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第二章
2-9 洞窟
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もう一度川上りを行うといっても、体全体がガチガチで歩くことすら困難だ。
一度上りきったと言ってもまるで状況が違う。
「かかかか。まるで人の動きには見えぬでござるな」
カチコチカクカクと奇妙な動きしかできない。まだくそ重いおもりをつけたままであり、俺の身体を石のように固定する。
だが、このまま日が暮れてしまうのはまずい。なんとか寝床を確保するためにも、洞窟の中に入っておきたいところだ。
「くぅぅ。こんなことになったのは初めてだ。素振りをやり始めた時もここまではならなかったよ」
「ピギュゥ」
俺が項垂れてるのを見てか、ピギュンが俺の足にへばりついてくる。
じわぁと俺の足を包み込むように変化していき密着度が高まっていく。
慰めてくれてんのかな? そう思ってるとじんわりと温かみを感じ、足の痛みが引いていった。
「ああ! そういうことか。回復できるんだ、この痛み。ん、ん、えーと……」
「ヒーリングスーラでござるからな。他人を回復できるというのは聞いたことはなかったでござるが……」
「え、そうなの?」
「うむ。高い再生力を持つ強力なスーラの種。というのが一般的なヒーリングスライムの認識でござるな。死んだ後にその粘状物質を貼りつけておくと傷が治ると聞いたことがあるでござるが」
「し、死んだ後って……。……治す力はあるけど、それを通常は自分のためにしか使わないってことなんだろうか。とにかくありがと、ピギュン」
「ピギュッ!」
小さくなってしまったので、俺はピギュンをしまうことにした。
しまっておけばピギュンは元の大きさに戻るということが既に分かっている。
それに回復は自分で行うことができる。
ヒーリングスーラは新たに生みだせても、ピギュン二号は蘇らせることはできない。
一号は兄さんに倒されてしまったけど、俺にとってピギュンはピギュンだけなんだから。
「じゃ、体も治ったことだしもっかいやるとしますか! フロード、水のバリアを頼むよ」
「了解でござる」
しっかりと頷いて先ほどと同様に青の光を作りだした。
何度見ても魔法というのは綺麗で凄いと思う。俺の回復魔法も終わり際に光芒が散って綺麗なんだけど……比較にならない。
水の完全耐性の光に包まれ体も治した。
それになぜだか最初よりも大分動きやすい。
スタートに戻ったというよりは、スタートより大分先から始まるような感覚だ。
その勢いのまま川上りを始め、おおよそ10回ほどこける間に俺は滝の横までたどり着いていた。
随分な進歩だ。
「御主人、短期間で随分と成長されましたな!」
「そうだね、自分でもびっくりしてるよ。なんだか体の力が強くなったかのような……」
「かかかか。体というものは苛め抜いていると成長していくものなのでござる。まだまだ精進できますぞ」
「だな! 楽しみになってきた! じゃ、行くとしようか? ま、ここを越えるほうが何となく怖いというかドキドキするというか」
チラと滝に目を向けると、ドドドドと凄まじい勢いで水が流れている。
いくらフロードの魔法があるとはいえ怖いものは怖い。
たまに流木みたいなのも流れてきたりしているし、これは流石に当たるとまずいだろう。
「大丈夫でござる。何かあれば小生が切り伏せます故に」
その言葉を聞き俺は意を決して滝の中へと足を踏み込んだ。
フロードの言葉通りと言うべきだろうか?
水は薄い膜のところで完全に阻まれ本当に一滴も濡れることはない。
見上げてみれば白い泡が嵐のように荒れ狂い、なんだかおもしろいとも思える。
とはいえ、それはどうでもいい。
重要なのはここから先だ。
洞窟の中は外とは比較にならないほどにヒヤリと冷たい風が流れている。
それは日が当たらないための気温差がどうとかといったそういうレベルではない。
寒すぎるくらいだ。
「フロードって寒さとか大丈夫なの?」
カエルは寒さに弱いと聞いたことがある。
そう思って尋ねてみたのだがフロードは洞窟を見回した後、首を振った。
「小生は全く問題ないでござる。しかし……これは普通の洞穴ではござらんな」
「え……? いや、確かに普通ではない気がするけど……」
壁には霜が降りており天井からは幾本にも及ぶ円錐状のつららが連なる様に生えている。
地からは氷ではなく水晶のような石が露出しており、非常に神秘的な雰囲気を醸していた。
「明かりは……なさそうでござるが……」
「あ、大丈夫。調合台の中に……」
俺は調合台の引き出しを探りLEDライトというものを取り出した。
夜でも調合ができるようにと入っているのだ。
わざわざ夜に灯りを取ってやる程の事なのか? とも思うが……。
「ふむ……。やはり御主人の力は普通ではないとお見受けしますな。ですが、便利なので気にしないことにするでござるか」
「うん。無茶苦茶便利なんだけど、気にしたら負けというか……。こんなランプ見たことないもんなぁ」
屋敷にあったランプとはまるで別物。
銀板とガラス板で作り上げられたそれとは違い、円筒状のガラスのような素材で回りを覆われている。
触るとツルツルとしていて、その光透過性は見たことがないほどに高い。
さらには熱くもならないし、放つ光が随分と強い気もする。
いや、実際に強いだろう。
洞窟内部を昼のように照らしあげ、その岩肌をかなり遠方まで鮮明に露出させたのだから。
「ま、いいや。いこっか!」
そう言って俺たちは洞窟内部のうねるような岩肌を一歩踏みしめた。
一度上りきったと言ってもまるで状況が違う。
「かかかか。まるで人の動きには見えぬでござるな」
カチコチカクカクと奇妙な動きしかできない。まだくそ重いおもりをつけたままであり、俺の身体を石のように固定する。
だが、このまま日が暮れてしまうのはまずい。なんとか寝床を確保するためにも、洞窟の中に入っておきたいところだ。
「くぅぅ。こんなことになったのは初めてだ。素振りをやり始めた時もここまではならなかったよ」
「ピギュゥ」
俺が項垂れてるのを見てか、ピギュンが俺の足にへばりついてくる。
じわぁと俺の足を包み込むように変化していき密着度が高まっていく。
慰めてくれてんのかな? そう思ってるとじんわりと温かみを感じ、足の痛みが引いていった。
「ああ! そういうことか。回復できるんだ、この痛み。ん、ん、えーと……」
「ヒーリングスーラでござるからな。他人を回復できるというのは聞いたことはなかったでござるが……」
「え、そうなの?」
「うむ。高い再生力を持つ強力なスーラの種。というのが一般的なヒーリングスライムの認識でござるな。死んだ後にその粘状物質を貼りつけておくと傷が治ると聞いたことがあるでござるが」
「し、死んだ後って……。……治す力はあるけど、それを通常は自分のためにしか使わないってことなんだろうか。とにかくありがと、ピギュン」
「ピギュッ!」
小さくなってしまったので、俺はピギュンをしまうことにした。
しまっておけばピギュンは元の大きさに戻るということが既に分かっている。
それに回復は自分で行うことができる。
ヒーリングスーラは新たに生みだせても、ピギュン二号は蘇らせることはできない。
一号は兄さんに倒されてしまったけど、俺にとってピギュンはピギュンだけなんだから。
「じゃ、体も治ったことだしもっかいやるとしますか! フロード、水のバリアを頼むよ」
「了解でござる」
しっかりと頷いて先ほどと同様に青の光を作りだした。
何度見ても魔法というのは綺麗で凄いと思う。俺の回復魔法も終わり際に光芒が散って綺麗なんだけど……比較にならない。
水の完全耐性の光に包まれ体も治した。
それになぜだか最初よりも大分動きやすい。
スタートに戻ったというよりは、スタートより大分先から始まるような感覚だ。
その勢いのまま川上りを始め、おおよそ10回ほどこける間に俺は滝の横までたどり着いていた。
随分な進歩だ。
「御主人、短期間で随分と成長されましたな!」
「そうだね、自分でもびっくりしてるよ。なんだか体の力が強くなったかのような……」
「かかかか。体というものは苛め抜いていると成長していくものなのでござる。まだまだ精進できますぞ」
「だな! 楽しみになってきた! じゃ、行くとしようか? ま、ここを越えるほうが何となく怖いというかドキドキするというか」
チラと滝に目を向けると、ドドドドと凄まじい勢いで水が流れている。
いくらフロードの魔法があるとはいえ怖いものは怖い。
たまに流木みたいなのも流れてきたりしているし、これは流石に当たるとまずいだろう。
「大丈夫でござる。何かあれば小生が切り伏せます故に」
その言葉を聞き俺は意を決して滝の中へと足を踏み込んだ。
フロードの言葉通りと言うべきだろうか?
水は薄い膜のところで完全に阻まれ本当に一滴も濡れることはない。
見上げてみれば白い泡が嵐のように荒れ狂い、なんだかおもしろいとも思える。
とはいえ、それはどうでもいい。
重要なのはここから先だ。
洞窟の中は外とは比較にならないほどにヒヤリと冷たい風が流れている。
それは日が当たらないための気温差がどうとかといったそういうレベルではない。
寒すぎるくらいだ。
「フロードって寒さとか大丈夫なの?」
カエルは寒さに弱いと聞いたことがある。
そう思って尋ねてみたのだがフロードは洞窟を見回した後、首を振った。
「小生は全く問題ないでござる。しかし……これは普通の洞穴ではござらんな」
「え……? いや、確かに普通ではない気がするけど……」
壁には霜が降りており天井からは幾本にも及ぶ円錐状のつららが連なる様に生えている。
地からは氷ではなく水晶のような石が露出しており、非常に神秘的な雰囲気を醸していた。
「明かりは……なさそうでござるが……」
「あ、大丈夫。調合台の中に……」
俺は調合台の引き出しを探りLEDライトというものを取り出した。
夜でも調合ができるようにと入っているのだ。
わざわざ夜に灯りを取ってやる程の事なのか? とも思うが……。
「ふむ……。やはり御主人の力は普通ではないとお見受けしますな。ですが、便利なので気にしないことにするでござるか」
「うん。無茶苦茶便利なんだけど、気にしたら負けというか……。こんなランプ見たことないもんなぁ」
屋敷にあったランプとはまるで別物。
銀板とガラス板で作り上げられたそれとは違い、円筒状のガラスのような素材で回りを覆われている。
触るとツルツルとしていて、その光透過性は見たことがないほどに高い。
さらには熱くもならないし、放つ光が随分と強い気もする。
いや、実際に強いだろう。
洞窟内部を昼のように照らしあげ、その岩肌をかなり遠方まで鮮明に露出させたのだから。
「ま、いいや。いこっか!」
そう言って俺たちは洞窟内部のうねるような岩肌を一歩踏みしめた。
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