さな口にパクっと音が鳴りそうな風にネアは一口含み、味わうように咀嚼する。


 うんまぁああああい!! この赤さは苺なのか?なにか甘酸っぱくて滑らかなくちどけは天にものぼるようじゃ。

 紅茶で喉を潤し、再び二口三口と食べ進めていく。


 ほっぺがとろけてしまいそうじゃぁ……


 頬に手を当てうっとりと余韻に浸る。


「お気に召したようで何よりです」

「はぁう!? う、うむ、大変美味であった。 次もまた頼むぞ」

「そうしたいのは山々なのですが、このケーキはガルド大陸から取り寄せたものであって、今の状況だと次の入荷は当分ないらしいと」

「な、なんじゃと!?」


 がたたと勢いよく立ち上がってしまった。

 椅子の上にじゃが……


「あちらが開戦を決めたことによって貿易は一時中止になってしまいましたし、どうやらガルド大陸でも揉め事が多く発生しているようです」

「ふむ、進行状況はどんな感じなのだ?」

「はい、アルテア大陸に先遣隊としてガルディア兵がおよそ百人程、リーゼア大陸の前線に居たガルディア兵は一旦ガルド大陸に戻ったようでこちらの被害はありません」

「およそ百か、たしか首都を押さえられていたんだったなアルテアは」

「はい」

「それにたしか人質に騎鳥軍、軍団長ガイアスが捕らえられているんだったな」

「ええ、アルテアでは無敗の戦士と恐れられた奴があっさりと捕らえられています」

「ふむ、敵は結構やっかいかもしれんな、能力者が多くいるのかもしれん」

「その可能性は大いにあります」

「それと、この国に誰かが近づいて着ておる。害意の意志はあまり感じられないが一応は警戒はしておくのじゃ、ちゃんと明日大臣達に話すこともまとめてあるからマクミランは儂のすけじゅーるを覚えておくのじゃぞ」

「わかりました」


 しばらく食べれないなら、もう少し味わっておけばよかったのぅ~……

 ちらりと空になった皿を眺め、小さくため息が出る。


 はぁーまったく、戦争とはいつの時代になってもなくならんもんじゃのう。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

鬼の兵法伝承者、異世界に転世せしむる

書仙凡人
ファンタジー
俺の名は桜木小次郎。 鬼一法眼を祖とする鬼一兵法の令和の伝承者。 だがある時、なぜか突然死してしまったのだ。 その時、自称神様の変なペンギンが現れて、ファンタジー世界の転生を持ちかけられた。 俺はヤケになって転生受け入れたら、とんでもない素性の奴にログインする事になったのである。 ログイン先は滅亡した国の王子で、従者に毒盛られて殺されたばかり。 なにこれ? クーリングオフねぇのかよ!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

処理中です...