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第3話
8・デート当日
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デート当日、菜穂は約束していた時刻の5分前に、新宿駅に到着した。
待ち合わせ場所は、某老舗大型書店の前とのことだったが、ざっと見回してみても、緒形の姿はどこにもない。とはいえ、スマホにも連絡は届いていなかったから、遅れるということはないのだろう。
道ゆく人たちの流れを、菜穂はぼんやりと眺めた。
自分でも驚くほど、気持ちが盛りあがらない。今ここで「やっぱり今日のデートは中止で」と告げられても、おそらく「そうなんだ、じゃあ、帰ろう」としか思わないだろう。
(1週間前とは、ぜんぜん違う──)
そこまで考えたところで、菜穂は強く頭を振った。
あの日の出来事は、もはやなにひとつとして思い出したくはない。特に、浜島については、名前を耳にすることさえも辛いのだ。
そんな菜穂の心情と重なるように、空模様もずいぶんどんよりとしている。降水確率60%、いつ雨が降り出してもおかしくはない。
知らずため息を飲み込んだところで「三辺」と声をかけられた。どうやら待ち人のおでましのようだ。
「待った?」
「ぜんぜん。どこに行くの?」
「映画とか考えてるけど、その前にカフェに入らない? 俺、喉かわいててさ」
それは構わないが、このあたりのカフェはどこも満席ではないだろうか。
そんな菜穂の懸念に気づいたのか、緒形は「ちょっと歩いてもいい?」と訊いてきた。
「靖国通りまで行くと、まあまあ入れるはずだから」
待ち合わせ場所は、某老舗大型書店の前とのことだったが、ざっと見回してみても、緒形の姿はどこにもない。とはいえ、スマホにも連絡は届いていなかったから、遅れるということはないのだろう。
道ゆく人たちの流れを、菜穂はぼんやりと眺めた。
自分でも驚くほど、気持ちが盛りあがらない。今ここで「やっぱり今日のデートは中止で」と告げられても、おそらく「そうなんだ、じゃあ、帰ろう」としか思わないだろう。
(1週間前とは、ぜんぜん違う──)
そこまで考えたところで、菜穂は強く頭を振った。
あの日の出来事は、もはやなにひとつとして思い出したくはない。特に、浜島については、名前を耳にすることさえも辛いのだ。
そんな菜穂の心情と重なるように、空模様もずいぶんどんよりとしている。降水確率60%、いつ雨が降り出してもおかしくはない。
知らずため息を飲み込んだところで「三辺」と声をかけられた。どうやら待ち人のおでましのようだ。
「待った?」
「ぜんぜん。どこに行くの?」
「映画とか考えてるけど、その前にカフェに入らない? 俺、喉かわいててさ」
それは構わないが、このあたりのカフェはどこも満席ではないだろうか。
そんな菜穂の懸念に気づいたのか、緒形は「ちょっと歩いてもいい?」と訊いてきた。
「靖国通りまで行くと、まあまあ入れるはずだから」
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