天使の住まう都から

星ノ雫

文字の大きさ
46 / 116
二章

046 三人での探索

しおりを挟む
 さて仕切り直しだ。
 この階層はラムリスが言ったように様々なゴーレムが多く出現する。そしてボスもゴーレムだ。
 こいつ等は基本的に石や金属などの個体が多いため武器を痛めやすく、ソードブレイカーとも呼ばれる。
 攻撃魔法で最もポピュラーな炎の攻撃も効きにくく、俺の雷属性の魔法もそのまま地面に流れてしまって恐らく効かないだろう。
 こいつ等を攻略して前に進んで行けるかが、中層冒険者となれるかの境目とも言われている。

 ゴーレムには核とよばれる宝石のような石が表に組み込まれているため、こいつを破壊すると倒す事ができる。
 そのため、核を確実に狙える技術が要求されてくる。ラムリスが前衛が多い方が良いと言ったのはこのためだ。

 だが、最も安全な攻略法は弓などにより核を打ち抜く遠距離物理攻撃だったりする。
 だから今回は、俺もリンメイも投擲をメインにして進んで行こうと思っている。ラキちゃんも投げる気満々だ。
 嬉しい事に先日マジックバッグのウエストポーチを手に入れたので、アイアンニードルの針は山のように購入して持ってきている。

「とりあえずさっきの階段で休憩しながらマップの確認して、進む道決めようぜ」

「分かった」 「はーい」

 今はじきに再構築の日がやってくるので、割と売ってるマップの内容が充実している。

「結構深い所までマップができてんな」

「そうだな。えーっと、ここがこう行って……戻ってきて……残念、十四層に向かう階段までは流石に無いか」

「十三層のこの辺が怪しそうだな」

 リンメイはおやつに持ってきたドーナツをモグモグしながら、十三層の空白の部分を指さした。

「それだと十二層のこの辺りに階段が無いと行けないね」

 ラキちゃんもドーナツをモグモグしながら指差す。

「そうだね。じゃ、ひとまずここから十二層に降りたら、そっちに向かってみようか」

 俺もドーナツの欠片を口に放り込み、結論を出す。

「「おっけー」」



 十二層に降りると、まずはラキちゃんに魔法を使って迷路の構造を確認してもらう事に。
 振動魔法の応用で分かるんだそうな。潜水艦のソナーみたいだね。
 ただ、全方位に魔法を放つと情報量が多すぎて大変なので、その階層ごとに平面に限定して魔法を使う事にしている。
 しかも方角を限定して、更に情報量を減らして負荷を減らすんだとか。

 これは余りにもチートな気がするので、他の冒険者が居たら使わない事にしている。俺達だけの秘密だ。
 まぁラキちゃんの存在そのものがチートなんだけどね。

 ラキちゃんは早速魔法を発動すると、 カカカカッ と物凄い勢いでペンを走らせ、マップの空白部分を埋めて行く。
 俺達にも分かるようにしてくれるためだ。

「うーん、こんな感じかな?」

「すげーな! サンキュー!」

「おぉー、凄い! ありがとう!」

「うふふ、どういたしましてっ」

 早速ラキちゃんが埋めてくれた空白部分を確認し、進んで行く事にする。
 先程の休憩中にラキちゃんが示した辺りに、やはり階段らしき物が確認されたから。
 それと、短い行き止まりは宝箱があるかもしれないので覗いて行く事に。

 壁や床がペリペリッと剥がれてゴーレムになったり、土魔法が発動した時のように土や砂、中には泥が固まってゴーレムになったりして襲い掛かってくる。
 恰好は人型が多いが、たまにスライムのような液体っぽい奴だったり、四つ足の俊敏なタイプも現れる。
 俺達は現れる度に投擲で核を狙い、打ち抜いて行っている。正直、投擲術の練習に持って来いな階層だった。

 ドロップ品は魔石以外には、たまに鉱石の塊や宝石の原石を落とし、極稀に魔導石も落とす時がある。
 普通だったら重くて嵩張るため持ち帰る品を厳選しないといけないが、今日は俺達だけなのでラキちゃんの亜空間収納に次々と入れさせてもらっている。

「こっちが短い距離で行き止まりのはずだから、ちょっと見に行ってみようぜ」

「了解だ」 「はーい」

 少し進むと直ぐにゴーレムが現れたが、手堅く仕留めて進んで行く。
 その先には……。

「あっ! 宝箱!」

「おおっ! やったな!」

「いいねいいね! んじゃ、あたいとおっさんで周囲の警戒するから、ラキ開けてくれるか?」

「はーい」

 ラキちゃんが鍵を使って箱を開けると、中にはサークレットが入っていた。
 ラキちゃんがしている認識阻害用の物と同様、それほど派手じゃないが、おしゃれなサークレットだっだ。

「おっ! ラキちゃんのサークレットに似た感じのだね」

「ラキのは極上品だから比べちゃダメだが、これもそこそこ良いな」

「ならリンメイ使うか?」

「いいのか?」

「「いいよー」」

「やった! ありがとっ!」

 リンメイは早速宝箱から取り出し、自分のサイズに変化したサークレットを身に付けた。

「似合ってる似合ってる」

「リンメイお姉ちゃんステキだよー」

「そっ、そうか? へへっ」

 これまで頭部の装備を何も付けていなかったリンメイはおしゃれなサークレットを装備してご満悦のようだ。

「そのサークレットはどんな効果が付いてるんだ?」

「えーっと、頭部全体を革の兜程度の保護してくれる」

「へぇー。そのサークレットが革の兜と同じって地味に凄いな」

「だろ?」

 ダンジョンでもおしゃれに気を配りたい女性冒険者に人気そうな装備だなーと感心してしまった。
 俺達は引き返し、階段へ向かって再び進んで行く。
 それから二回ほど短い行き止まりを覗いたが、残念ながら宝箱は無かった。



 一時間以上掛かっただろうか。漸く十三層へ下る階段へと辿り着いた。

「結構掛ったなー」

「かなり魔物と遭遇したからなあ。――どうだろう? ここで昼食にしないか?」

「「さんせー」」

 早速俺達は階段付近でお昼の休憩をする事にした。

「投擲が結構ハマってるなー。なんかそのままボス行ってもいいんじゃないかって感じ」

「リンメイの氷魔法はこういう相手に相性ピッタリだったな。可動域を凍らせて手足の動きを止めてくれるから、核を狙い易かったよ」

「うんうん、四つ足のすばしっこいのも転んじゃってたもんね」

「あれ笑っちゃったな!」

 俺の雷属性はイマイチだったが、リンメイの氷属性は今回とても効果的だった。
 攻略の難易度が属性の違いだけでもこんなに変わってくるんだなと、今回つくづく思った。

 一頻り休憩した後、再び探索を開始だ。
 十三層に降りたら再びラキちゃんにマップの補完をお願いする。

「あっ、やっぱりこの階段から来ないと進めねーようになってたな」

「あー、ホントだ」

 見ると、売られていたマップに記されていた幾つかの階段からは、今いる区間へはどこも繋がっていなかった。

「てことは、これだと十四層への階段までは結構近いな。早速行ってみようぜ」

「おう」 「いこいこー」

 敵を倒しつつ暫く進んだら、リンメイの言う通り下り階段が見えてきた。
 階段の辺りまで来たら、リンメイがスンスンと鼻を鳴らす。どうやら何かに気が付いたようだ。

「……ここにさっきまで、かなりの人数がいたっぽいな」

「そうなのか?」

「うん、五パーティ位はいたはずだ」

「そんなに!?」

 あっ、たしかに俺の鼻でも薄っすらと煙草の残り香を感じ取る事ができた。
 どうやらここで大所帯が休憩してたようだな。

「こいつらの匂い追ってけば、意外とあっさりボス部屋まで行けるかもしれねーな」

「でも沢山の人がいるなら、また順番待ちしそうだね」

「あー、そうだね」

「んー……待つのだりぃなあ。ちょっと寄り道していいか?」

「いいけど、どこへ?」

「丁度この階段のある部屋の裏側。そこの横道からぐるっと回れば、すぐ行き止まりなんだよ」

「宝箱か!」

「そそ。そっちに連中が行った形跡無いからさ、もしかしたら見落としてるかもなーと思って」

「「行こう行こう」」

 俺達はいそいそと階段の部屋の裏手にある行き止まりに向かった。
 なんとリンメイの読みは的中し、宝箱があるじゃないですか!

「ひゅー! やりぃ!」

「リンメイお姉ちゃんすごーい!」

「やったな!」

 俺とリンメイは再び周囲の警戒に当たる。

「ラキ頼むぜっ!」

「りょーかーい!」

 ラキちゃんが宝箱を開けると、今度はブーツだった。
 俺の今使っているブーツは液面歩行の効果が付いていたから、これも何かしらあるのかと期待してしまう。

「……マジかよ……これ空中歩行が二歩ずつのレア品だ! ――あのさ……、続けてで悪いんだけど、このブーツもあたいが使っていいかな?」

「いいよー」

「いいぞー。前は俺がブーツ譲ってもらったしな。ラキちゃんは飛べるし、リンメイが活用するといいよ」

「うんうん」

「ありがとう!」

 早速リンメイは宝箱から取り出し、履き替えてしまう。
 そのブーツには刺繍のように羽根の意匠がされていて、女の子が履いても十分におしゃれなデザインだった。
 リンメイはトントンと履き心地を確認した後ブーツに魔力マナを込めると、何もない所を階段があるかのように四歩上って行った。
 まるでパントマイムを見ているようだ。

「「すごい!」」

「おもしれー!」

 一旦着地し、数秒のクールタイムを待ったようだ。
 今度は何も無い空間を壁があるかの如く蹴って跳躍し、クルクルッとバク転してみせた。

「「おおー!」」

 リンメイの軽業に、思わずラキちゃんと二人でパチパチと拍手を送る。
 凄いなこのブーツ。空中で方向転換できるって事じゃないか。
 リンメイの才能と合わせれば、グンと戦闘の幅が広がる気がした。

 寄り道して正解だったな。仲間が強化されていくのは自分の事のように嬉しい。
 宝箱の中身に満足した俺達は再び階段の部屋まで戻り、十四層へ降りて行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~

イチイ アキラ
ファンタジー
生まれ変わったら飛べない鳥――ペンギンでした。 ドラゴンとして生まれ変わったらしいのにどうみてもペンギンな、ドラゴン名ジュヌヴィエーヴ。 兄姉たちが巣立っても、自分はまだ巣に残っていた。 (だって飛べないから) そんなある日、気がつけば巣の外にいた。 …人間に攫われました(?)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...