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第5話
5・チャンス到来?
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「へっ……えっ、なんで?」
なんで青野がうちにいんの?
思わず後ずさっちまった俺に、青野は「そんなに驚かなくても」と眉を下げた。
「次回の課外授業のことで、皆で話し合いをしていたんです」
「皆!? お前の靴しかないじゃん!」
「そうですね、他のメンバーはもう帰りましたから」
「だったら、お前も帰れよ!」
「俺はもう少し用事があったので」
まあ、たった今、達成されましたけど。青野はそう付け加えると、うっそりとした笑みを浮かべた。
な、なんだよ。その言い方だと、まるでその「用事」とやらが俺と会うことだったみたいに聞こえるぞ。
頬の熱が、またぶり返してくる。せっかく、必死に自転車を漕ぐことで落ち着かせたはずだったのに。
くそ、俺のバカ。落ち着け。この程度のことで体温調節を狂わせるな。
脱いだ靴を揃えながら、俺はなんとか平常心を取り戻す。
「そういえばナナセは?」
「コンビニに行ってます。新発売のポテトチップスを買うとかで」
「えっ!?」
じゃあ、今、家にいるのお前ひとりか?
ありえねぇ。アカの他人に留守番をさせるとか。
「いえ、おばさんがキッチンにいますね」
「……へ?」
「ちなみに今日の夕飯はハンバーグだそうです」
──え、なにこの雰囲気。
お前、うちの母ちゃんとも顔見知りなわけ?
(ああ、でもあっちの青野もそうだったかも)
ナナセがたびたび家に連れてきていたから、うちの母ちゃんとも仲が良かったっけ。ふつう「カノジョの両親」なんて絶対会いたくないだろうに、あいつはそのへん抵抗がなかったみたいだし。母ちゃんは母ちゃんで「100点満点彼氏」な青野のこと、すげー気に入っててさ。
「お前、案外人垂らしなんだな」
「そんなことないですよ」
「あるだろ。ふつう人んちの親と仲良くならねーよ」
「それは、単に嫌われない努力をしたからですね。大事な人のご家族ですし」
「……っ」
「ああ、すみません。『元大事な人』でした」
ムカつく……ほんとムカつく!
お前、俺が動揺するのをわかっていて、わざと言ってるだろ!
「もうさぁ、さっさとナナセの部屋に戻れよ!」
「それは、さすがに……本人がいない部屋に、男の俺がひとりでいるのはどうかと」
「だったら、キッチンで母ちゃんとおしゃべりしてろ!」
「それはそれで邪魔になるから却下ですね」
じゃあ、リビングでナナセを待ってろよ。
と言いかけたところで、今日の白昼夢のことを思い出した。
そうだ、これって事実関係を聞き出す絶好のチャンスじゃん。
「ったく、しょうがねーなぁ」
わざとらしいかな、と思いつつも俺は肩をすくめてみせた。
「だったら俺の部屋に来いよ」
「……え?」
「話し相手がいたほうがお前も退屈しないだろ」
なんで青野がうちにいんの?
思わず後ずさっちまった俺に、青野は「そんなに驚かなくても」と眉を下げた。
「次回の課外授業のことで、皆で話し合いをしていたんです」
「皆!? お前の靴しかないじゃん!」
「そうですね、他のメンバーはもう帰りましたから」
「だったら、お前も帰れよ!」
「俺はもう少し用事があったので」
まあ、たった今、達成されましたけど。青野はそう付け加えると、うっそりとした笑みを浮かべた。
な、なんだよ。その言い方だと、まるでその「用事」とやらが俺と会うことだったみたいに聞こえるぞ。
頬の熱が、またぶり返してくる。せっかく、必死に自転車を漕ぐことで落ち着かせたはずだったのに。
くそ、俺のバカ。落ち着け。この程度のことで体温調節を狂わせるな。
脱いだ靴を揃えながら、俺はなんとか平常心を取り戻す。
「そういえばナナセは?」
「コンビニに行ってます。新発売のポテトチップスを買うとかで」
「えっ!?」
じゃあ、今、家にいるのお前ひとりか?
ありえねぇ。アカの他人に留守番をさせるとか。
「いえ、おばさんがキッチンにいますね」
「……へ?」
「ちなみに今日の夕飯はハンバーグだそうです」
──え、なにこの雰囲気。
お前、うちの母ちゃんとも顔見知りなわけ?
(ああ、でもあっちの青野もそうだったかも)
ナナセがたびたび家に連れてきていたから、うちの母ちゃんとも仲が良かったっけ。ふつう「カノジョの両親」なんて絶対会いたくないだろうに、あいつはそのへん抵抗がなかったみたいだし。母ちゃんは母ちゃんで「100点満点彼氏」な青野のこと、すげー気に入っててさ。
「お前、案外人垂らしなんだな」
「そんなことないですよ」
「あるだろ。ふつう人んちの親と仲良くならねーよ」
「それは、単に嫌われない努力をしたからですね。大事な人のご家族ですし」
「……っ」
「ああ、すみません。『元大事な人』でした」
ムカつく……ほんとムカつく!
お前、俺が動揺するのをわかっていて、わざと言ってるだろ!
「もうさぁ、さっさとナナセの部屋に戻れよ!」
「それは、さすがに……本人がいない部屋に、男の俺がひとりでいるのはどうかと」
「だったら、キッチンで母ちゃんとおしゃべりしてろ!」
「それはそれで邪魔になるから却下ですね」
じゃあ、リビングでナナセを待ってろよ。
と言いかけたところで、今日の白昼夢のことを思い出した。
そうだ、これって事実関係を聞き出す絶好のチャンスじゃん。
「ったく、しょうがねーなぁ」
わざとらしいかな、と思いつつも俺は肩をすくめてみせた。
「だったら俺の部屋に来いよ」
「……え?」
「話し相手がいたほうがお前も退屈しないだろ」
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