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2.出会い
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「痛ッ!」
ブレン様の屋敷の外まで連れ出されると、腕を掴んでいた衛兵が私を手荒に地面へと投げた。着ていたドレスが土で汚れ、泣きそうになる。
しかし、そんな私に衛兵の男達は護衛用に鞘に納めていた剣に手を置くと、物騒な声を向けてきた。
「何と無礼な女なのか! 今宵はブレン様の誕生をお祝いするめでたい日だというのに……ブレン様に恥をかかせるなど、許す事は出来ん!」
「『聖女』などと豪語しておいて、不埒な事を……! 我が国に泥を塗るような女、生かす価値もない! ここで切り捨ててくれよう!」
「ま、待って―」
「『聖女』の力で国を守っているなどと奢り、何をしても良いとでも思ったか!? 貴様などおらずとも、真の『聖女』たるマルク様さえおられればそのお力で我が国を守って下さるのだ!」
マルクが真の『聖女』……? 何の事……?
そんな疑問を抱く私を置いて衛兵達は怒りを露わにして剣を鞘から抜き取ると、私に向かってじりじりと距離を詰めて来る。
命の危機を感じた私が制止の声を上げても聞く耳も持たず、衛兵達が剣を私に向かって振り下ろす。
……もうダメだ!
そんな風に私が死を覚悟した時だった。
「―そこで何をしている?」
暗がりの中、とても強い声が響き渡った。
すると、私に剣を向けていた衛兵達が顔を青ざめさせ、声の聞こえて来た方向に向かって敬礼をしていた。
「こ、これはアラン様! ほ、本日はご欠席なさると伺っておりましたが……」
「急用があったのだ。だが、思いの外、早く終わってな……それより、今日はブレン殿の誕生を祝う席だと思っていたが……これは何だ? ブレン殿はか弱い女性を処刑するのを祝いとしようとしているとでもいうのか?」
「い、いえ、その……お、おい! お前も何か言ったらどうだ!」
「そ、そんな事言われても……! 俺達よりまずはブレン様に話を通した方が……それに、先に剣を抜いたのはお前の方だろ」
「な、何だと!?」
突然の来訪者に衛兵達が焦り、互いに責任のなすりつけ合いを始めてしまう。
そんな中、驚いていた私はようやく衛兵達の死線を追ってそこに居る人物に目を向ける。すると、そこに居たのは隣国クランドール国の第一王子アラン・クランドール様だった。
自由奔放で楽観的。
何度かパーティで顔を合わせた事があるが、私の印象はそんなものだった。
しかし、今の彼の顔は普段のそれとは違い、とても険しいもので、いつものような軽さはどこにも無い。
「あ、アラン様……?」
「おや? これは誰かと思えば、イーファじゃないか! お前達、よりにもよって公爵の婚約者……しかも、この国において『聖女』と呼ばれる者に剣を向けるなど……反逆とみなされても文句は言えまい。無論、その罪、死をもって償うつもりであろうな?」
「お、お待ち下さい! ち、違うのです! こ、これはその……ぶ、ブレン様に無礼を働いたのはそこの女の方なのです!」
「何だと……?」
ブレン様の屋敷の外まで連れ出されると、腕を掴んでいた衛兵が私を手荒に地面へと投げた。着ていたドレスが土で汚れ、泣きそうになる。
しかし、そんな私に衛兵の男達は護衛用に鞘に納めていた剣に手を置くと、物騒な声を向けてきた。
「何と無礼な女なのか! 今宵はブレン様の誕生をお祝いするめでたい日だというのに……ブレン様に恥をかかせるなど、許す事は出来ん!」
「『聖女』などと豪語しておいて、不埒な事を……! 我が国に泥を塗るような女、生かす価値もない! ここで切り捨ててくれよう!」
「ま、待って―」
「『聖女』の力で国を守っているなどと奢り、何をしても良いとでも思ったか!? 貴様などおらずとも、真の『聖女』たるマルク様さえおられればそのお力で我が国を守って下さるのだ!」
マルクが真の『聖女』……? 何の事……?
そんな疑問を抱く私を置いて衛兵達は怒りを露わにして剣を鞘から抜き取ると、私に向かってじりじりと距離を詰めて来る。
命の危機を感じた私が制止の声を上げても聞く耳も持たず、衛兵達が剣を私に向かって振り下ろす。
……もうダメだ!
そんな風に私が死を覚悟した時だった。
「―そこで何をしている?」
暗がりの中、とても強い声が響き渡った。
すると、私に剣を向けていた衛兵達が顔を青ざめさせ、声の聞こえて来た方向に向かって敬礼をしていた。
「こ、これはアラン様! ほ、本日はご欠席なさると伺っておりましたが……」
「急用があったのだ。だが、思いの外、早く終わってな……それより、今日はブレン殿の誕生を祝う席だと思っていたが……これは何だ? ブレン殿はか弱い女性を処刑するのを祝いとしようとしているとでもいうのか?」
「い、いえ、その……お、おい! お前も何か言ったらどうだ!」
「そ、そんな事言われても……! 俺達よりまずはブレン様に話を通した方が……それに、先に剣を抜いたのはお前の方だろ」
「な、何だと!?」
突然の来訪者に衛兵達が焦り、互いに責任のなすりつけ合いを始めてしまう。
そんな中、驚いていた私はようやく衛兵達の死線を追ってそこに居る人物に目を向ける。すると、そこに居たのは隣国クランドール国の第一王子アラン・クランドール様だった。
自由奔放で楽観的。
何度かパーティで顔を合わせた事があるが、私の印象はそんなものだった。
しかし、今の彼の顔は普段のそれとは違い、とても険しいもので、いつものような軽さはどこにも無い。
「あ、アラン様……?」
「おや? これは誰かと思えば、イーファじゃないか! お前達、よりにもよって公爵の婚約者……しかも、この国において『聖女』と呼ばれる者に剣を向けるなど……反逆とみなされても文句は言えまい。無論、その罪、死をもって償うつもりであろうな?」
「お、お待ち下さい! ち、違うのです! こ、これはその……ぶ、ブレン様に無礼を働いたのはそこの女の方なのです!」
「何だと……?」
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