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弐章 国づくり

77 茶屋

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 「美味しぃ……」 
 
 ルークは頬を抑え表情を緩める。
 
 アラネアと目指している都のちょうど途中にある茶屋で2人。
 
 ルークとアイノスケが長椅子に座り、温かいお茶と団子を味わっていた。
 
 「旦那…それにしてもよく食べますねぇ」
 「そうか?」
 「そんな小さい体の一体どこに入ってるんですかい…」
 
 アイノスケは塔の様に積み上がった団子の皿を見て、少し引きぎみにルークを見る。
 
 「ふぅ…食べた食べた…っと」
 
 ルークはお腹をポンポンと叩き長椅子に横になった。
 
 「あの…そろそろお子様が食べたお会計をお願いしたいんですけど…」
 
 アイノスケはビクリと肩を動かし驚くと声のした後ろをゆっくりと振り向く。
 
 そこには茶屋の娘がお盆を持ち、おかわりのお茶を長椅子に寝ているルークの横に置いている所だった。
 
 今のルークには角や腕といった人のものでは無い、鬼と見分けられる特徴は無く見た目だけは寝ているただの人の子だ。
 
 茶屋の娘は目の前に鬼が幻術を使い人の見た目に化けているとは考えも思いもせず。
 良い天気の中、気持ち良さそうに昼寝をしているルークの寝顔を見て微笑む。
 
 「姉ちゃん。
 大体、銭は幾らくらいだい」
 
 「お会計は…そのお団子が50個で…150文(もん)になります…」
 「ひゃくごじゅっ…!?」
 
 アイノスケは一瞬驚いたが残ったお茶をススる事で平静を装う。
 
 150文と言うとだいたい足軽の月給がだいたい125文、辺り。
 つまり足軽の月給より少し多いくらい。
 
 間違いなく大金だ。
 
 「旦那…だそうですぜ。
 銭持ってますかい」
 
 アイノスケは横で昼寝をしているルークに対し茶屋の娘には聞こえない様に小声で話しかける。
 
 「んん…うるさい。
 そう慌てるな…問題ない」
 
 そう言うと寝ながらルークは指をパチンと鳴らした。
 
 「ここは私が…」
 
 ルークが指を鳴らすと気づけば目の前にサルトビが跪き懐からお金の入った巾着袋を取り出していた。
 
 サルトビは茶屋の娘に銀貨を一枚渡す。
 
 「お釣りは取っておけ。
 では…」
 
 そう言い残しサルトビは再び消えた。
 
 「いやー本当に忍びって奴は本当に相変わらず凄いと言うか何というか…」
 
 アイノスケは辺りを見渡し何処にいったのかと探しながら、自分が団子の会計を払う事にならなくて良かったと心の底からそう安堵した。
 
 ………
 
 アラネアの外れにある人間の村落、イズワ村がある。
 
 「本当にそんな人間だけをお連れにして出発されるのですか?」
 
 「そんな人間……?」
 
 ステラはアイノスケの呟きを無視しルークに話を続ける。
 
 「私達の中におります、戦闘に長けた若い衆を数名ほど連れて行かれた方がよろしいのでは?」
 
 不安そうに問いルークを見つめ上を見た。
 
 「それにあの者を連れ共に行くなど…」
 
 ステラが見上げる木の上にはサルトビが気配を消し隠れておりこちらを見下ろしている。
 
 「ああ…奴はどうやらシンゲンと言う大きな地域を収める武将の忍びらしいからな。
 情報収集のついでにシンゲンとやらと交渉する為に連れて行く。
 もしその後、俺から連絡が無いか殺されたなら…」
 
 ステラはルークが話す、その言葉の続きを躊躇なく答える。
 
 「はい、すぐ様、他の忍び数名を惨殺し。
 ルーク様の仇討ちの為
 今保有しているアラネア現在の全兵力を持って人間界へと進軍いたします」
 
 「おっ……おう……」
 
 ルークはそのステラの迷いの無い答えに戸惑いながらも、サルトビがゴクリと唾を飲み緊張している事を確認し横目に頷いた。
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