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4章 魔法士小隊
4章ー18:都市防衛兵器と、関所での出入り手続き
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開発棟2階の個室、ドワーフ翁の個人作業室で、〈地炎の魔甲拳:マグマフィスト〉を見て笑っている舞子から視線を外した命彦は、窓の外から見える空の色を見て口を開いた。
「舞子の武器も決まったし、お前らそろそろ行くぞ?」
「ふむ、ではワシも仕事に戻るとするか。若様、気を付けてのう?」
「ああ、ありがとドム爺。行って来るよ」
「魔法具、ありがとうございます親方。壊さずにきちんとお返ししますね?」
舞子がドワーフ翁に深々と頭を下げると、ドワーフ翁が優しい笑みを返した。
「うむ、点検・整備はいつでも請け負おう。魔法具の賃貸契約は後日改めて結ぶとしようか。実際に使ってみて、肌に合わんこともある。しばらくはお試し期間じゃ。マイコ嬢、明日また店に来て、使用感を教えておくれ。微調整をして気に入ってくれたら、その時こそ契約じゃ」
「はい!」
「「「親方、ありがとうございました!」」」
ドワーフ翁に小隊員全員で礼を言い、別れてから開発棟を出た命彦達は、店舗棟へと戻った。
店舗の裏口から店内を抜けて店の入り口に着くと、数人の店員達とエルフの女性が待っている。
「待った、ソル姉?」
エルフの女性から紙袋を受け取って命彦が問うと、エルフ女性は首を横に振って苦笑した。
「いいえ、こちらも先ほど全ての補充品が揃ったところですので、ちょうどよかったです。体力回復の〈魔傷薬〉と魔力回復の〈魔霊薬〉、状態異常回復の〈魔妙薬〉は、補充品一覧表の記載数より多めに入れておきました。おまけです、若様」
紙袋に入っていた各種の消費型魔法具達、魔法が込められた液体の入った小瓶や魔法結晶を、次々に自分の〈余次元の鞄〉へ詰め込み、命彦が礼を言う。
「ありがと、助かったよ。会計はいつも通りで頼む」
「はい、また若様の口座から引き落としておきますね? ミサヤ様、帰還後に口座の確認をお願いします。若様はいい加減ですから」
『ええ。心得ていますよソルティア』
命彦が空の紙袋を返すと、エルフ女性がやや心配そうに言った。
「それでは若様、メイア様達も、お気を付けて。従業員一同、無事に帰還されることを、切に願っております」
「ああ、当然だよ。皆にはまたお土産を取って来る、楽しみにしててくれ」
エルフ女性と、その後ろで手を振る店員達に笑顔を返し、命彦達は【精霊本舗】を後にした。
【精霊本舗】を出てすぐ、命彦達は道端の常設駅から路面電車に乗り込んだ。
空はほぼ紅色に染まり、黄昏時の様相であった。
「【迷宮外壁】の昇降機前駅まで、約6分。そこから昇降機に乗って約1分で関所に着く。多分関所に到着したら午後6時ピッタリか少し過ぎるくらいだね?」
空太が言うと、命彦が窓の外を見つつ応じた。
「ああ。今回の[結晶樹の樹液]の採取量は少し多いから、樹液の出が良い【結晶樹】を目指そう」
『今からサッと行って帰るのでしたら、狙える【結晶樹】の生えている位置は、【迷宮外壁】から300m地点の1本か、600m地点にある3本。そして、1km地点にある6本と、2km地点にある9本くらいですね? 近場にあるこれらが狙い目だと思いますが』
「樹液の出って点から考えたら2km地点が最有力候補とちゃう? 他は採集者の魔法士らがよう行くから、樹液の出があんまりようあらへん。それに2km地点は各【結晶樹】が相当近い位置にあるから、1本目の採集量で必要量に届かんくても、2本目へすぐ採りに行けるし効率的や」
「そうね。採集後に魔獣と舞子の戦闘もするわけだし、その意味でも魔獣を見付けやすい2km地点がいいでしょう。私達が《旋風の纏い》を使って普通に走ったら、遅くとも4分前後で着くわ。それに、あそこには確か芋の群生地があった筈よ?」
「ああ、芋の試練か。僕も思い出すよ、学校の魔法実習時の戦闘訓練で、最初に戦わされた魔獣だからね? いい考えだと思う。メイアも経験してるわけだし、僕らは楽できる上にお土産も手に入る。うん、2km地点がいいよ」
「じゃあ、目的地は2km地点の【結晶樹】で決定する。舞子もいいか?」
「あ、はい! ……私としては【結晶樹】のことよりも、芋の試練とかいう言葉の方が気がかりですが」
『行けばわかります』
「……ですよねー」
命彦の膝の上に座るミサヤの冷めた視線に肩を落とし、舞子は不安そうに苦笑した。
路面電車が進むにつれて、車窓から見える【迷宮外壁】がどんどん近付いて来る。
【迷宮外壁】の威容が視界を埋めると、車内放送が入った。
『終点の【迷宮外壁】昇降機前駅です。出口は右側です。忘れ物にご注意ください』
「よし着いた、降りるぞ」
路面電車の扉が開き、座席に座っていた命彦が立つと、メイア達も座席から立ち上がり、電車を降りた。
路面電車内では〈余次元の鞄〉に収納していた日本刀の武具型魔法具を再装備して、ミサヤを肩に乗せた命彦がさっさと歩き出す。一方の舞子は立ち止まって、周囲の様子に見入っていた。
常設駅のすぐ前には、小高い丘のように勾配がある【迷宮外壁】がそそり立っている。
その【迷宮外壁】の斜面を昇り降りする2台の昇降機を見て、舞子が心臓の鼓動を速めた。
「……いよいよです」
「もう身体を硬くしてんのん? まだ迷宮は先やで? ほれ、命彦達に追いつこ」
「は、はい!」
勇子に背を叩かれ、先を歩く命彦達に追い付くように舞子は小走りした。
昇降機前では、門番でもするように2台の小型多脚戦車、魔法機械〈ツチグモ〉が、頭部の検知撮影器で昇降機の利用者を1人ずつ記録し、確認している。
顔の形や網膜、虹彩の認識による生体認証を行って、学科魔法士かどうかを確かめているのである。
この8本足の多脚戦車は、足先に固定杭と車輪を付けており、杭を打って建物の壁面にへばりつくことも、8つの車輪による駆動で戦車の常識を超えた急旋回をすることもできる、敏捷性に優れた陸戦型都市防衛兵器の1つであった。
都市防衛兵器として、自衛軍に所属する〔魔工士〕が作る魔法機械は凡そ3種類あり、陸戦型の魔法機械〈ツチグモ〉、空戦型の魔法機械〈オニヤンマ〉、海戦型の魔法機械〈カブトエビ〉が、それぞれ製造されている。
多脚戦車の〈ツチグモ〉も、双翼回転式高速飛昇機の〈オニヤンマ〉も、潜水急襲機の〈カブトエビ〉も、全て小型の無人機であり、人工知能を搭載していて、人工知能同士が作る量子通信網によって、最上位人工知能たる都市統括人工知能の指揮下にあった。
つまり、この場にいる〈ツチグモ〉達も、三葉市の都市統括人工知能たるミツバの指揮下にあるわけである。
装甲は勿論、内部機器まで魔法士によって異相空間処理されたこれらの魔法機械は、自ら考えて動く魔法具であり、自身に封入された魔法の効力と、先端科学兵器を併用して魔獣達と戦闘する、迷宮防衛都市の頼もしい守護者であった。
メイアが生体認証を済ませて昇降機に乗り込み、〈ツチグモ〉に目をやって口を開く。
「ミツバが対策行動を取ったせいか、普段武装を外されてるこの子達も、今は電磁投射砲を背負ってるわね?」
「そうだね。こういうのを見ると、有事って感じがして少し焦るよ、僕は」
空太の言葉に無言の同意を返しつつ、命彦も生体認証をサッと済ませて昇降機に乗った。
科学兵器を使った人類対魔獣の戦いにおいて、バイオロイドの神風特攻よりも討伐率には劣るが、限定的に魔獣へ通用した科学兵器が、実は幾つかある。〈ツチグモ〉の装備した電磁投射砲は、そのうちの1つであった。
弾体を電磁誘導によって加速させて撃ち出す電磁投射砲は、物理法則下で使える科学兵器では相当の破壊力を持つ軍事兵器であるが、物理法則を捻じ曲げる魔法に対しては無力であり、結界魔法や付与魔法を使った魔獣には、弾体を止められたり避けられたりして無効化された。
それゆえに、魔獣が魔法を使っていても通用することが多いバイオロイドの特攻と比べると、対魔獣用兵器としての格は一段落ちる。
しかし、魔法を使われたら無効化されるのであれば、使われぬうちに攻撃して倒せばいいだけであり、電磁投射砲はそういう攻撃ができる高初速兵器であった。
8km圏内であれば、ほぼ発射と同時に弾体が目標へと着弾する電磁投射砲は、魔獣の認識の外から、魔法抜きでは回避も防御も不可能である必殺の攻撃を叩き込むことができる。
勿論、最初から魔法を使って臨戦体勢にある魔獣には、科学兵器の性質ゆえに無効化されてしまうが、遠方にいるからと油断して、魔法を未使用で闊歩する魔獣達を、初撃で一網打尽にすることは可能であった。
その一撃の破壊力と圧倒的速度、そして連射も可能とする速射性。
これが電磁投射砲の利点であり、魔獣へも通用する限られた科学兵器と認められ、今も使われる理由であった。
「上げるで?」
全員が乗り込んだのを確認し、勇子が昇降機を起動させる。
みるみる斜面を上昇して、街の景色が遠ざかった。
昇降機で【迷宮外壁】の頂上まで昇ると、関所はほぼ目の前にある。
日本の各迷宮防衛都市には、都市が接する【迷宮外壁】上に関所が3箇所あり、学科魔法士は必ずどれか1つの関所で、出入り手続きをしてから迷宮に入る決まりであった。
これは迷宮に取り残された未帰還魔法士を早期に見付け出し、救出するための措置であり、1度関所で進入手続きを行った魔法士が、手続きしてから24時間以内に同じ関所で帰還手続きをせず、また関所に連絡も入れずにいる場合、行方不明の未帰還魔法士として扱われて、その魔法士が所属する依頼所や企業、研究所等に、連絡が入る仕組みである。
迷宮内に24時間以上いる場合は、進入手続きの時にそのことを関所へ申請し、帰還日時を定めてから手続きを終えた。勿論、この場合でも、申請した帰還日時までに帰還手続きを終わらせず、また関所へ連絡も入れぬ場合、未帰還魔法士と扱われる。
関所は、魔法士の迷宮への出入りの管理を行うと共に、迷宮を監視し、迷宮に入った魔法士が、全員街に戻っているのかを確認する、魔法士の命を守る機関でもあった。
昇降機を降りて、命彦達は4機の〈ツチグモ〉が配備された関所、第2関所へと入る。
関所の受付には3体の女性バイオロイドがおり、命彦達は迷宮に入る進入手続きをそれぞれ済ませた。
顔写真を撮影し、ポマコンをかざして魔法士情報を送信するだけである。
3分ほどで全員が手続きを終えると、メイアが関所内の上部空間に幾つも投影されている平面映像を見て、日の入りに関する情報を確認した。
「日の入り時刻は午後6時36分だって。……あれ、どうしたの舞子?」
メイアが不思議そうに、横にいて唖然とした表情の舞子へ問う。
舞子の視線を追ったメイアは、舞子が見ている平面映像に目をやり、苦笑した。
舞子の顔写真が、平面映像に映し出されていたからである。
「あ、迷宮で救助要請して、実際に助けられた救助者の一覧表ね……」
一昨日の出入り手続きの際に撮影されたであろう舞子の顔写真は、すぐ別の人の顔写真に切り替わるが、表示の切り換えは繰り返し行われている。またすぐに舞子の顔が表示されるであろうことが、メイアには分かった。
「は、はずかしいですよ、あれっ! 私の友人達も映ってますし、自分の魔法学科や出身の魔法士育成学校もバレてるしっ! はうぅ、どうしよう……」
イヤイヤと身をよじる舞子へ、メイアと同じく救助者一覧表に気付いた勇子が言う。
「仕方あらへん。あれも一応意味があって表示されとるもんやし。救助された筈の魔法士と連絡取られへんで、安否を確かめに関所に来る人もおるからね? ああして救助された魔法士の情報を繰り返し表示しとるんや。心配せんでも明日には更新されるやろ、3日おきに情報が更新されるからね? それまで我慢しい」
勇子にも苦笑され、舞子は顔を赤く染めて、関所内を俯きつつ命彦達と通り抜けた。
しかし、関所を通り抜けた先の出口に到着すると、舞子のはずかしさはすぐに吹き飛ぶ。
夕焼けに染まる迷宮の幻想的風景が、舞子の心を奪ったからである。
「うわあぁぁー……凄い景色ですねぇ」
「ええ景色やわ、ホンマに」
「廃墟を適度に彩る緑と、照り付ける夕日の黄昏。絶妙の混ざり具合よね? 命のやり取りをする場所ってことを忘れそうだわ」
「それを忘れた人から、多分死んでいくんだろうね?」
「空太、一言余計よ」
「ごめんごめん」
メイアの言葉に、空太は苦笑を返す。その2人を気にせず、命彦が舞子へ言う。
「感動は置いといて、いよいよ迷宮に入るぞ? 気を引き締めろよ、舞子」
「はい!」
舞子の返事を聞いてから、命彦達は関西迷宮【魔竜の樹海】へと降りる昇降機に乗った。
昇降機の傍には、迷宮監視役の都市自衛軍の男女の魔法士がおり、命彦達が軽く会釈すると、笑顔を返してくれた。空太だけが自衛軍の魔法士達に手を軽く振る。
昇降機が斜面を降り始めてすぐ、命彦は口を開いた。
「知り合いか、空太?」
「うん、顔見知り。ウチの母さんが1週間前に新型精霊融合魔法の実験を手伝ってもらった人達だよ」
「それってウチのオトンにも頼んで、都市警察にも普及させようとしとる攻撃魔法のことか?」
「そう、それ。母さんがあの2人をウチに呼んで、実験を手伝うよう頼んでたんだ。その時、僕も偶然会った」
命彦達の会話を1人不思議そうに聞く舞子へ、メイアが小声で耳打ちする。
「空太のお母さんの風羽空乃さんは、三葉市の都市自衛軍に所属してて、新しい魔法を作る魔法開発局の局長さんよ? 都市自衛軍内じゃ相当上の幹部ね。あと、勇子のお父さんの鬼土拳人さんも、都市警察の警視長さんで、三葉市の警察組織ではほぼ最高幹部にあたる偉い人よ?」
「す、凄い親御さんをお持ちですね、2人とも……」
「うふふ、驚いたでしょ? ついでに言っとくと、命彦の祖父母である刀士さんと結絃さんは、今でこそ退役してるけど、都市自衛軍や都市警察で対魔法戦闘の教官をしていた時期があって、空乃さんや拳人さんが教え子だったりするわ。この2人に意見できる意味では一番凄いかもね? あ、でも」
メイアが不意に黙ってから昇降機の停止を見計らい、楽しそうに笑って言う。
「その刀士さんや結絃さんも、家同士の関係で梓さんの言うことには従うから、私が思うに、結局この三葉市では神樹家と梓さんが一番凄いと思うわ」
「は、はあ……」
舞子はメイアの言葉に、とりあえずコクリと首を振った。
「舞子の武器も決まったし、お前らそろそろ行くぞ?」
「ふむ、ではワシも仕事に戻るとするか。若様、気を付けてのう?」
「ああ、ありがとドム爺。行って来るよ」
「魔法具、ありがとうございます親方。壊さずにきちんとお返ししますね?」
舞子がドワーフ翁に深々と頭を下げると、ドワーフ翁が優しい笑みを返した。
「うむ、点検・整備はいつでも請け負おう。魔法具の賃貸契約は後日改めて結ぶとしようか。実際に使ってみて、肌に合わんこともある。しばらくはお試し期間じゃ。マイコ嬢、明日また店に来て、使用感を教えておくれ。微調整をして気に入ってくれたら、その時こそ契約じゃ」
「はい!」
「「「親方、ありがとうございました!」」」
ドワーフ翁に小隊員全員で礼を言い、別れてから開発棟を出た命彦達は、店舗棟へと戻った。
店舗の裏口から店内を抜けて店の入り口に着くと、数人の店員達とエルフの女性が待っている。
「待った、ソル姉?」
エルフの女性から紙袋を受け取って命彦が問うと、エルフ女性は首を横に振って苦笑した。
「いいえ、こちらも先ほど全ての補充品が揃ったところですので、ちょうどよかったです。体力回復の〈魔傷薬〉と魔力回復の〈魔霊薬〉、状態異常回復の〈魔妙薬〉は、補充品一覧表の記載数より多めに入れておきました。おまけです、若様」
紙袋に入っていた各種の消費型魔法具達、魔法が込められた液体の入った小瓶や魔法結晶を、次々に自分の〈余次元の鞄〉へ詰め込み、命彦が礼を言う。
「ありがと、助かったよ。会計はいつも通りで頼む」
「はい、また若様の口座から引き落としておきますね? ミサヤ様、帰還後に口座の確認をお願いします。若様はいい加減ですから」
『ええ。心得ていますよソルティア』
命彦が空の紙袋を返すと、エルフ女性がやや心配そうに言った。
「それでは若様、メイア様達も、お気を付けて。従業員一同、無事に帰還されることを、切に願っております」
「ああ、当然だよ。皆にはまたお土産を取って来る、楽しみにしててくれ」
エルフ女性と、その後ろで手を振る店員達に笑顔を返し、命彦達は【精霊本舗】を後にした。
【精霊本舗】を出てすぐ、命彦達は道端の常設駅から路面電車に乗り込んだ。
空はほぼ紅色に染まり、黄昏時の様相であった。
「【迷宮外壁】の昇降機前駅まで、約6分。そこから昇降機に乗って約1分で関所に着く。多分関所に到着したら午後6時ピッタリか少し過ぎるくらいだね?」
空太が言うと、命彦が窓の外を見つつ応じた。
「ああ。今回の[結晶樹の樹液]の採取量は少し多いから、樹液の出が良い【結晶樹】を目指そう」
『今からサッと行って帰るのでしたら、狙える【結晶樹】の生えている位置は、【迷宮外壁】から300m地点の1本か、600m地点にある3本。そして、1km地点にある6本と、2km地点にある9本くらいですね? 近場にあるこれらが狙い目だと思いますが』
「樹液の出って点から考えたら2km地点が最有力候補とちゃう? 他は採集者の魔法士らがよう行くから、樹液の出があんまりようあらへん。それに2km地点は各【結晶樹】が相当近い位置にあるから、1本目の採集量で必要量に届かんくても、2本目へすぐ採りに行けるし効率的や」
「そうね。採集後に魔獣と舞子の戦闘もするわけだし、その意味でも魔獣を見付けやすい2km地点がいいでしょう。私達が《旋風の纏い》を使って普通に走ったら、遅くとも4分前後で着くわ。それに、あそこには確か芋の群生地があった筈よ?」
「ああ、芋の試練か。僕も思い出すよ、学校の魔法実習時の戦闘訓練で、最初に戦わされた魔獣だからね? いい考えだと思う。メイアも経験してるわけだし、僕らは楽できる上にお土産も手に入る。うん、2km地点がいいよ」
「じゃあ、目的地は2km地点の【結晶樹】で決定する。舞子もいいか?」
「あ、はい! ……私としては【結晶樹】のことよりも、芋の試練とかいう言葉の方が気がかりですが」
『行けばわかります』
「……ですよねー」
命彦の膝の上に座るミサヤの冷めた視線に肩を落とし、舞子は不安そうに苦笑した。
路面電車が進むにつれて、車窓から見える【迷宮外壁】がどんどん近付いて来る。
【迷宮外壁】の威容が視界を埋めると、車内放送が入った。
『終点の【迷宮外壁】昇降機前駅です。出口は右側です。忘れ物にご注意ください』
「よし着いた、降りるぞ」
路面電車の扉が開き、座席に座っていた命彦が立つと、メイア達も座席から立ち上がり、電車を降りた。
路面電車内では〈余次元の鞄〉に収納していた日本刀の武具型魔法具を再装備して、ミサヤを肩に乗せた命彦がさっさと歩き出す。一方の舞子は立ち止まって、周囲の様子に見入っていた。
常設駅のすぐ前には、小高い丘のように勾配がある【迷宮外壁】がそそり立っている。
その【迷宮外壁】の斜面を昇り降りする2台の昇降機を見て、舞子が心臓の鼓動を速めた。
「……いよいよです」
「もう身体を硬くしてんのん? まだ迷宮は先やで? ほれ、命彦達に追いつこ」
「は、はい!」
勇子に背を叩かれ、先を歩く命彦達に追い付くように舞子は小走りした。
昇降機前では、門番でもするように2台の小型多脚戦車、魔法機械〈ツチグモ〉が、頭部の検知撮影器で昇降機の利用者を1人ずつ記録し、確認している。
顔の形や網膜、虹彩の認識による生体認証を行って、学科魔法士かどうかを確かめているのである。
この8本足の多脚戦車は、足先に固定杭と車輪を付けており、杭を打って建物の壁面にへばりつくことも、8つの車輪による駆動で戦車の常識を超えた急旋回をすることもできる、敏捷性に優れた陸戦型都市防衛兵器の1つであった。
都市防衛兵器として、自衛軍に所属する〔魔工士〕が作る魔法機械は凡そ3種類あり、陸戦型の魔法機械〈ツチグモ〉、空戦型の魔法機械〈オニヤンマ〉、海戦型の魔法機械〈カブトエビ〉が、それぞれ製造されている。
多脚戦車の〈ツチグモ〉も、双翼回転式高速飛昇機の〈オニヤンマ〉も、潜水急襲機の〈カブトエビ〉も、全て小型の無人機であり、人工知能を搭載していて、人工知能同士が作る量子通信網によって、最上位人工知能たる都市統括人工知能の指揮下にあった。
つまり、この場にいる〈ツチグモ〉達も、三葉市の都市統括人工知能たるミツバの指揮下にあるわけである。
装甲は勿論、内部機器まで魔法士によって異相空間処理されたこれらの魔法機械は、自ら考えて動く魔法具であり、自身に封入された魔法の効力と、先端科学兵器を併用して魔獣達と戦闘する、迷宮防衛都市の頼もしい守護者であった。
メイアが生体認証を済ませて昇降機に乗り込み、〈ツチグモ〉に目をやって口を開く。
「ミツバが対策行動を取ったせいか、普段武装を外されてるこの子達も、今は電磁投射砲を背負ってるわね?」
「そうだね。こういうのを見ると、有事って感じがして少し焦るよ、僕は」
空太の言葉に無言の同意を返しつつ、命彦も生体認証をサッと済ませて昇降機に乗った。
科学兵器を使った人類対魔獣の戦いにおいて、バイオロイドの神風特攻よりも討伐率には劣るが、限定的に魔獣へ通用した科学兵器が、実は幾つかある。〈ツチグモ〉の装備した電磁投射砲は、そのうちの1つであった。
弾体を電磁誘導によって加速させて撃ち出す電磁投射砲は、物理法則下で使える科学兵器では相当の破壊力を持つ軍事兵器であるが、物理法則を捻じ曲げる魔法に対しては無力であり、結界魔法や付与魔法を使った魔獣には、弾体を止められたり避けられたりして無効化された。
それゆえに、魔獣が魔法を使っていても通用することが多いバイオロイドの特攻と比べると、対魔獣用兵器としての格は一段落ちる。
しかし、魔法を使われたら無効化されるのであれば、使われぬうちに攻撃して倒せばいいだけであり、電磁投射砲はそういう攻撃ができる高初速兵器であった。
8km圏内であれば、ほぼ発射と同時に弾体が目標へと着弾する電磁投射砲は、魔獣の認識の外から、魔法抜きでは回避も防御も不可能である必殺の攻撃を叩き込むことができる。
勿論、最初から魔法を使って臨戦体勢にある魔獣には、科学兵器の性質ゆえに無効化されてしまうが、遠方にいるからと油断して、魔法を未使用で闊歩する魔獣達を、初撃で一網打尽にすることは可能であった。
その一撃の破壊力と圧倒的速度、そして連射も可能とする速射性。
これが電磁投射砲の利点であり、魔獣へも通用する限られた科学兵器と認められ、今も使われる理由であった。
「上げるで?」
全員が乗り込んだのを確認し、勇子が昇降機を起動させる。
みるみる斜面を上昇して、街の景色が遠ざかった。
昇降機で【迷宮外壁】の頂上まで昇ると、関所はほぼ目の前にある。
日本の各迷宮防衛都市には、都市が接する【迷宮外壁】上に関所が3箇所あり、学科魔法士は必ずどれか1つの関所で、出入り手続きをしてから迷宮に入る決まりであった。
これは迷宮に取り残された未帰還魔法士を早期に見付け出し、救出するための措置であり、1度関所で進入手続きを行った魔法士が、手続きしてから24時間以内に同じ関所で帰還手続きをせず、また関所に連絡も入れずにいる場合、行方不明の未帰還魔法士として扱われて、その魔法士が所属する依頼所や企業、研究所等に、連絡が入る仕組みである。
迷宮内に24時間以上いる場合は、進入手続きの時にそのことを関所へ申請し、帰還日時を定めてから手続きを終えた。勿論、この場合でも、申請した帰還日時までに帰還手続きを終わらせず、また関所へ連絡も入れぬ場合、未帰還魔法士と扱われる。
関所は、魔法士の迷宮への出入りの管理を行うと共に、迷宮を監視し、迷宮に入った魔法士が、全員街に戻っているのかを確認する、魔法士の命を守る機関でもあった。
昇降機を降りて、命彦達は4機の〈ツチグモ〉が配備された関所、第2関所へと入る。
関所の受付には3体の女性バイオロイドがおり、命彦達は迷宮に入る進入手続きをそれぞれ済ませた。
顔写真を撮影し、ポマコンをかざして魔法士情報を送信するだけである。
3分ほどで全員が手続きを終えると、メイアが関所内の上部空間に幾つも投影されている平面映像を見て、日の入りに関する情報を確認した。
「日の入り時刻は午後6時36分だって。……あれ、どうしたの舞子?」
メイアが不思議そうに、横にいて唖然とした表情の舞子へ問う。
舞子の視線を追ったメイアは、舞子が見ている平面映像に目をやり、苦笑した。
舞子の顔写真が、平面映像に映し出されていたからである。
「あ、迷宮で救助要請して、実際に助けられた救助者の一覧表ね……」
一昨日の出入り手続きの際に撮影されたであろう舞子の顔写真は、すぐ別の人の顔写真に切り替わるが、表示の切り換えは繰り返し行われている。またすぐに舞子の顔が表示されるであろうことが、メイアには分かった。
「は、はずかしいですよ、あれっ! 私の友人達も映ってますし、自分の魔法学科や出身の魔法士育成学校もバレてるしっ! はうぅ、どうしよう……」
イヤイヤと身をよじる舞子へ、メイアと同じく救助者一覧表に気付いた勇子が言う。
「仕方あらへん。あれも一応意味があって表示されとるもんやし。救助された筈の魔法士と連絡取られへんで、安否を確かめに関所に来る人もおるからね? ああして救助された魔法士の情報を繰り返し表示しとるんや。心配せんでも明日には更新されるやろ、3日おきに情報が更新されるからね? それまで我慢しい」
勇子にも苦笑され、舞子は顔を赤く染めて、関所内を俯きつつ命彦達と通り抜けた。
しかし、関所を通り抜けた先の出口に到着すると、舞子のはずかしさはすぐに吹き飛ぶ。
夕焼けに染まる迷宮の幻想的風景が、舞子の心を奪ったからである。
「うわあぁぁー……凄い景色ですねぇ」
「ええ景色やわ、ホンマに」
「廃墟を適度に彩る緑と、照り付ける夕日の黄昏。絶妙の混ざり具合よね? 命のやり取りをする場所ってことを忘れそうだわ」
「それを忘れた人から、多分死んでいくんだろうね?」
「空太、一言余計よ」
「ごめんごめん」
メイアの言葉に、空太は苦笑を返す。その2人を気にせず、命彦が舞子へ言う。
「感動は置いといて、いよいよ迷宮に入るぞ? 気を引き締めろよ、舞子」
「はい!」
舞子の返事を聞いてから、命彦達は関西迷宮【魔竜の樹海】へと降りる昇降機に乗った。
昇降機の傍には、迷宮監視役の都市自衛軍の男女の魔法士がおり、命彦達が軽く会釈すると、笑顔を返してくれた。空太だけが自衛軍の魔法士達に手を軽く振る。
昇降機が斜面を降り始めてすぐ、命彦は口を開いた。
「知り合いか、空太?」
「うん、顔見知り。ウチの母さんが1週間前に新型精霊融合魔法の実験を手伝ってもらった人達だよ」
「それってウチのオトンにも頼んで、都市警察にも普及させようとしとる攻撃魔法のことか?」
「そう、それ。母さんがあの2人をウチに呼んで、実験を手伝うよう頼んでたんだ。その時、僕も偶然会った」
命彦達の会話を1人不思議そうに聞く舞子へ、メイアが小声で耳打ちする。
「空太のお母さんの風羽空乃さんは、三葉市の都市自衛軍に所属してて、新しい魔法を作る魔法開発局の局長さんよ? 都市自衛軍内じゃ相当上の幹部ね。あと、勇子のお父さんの鬼土拳人さんも、都市警察の警視長さんで、三葉市の警察組織ではほぼ最高幹部にあたる偉い人よ?」
「す、凄い親御さんをお持ちですね、2人とも……」
「うふふ、驚いたでしょ? ついでに言っとくと、命彦の祖父母である刀士さんと結絃さんは、今でこそ退役してるけど、都市自衛軍や都市警察で対魔法戦闘の教官をしていた時期があって、空乃さんや拳人さんが教え子だったりするわ。この2人に意見できる意味では一番凄いかもね? あ、でも」
メイアが不意に黙ってから昇降機の停止を見計らい、楽しそうに笑って言う。
「その刀士さんや結絃さんも、家同士の関係で梓さんの言うことには従うから、私が思うに、結局この三葉市では神樹家と梓さんが一番凄いと思うわ」
「は、はあ……」
舞子はメイアの言葉に、とりあえずコクリと首を振った。
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偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。
獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。
俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。
単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。
ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。
大抵ガチャがあるんだよな。
幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。
だが俺は運がなかった。
ゲームの話ではないぞ?
現実で、だ。
疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。
そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。
そのまま帰らぬ人となったようだ。
で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。
どうやら異世界だ。
魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。
しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。
10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。
そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。
5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。
残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。
そんなある日、変化がやってきた。
疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。
その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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