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第3話
7・つまりは、その一言
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あのときの菜穂と、今の菜穂はおそらく同じだ。おそらく、浜島とのあれこれがうまくいかなかった結果、彼女の「初体験」に対するこだわりが「もういいかな」に転じたのだ。
それを「据え膳食わぬは~」とばかりに、のってくる男もいるだろう。実際、緒形も相手によっては「じゃあ、遠慮なく」と手を合わせたかもしれない。
けれど、相手は菜穂だ。緒形にとっては「多感な時期に付き合った元カノ」だ。
しかも、当時の彼女との思い出を掘りおこそうとすると、必ず苦いエピソードがつきまとう。
そうした複雑な存在であるうえに、当の彼女は未だ処女だという。
それを、他の誰かに奪われるのは――
(おもしろくない)
そう、つまりはその一言に尽きるのだ。
とはいえ、これが正解かと問われると緒形はなんとも答えられない。
やはりどう考えても褒められた話ではないし、緒形が誠実な人間なら、おそらく真摯な態度で「もっと自分を大事にしろよ」と彼女を拒絶していただろう。
そうしないあたり、自分も浜島と大差ない。
それでも、やはり他の男に彼女のはじめてを奪われるのは不愉快なのだ。
(まあ、そのうち我に返るかもしれないし)
根はまじめな菜穂のことだ。そのうち我に返って「やっぱり付き合えない、ごめんなさい」と言ってくるかもしれない。それに、付き合う条件として出された「抱いてほしい」も、まさか今すぐというわけではないだろう。
(とりあえず、週末どうするかだけは考えておくか)
最初だし、やっぱり無難に映画か水族館にでも行って、ごはんを食べて、解散――そんなプランをたてながら、緒形はスマホで現在上映中の映画を検索しはじめた。
この時点で、緒形は菜穂の本気度をかなり低く見積もっていたわけだが、残念なことに彼はそのことにまったく気づいていなかった。
それを「据え膳食わぬは~」とばかりに、のってくる男もいるだろう。実際、緒形も相手によっては「じゃあ、遠慮なく」と手を合わせたかもしれない。
けれど、相手は菜穂だ。緒形にとっては「多感な時期に付き合った元カノ」だ。
しかも、当時の彼女との思い出を掘りおこそうとすると、必ず苦いエピソードがつきまとう。
そうした複雑な存在であるうえに、当の彼女は未だ処女だという。
それを、他の誰かに奪われるのは――
(おもしろくない)
そう、つまりはその一言に尽きるのだ。
とはいえ、これが正解かと問われると緒形はなんとも答えられない。
やはりどう考えても褒められた話ではないし、緒形が誠実な人間なら、おそらく真摯な態度で「もっと自分を大事にしろよ」と彼女を拒絶していただろう。
そうしないあたり、自分も浜島と大差ない。
それでも、やはり他の男に彼女のはじめてを奪われるのは不愉快なのだ。
(まあ、そのうち我に返るかもしれないし)
根はまじめな菜穂のことだ。そのうち我に返って「やっぱり付き合えない、ごめんなさい」と言ってくるかもしれない。それに、付き合う条件として出された「抱いてほしい」も、まさか今すぐというわけではないだろう。
(とりあえず、週末どうするかだけは考えておくか)
最初だし、やっぱり無難に映画か水族館にでも行って、ごはんを食べて、解散――そんなプランをたてながら、緒形はスマホで現在上映中の映画を検索しはじめた。
この時点で、緒形は菜穂の本気度をかなり低く見積もっていたわけだが、残念なことに彼はそのことにまったく気づいていなかった。
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