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第二章
2-41 失敗?
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フランシスは屋敷のドアに手をかけるときに俺の手を離した。
リンガルさん達に見られたくないのか、分別をわきまえているのか。
しかし。
俺はフランシスに気に入られているのだろうか?
何度も考えたみたことだが未だによく分かっていない。
俺は良い事なんて一つもやっていないというのに。
こんな時フォーカス兄さんなら俺にいろいろ話してくれるのかもしれないんだけどな。
ま、無いものねだりをしても仕方がない。
俺はフランシスと共に庭の畑の場所へと歩いていく。
リンガルさんとシュネムさんは額に汗を流しながら畑を興してくれており、尖塔の後ろから僅かに覗くソールが落ちる雫に赤い光を反射させた。
「おっ、ディル殿、やることは済まされたのか?」
「ええ、一応は……いやはや、しかしお二人とも凄いですね。こんな短時間で……」
まともな農具ではないというのに庭の隅に大きな畑ができあがっている。
現在はうねのような物を作る作業を行っているようだ。
おそらくこれが終われば畑興しは完了なのだろう。
「少しでも頑張らないといけませんからな! それよりも何をされてたんですか?」
「ええとですね……。っと、その前にその敬語みたいなのやめません? 俺の方が随分年下なんですから、やり辛いですよ」
命を救ったから、おそらくはそういう理由で敬語で話してくれていたんだろうけど、こそばゆいったらありゃしない。
どう見ても兄さんたちより年上の人にそんな扱いを受けてたら、おかしな気分になっちゃうよ。
リンガルさんはシュネムさんと一度顔を見合わせる。
そして何がおかしかったのか少し土がくっついた顎を擦ってから大きく笑い声をあげた。
「はっはっは。確かにそうか! ディル殿には足を向けて寝れんと思っていたが、やり辛いと言われたら仕方ないな!」
「え、ええ。楽にやってください。一応同じ屋根の下で暮らす関係になるんですし」
「ふむ、いやいや、ま、借りたものは返したいし、門の金もできる限り協力したいと思ってるぞ」
「その気持ちはありがたいんで素直に感謝するんですけどね。ではでは、えっと……畑はまだみたいですけど一度試してみます」
二人は俺の言葉を聞くと手を止めて一度畑から離れてくれた。
別にそこまでしなくてもよかったとは思うのだけど。
「いい大人でもディル殿が何をするのかは興味が沸きますな、なぁ、シュネム殿」
「そうですね。ま、こういっちゃ悪いんですが不安も同じくらいあったりしますが」
「こらこら。そんな言い方をしたら失礼だぞ。確かに、まぁ、言いたいことは分からんでもないが……」
「はははは……。すみません、色々と」
二人の言葉に苦笑いしつつ頭を掻いてしまう。
命を救ったプラスがどれほどの物か分からないけれど、回数で言えば圧倒的にマイナスの方が多い。
ま、気にしないようにしてくれてるみたいなので、多少は甘えさせてもらおうかな。
俺は腰のボタンを操作して先ほど完成した肥料と殺虫剤から完成した珠のある場所のボタンを押し込む。
珠と同色の光が土へと向かって伸びていく。
が。
ちょっと予想外の感じであった。
殺虫剤は蔓がまるで手足というか触手のように蠢く植物のモンスター。
大きな袋のような胴体に獰猛な牙が生えており、鋭い目がついている。
触手で器用に地面に立ち、キョロキョロと辺りを確認してから「がふぅ」と鳴き声を上げ、袋の中からぼわんと黄土色の煙を吐き出した。
これはいい。
よく分かんないけど煙が殺虫効果でもあるのだろう
問題は肥料。
地面の上に種のような物が――といってもずいぶん大きいが――コロンと現れただけで何も起きなかったのだ。
微動だにもしない。光を伴い出現し、それで終わりだ。
まさか地面に植える必要でもあるのだろうか?
当然、なんだろうけどリンガルさんが俺に尋ねかけてくる。
目線は殺虫剤がモンスターになったものにくぎ付けだ。
「ディル殿……このモンスターは……?」
「俺の仲間です。ええと……多分、虫除けをしてくれると思うんです。ちなみにこのモンスターを知ってたりします?」
「いや、私も多くのモンスターと戦ったことがあるし、勉強もしているが……見たことがない。シュネム殿は……当然知らないよな」
「知りません。しかし、ディル君は知らないモンスターをどうやってテイムしたんですか?」
言われてみればその通り。
モンスターテイマーってのがどういう素質か詳しくは知らないけど、本来は野生のモンスターを何とかして手懐けるものなのだろう。
それだと俺がこのモンスターを知らなかったというのは確かにおかしい。
でも。
それを言えばジョカなんてモンスターですらないんだけど……。
フロードも人語を解するっていう明らかな異常性を持ってるんだけど……。
どうするかな?
「シュネム殿、ディル殿は何か人に言えない力を持っているんだろう。先の門の件や…………賊の時の事を見ただろう?」
「あ、ああ。そうでした……。すみません、ディル君。変なことを聞いてしまって」
「いえ、いいんです。気にしてませんから」
はぁ良かった。リンガルさんって空気読んでくれるよな。
そう思いながら殺虫剤モンスターを見つめているとフランシスが肥料の種を拾い上げた。
好奇心旺盛なのはいいんだけど、触って何かあるとは考えないのだろうか。
それで一度失敗しているというのに……まさか、覚えてない?
「ねぇ、これはなんなの? おっきな種にしか見えないけど? これもこのモンスターみたいな感じになる?」
「うーん……。よく分かんないんだよ。正直な話なると思ってたんだけど……」
ぶっちゃけ殺虫剤はおまけみたいなもの。
本命は肥料の方だったというのにこれでは少し困ってしまう。
リンガルさんやシュネムさんも首を傾げて種を見ているし、折角畑を興してもらってこれではちょっとまずい。
ジョカ……に聞いてもいいんだけど、何が起きるか分からないので俺はフロードを呼び出して聞いてみることにした。
リンガルさん達に見られたくないのか、分別をわきまえているのか。
しかし。
俺はフランシスに気に入られているのだろうか?
何度も考えたみたことだが未だによく分かっていない。
俺は良い事なんて一つもやっていないというのに。
こんな時フォーカス兄さんなら俺にいろいろ話してくれるのかもしれないんだけどな。
ま、無いものねだりをしても仕方がない。
俺はフランシスと共に庭の畑の場所へと歩いていく。
リンガルさんとシュネムさんは額に汗を流しながら畑を興してくれており、尖塔の後ろから僅かに覗くソールが落ちる雫に赤い光を反射させた。
「おっ、ディル殿、やることは済まされたのか?」
「ええ、一応は……いやはや、しかしお二人とも凄いですね。こんな短時間で……」
まともな農具ではないというのに庭の隅に大きな畑ができあがっている。
現在はうねのような物を作る作業を行っているようだ。
おそらくこれが終われば畑興しは完了なのだろう。
「少しでも頑張らないといけませんからな! それよりも何をされてたんですか?」
「ええとですね……。っと、その前にその敬語みたいなのやめません? 俺の方が随分年下なんですから、やり辛いですよ」
命を救ったから、おそらくはそういう理由で敬語で話してくれていたんだろうけど、こそばゆいったらありゃしない。
どう見ても兄さんたちより年上の人にそんな扱いを受けてたら、おかしな気分になっちゃうよ。
リンガルさんはシュネムさんと一度顔を見合わせる。
そして何がおかしかったのか少し土がくっついた顎を擦ってから大きく笑い声をあげた。
「はっはっは。確かにそうか! ディル殿には足を向けて寝れんと思っていたが、やり辛いと言われたら仕方ないな!」
「え、ええ。楽にやってください。一応同じ屋根の下で暮らす関係になるんですし」
「ふむ、いやいや、ま、借りたものは返したいし、門の金もできる限り協力したいと思ってるぞ」
「その気持ちはありがたいんで素直に感謝するんですけどね。ではでは、えっと……畑はまだみたいですけど一度試してみます」
二人は俺の言葉を聞くと手を止めて一度畑から離れてくれた。
別にそこまでしなくてもよかったとは思うのだけど。
「いい大人でもディル殿が何をするのかは興味が沸きますな、なぁ、シュネム殿」
「そうですね。ま、こういっちゃ悪いんですが不安も同じくらいあったりしますが」
「こらこら。そんな言い方をしたら失礼だぞ。確かに、まぁ、言いたいことは分からんでもないが……」
「はははは……。すみません、色々と」
二人の言葉に苦笑いしつつ頭を掻いてしまう。
命を救ったプラスがどれほどの物か分からないけれど、回数で言えば圧倒的にマイナスの方が多い。
ま、気にしないようにしてくれてるみたいなので、多少は甘えさせてもらおうかな。
俺は腰のボタンを操作して先ほど完成した肥料と殺虫剤から完成した珠のある場所のボタンを押し込む。
珠と同色の光が土へと向かって伸びていく。
が。
ちょっと予想外の感じであった。
殺虫剤は蔓がまるで手足というか触手のように蠢く植物のモンスター。
大きな袋のような胴体に獰猛な牙が生えており、鋭い目がついている。
触手で器用に地面に立ち、キョロキョロと辺りを確認してから「がふぅ」と鳴き声を上げ、袋の中からぼわんと黄土色の煙を吐き出した。
これはいい。
よく分かんないけど煙が殺虫効果でもあるのだろう
問題は肥料。
地面の上に種のような物が――といってもずいぶん大きいが――コロンと現れただけで何も起きなかったのだ。
微動だにもしない。光を伴い出現し、それで終わりだ。
まさか地面に植える必要でもあるのだろうか?
当然、なんだろうけどリンガルさんが俺に尋ねかけてくる。
目線は殺虫剤がモンスターになったものにくぎ付けだ。
「ディル殿……このモンスターは……?」
「俺の仲間です。ええと……多分、虫除けをしてくれると思うんです。ちなみにこのモンスターを知ってたりします?」
「いや、私も多くのモンスターと戦ったことがあるし、勉強もしているが……見たことがない。シュネム殿は……当然知らないよな」
「知りません。しかし、ディル君は知らないモンスターをどうやってテイムしたんですか?」
言われてみればその通り。
モンスターテイマーってのがどういう素質か詳しくは知らないけど、本来は野生のモンスターを何とかして手懐けるものなのだろう。
それだと俺がこのモンスターを知らなかったというのは確かにおかしい。
でも。
それを言えばジョカなんてモンスターですらないんだけど……。
フロードも人語を解するっていう明らかな異常性を持ってるんだけど……。
どうするかな?
「シュネム殿、ディル殿は何か人に言えない力を持っているんだろう。先の門の件や…………賊の時の事を見ただろう?」
「あ、ああ。そうでした……。すみません、ディル君。変なことを聞いてしまって」
「いえ、いいんです。気にしてませんから」
はぁ良かった。リンガルさんって空気読んでくれるよな。
そう思いながら殺虫剤モンスターを見つめているとフランシスが肥料の種を拾い上げた。
好奇心旺盛なのはいいんだけど、触って何かあるとは考えないのだろうか。
それで一度失敗しているというのに……まさか、覚えてない?
「ねぇ、これはなんなの? おっきな種にしか見えないけど? これもこのモンスターみたいな感じになる?」
「うーん……。よく分かんないんだよ。正直な話なると思ってたんだけど……」
ぶっちゃけ殺虫剤はおまけみたいなもの。
本命は肥料の方だったというのにこれでは少し困ってしまう。
リンガルさんやシュネムさんも首を傾げて種を見ているし、折角畑を興してもらってこれではちょっとまずい。
ジョカ……に聞いてもいいんだけど、何が起きるか分からないので俺はフロードを呼び出して聞いてみることにした。
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