ある日,トカゲに転生~ダンジョン暮らしの少年は外の世界の強さが分からない~

ルー

文字の大きさ
11 / 38
第一章 弘樹,転生す

第十一話 自力で魔窟を攻略しないといけなかった件

しおりを挟む
四十一~五十階層
 目の前が光る。そして目を開けると,そこには壁があった。

 え? 俺どうして? って,そうか。あの落とし穴にはまったのか。それにしてもいきなり落とし穴なんてな。まさか俺の立っている下に通路ができるなんて思わないよな。

 そして俺はあたりを見回す。
どうやらここは洞窟のようだな。だが俺が最初に転生したところよりも道幅が狭いし,曲がり角が直角だな。もしかしてこれは,迷路か。

 そうか。まあ,お化け屋敷があったんだから迷路があってもなんも問題はないよな。だけど問題はどうやって攻略するかだな。見たところかなり大掛かりな迷路っぽいけど。それに多分だけど広さは前までと変わってないと思うな。

 俺は少しずつ歩き出す。
まあ,物は試しだし,少し歩いてみよう。









 俺が攻略を初めてから数時間が経った。その間俺はずっと歩いており足も精神もくたくただ。

 はー。これはかなり疲れるな。思っていたより大がかりっぽいぞ。それに魔物が壁から出てくるってどういうことだよ。全く,このダンジョンは壁から魔物を出すのが趣味なのか。


 さて。

 そろそろ頑張ってくれてもいいんじゃないかな,鑑定さん。

 俺はそういて呼びかけた。

 いつもは呼ばなくてもやってきたのに今日はどうしたんだー。もしかして俺が心を読まてないようにすることができたのが嫌だったのか。でもそれはしょうがないじゃないか。男子たるもの妄想の一つや二つくらいするよ。


 だが俺のそんな問いかけにも鑑定さんは答えてくれなかった。

 おーい。おーい。まったく,なにをやってるんだ。えっと,鑑定さんはスキルだからスキルを発動すれば強制的に話せるかな。


「ステータスオープン。あ,今はスキルのところだけでいいや」

スキル 使用不可
    表示不可

「へ?」



もしかして,もしかしてだけどここはスキルを使えない,というのがコンセプトなのか。

 いやいや,まさかね。いや,でも。このスキルが使えない状況を説明するにはそれしかないぞ。

 いや,でも鑑定さんが何も言わずに使えなくなることなんてあるか? 鑑定さんならきっと報告してくれるはずだが。うーん。

 俺はその場で考え込む。

 だけどとりあえず今スキルが,鑑定さんの力が使えないということは確かだ。じゃあ,俺は独力でこの迷宮を突破しないといけないのか。

 そう思った時,弘樹を支えていた何かが崩れていく音がした。

 俺は,鑑定さんなしでこれを突破できるのか。

 俺は急に不安になる。

 いや,落ち着け,俺。そんなに難しいことじゃないはずだ。ただ階層を突破すればいいだけ。簡単だ。

 そして俺はまた歩き出す。





 俺亞はもう何度目かに分からない道を進む。
「ここはどこなんだよ。一回来たことあるような。いや,新しい道か?」
弘樹,絶賛迷路迷い中である。


 ああ,ここはどこだ。俺は今どこにいるんだ。誰か,ダレカ助けてくれ⋯⋯。

  度重なる迷いと不安で俺のメンタルは既に押しつぶれていた。

 いや,折れるな,俺。

 そう言って俺はまた歩き出す。だがそのやる気もそう長くはもたない。



 そしてさまようこと三日。この間俺が攻略できた階層はゼロ。当たり前だが,元の高校生が東京ドーム難十個分の迷路に入って出てこれるはずがない。だが俺の精神状態は既に極限に来ていた。

「ああ,この道はダメだ。きた気がする。この道は? だめだ。じゃあこの道はどうだ。だめだ行き止まりだ」
そのようなことをさっきからずっと呟いている。もはやくるってしまったのかも知れない。そんな俺の頭に常に浮かんでいるのは鑑定のことだ。

 ああ,もしこの場に鑑定さんがいてくれたらどんな感じだろう。そもそも鑑定さんが人だったらどんな感じだろう。美人かな。可愛いのかな。それとも⋯⋯。

俺は鑑定さん中毒になりかけていた。メンヘラ男子など誰得であろうか。そして俺はある結論に達する。

 この場に鑑定さんがいないのはスキル使用が禁止されているから。つまり鑑定さんをスキルじゃなくすれば万事うまく行くのではなか。

 それは弘樹にとって一筋の光に思えた。もちろんスキルをスキル出なくするなど出来たためしがないし,俺自身,こんな精神状態でなければ思いもつかなかっただろう。だが,いまは言うならば恐れを知らないバーサーカーである。

「いける。この方法なら。前に鑑定さんがスキルは進化すると言っていた。おそらくだが進化したスキルは所持者の思い描く形になるはずだ。つまり,鑑定さんを進化させればいい」

 だが,だれがこのスキルが使えないところでスキルを進化させる等できると思うだろうか。そう思えるのは今の俺くらいだったと思う。

 前に聞いた話を整すると,スキルは使うほど経験値がたまる。だがこれは普通のスキルの話。そして鑑定さんは間違いなく普通のスキルではない。つまり,進化条件が違うのか。

 俺は久しぶりに頭をフル回転する。そして,今まで鑑定に任せてきたことの大変さを実感するのであった。

 俺の推論型正しければ,これで解決するはずだ。あとは解析さん次第であるが,どうだろうか。


 俺が考えた理論はかなりひどい物だ。その名も鑑定さんが何とかしてくれるだろう大作戦。簡単に説明すると,鑑定さんは普通のスキルと違うから俺がこうしている間にも頑張って打開策を考えてくれているだろう。だから,俺は解析鑑定のスキルを進化させたいと願っていればいい。というものだった。

 もしこれが俺以外が言ったのであれば,なんだそれ,と一笑に付していただろう。だが,今回の発案者は俺だ。

 それから,俺は迷路を歩き回りながらも解析鑑定進化しろとずっと願っていた。そして,願い始めてから二日たったころ,異変は起こった。


 その時,俺は迷路の中を行ったり来たりしていた。だが,急に体が光り出したのだ。進化とはまた違う,不思議な温かい緑の光だった。

 こ,これは来たかも知れない。ほんとスキルが進化するのか!?

 そして光が視界を覆う。そして,光が収まったときには,そこには一匹の妖精がいた。

「マスター,遅れてすいません。元解析鑑定,ただいま帰還しました」
そう,元解析鑑定である。それを見た俺の反応は,言うまでもなく,
「うわぁぁぁん。解析ちゃん,会いたかったよーー」
泣きじゃくっていた。

 はぁ。やっと会えた。この何日間かずっと会いたかった,解析さんに,やっと会えた。
「全く,マスターは私はいないとだめですね。ですがもう安心してください。私はもう,消えたりしませんよ」
俺は解析さんに子を見るような表情で見られていたような気もするがいまは俺に気にする余裕はなかった。

「さて,気を取り直して,攻略を始めましょうか。幸い,私がいればこの手の迷路はすぐに攻略できますし,ちゃっちゃと行きますよ」
「分かったぜ」
すっかり元気を取り戻した俺である。ちなみにこの状態になるまで三十分くらい泣きじゃくっていたのは内緒にしておこう。

「さて,まずはマスター,この階層に魔力を充満させてください」
「分かった」
そして,MPを放出させながら言う。
「弘樹でいいよ」
「へ?」
「だから,マスターじゃなくて弘樹でいいよ」
「そう,ですか。分かりました,弘樹」
「あ,じゃあさ,俺は何て呼べばいい?」
弘樹は思い切って聞いてみる。さながら学生時代の好きな子を下の名前で呼びたいときの男子である。
「なんて,呼びたいですか。実は私には今,名前がない状態なんですよ」
「そうなのか」
そして弘樹は考える。元解析鑑定さんは今は十五センチくらいで緑色の妖精である。当たり前のように美しく,耳はエルフのようにとんがっている。髪型はショートのようだ。
(うーん,どうしよう。この場の安直な考えで名前を付けちゃうのも後から後悔しそうだし,かといって,名前なしも悲しいしな)

「よし,とりあえず保留で」
そういうと妖精さんはにっこりとほほ笑んで
「はい,わかりました,弘樹」
というのであった。ちなみに弘樹が見とれてしまったことは内緒だ。


 それから十分後。弘樹たちは四十階層の階段の前にいた。
「す,すげぇ」
 鑑定さん,俺が一層も攻略できなかった階層を立った十分で攻略したよ。これはもはややばいしか出てこないな。

「さて,弘樹,次の階層に行きましょうか。おや,何やら悩んでいますか?」
「いや,なんでもない」
「まさか,私がこんなにも早くクリアしたことがショックですか?」
図星である。
「それとも私を呼び出したところが実は最初にいたところで一歩も進んでいないことがショックでしたか?」
初耳である。
「それとも妖精である私に発情でもしましたか?」
心外である。

 な。鑑定もなかなかいうようになったな。でもこれはいいことなのか。でもどうやっても三個目はないよ。

 俺はそれを伝える。
「そうですか。やはり悩んでいたんですね。ですが,人には向き不向きがあります。もちろん私にもできないことはあります。そんなお互いのできないところをお互いが補い合っていけばいいのではないでしょうか」
「あ,そうか。うん,そうだよね。俺,頑張るわ」
 そうか。鑑定さんは俺に気を使ってくれたのか。いけない,いけない。もととはいえスキルに気を使わせてしまった。これは気を付けなくてはいけないな。だけど今はその好意を受け取っておこう。

 俺は少しわらった。すると鑑定も少し微笑んだようだ。
「はい。弘樹は笑っていた方がかっこいいですよ」
「ありがとう」

 ちなみに,弘樹がトカゲにかっこいいとかあるのだろうかとか思ったことも秘密である。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。 185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク! ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。 そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、 チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、 さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて―― 「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」 オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、 †黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...