予言少年の探偵事件簿

ちなみ

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 次にあの少年と出会ったのは揚げ物バイトの帰り。またも交番の前だった。前と違うのは時間帯が夕方なことか。
「また君?」
「おねえさん」
 伏せられた金色がこちらを射抜く。
「帰らないの?」
 少年と出会う時、少年はいつもひとりでいる。子供ならば大人と一緒にいてもいいと思うのに。
「……どこに」
「おうち。ないの?」
「ない」
 まさかの家がないと来た。これに春川は平然と答えるが脳内はしっちゃかめっちゃかだ。保護すべき子供が野ざらしになんてあってはいけない。
「じゃあどうするつもりなの」
「どうもしないよ」
 どうもしないらしい。
 さて困った。
「ご飯は?」
「食べなくても平気」
「……とりあえず、交番の人に話そっか」
 自分の状況がわかっているのかいないのか。彼はこくりと頷いて私についてくる。
 交番の扉を開くと目線が一斉にこちらを向き少しビビる。なんの罪もないはずなのに交番に行くのはなんだか緊張する。
「あの、迷子の子がずっと交番前にいて――」

 結果から言おう。この子、――久遠透というらしい――を春川が保護することになった。
 ただの大学生でしかない春川が。理由は久遠が強請ったのと、児童相談所に空きがないのと、時間的にもう施設を探す時間が無いこと。これらの理由により春川が久遠を一日保護することになってしまった。
 春川はぎこちなく頷きながら、久遠と手を繋いで交番を後にした。まさかこんなことになるとは。
「久遠くんはなにか好きなものある?」
「……おねえさん」
「そっか~……」
 その、お姉さんとは保護してくれた春川お姉さんのことを言っているのか広い意味でのお姉さんなのかで大分意味が違ってくる。出来れば前者であって欲しいがそこまで好感度が高いとも思えない。まあきっと前者だろう。多分。
 それにしても、大人しい。このくらいの子供は動くのが好きそうだけれど、久遠は大人しく歩いている。
 話しかけなければ話すこともなく、ただひたすら。
 やがて自宅についた時、久遠はようやく喋りだした。
「ここは安全ですね」
 家が安全じゃなかったらどこが安全なのか。春川は適当に「そうだね」と返答しながら夜の支度を始める。今日はいつもと違い久遠がいるため食事も二倍である。
 せっかく子供がいるのだからと頑張ってオムライスを作ってみた。上の卵がぐちゃぐちゃになってしまったが……まあ、許容範囲だろう。
「はい、夕飯」
 キッチンから戻ると久遠は部屋の隅に座っていた。そんな隅ではなく机の前とかに座ればいいのに、なんて思いながら手招く。
「手拭いて」
「はい」
 ウェットティッシュを手渡す。改めて手を合わせると久遠も春川に習うように手を合わせる。 
「いただきます」
「い、いただきます……」
 たどたどしく使われたいただきますに、普段は言わないタイプなのだろうか、なんて。
 無言のまま食事をするのが苦で、テレビをつける。すると丁度今日の事件がニュースでやっていた。
「本日、喫茶店で倒れた男性が――」
 オムライスを一口食べて、普通だなと頷く。もしかしたら口に合わないかもしれない。そっと横目で久遠の様子を見れば丁度食べるところだった。
「ん……」
「!」
 不味かったのだろうか。
「毒は入っていませんね」
 何を言ってるんだこのガキ。
「――男性は現在も意識不明で」
「この人、明日の午前九時二十七分に亡くなります」
 またそれだ。今度は具体的な内容で。
「それ、なんなの?」
「さあ。僕はただ知っているだけなので」
「……」
 知っている。彼はそう言うが、何を知っているというのだ。あの男が倒れること? それともあの男が死ぬこと? どちらにしても、それは世間一般で言う未来、と言うやつなのでは。
 春川は普通の女子大生だ。オカルトは程々に信じているが、スピリチュアルなものは信じていない。 
「そんなの嘘でしょ。だってあの人いま病院にいるんでしょ?」
「病院にいても死ぬことはあります」
 思わず息を飲む。そんなあっさりと人は死ぬのだろうか。
「じゃあ、助けられないの?」
「……」
 今まで淡々と返答していた久遠が初めて言葉を止めた。なにやら言葉を考えているようで、少ししてポツリと言う。
「貴女なら、可能です」
  私なら?
「なんで私?」
「貴女は関わるからです」
 意味がわからない。ただ、ひとつわかるのは春川はとんでもない事件に巻き込まれてしまったようだ。
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