2 / 3
2.出会い
しおりを挟む
「痛ッ!」
ブレン様の屋敷の外まで連れ出されると、腕を掴んでいた衛兵が私を手荒に地面へと投げた。着ていたドレスが土で汚れ、泣きそうになる。
しかし、そんな私に衛兵の男達は護衛用に鞘に納めていた剣に手を置くと、物騒な声を向けてきた。
「何と無礼な女なのか! 今宵はブレン様の誕生をお祝いするめでたい日だというのに……ブレン様に恥をかかせるなど、許す事は出来ん!」
「『聖女』などと豪語しておいて、不埒な事を……! 我が国に泥を塗るような女、生かす価値もない! ここで切り捨ててくれよう!」
「ま、待って―」
「『聖女』の力で国を守っているなどと奢り、何をしても良いとでも思ったか!? 貴様などおらずとも、真の『聖女』たるマルク様さえおられればそのお力で我が国を守って下さるのだ!」
マルクが真の『聖女』……? 何の事……?
そんな疑問を抱く私を置いて衛兵達は怒りを露わにして剣を鞘から抜き取ると、私に向かってじりじりと距離を詰めて来る。
命の危機を感じた私が制止の声を上げても聞く耳も持たず、衛兵達が剣を私に向かって振り下ろす。
……もうダメだ!
そんな風に私が死を覚悟した時だった。
「―そこで何をしている?」
暗がりの中、とても強い声が響き渡った。
すると、私に剣を向けていた衛兵達が顔を青ざめさせ、声の聞こえて来た方向に向かって敬礼をしていた。
「こ、これはアラン様! ほ、本日はご欠席なさると伺っておりましたが……」
「急用があったのだ。だが、思いの外、早く終わってな……それより、今日はブレン殿の誕生を祝う席だと思っていたが……これは何だ? ブレン殿はか弱い女性を処刑するのを祝いとしようとしているとでもいうのか?」
「い、いえ、その……お、おい! お前も何か言ったらどうだ!」
「そ、そんな事言われても……! 俺達よりまずはブレン様に話を通した方が……それに、先に剣を抜いたのはお前の方だろ」
「な、何だと!?」
突然の来訪者に衛兵達が焦り、互いに責任のなすりつけ合いを始めてしまう。
そんな中、驚いていた私はようやく衛兵達の死線を追ってそこに居る人物に目を向ける。すると、そこに居たのは隣国クランドール国の第一王子アラン・クランドール様だった。
自由奔放で楽観的。
何度かパーティで顔を合わせた事があるが、私の印象はそんなものだった。
しかし、今の彼の顔は普段のそれとは違い、とても険しいもので、いつものような軽さはどこにも無い。
「あ、アラン様……?」
「おや? これは誰かと思えば、イーファじゃないか! お前達、よりにもよって公爵の婚約者……しかも、この国において『聖女』と呼ばれる者に剣を向けるなど……反逆とみなされても文句は言えまい。無論、その罪、死をもって償うつもりであろうな?」
「お、お待ち下さい! ち、違うのです! こ、これはその……ぶ、ブレン様に無礼を働いたのはそこの女の方なのです!」
「何だと……?」
ブレン様の屋敷の外まで連れ出されると、腕を掴んでいた衛兵が私を手荒に地面へと投げた。着ていたドレスが土で汚れ、泣きそうになる。
しかし、そんな私に衛兵の男達は護衛用に鞘に納めていた剣に手を置くと、物騒な声を向けてきた。
「何と無礼な女なのか! 今宵はブレン様の誕生をお祝いするめでたい日だというのに……ブレン様に恥をかかせるなど、許す事は出来ん!」
「『聖女』などと豪語しておいて、不埒な事を……! 我が国に泥を塗るような女、生かす価値もない! ここで切り捨ててくれよう!」
「ま、待って―」
「『聖女』の力で国を守っているなどと奢り、何をしても良いとでも思ったか!? 貴様などおらずとも、真の『聖女』たるマルク様さえおられればそのお力で我が国を守って下さるのだ!」
マルクが真の『聖女』……? 何の事……?
そんな疑問を抱く私を置いて衛兵達は怒りを露わにして剣を鞘から抜き取ると、私に向かってじりじりと距離を詰めて来る。
命の危機を感じた私が制止の声を上げても聞く耳も持たず、衛兵達が剣を私に向かって振り下ろす。
……もうダメだ!
そんな風に私が死を覚悟した時だった。
「―そこで何をしている?」
暗がりの中、とても強い声が響き渡った。
すると、私に剣を向けていた衛兵達が顔を青ざめさせ、声の聞こえて来た方向に向かって敬礼をしていた。
「こ、これはアラン様! ほ、本日はご欠席なさると伺っておりましたが……」
「急用があったのだ。だが、思いの外、早く終わってな……それより、今日はブレン殿の誕生を祝う席だと思っていたが……これは何だ? ブレン殿はか弱い女性を処刑するのを祝いとしようとしているとでもいうのか?」
「い、いえ、その……お、おい! お前も何か言ったらどうだ!」
「そ、そんな事言われても……! 俺達よりまずはブレン様に話を通した方が……それに、先に剣を抜いたのはお前の方だろ」
「な、何だと!?」
突然の来訪者に衛兵達が焦り、互いに責任のなすりつけ合いを始めてしまう。
そんな中、驚いていた私はようやく衛兵達の死線を追ってそこに居る人物に目を向ける。すると、そこに居たのは隣国クランドール国の第一王子アラン・クランドール様だった。
自由奔放で楽観的。
何度かパーティで顔を合わせた事があるが、私の印象はそんなものだった。
しかし、今の彼の顔は普段のそれとは違い、とても険しいもので、いつものような軽さはどこにも無い。
「あ、アラン様……?」
「おや? これは誰かと思えば、イーファじゃないか! お前達、よりにもよって公爵の婚約者……しかも、この国において『聖女』と呼ばれる者に剣を向けるなど……反逆とみなされても文句は言えまい。無論、その罪、死をもって償うつもりであろうな?」
「お、お待ち下さい! ち、違うのです! こ、これはその……ぶ、ブレン様に無礼を働いたのはそこの女の方なのです!」
「何だと……?」
0
あなたにおすすめの小説
さようなら、私の初恋
しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」
物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。
だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。
「あんな女、落とすまでのゲームだよ」
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
婚約破棄されたので、もうあなたを想うのはやめます
藤原遊
恋愛
王城の舞踏会で、公爵令息から一方的に婚約破棄を告げられた令嬢。
彼の仕事を支えるため領地運営を担ってきたが、婚約者でなくなった以上、その役目を続ける理由はない。
去った先で彼女の能力を正当に評価したのは、軍事を握る王弟辺境伯だった。
想うことをやめた先で、彼女は“対等に必要とされる場所”を手に入れる。
今まで尽してきた私に、妾になれと言うんですか…?
水垣するめ
恋愛
主人公伯爵家のメアリー・キングスレーは公爵家長男のロビン・ウィンターと婚約していた。
メアリーは幼い頃から公爵のロビンと釣り合うように厳しい教育を受けていた。
そして学園に通い始めてからもロビンのために、生徒会の仕事を請け負い、尽していた。
しかしある日突然、ロビンは平民の女性を連れてきて「彼女を正妻にする!」と宣言した。
そしえメアリーには「お前は妾にする」と言ってきて…。
メアリーはロビンに失望し、婚約破棄をする。
婚約破棄は面子に関わるとロビンは引き留めようとしたが、メアリーは婚約破棄を押し通す。
そしてその後、ロビンのメアリーに対する仕打ちを知った王子や、周囲の貴族はロビンを責め始める…。
※小説家になろうでも掲載しています。
私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。
火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。
しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。
数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。
そんなに相談女の方が良ければお好きにどうぞ。邪魔な私たちはいなくなりますので
日々埋没。
恋愛
貴族令嬢のカナデアは学園で初めてできた友人ミーナからある日突然裏切られる。
「うぇーん、お友達があたしのことを生意気だってイジメるのぉ。あーあ、優しく男の子に慰めてほしいなぁー」
と相談女を装いつつ男漁りを始めたミーナの流す嘘に騙され、カナデアもまた仲の良かった令息たちからも白い目で見られることとなる。
そんなある日、一つの婚約破棄事件をきっかけにカナデアは他にもミーナの被害にあった令嬢たちと一緒に休学を決意する。
傷心旅行と称してしばしバカンスを楽しんでいたカナデアたちは、やがて都合の良い引き立て役を用意できなくなったミーナの愚行とその末路を耳にすることになり……。
聖女の魔力を失い国が崩壊。婚約破棄したら、彼と幼馴染が事故死した。
佐藤 美奈
恋愛
聖女のクロエ公爵令嬢はガブリエル王太子殿下と婚約していた。しかしガブリエルはマリアという幼馴染に夢中になり、隠れて密会していた。
二人が人目を避けて会っている事をクロエに知られてしまい、ガブリエルは謝罪して「マリアとは距離を置く」と約束してくれる。
クロエはその言葉を信じていましたが、実は二人はこっそり関係を続けていました。
その事をガブリエルに厳しく抗議するとあり得ない反論をされる。
「クロエとは婚約破棄して聖女の地位を剥奪する!そして僕は愛するマリアと結婚して彼女を聖女にする!」
「ガブリエル考え直してください。私が聖女を辞めればこの国は大変なことになります!」
「僕を騙すつもりか?」
「どういう事でしょう?」
「クロエには聖女の魔力なんて最初から無い。マリアが言っていた。それにマリアのことを随分といじめて嫌がらせをしているようだな」
「心から誓ってそんなことはしておりません!」
「黙れ!偽聖女が!」
クロエは婚約破棄されて聖女の地位を剥奪されました。ところが二人に天罰が下る。デート中にガブリエルとマリアは事故死したと知らせを受けます。
信頼していた婚約者に裏切られ、涙を流し悲痛な思いで身体を震わせるクロエは、急に頭痛がして倒れてしまう。
――目覚めたら一年前に戻っていた――
愚か者の話をしよう
鈴宮(すずみや)
恋愛
シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。
そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。
けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる