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【欧州編】第4章:ロンドンの霧とすれ違い
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「本当に、残るの?」
パリ北駅(ガール・デュ・ノール)。
ロンドン行きのユーロスターの発車ベルが鳴り響く中、優音は蓮を見つめた。
「ああ。もう少し、パリでやりたいことがあるんだ」
蓮は優音のチケットを握りしめたまま、視線を逸らした。
あれから一週間。蓮はジャン・リュック監督のスタジオに通い詰め、門前払いを食らい続けていた。このままでは帰れない。プライドが、そして俳優としての本能が、彼をこの街に縛り付けていた。
「優音こそ、レコーディング頑張れよ。ロンドンの名プロデューサーなんだろ?」
「うん……。でも、蓮がいないと」
「大丈夫だ。俺たちはプロだろ?」
蓮が無理に作った笑顔は、皮肉にもジャン・リュックが評した通り「完璧に美しい嘘」だった。
優音はそれに気づきながらも、何も言えなかった。
彼が今、自分に見せない戦いをしていることを感じ取っていたからだ。
「……分かった。行ってくる」
優音は蓮の頬に軽くキスをし、改札を抜けた。
背中を向けて歩き出す。振り返れば決心が鈍る気がした。
列車が動き出す。
窓の外、流れていくパリの街並みは、次第に鉛色の空と無機質な田園風景へと変わっていく。
ドーバー海峡を越え、イギリスへ。
ロンドンのセント・パンクラス駅に降り立つと、そこは深い霧に包まれていた。
湿った冷気が、パリとは違う重さで優音にのしかかる。
迎えに来た現地スタッフの英語は早口で、事務的だった。
「Miss Yuon, hurry up. The studio is waiting.(急いで。スタジオが待ってる)」
車窓から見えるロンドンの街は、赤煉瓦と灰色の空のコントラストが美しく、そしてどこまでも孤独だった。
スマートフォンを取り出す。蓮からのメッセージはない。
『俺たちはプロだろ?』
その言葉が呪いのようにリフレインする。
離れ離れになった二人の距離は、東京とLAの時とは違う。
互いに成功し、大人になったからこそ生じた「自立」という名の溝が、静かに二人を分断しようとしていた。
その日の午後。
優音はアビー・ロード・スタジオの重い扉を開ける。
そこで待っていたのは、彼女の音楽観を根底から覆すことになる、一人の女性ピアニストだった。
(第4章 完)
パリ北駅(ガール・デュ・ノール)。
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「うん……。でも、蓮がいないと」
「大丈夫だ。俺たちはプロだろ?」
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優音はそれに気づきながらも、何も言えなかった。
彼が今、自分に見せない戦いをしていることを感じ取っていたからだ。
「……分かった。行ってくる」
優音は蓮の頬に軽くキスをし、改札を抜けた。
背中を向けて歩き出す。振り返れば決心が鈍る気がした。
列車が動き出す。
窓の外、流れていくパリの街並みは、次第に鉛色の空と無機質な田園風景へと変わっていく。
ドーバー海峡を越え、イギリスへ。
ロンドンのセント・パンクラス駅に降り立つと、そこは深い霧に包まれていた。
湿った冷気が、パリとは違う重さで優音にのしかかる。
迎えに来た現地スタッフの英語は早口で、事務的だった。
「Miss Yuon, hurry up. The studio is waiting.(急いで。スタジオが待ってる)」
車窓から見えるロンドンの街は、赤煉瓦と灰色の空のコントラストが美しく、そしてどこまでも孤独だった。
スマートフォンを取り出す。蓮からのメッセージはない。
『俺たちはプロだろ?』
その言葉が呪いのようにリフレインする。
離れ離れになった二人の距離は、東京とLAの時とは違う。
互いに成功し、大人になったからこそ生じた「自立」という名の溝が、静かに二人を分断しようとしていた。
その日の午後。
優音はアビー・ロード・スタジオの重い扉を開ける。
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(第4章 完)
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