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Day33ー⑩ フォークリ
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「急げ急げ急げ! 逃げろ逃げろ逃げろ! 戦艦の甲板より下に行くんだ!」
先行するテレンスが曲がり角等に来る度銃を向けて安全確認をしつつ、後続の者を手招きする。
ふと、戦艦のスピーカーからノイズが鳴り、続けて声が聞こえた。
「俺の名は『アブルッチ=ルーヴェルチュール』。またの名をバイフー。この第四生物『武蔵』を任されている。デモンストレーションだ、まずは主砲の威力を見せる。ウーキャン、あの一番高い山を撃て」
ウーキャンは言われるがまま、音の一つも立てずに主砲の砲塔を回転させ、また無音で角度を調整し、発砲。
黒煙と共に長大な赤い爆炎が吹き出し、狙われた山の上半分が砕け散った。
発砲の反動ではウーキャンは微動だにしなかったが、衝撃波の影響は凄まじく、軌道内の建築物を破壊。
「窓から離れて、伏せろ!」
誰かの指示に全員が従い、僅かに遅れて届いた、花火の何倍もの音量の爆発音が市庁舎を地震の様に揺らし、窓ガラスが全て割れ、破片がイオタ達の体に降り注ぐ。
「次に、機銃の性能を見せる。ウーキャン、一人一射で、狙えるヤツを撃て」
『聞いたか!? 姿を見せずに進むんだ!』
イオタ達はミリエラの指示に従って、窓より腰を低くしながら進む。
だが……。
イオタ達に向けて放たれた一発の弾丸は、壁を突き破り、先頭のテレンスを、首から下を粉微塵にした。虚しく音を立てて、テレンスの頭が転がる。
「あっ……!」
「馬鹿な! 遮蔽物の向こうから狙撃だと!?」
「…………」
うろたえるカール、驚く一人の隊員。そして冷静なイオタ。
「おっと、意図せず電探の性能も見せてしまったか。どこに誰が居るのかウーキャンには筒抜けだ。しかも、弾が追尾する様になる」
「だったら、自ら的になってやる」
イオタは悠然と立ち上がり、テレンスの生首を小脇に抱えると、もう片方の腕で突撃銃を構えた。
「おい馬鹿! 撃たれるぞ!」
カールが制止しようとするが、ウーキャンの発砲の方が先だった。しかしその弾はイオタに届かず、両者の中間の位置で爆発し、消滅した。イオタがプロミネンスを放ったのだ。
「何いぃ……!?」
憮然とするバイフーだが、ウーキャンは気にせず、複数の機銃で四方八方に撃っている。
「まあ良い。最後に、俺とウーキャンの超能力を見せる。ウーキャン、市役所に体当たりしろ」
ウーキャンは旋回して船首を市役所に向け、ゆっくり全身する。船の先端が岸壁に着く直前、船底が真っ赤になり、海面が煮え立ち始めた。
「何だ……?」
イオタがその様子を食い入る様に見ていると、船が岸壁に乗り上げた。その途端、回りの陸地が溶岩となって、ウーキャンはその上に浮かぶ格好となった。
「陸の黒船とは正にこの事」
「馬鹿言ってないで、来るぞ!」
カール達は奥に退避するが、イオタはその場から動かない。
ウーキャンはエンジンを全開にして、溶岩の海を作りながら迫る。そのスピードは特急電車にも匹敵する程の物。数秒の後に船体は建物にブレーキを掛けつつ突き刺さり、真っ二つにした。
「良し! デイブレイクだかも、これでお終いだろう。俺の超能力は『高速化』。手に触れている物の速度を10倍にまで上げられる! ハハハハハ!」
バイフーは高笑いする。が、どこからかイオタの声がした。
「幾ら速くても、先読みより早く動けない。市役所は街の端に在るから、減速すると分かっていた」
「何! どこだ……!?」
艦橋に居るバイフーは慌てて複数のレーダーとモニターをチェックするが、イオタの姿は無い。
「ここだよ、白虎。艦内はレーダーで感知出来ないからな」
「う!」
バイフーが前部甲板に視線を落とすと、銃を向けているイオタの姿が在った。
「くっ……!」
バイフーは部屋から逃げ出そうと背を向けるが、時既に遅し。イオタが引き金を引く方が早かった。
発射されたプロミネンスは緩い弧を描いて艦橋の上部に命中し、金属流が部屋を貫いた。
「プロミネンスはまだ有る。艦橋が倒れるまで撃とうか? エンジンを潰してやろうか? 弾薬に誘爆させるか?」
テレンスの生首を足元に置いて次弾を装填、発射し、今度は艦橋下部が抉り取られる。
「本当なら、主砲を撃てば真横の私は即死するが、さっきの様子じゃ反動の類いは受けない様だな。機関銃は甲板に向けられないし、今度は白虎が逃げ回る番だな」
「悪いが、そうはさせねーよ」
プロミネンスを乱射するイオタだが、それを制止させる声がした。イオタは手を止め、その方向をチラっと見る。
主砲の影から姿を現したのはスーツェーであった。
先行するテレンスが曲がり角等に来る度銃を向けて安全確認をしつつ、後続の者を手招きする。
ふと、戦艦のスピーカーからノイズが鳴り、続けて声が聞こえた。
「俺の名は『アブルッチ=ルーヴェルチュール』。またの名をバイフー。この第四生物『武蔵』を任されている。デモンストレーションだ、まずは主砲の威力を見せる。ウーキャン、あの一番高い山を撃て」
ウーキャンは言われるがまま、音の一つも立てずに主砲の砲塔を回転させ、また無音で角度を調整し、発砲。
黒煙と共に長大な赤い爆炎が吹き出し、狙われた山の上半分が砕け散った。
発砲の反動ではウーキャンは微動だにしなかったが、衝撃波の影響は凄まじく、軌道内の建築物を破壊。
「窓から離れて、伏せろ!」
誰かの指示に全員が従い、僅かに遅れて届いた、花火の何倍もの音量の爆発音が市庁舎を地震の様に揺らし、窓ガラスが全て割れ、破片がイオタ達の体に降り注ぐ。
「次に、機銃の性能を見せる。ウーキャン、一人一射で、狙えるヤツを撃て」
『聞いたか!? 姿を見せずに進むんだ!』
イオタ達はミリエラの指示に従って、窓より腰を低くしながら進む。
だが……。
イオタ達に向けて放たれた一発の弾丸は、壁を突き破り、先頭のテレンスを、首から下を粉微塵にした。虚しく音を立てて、テレンスの頭が転がる。
「あっ……!」
「馬鹿な! 遮蔽物の向こうから狙撃だと!?」
「…………」
うろたえるカール、驚く一人の隊員。そして冷静なイオタ。
「おっと、意図せず電探の性能も見せてしまったか。どこに誰が居るのかウーキャンには筒抜けだ。しかも、弾が追尾する様になる」
「だったら、自ら的になってやる」
イオタは悠然と立ち上がり、テレンスの生首を小脇に抱えると、もう片方の腕で突撃銃を構えた。
「おい馬鹿! 撃たれるぞ!」
カールが制止しようとするが、ウーキャンの発砲の方が先だった。しかしその弾はイオタに届かず、両者の中間の位置で爆発し、消滅した。イオタがプロミネンスを放ったのだ。
「何いぃ……!?」
憮然とするバイフーだが、ウーキャンは気にせず、複数の機銃で四方八方に撃っている。
「まあ良い。最後に、俺とウーキャンの超能力を見せる。ウーキャン、市役所に体当たりしろ」
ウーキャンは旋回して船首を市役所に向け、ゆっくり全身する。船の先端が岸壁に着く直前、船底が真っ赤になり、海面が煮え立ち始めた。
「何だ……?」
イオタがその様子を食い入る様に見ていると、船が岸壁に乗り上げた。その途端、回りの陸地が溶岩となって、ウーキャンはその上に浮かぶ格好となった。
「陸の黒船とは正にこの事」
「馬鹿言ってないで、来るぞ!」
カール達は奥に退避するが、イオタはその場から動かない。
ウーキャンはエンジンを全開にして、溶岩の海を作りながら迫る。そのスピードは特急電車にも匹敵する程の物。数秒の後に船体は建物にブレーキを掛けつつ突き刺さり、真っ二つにした。
「良し! デイブレイクだかも、これでお終いだろう。俺の超能力は『高速化』。手に触れている物の速度を10倍にまで上げられる! ハハハハハ!」
バイフーは高笑いする。が、どこからかイオタの声がした。
「幾ら速くても、先読みより早く動けない。市役所は街の端に在るから、減速すると分かっていた」
「何! どこだ……!?」
艦橋に居るバイフーは慌てて複数のレーダーとモニターをチェックするが、イオタの姿は無い。
「ここだよ、白虎。艦内はレーダーで感知出来ないからな」
「う!」
バイフーが前部甲板に視線を落とすと、銃を向けているイオタの姿が在った。
「くっ……!」
バイフーは部屋から逃げ出そうと背を向けるが、時既に遅し。イオタが引き金を引く方が早かった。
発射されたプロミネンスは緩い弧を描いて艦橋の上部に命中し、金属流が部屋を貫いた。
「プロミネンスはまだ有る。艦橋が倒れるまで撃とうか? エンジンを潰してやろうか? 弾薬に誘爆させるか?」
テレンスの生首を足元に置いて次弾を装填、発射し、今度は艦橋下部が抉り取られる。
「本当なら、主砲を撃てば真横の私は即死するが、さっきの様子じゃ反動の類いは受けない様だな。機関銃は甲板に向けられないし、今度は白虎が逃げ回る番だな」
「悪いが、そうはさせねーよ」
プロミネンスを乱射するイオタだが、それを制止させる声がした。イオタは手を止め、その方向をチラっと見る。
主砲の影から姿を現したのはスーツェーであった。
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