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3.王子
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衛兵の言葉にアラン様は眉をひそめる。……あぁ、私はアラン様にも嫌われてしまったんだろうか。
もう何を言っても、言い訳のようにしか聞こえないだろう。
諦めた私が肩を落として地面へと目を向けると、そんな私の肩に優しく手が置かれた。
「イーファ、大丈夫かい?」
「アラン様……?」
「可哀想に……せっかくの綺麗なドレスが台無しだ。大の男が寄ってたかって女性に暴力を働くとは、許せる事ではない」
「あ、あの……私は……」
「ん? どうした?」
私の言葉に、いつものような軽い調子で返してくれるアラン様。
パーティで挨拶する時と変わらず笑みを向けてくれる彼に思わず涙が出そうになっていると、彼の後ろから衛兵達の声が上がってきた。
「あ、アラン様! すぐにその者から離れて下さい! そこの女は、ブレン様と婚姻中にもかかわらず、他の男に手を出すような汚らわしい女なのです! 『聖女』の力を使い、我が国を乗っ取ろうと画策しておるやもしれぬのですから!」
「そ、そのような事、考えた事もありません!」
「黙れ! ブレン様からも最悪の場合、切り捨てて構わないと言われているのだ! そのような命令を婚約相手であるブレン様から出されるなど、相当な事に違いない!」
「お、おい! それは極秘扱いだろ!」
「そんな……ブレン様が……?」
衛兵達の声に私の視界が真っ暗になっていく。あの方は妹との浮気を知られない為に私を消そうとしている……?
あまりにも酷い現実に打ちのめされた私がカタカタと震えていると、アラン様がそっと手を差し伸べてくれた。
驚く私に彼は軽く微笑んでみせると、ゆっくりと立ち上がり衛兵達の方へと声を上げる。
「……その話は本当か?」
「あ、え?」
「彼女が国を乗っ取ると画策し、それに危機感を抱いたブレン殿が彼女を始末しろと……そう命令したのかと聞いている」
「そ、そうでございます! 我々はあくまでもブレン様に危険が及ばぬ為、剣を抜いただけに過ぎず―」
「無論、その証拠は上がっているのだろうな?」
「はい……? 証拠……ですか?」
アラン様の言葉に衛兵達が顔を見合わせると、私の近くに居たアラン様は近くで待機していた護衛に視線を向ける。そして、いつものような甘い顔ではなく、とても鋭い視線と声を衛兵達へと向けた。
「彼女がそのような野蛮な事をするという事実の確認が出来ているのかと聞いたのだ。剣を構えた以上、それだけの証拠も集まっているのだろう?」
「い、いえ……そ、それは……」
「よもや、証拠も無く彼女を処刑しようとしていたと? 例え命令であるとはいえ、この国では無用な殺生は禁じられているはずだ」
「お、お許し下さい! わ、我々はブレン様の命令で仕方なく―」
「では、そのブレン殿の前にお前達を連行し、真実を暴かせてもらおうか」
「あ、アラン陛下! お、お許しを―」
「黙れ。場合によってはお前達にも罰を下す……連れて行け」
もう何を言っても、言い訳のようにしか聞こえないだろう。
諦めた私が肩を落として地面へと目を向けると、そんな私の肩に優しく手が置かれた。
「イーファ、大丈夫かい?」
「アラン様……?」
「可哀想に……せっかくの綺麗なドレスが台無しだ。大の男が寄ってたかって女性に暴力を働くとは、許せる事ではない」
「あ、あの……私は……」
「ん? どうした?」
私の言葉に、いつものような軽い調子で返してくれるアラン様。
パーティで挨拶する時と変わらず笑みを向けてくれる彼に思わず涙が出そうになっていると、彼の後ろから衛兵達の声が上がってきた。
「あ、アラン様! すぐにその者から離れて下さい! そこの女は、ブレン様と婚姻中にもかかわらず、他の男に手を出すような汚らわしい女なのです! 『聖女』の力を使い、我が国を乗っ取ろうと画策しておるやもしれぬのですから!」
「そ、そのような事、考えた事もありません!」
「黙れ! ブレン様からも最悪の場合、切り捨てて構わないと言われているのだ! そのような命令を婚約相手であるブレン様から出されるなど、相当な事に違いない!」
「お、おい! それは極秘扱いだろ!」
「そんな……ブレン様が……?」
衛兵達の声に私の視界が真っ暗になっていく。あの方は妹との浮気を知られない為に私を消そうとしている……?
あまりにも酷い現実に打ちのめされた私がカタカタと震えていると、アラン様がそっと手を差し伸べてくれた。
驚く私に彼は軽く微笑んでみせると、ゆっくりと立ち上がり衛兵達の方へと声を上げる。
「……その話は本当か?」
「あ、え?」
「彼女が国を乗っ取ると画策し、それに危機感を抱いたブレン殿が彼女を始末しろと……そう命令したのかと聞いている」
「そ、そうでございます! 我々はあくまでもブレン様に危険が及ばぬ為、剣を抜いただけに過ぎず―」
「無論、その証拠は上がっているのだろうな?」
「はい……? 証拠……ですか?」
アラン様の言葉に衛兵達が顔を見合わせると、私の近くに居たアラン様は近くで待機していた護衛に視線を向ける。そして、いつものような甘い顔ではなく、とても鋭い視線と声を衛兵達へと向けた。
「彼女がそのような野蛮な事をするという事実の確認が出来ているのかと聞いたのだ。剣を構えた以上、それだけの証拠も集まっているのだろう?」
「い、いえ……そ、それは……」
「よもや、証拠も無く彼女を処刑しようとしていたと? 例え命令であるとはいえ、この国では無用な殺生は禁じられているはずだ」
「お、お許し下さい! わ、我々はブレン様の命令で仕方なく―」
「では、そのブレン殿の前にお前達を連行し、真実を暴かせてもらおうか」
「あ、アラン陛下! お、お許しを―」
「黙れ。場合によってはお前達にも罰を下す……連れて行け」
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