第四の生命体#2 奪取

岬 実

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Day40-⑲ プロヴォクロ

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 純金アステリオスはイオタが背を向けたと見るや、軽く助走を付けると高くジャンプし、天井を透過して姿を消した。

「ん、もっと良い戦法に気付いたか?」

 やや有って天井を抜けて現れた敵の手には、大型のクローゼットが。それをイオタに向かって落とす。

「危ないな」

 イオタは避けるがてら素早く部屋から出て、続いて投げ付けられた鋭い木片を一壊いっかいの歯車で払い除けると、純金アステリオスに手招きしながらその場を去る。
 逃げている間にも、純金アステリオスの攻撃は壁や天井、床を通り抜けての奇襲、時には頭と腕だけを出しての投擲、が続く。
 その一撃一撃をイオタは攻撃より一瞬早く、立ち止まる、仰け反る、しゃがむ、前転する、等でことごとく避ける。

「ヒット・アンド・アウェイに変えたか。でもなあ、考えてみればあの兄妹、透過じゃなく硬さをアイツに与えるべきだったな。迷路の番人をやらせてる場合かよ」
『今みたいな暴走に備えて弱点を残したか? それを言ったら作った宇宙人? がそもそも悪い。重力を軽くして柔らかさをカバーしてる様だが、折角の質量と運動能力が活かせてない』
「大方、初期の作品か何かなんだろう。すめらぎさんも、『完成型は自分だけで、他は試作品』だと初対面で言ってたし」
『そんな所だろうな……。それより、もうすぐ進入口だぞ』
「分かってる」

 進入口の手前、心配そうな顔のすめらぎに行き会った。

「あ、すめらぎさん。逃げますよ?」
「え、あ、はいっ!」

 イオタはすめらぎの手を引いて外へ出ると、ヘリコに手を振って指差し、その指をやや下の開けた場所に向けた。するとイーライはその位置に機を移動させ、穴の空いた落下傘付きの何かを投下した。
 肩紐付きの直方体、そこから伸びるコード、その先には銃身の様な物。
 イーライがスピーカー越しに述べる。

『イオタ! 取り逃したって!? お前らしくねえ! なら試運転は牛でやってやれ!』
「そのつもりでしたっ、と……。で、すめらぎさん」

 すめらぎはイオタの意を汲んで二手に別れ、二十六年式拳銃の銃口にキスし、進入口に向かって構える。一方のイオタは一目散に投下物の元へと向かう。
 『九三式火焔発射機 光学版』と銘打たれたそれが起動している事を確認すると、イオタはイソイソとそれを背負い、砲身を構えた。

すめらぎさんは伏せてて」

 すめらぎが指示に従った直後、進入口に純金アステリオスが姿を現し、走って来た勢いそのままにジャンプ。イオタに向かって斬り掛かる。

「家畜の姿なら、解体されるのがお似合いだ……」

 呟いて純金アステリオスの腹部に狙いを定め、引金を引く。
 一瞬も掛からない程の直後、砲口から伸びた赤い光は純金アステリオスを貫き、背後の岩やコンクリートをもドロドロに溶かして行く。
 イオタは射線を上にずらし、純金アステリオスの上半身を真っ二つに。

「そいそいそいそい、そいそいそいそい!」

 続いて、横方向に往復する事で頭から輪切りに。純金アステリオスは為す術も無く金塊と化し、その場に重い音を立てて転がった。

「これで良し、と……」

 イオタが一息付いた所、ジョジョが通信を入れた。

『良くやったイオタ君。良い実戦データと資金が手に入った。今回は、後はきんの回収まで警戒に当たれば終了とする。イーライ君はカールさんを病院に引き渡せ。そろそろすめらぎ君の止血の効果が半分を切る筈だ』
「承知しました」
『了解! すぐに届けてやる!』

ーーーーー

 イオタが戦っていた位置からかなり離れた森林の中で、ルミエール達は双眼鏡やパソコンに映したカメラの様子で、戦う様子を眺めていた。

DAYBREAKデイブレイク……。肝心の壷は取り逃したのか。オマケにあんな武器まで有るとは、さて、どうするかな……。怪物の死骸は金塊みたいだし貰っておきたいが……」

 ルミエールが飛んで行くヘリコを見送りつつ腕組みをした時、イオタが不意に向き直り、直後に銃声が響いて、背負うバッテリーから火花が上がった。と同時によろめくイオタ。
 くちを押さえて近寄り、心配する様子のすめらぎ。イオタはその彼女の巨乳を握りつつ突き飛ばし、二度目の発砲音で彼女の腹部が抉り取られた。傷口を押さえて倒れ込むすめらぎ
 イオタは煙が上がり始めたバッテリーを捨て、一旦すめらぎを引き摺って岩陰に隠れる。

「ん? 誰だ撃ったのは……」
「あっ!? 『キャビュラント』のチームが勝手に!」

 双眼鏡とカメラを移すと、バイクに乗った数十台の一団がイオタ達に迫っている。その先頭の男が、カメラに向かって軽く手を振った。
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