サカサマ

桜乃みなも

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想い

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「ごめん、今大事なのはみなみさんじゃないから」
賢太郎はみなみに頭を下げると、校舎に向かって走り出した。
向かった先は、トイレではない。
「理奈!」
分かっていたのだ。理奈が行きそうな場所を。
二人が大事にしていた所を。
思い出が溢れている…資料室。
「…年表抱いて泣いてんじゃねーよ」
振り返るとそこには賢太郎がいた。
「なんで…場所、分かったの?」
理奈は涙も居場所も隠せなかった。
そして賢太郎への想いも。
「お前、俺がみなみさんのとこに行くとでも思ったのか?」
「え?」
年表を取り上げて広げる賢太郎。
そして「ここ」と一番初めの箇所を指差す。
「俺たち始まったんだろ?」
「は?」
驚いて目をぱちくりさせる。
「何で泣いてんだ」
「…賢がみなみのとこに行っちゃうと思ったんだよ」
「行かない」
年表を再び丸めて仕舞うと、今度は背後からゆっくり近づいてくる。
「俺ここが好きだし、ここにいる理奈が好きだよ」
「理奈がそれで、良いと思ってくれるならこっち向いて」
俯いていた理奈はゆっくりと振り返った。
「賢がみなみのところに行っちゃったら、どうしようって思った。」
「行かないよ」
「うん、行かないで」
「すき」
そして西日が当たる資料室で、ふたりは初めてキスをした。
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