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【外伝 美月編】第2章:道化の仮面
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授賞式の翌日、美月は都内のスタジオにいた。
バラエティ番組の収録。台本には、MCとのこんなやり取りが書かれている。
『MC:最近、海外でのニュースもありましたけど?』
『美月:(苦笑いで)もう、その話はやめてくださいよ~! 私も応援してるんですから!』
求められているのは「振られても気丈に振る舞う、健気な美月ちゃん」という役回りだ。
あるいは「余裕のある大人の女」というポーズ。
「はい、オッケーです! 美月さん、さすがの切り返し!」
ディレクターが大声で褒め称える。
美月はカメラが止まった瞬間、能面のような無表情に戻り、楽屋へと歩き出した。
すれ違うスタッフや若手タレントたちが、好奇の目でこちらを見ているのが分かる。
(可哀想に。プライドをへし折られて、それでも笑ってる)
そんな心の声が聞こえてくるようだ。
「美月さん、次のお仕事ですが……」
楽屋でマネージャーが恐る恐るスケジュール帳を開く。
「週刊誌のインタビュー依頼が殺到してます。『蓮との真実』とか『涙の独占告白』とか……どうします? 事務所としては、悲劇のヒロイン路線で好感度を上げるチャンスかと」
「……チャンス?」
美月は鏡越しにマネージャーを睨んだ。
「私が惨めな女を演じることで、同情票を集めろってこと?」
「い、いや、そういうわけでは……でも、今は世間の関心も高いですし」
美月はヘアブラシを強く握りしめた。
今までなら、受け入れていただろう。それが「橘美月」という商品を売るための最善策なら、感情を殺してでも演じきったはずだ。
けれど、昨日の蓮の顔が脳裏から離れない。
あの、嘘のない瞳。
(あんな顔を見せられて、まだ私に嘘をつけって言うの?)
「断って」
「え?」
「全部断って。蓮の話は一切しない。……私のプライドが許さないわ」
美月は初めて、事務所の方針に明確に逆らった。
マネージャーは狼狽していたが、美月は構わずメイクを落とし始めた。
鏡の中の自分は、厚塗りのファンデーションの下で、窒息しそうになっていた。
(第2章 完)
バラエティ番組の収録。台本には、MCとのこんなやり取りが書かれている。
『MC:最近、海外でのニュースもありましたけど?』
『美月:(苦笑いで)もう、その話はやめてくださいよ~! 私も応援してるんですから!』
求められているのは「振られても気丈に振る舞う、健気な美月ちゃん」という役回りだ。
あるいは「余裕のある大人の女」というポーズ。
「はい、オッケーです! 美月さん、さすがの切り返し!」
ディレクターが大声で褒め称える。
美月はカメラが止まった瞬間、能面のような無表情に戻り、楽屋へと歩き出した。
すれ違うスタッフや若手タレントたちが、好奇の目でこちらを見ているのが分かる。
(可哀想に。プライドをへし折られて、それでも笑ってる)
そんな心の声が聞こえてくるようだ。
「美月さん、次のお仕事ですが……」
楽屋でマネージャーが恐る恐るスケジュール帳を開く。
「週刊誌のインタビュー依頼が殺到してます。『蓮との真実』とか『涙の独占告白』とか……どうします? 事務所としては、悲劇のヒロイン路線で好感度を上げるチャンスかと」
「……チャンス?」
美月は鏡越しにマネージャーを睨んだ。
「私が惨めな女を演じることで、同情票を集めろってこと?」
「い、いや、そういうわけでは……でも、今は世間の関心も高いですし」
美月はヘアブラシを強く握りしめた。
今までなら、受け入れていただろう。それが「橘美月」という商品を売るための最善策なら、感情を殺してでも演じきったはずだ。
けれど、昨日の蓮の顔が脳裏から離れない。
あの、嘘のない瞳。
(あんな顔を見せられて、まだ私に嘘をつけって言うの?)
「断って」
「え?」
「全部断って。蓮の話は一切しない。……私のプライドが許さないわ」
美月は初めて、事務所の方針に明確に逆らった。
マネージャーは狼狽していたが、美月は構わずメイクを落とし始めた。
鏡の中の自分は、厚塗りのファンデーションの下で、窒息しそうになっていた。
(第2章 完)
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