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二章
047 先客
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十四層に降りた俺達は再びマップを確認する。
ボス部屋の座標は再構築されても固定のため、空白のマップにポツンと明記されている。
どうやら俺達が下りてきた階段の座標は、ボス部屋の座標に結構近いようだ。
ただし、そのまま真っ直ぐ行く事ができればの話なんだけど。
とりあえず今降りてきた階段からボス部屋のある方角を確認し、そちらの方角をラキちゃんに書き出してもらう事にした。
「こんな感じでーす」
「はーい。ありがとう」 「サンキュー」
ラキちゃんにお礼を言い、早速マップを見せてもらう。
「うーん……、そのままボス部屋の方角に向かって行っても行き止まりなんだな。ボス部屋まではかなり大回りしないといけないのか……」
「だなー。連中もどうやら一旦そっちの通路へ向かった後、戻ってきて向こうの通路へ向かったみたい」
リンメイはあっちに臭いが続いていると教えてくれた。
上の階で休憩していた大集団は、もう既に行き止まりを確認して別のルートに向かったって事か。
「とりあえず俺達もそこの通路からボス部屋目指そう」
「おっけー」 「はーい」
大集団が通って行ったであろう進路を、俺達も進んで行く。
彼らが人海戦術で進路を模索しながら進んでいるためか、魔物の出現は少なく感じる。
ただ残念な事に宝箱も全部開けられてしまったようで全く見当たらない。
漸くボス部屋前のエリアが見える辺りまでくると、微かに人の話し声が聞こえてきた。――連中は居るな。
俺達がボス部屋前のエリアに踏み込むと、そこには三パーティほどがボス戦の順番を待っていた。
警戒する視線が俺達の方に一斉に集まる。
どこかの国の騎士団か傭兵団だろうか? 目立たないようにしている感じだが、全員の装備が揃っていて統一感がある。
そういえばミリアさんが、たまに騎士団が訓練でダンジョンを利用しに来るって言ってたな。
俺達の姿を見た連中は、途端に警戒心を含ませた顏つきから嘲笑や哀れみを含んだ顔つきとなり、好き勝手に言いたい事を言い出した。
「ここに来るまでに三人も仲間を失ったようだな」
「弱いくせにこんな所までくるから……」
「引き返せばいいものを……」
……ああ、こいつ等は俺達がここに来るまでに仲間を失ったと思っているのか。
「チッ、亜人がいるぞ」
「魔王の眷属なんか仲間にしているからだ」
「……おいおい、子供までいるぞ」
魔王の眷属とリンメイを揶揄する声を耳にした。……と言う事はこいつ等、只人至上主義の国の連中なのかよ。
厄介な……。
リンメイは恐らく五パーティと言っていた。現在ここには三パーティほども残っている。
俺達の番が回ってくるまでは、まだかなりの時間が掛かりそうだ。
それまでリンメイをこいつ等と同じ場所に居させる訳にはいかない。
「チッ、感じ悪いな。――二人とも、あっち行こう」
「フンッ! 何が魔王の眷属だ。くだらねー」
俺は二人の手を引き、ひとまずボス部屋前のエリアから去る事にした。
連中はどうやら俺達がボス戦を諦めて帰って行くと思ったんだろう。また口々に失礼な事を言っている。
「ありゃ帰りは絶望的だな」
「生きて帰れるといいな!」
「お前思ってねーだろ!」
「ひゃははは!」
俺達はボス部屋前のエリアから離れ、更に奥へと進んで行く。
「なんだあいつ等ムカつくなー!」
「ヤな感じだったねー……」
「気にしない気にしない。――折角だし宝箱でも探しながら時間潰そうぜ」
「チェッ、そーするか」
「ラキちゃん済まないけど、またマップの空白部分を埋めてもらえないかな? この先の方をお願いしたいんだけど」
「はーい」
ラキちゃんにお願いして、ボス部屋よりも更に奥の空白部分を埋めてもらう。
あの大集団は階層の踏破が目的のはずだから、ボス部屋よりも奥には行っていないはずだ。
きっとこっちにはまだ宝箱が残っているはず。
一時間程で連中は居なくなるだろうと判断した俺達はそれ位を目処に宝箱を探す事にしたんだが、なんと最初の行き止まりで早速見つけてしまう。
「マジか! いきなりあったぜ!」
「おおっ、幸先いいねぇ!」
「うんうん!」
ラキちゃんがいつものように鍵を使って開けようとしたら、突然宝箱が大口を開けて襲い掛かってきた。
「きゃっ!」
――ゴン!
ラキちゃんが咄嗟に張った結界魔法に跳ね返ってミミックは後ろに転がる。
そうだ、中層以降にはこいつが出現するんだった!
「おっさん逃がすな! 絶対倒すぞ!」
「おっ、おぅ!」
大口を開けながらピョンピョンと飛び跳ねるミミックを慌てて追いかける。
逃げられないように退路を塞ぎ俺とリンメイは斬り掛かるが、かなり固くてダメージを与えている感じがしない。
こいつどうやって倒すんだ?
「弱点見えたぞ! 口の中に属性攻撃だ!」
「分かった!」
リンメイの鑑定のおかげで弱点が分かった俺は素早くアイアンニードルの針を口の中に放り込み、雷魔法を放った。
――ボグン!
閉じたミミックの口から煙が上り、口が開いてひっくり返った。
どうやら倒したようで、ミミックは崩れていく。
「やった!」
「ナイスお兄ちゃん!」
崩れ去っていく中から出てきたのは、魔石が一つと、このエリアの宝箱の鍵が三本だった。
「おっ、鍵が三つもある! 結構いい物出すな」
俺のそんな言葉とは裏腹に、リンメイは落胆した様子だ。
「なぁんだ、ハズレかよー」
リンメイはそう言い、魔石と鍵束を拾い上げた。
「当たりだと何が出るの?」
「俺も知りたい」
「ああ、当たりだと 『迷宮宿の鍵』 を落とすんだよ」
「「迷宮宿の鍵?」」
「まぁ、正式名称は只の 『トラップ部屋の鍵』 なんだけどな。迷宮の壁に向かってその鍵を使うと、宝箱が一つだけある部屋に入れるらしくてさ。その宝箱、実は中身が空なんだけど開けるとトラップが発動して入口の扉が閉まっちまうんだよ。出るにはその宝箱の中に何でもいいから入れて閉じないといけない。んで、いつの間にかその仕組みを利用して安全に寝泊まりする奴らが現れてさ、それで迷宮宿って言われるようになったんだって」
「「へぇー」」
「あたいらみたいに中層うろついてる冒険者にはあんまし価値ねーかもだけど、高層以上を行く冒険者には垂涎のアイテムらしくてさ、これがまた高値で売れるんだよ」
「「へぇー」」
「まっ、お姉ちゃんの受け売りなんだけどな。もし手に入れたら売って欲しいって、前に言われたんだ」
たとえ魔物の寄ってこない階段エリアでも、見張りを立てないと他の冒険者に襲われるリスクがある。
『紅玉の戦乙女』 は全員女性だし、十分な休息を取るには必須アイテムなのかもしれないな。
それから俺達は再び行き止まりを目指して進んで行くと、三つ目の行き止まりでまた宝箱を見つける事ができた。
今度は本物の宝箱だったが回復ポーションが三本と、ちょっと残念な内容だった。
時計を見ると、ボス部屋前を出てから一時間は経っている。――そろそろ戻ってみるか。
「頃合いだし、そろそろ戻ろうか?」
「「りょうかーい」」
ボス部屋前まで戻ると、やはり連中はもういなかった。
だかボス部屋の扉は締まっている。と言う事はまだ戦っているって事か。
「なんだ、まだ戦ってるのかよ。さっさと終わらせろよなー」
「ボス戦前には一息入れたかったからさ、丁度良いじゃないか」
「そうだよリンメイお姉ちゃん、休憩しましょ」
今日はなんだかんだでずっと歩き回って戦闘しているからな。ボスに挑む前に少し休んでおきたい。
俺達は扉の前に腰を下ろし、ボスの事前情報を確認しながらゆっくりと休憩を取る事にした。
「おっ開いた。――んじゃいくか!」
「おう!」 「いこー!」
ボス部屋の扉が開いたので、俺達は早速中へ入る。
六人未満だと自動的に扉は閉じないため、扉近くの宝玉を使って手動で閉じないといけない。
「んじゃ準備いいか? 扉閉めるぞー」
「「おっけー」」
扉を閉めると早速中央に魔法陣が出現する。今回は一つだけだった。
十四層のボスはゴリラのような風貌の腕の長いパワーゴーレムって奴なんだが、かなりでかい。
「やらしいなー、腕で核を隠しながら出てきやがった」
リンメイの言う通り、ゴーレムは両腕を体の前に重ねて核が隠れるようにして出てきた。
「ホントだ残念。瞬殺されないように考えてるんだろうな」
事前情報では、このゴーレムには核が三つもあるとの事。
しかも核の位置は変化するらしい。
よく見るとこいつの体には溝が切ってあるので、どうやらそこを核が移動するようだな。
「来るぞ!」
実体化したゴーレムは、想像したよりも早い速度で迫ってきた。
あの質量が一気に迫ってくるのは結構怖いものがある。
俺達は咄嗟に躱す。
リンメイは早速ブーツの性能を発揮して上に飛び、前転をしながら頭付近を移動していた核を見事に剣で砕いた。
「ナイスだリンメイ!」
「あっバカ! おっさん逃げろ!」
俺は殴ってきたゴーレムの腕を躱したのだが、リンメイが警告する。
えっ? 何でゴーレムのもう一つの腕が俺の方に!? まずい!
俺は派手にぶん殴られ、壁まで吹き飛ばされてしまった。
「がはっ!」
咄嗟に身体強化を最大にしたからなんとか気絶せずに済んだが、全身がめちゃくちゃ痛い。
何が起こった!?
「お兄ちゃん!」
すぐにラキちゃんが神聖魔法を掛けてくれたようで、体の痛みは霧散していく。
頭を振りゴーレムの方を見ると、何をされたのか直ぐに理解できた。
ゴーレムは腰を軸にして上半身をコマのように回転させて動いていやがる。
くそう迂闊だった! 形が人型だから人の動きをすると勝手に思い込んでいたが、コイツは何でもアリな魔物だ!
「今度は転がってくるぞ!」
リンメイの声を聞き、慌てて立ち上がる。
ゴーレムは手と足を体の窪みに綺麗に折りたたんで球形となると、勢いよく転がってきた。
こいつ多才だな!
転がりながら俺の方へ向かってきたゴーレムを咄嗟に躱す。
壁際だったため、奴は壁に激突して止まった。
急いでゴーレムの方へ振り向くと、丁度俺から見える位置に核が来ているじゃないか!
――こんなチャンス逃がすものか!
俺は急いでアイアンニードルの針を引き抜いて投擲し、核を打ち抜いた。
「やったお兄ちゃん!」
「ナイスだぜおっさん! あと一つだ!」
ゴーレムは人型に戻り起き上がってきた。あと一つの核はどこだ!
ボス部屋の座標は再構築されても固定のため、空白のマップにポツンと明記されている。
どうやら俺達が下りてきた階段の座標は、ボス部屋の座標に結構近いようだ。
ただし、そのまま真っ直ぐ行く事ができればの話なんだけど。
とりあえず今降りてきた階段からボス部屋のある方角を確認し、そちらの方角をラキちゃんに書き出してもらう事にした。
「こんな感じでーす」
「はーい。ありがとう」 「サンキュー」
ラキちゃんにお礼を言い、早速マップを見せてもらう。
「うーん……、そのままボス部屋の方角に向かって行っても行き止まりなんだな。ボス部屋まではかなり大回りしないといけないのか……」
「だなー。連中もどうやら一旦そっちの通路へ向かった後、戻ってきて向こうの通路へ向かったみたい」
リンメイはあっちに臭いが続いていると教えてくれた。
上の階で休憩していた大集団は、もう既に行き止まりを確認して別のルートに向かったって事か。
「とりあえず俺達もそこの通路からボス部屋目指そう」
「おっけー」 「はーい」
大集団が通って行ったであろう進路を、俺達も進んで行く。
彼らが人海戦術で進路を模索しながら進んでいるためか、魔物の出現は少なく感じる。
ただ残念な事に宝箱も全部開けられてしまったようで全く見当たらない。
漸くボス部屋前のエリアが見える辺りまでくると、微かに人の話し声が聞こえてきた。――連中は居るな。
俺達がボス部屋前のエリアに踏み込むと、そこには三パーティほどがボス戦の順番を待っていた。
警戒する視線が俺達の方に一斉に集まる。
どこかの国の騎士団か傭兵団だろうか? 目立たないようにしている感じだが、全員の装備が揃っていて統一感がある。
そういえばミリアさんが、たまに騎士団が訓練でダンジョンを利用しに来るって言ってたな。
俺達の姿を見た連中は、途端に警戒心を含ませた顏つきから嘲笑や哀れみを含んだ顔つきとなり、好き勝手に言いたい事を言い出した。
「ここに来るまでに三人も仲間を失ったようだな」
「弱いくせにこんな所までくるから……」
「引き返せばいいものを……」
……ああ、こいつ等は俺達がここに来るまでに仲間を失ったと思っているのか。
「チッ、亜人がいるぞ」
「魔王の眷属なんか仲間にしているからだ」
「……おいおい、子供までいるぞ」
魔王の眷属とリンメイを揶揄する声を耳にした。……と言う事はこいつ等、只人至上主義の国の連中なのかよ。
厄介な……。
リンメイは恐らく五パーティと言っていた。現在ここには三パーティほども残っている。
俺達の番が回ってくるまでは、まだかなりの時間が掛かりそうだ。
それまでリンメイをこいつ等と同じ場所に居させる訳にはいかない。
「チッ、感じ悪いな。――二人とも、あっち行こう」
「フンッ! 何が魔王の眷属だ。くだらねー」
俺は二人の手を引き、ひとまずボス部屋前のエリアから去る事にした。
連中はどうやら俺達がボス戦を諦めて帰って行くと思ったんだろう。また口々に失礼な事を言っている。
「ありゃ帰りは絶望的だな」
「生きて帰れるといいな!」
「お前思ってねーだろ!」
「ひゃははは!」
俺達はボス部屋前のエリアから離れ、更に奥へと進んで行く。
「なんだあいつ等ムカつくなー!」
「ヤな感じだったねー……」
「気にしない気にしない。――折角だし宝箱でも探しながら時間潰そうぜ」
「チェッ、そーするか」
「ラキちゃん済まないけど、またマップの空白部分を埋めてもらえないかな? この先の方をお願いしたいんだけど」
「はーい」
ラキちゃんにお願いして、ボス部屋よりも更に奥の空白部分を埋めてもらう。
あの大集団は階層の踏破が目的のはずだから、ボス部屋よりも奥には行っていないはずだ。
きっとこっちにはまだ宝箱が残っているはず。
一時間程で連中は居なくなるだろうと判断した俺達はそれ位を目処に宝箱を探す事にしたんだが、なんと最初の行き止まりで早速見つけてしまう。
「マジか! いきなりあったぜ!」
「おおっ、幸先いいねぇ!」
「うんうん!」
ラキちゃんがいつものように鍵を使って開けようとしたら、突然宝箱が大口を開けて襲い掛かってきた。
「きゃっ!」
――ゴン!
ラキちゃんが咄嗟に張った結界魔法に跳ね返ってミミックは後ろに転がる。
そうだ、中層以降にはこいつが出現するんだった!
「おっさん逃がすな! 絶対倒すぞ!」
「おっ、おぅ!」
大口を開けながらピョンピョンと飛び跳ねるミミックを慌てて追いかける。
逃げられないように退路を塞ぎ俺とリンメイは斬り掛かるが、かなり固くてダメージを与えている感じがしない。
こいつどうやって倒すんだ?
「弱点見えたぞ! 口の中に属性攻撃だ!」
「分かった!」
リンメイの鑑定のおかげで弱点が分かった俺は素早くアイアンニードルの針を口の中に放り込み、雷魔法を放った。
――ボグン!
閉じたミミックの口から煙が上り、口が開いてひっくり返った。
どうやら倒したようで、ミミックは崩れていく。
「やった!」
「ナイスお兄ちゃん!」
崩れ去っていく中から出てきたのは、魔石が一つと、このエリアの宝箱の鍵が三本だった。
「おっ、鍵が三つもある! 結構いい物出すな」
俺のそんな言葉とは裏腹に、リンメイは落胆した様子だ。
「なぁんだ、ハズレかよー」
リンメイはそう言い、魔石と鍵束を拾い上げた。
「当たりだと何が出るの?」
「俺も知りたい」
「ああ、当たりだと 『迷宮宿の鍵』 を落とすんだよ」
「「迷宮宿の鍵?」」
「まぁ、正式名称は只の 『トラップ部屋の鍵』 なんだけどな。迷宮の壁に向かってその鍵を使うと、宝箱が一つだけある部屋に入れるらしくてさ。その宝箱、実は中身が空なんだけど開けるとトラップが発動して入口の扉が閉まっちまうんだよ。出るにはその宝箱の中に何でもいいから入れて閉じないといけない。んで、いつの間にかその仕組みを利用して安全に寝泊まりする奴らが現れてさ、それで迷宮宿って言われるようになったんだって」
「「へぇー」」
「あたいらみたいに中層うろついてる冒険者にはあんまし価値ねーかもだけど、高層以上を行く冒険者には垂涎のアイテムらしくてさ、これがまた高値で売れるんだよ」
「「へぇー」」
「まっ、お姉ちゃんの受け売りなんだけどな。もし手に入れたら売って欲しいって、前に言われたんだ」
たとえ魔物の寄ってこない階段エリアでも、見張りを立てないと他の冒険者に襲われるリスクがある。
『紅玉の戦乙女』 は全員女性だし、十分な休息を取るには必須アイテムなのかもしれないな。
それから俺達は再び行き止まりを目指して進んで行くと、三つ目の行き止まりでまた宝箱を見つける事ができた。
今度は本物の宝箱だったが回復ポーションが三本と、ちょっと残念な内容だった。
時計を見ると、ボス部屋前を出てから一時間は経っている。――そろそろ戻ってみるか。
「頃合いだし、そろそろ戻ろうか?」
「「りょうかーい」」
ボス部屋前まで戻ると、やはり連中はもういなかった。
だかボス部屋の扉は締まっている。と言う事はまだ戦っているって事か。
「なんだ、まだ戦ってるのかよ。さっさと終わらせろよなー」
「ボス戦前には一息入れたかったからさ、丁度良いじゃないか」
「そうだよリンメイお姉ちゃん、休憩しましょ」
今日はなんだかんだでずっと歩き回って戦闘しているからな。ボスに挑む前に少し休んでおきたい。
俺達は扉の前に腰を下ろし、ボスの事前情報を確認しながらゆっくりと休憩を取る事にした。
「おっ開いた。――んじゃいくか!」
「おう!」 「いこー!」
ボス部屋の扉が開いたので、俺達は早速中へ入る。
六人未満だと自動的に扉は閉じないため、扉近くの宝玉を使って手動で閉じないといけない。
「んじゃ準備いいか? 扉閉めるぞー」
「「おっけー」」
扉を閉めると早速中央に魔法陣が出現する。今回は一つだけだった。
十四層のボスはゴリラのような風貌の腕の長いパワーゴーレムって奴なんだが、かなりでかい。
「やらしいなー、腕で核を隠しながら出てきやがった」
リンメイの言う通り、ゴーレムは両腕を体の前に重ねて核が隠れるようにして出てきた。
「ホントだ残念。瞬殺されないように考えてるんだろうな」
事前情報では、このゴーレムには核が三つもあるとの事。
しかも核の位置は変化するらしい。
よく見るとこいつの体には溝が切ってあるので、どうやらそこを核が移動するようだな。
「来るぞ!」
実体化したゴーレムは、想像したよりも早い速度で迫ってきた。
あの質量が一気に迫ってくるのは結構怖いものがある。
俺達は咄嗟に躱す。
リンメイは早速ブーツの性能を発揮して上に飛び、前転をしながら頭付近を移動していた核を見事に剣で砕いた。
「ナイスだリンメイ!」
「あっバカ! おっさん逃げろ!」
俺は殴ってきたゴーレムの腕を躱したのだが、リンメイが警告する。
えっ? 何でゴーレムのもう一つの腕が俺の方に!? まずい!
俺は派手にぶん殴られ、壁まで吹き飛ばされてしまった。
「がはっ!」
咄嗟に身体強化を最大にしたからなんとか気絶せずに済んだが、全身がめちゃくちゃ痛い。
何が起こった!?
「お兄ちゃん!」
すぐにラキちゃんが神聖魔法を掛けてくれたようで、体の痛みは霧散していく。
頭を振りゴーレムの方を見ると、何をされたのか直ぐに理解できた。
ゴーレムは腰を軸にして上半身をコマのように回転させて動いていやがる。
くそう迂闊だった! 形が人型だから人の動きをすると勝手に思い込んでいたが、コイツは何でもアリな魔物だ!
「今度は転がってくるぞ!」
リンメイの声を聞き、慌てて立ち上がる。
ゴーレムは手と足を体の窪みに綺麗に折りたたんで球形となると、勢いよく転がってきた。
こいつ多才だな!
転がりながら俺の方へ向かってきたゴーレムを咄嗟に躱す。
壁際だったため、奴は壁に激突して止まった。
急いでゴーレムの方へ振り向くと、丁度俺から見える位置に核が来ているじゃないか!
――こんなチャンス逃がすものか!
俺は急いでアイアンニードルの針を引き抜いて投擲し、核を打ち抜いた。
「やったお兄ちゃん!」
「ナイスだぜおっさん! あと一つだ!」
ゴーレムは人型に戻り起き上がってきた。あと一つの核はどこだ!
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