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第8話
3・神森と朝ごはん
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深夜にいきなり訪問してきた傍迷惑な友人は、案の定、夜が明けても迷惑極まりなかった。
「叶斗くーん、起きてー! お腹がすいたよー、早く起きてー」
うるせぇ、お前はエサを催促する飼い猫か!
廊下でさんざん騒がれて、仕方なく俺は布団から這い出した。
「なんだよ、知らねぇよ。勝手に食えよ」
「えーじゃあ、勝手に冷蔵庫を開けちゃうよ?」
好きにしろ、と言いかけて、はたと我が家の冷蔵庫事情を思い出す。
アレはダメだ。
アレを見られたら、いろいろ追及されるに違いない。
迷った末に、俺はようやく言葉をひねり出した。
「今日は外で食う」
「えー叶斗くんお手製の朝ごはんじゃないの?」
「うるせぇ、最初から外で食う予定だったんだよ!」
もちろんそんなの嘘だけど、今はこれで通すしかない。
神森は、しつこく「えー」「お手製の朝ごはーん」と騒いでいたものの、俺がいつまでたっても折れないので、あきらめたように身支度をはじめた。
かくして、俺たちは朝食をとるべく、駅前のカフェにやってきた。
俺がバイトしているチェーン店と同系列の、価格帯がややリーズナブルな店。なので、モーニングメニューも350円からと、うちの店よりやや安めだ。
俺はチーズドッグセットを、神森はホットサンドセットを頼んで、席に着く。
「尊くんがいたら、絶対ツナサラダサンドセットを頼んでるよねぇ」
「あ──けど、案外ホットサンドかも」
「そう?」
「あいつ、ホットサンドも気に入ってたっぽいし」
「へぇ、初耳。さすが元同居人!」
朗らかに笑う神森を軽く蹴飛ばして、俺はアイスコーヒーに口をつけた。
リーズナブルな店とはいってもそこは同系列、ブレンドコーヒーやアイスコーヒーは、たぶんうちの店とそれほど変わらない。
一方、カフェラテなどのエスプレッソ系ドリンクは、どうしたってセミオートで落としているうちの店のほうがうまい。だから、リーズナブルな店に入るときは、いつもブレンドやアイスコーヒーを頼むようにしている。
「ねえねえ、あのさ」
ホットサンドを頬張りながら、神森はふとやわらかく唇をほころばせた。
「なにかあったら連絡ちょうだいね」
「……ん?」
「『誰かと話したい』とか『くだらないことを思いついた』とか『なーんかムカつくー』とか。ほんと、なんでもいいから。なにかあったら連絡ちょうだいね。俺でも尊くんでもいいから」
神森にしては、ずいぶんストレートな言い方。
だからこそ、気づいてしまった。結局こいつは、これを言いたくてうちに来たんだろう、って。
「心配すんな。連絡なら他のヤツらにするから」
「えーひどい! そこは、ひとまず『わかった』って言ってよ」
「うるせぇ、お前には言わねぇ」
「出たよ、叶斗くんのツンデレ」
別にツンデレなんかじゃねぇ。
ただ「ありがとう」と言うには、まだ気持ちの整理がついていないだけだ。
(いつか言えんのかな)
それこそ、結構な時間が経てば、お前や──あいつにも、素直に向き合うことができるんだろうか。
「叶斗くーん、起きてー! お腹がすいたよー、早く起きてー」
うるせぇ、お前はエサを催促する飼い猫か!
廊下でさんざん騒がれて、仕方なく俺は布団から這い出した。
「なんだよ、知らねぇよ。勝手に食えよ」
「えーじゃあ、勝手に冷蔵庫を開けちゃうよ?」
好きにしろ、と言いかけて、はたと我が家の冷蔵庫事情を思い出す。
アレはダメだ。
アレを見られたら、いろいろ追及されるに違いない。
迷った末に、俺はようやく言葉をひねり出した。
「今日は外で食う」
「えー叶斗くんお手製の朝ごはんじゃないの?」
「うるせぇ、最初から外で食う予定だったんだよ!」
もちろんそんなの嘘だけど、今はこれで通すしかない。
神森は、しつこく「えー」「お手製の朝ごはーん」と騒いでいたものの、俺がいつまでたっても折れないので、あきらめたように身支度をはじめた。
かくして、俺たちは朝食をとるべく、駅前のカフェにやってきた。
俺がバイトしているチェーン店と同系列の、価格帯がややリーズナブルな店。なので、モーニングメニューも350円からと、うちの店よりやや安めだ。
俺はチーズドッグセットを、神森はホットサンドセットを頼んで、席に着く。
「尊くんがいたら、絶対ツナサラダサンドセットを頼んでるよねぇ」
「あ──けど、案外ホットサンドかも」
「そう?」
「あいつ、ホットサンドも気に入ってたっぽいし」
「へぇ、初耳。さすが元同居人!」
朗らかに笑う神森を軽く蹴飛ばして、俺はアイスコーヒーに口をつけた。
リーズナブルな店とはいってもそこは同系列、ブレンドコーヒーやアイスコーヒーは、たぶんうちの店とそれほど変わらない。
一方、カフェラテなどのエスプレッソ系ドリンクは、どうしたってセミオートで落としているうちの店のほうがうまい。だから、リーズナブルな店に入るときは、いつもブレンドやアイスコーヒーを頼むようにしている。
「ねえねえ、あのさ」
ホットサンドを頬張りながら、神森はふとやわらかく唇をほころばせた。
「なにかあったら連絡ちょうだいね」
「……ん?」
「『誰かと話したい』とか『くだらないことを思いついた』とか『なーんかムカつくー』とか。ほんと、なんでもいいから。なにかあったら連絡ちょうだいね。俺でも尊くんでもいいから」
神森にしては、ずいぶんストレートな言い方。
だからこそ、気づいてしまった。結局こいつは、これを言いたくてうちに来たんだろう、って。
「心配すんな。連絡なら他のヤツらにするから」
「えーひどい! そこは、ひとまず『わかった』って言ってよ」
「うるせぇ、お前には言わねぇ」
「出たよ、叶斗くんのツンデレ」
別にツンデレなんかじゃねぇ。
ただ「ありがとう」と言うには、まだ気持ちの整理がついていないだけだ。
(いつか言えんのかな)
それこそ、結構な時間が経てば、お前や──あいつにも、素直に向き合うことができるんだろうか。
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