サカサマ

桜乃みなも

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キモチ

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5月。合コンで(多分人数合わせだった)彼氏が出来る筈もなく、高校生活に慣れたある暖かい日の事だった。
「ねーねー理奈ちゃん、校門のとこに超可愛い子が理奈ちゃんを待ってるよ!はやくはやくー!」
入学して新しく出来た友達の美香ちゃんが話しかけてきた。
今は昼休み。一時間ほどの休み時間だ。
「誰だろう?もしかして…」
嫌な予感がした。
みなみだった。
「理奈ー!今日うちの学校創立記念日だから会いに来ちゃった」
なんで来るの?
「理奈、大丈夫?」
いつの間にか当たり前の様に一緒にいる様になった賢太郎が顔を出す。
「この間の、彼ね?こんにちは。理奈がお世話になってまーす!」
ニッコリ笑うみなみはアイドルみたいに憎らしいほど可愛かった。
「…うん、賢私は大丈夫だよ」
「今日はね、あたし理奈の友達に用があって」
そして、賢太郎の腕を取った。
え?なに?
「はっきり言っていい?」
みなみはニコニコしている表情を崩さず、言い放った。
「あたしとー、付き合ってください!」
…。……。………。ん?
ふーん、またそうやって。
私の、なんだろう。私のじゃ、ない。
でもこんなにハッキリ取られたのは初めてかも知れない。
大事だと思えた人を。
「ちょっと、トイレ」
私は場違いだと思ってトイレに行くフリをして逃げた。向かった先は…。
資料室。賢太郎との思い出が詰まった場所。
思い出といっても、歴史の授業と掃除の時くらいしか足を運ばなかったけど。
ここに来ると思い出す。あはは、泣けてくるのは何故だろう?
隣の席になっただけなのに。
色んな話が出来て嬉しくて。
いつの間にか友達より大事な存在になって。
「あなたを好きになった」
気づいたら私は賢太郎がよく巻き直してた年表を抱きしめて、そう言葉にしていた。
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