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第8話 リナージュは香織の悲しみを知り、日本の素晴らしさを垣間見る
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《起きて……! 起きて……!》
酷い心身の喪失感とそれに伴う倦怠感。
それを振り払うかのように聞こえてくる落ち着いた声音が私の意識を覚醒させた。
「こ、これは……!?」
目の前にまず広がったのは、精緻につくりこまれた白のテーブルクロスに、見たこともないような華やかな盛り付けの料理――の食べかけのもの。
揺らぐロウソクの炎が私の心に落ちつきを与えてくれたが、目に映る光景がありえなかった。
室内だというのは分かる。
けれど、どういうことだというのでしょうか?
見えるものすべてが細かすぎるほどに細かなつくり。
飲み物を運ぶウェイターの優雅な脚運び。
そして左方には夜景が広がっているのだけど、ここはいったい地上からどれだけ離れているというのですか?
煌びやかで色とりどりの光が眼下を飾る。
そのすべてが豆粒のような輝き。
私は王城に行ったことがあるけれど、最上階からの眺めですらこんなに高いことはない。
こんなに美しいことはない。
頭がおかしくなってしまいそうなほどに。
《リナージュ! リナージュでいいのよね!?》
先ほどから私に対して呼びかけてきているこの声。聞き覚えは全くありませんが、なんだか懐かしく心に染み入ってくるような。
《私はカオリだよ! カオリ! さっきまであなたの体を動かしていたカオリ!》
「カオリ……? カオリなのですか……? もしかして今私はカオリの体を……?」
《そうだよ。それより声が出てるから気を付けて。あっ! 人がやってきちゃった》
私に近付いてきているのは、頭をがちっと石膏像のように固めたウェイターの男性のようです。
穏やかに笑みを浮かべながら落ち着いた声色で尋ねかけてきました。
「お客様、大丈夫でございますか……? 先ほどから見ておりまして、少しご様子が気にはなっていたのです」
言いながらナイフをクロスの上にスッと置いてくれた。
そのまましゃがみ込むと落ちていたナイフを拾い上げる。
《あ、それ私が落としちゃったやつだ。大丈夫です、お騒がせしましたって言って謝っといて》
(分かりました)
私は立ち上がると小さくドレスの裾を持ち上げて腰を折ってみせた。
「申し訳ございませんでした。私は大丈夫ですので、お気になさらずに」
「そ、そうですか。何かありましたらお気軽にお声かけ下さい」
男性は少しだけ顔を赤らめると小さく頭を下げ、持ち場へと戻っていきました。
《すっごい。私ってそんな美しく頭を下げれるもんなんだ……》
(カオリもちゃんと礼をすることができてましたよ。
それより……一体どうなっているのでしょうか?)
《分からない。分からないけれど……多分アイゼンに婚約破棄されてリナージュの心がショートしちゃったんじゃないかな。
あの時の私と同じように》
(あの時のカオリ……? それは一体……?)
《ほら、目の前にも料理が用意されてるでしょ? そこには人、男の人がいたの》
(確かに気にはなっていましたが……。なぜその方は今はいらっしゃらないのですか?)
《婚約破棄……されて私は捨てられた。騙されていた。それで私の心はショートしてリナージュの体に乗り移っちゃったの》
(そ、それ……)
言いかけた瞬間だった。
私の体なのか頭なのか、それとも心に直接流れ込んでくるのかは分からないけれど、カオリの生きてきた全てと知識が流れ込んできた。
それと同時に私の目からは大粒の涙がこぼれる。
婚約破棄の辛さもコウジという男性に裏切られたことも。
いや、そもそも最初から騙す気だけで近付いてきた男性だったということも。
私とカオリが同じ境遇だったということを嫌でも知らされてしまった。
カオリが辛い目にあったって言っていたのは、嘘でも何でもなかったんだということを知らされてしまった。
「うぅ……」
私の口から嗚咽が漏れる。私もカオリの辛い思いを味わった。カオリも私の辛い思いを味わった。
二人の心は別々の体で同じ辛い思いを二度体験した。
神様がいるというのであれば恨みたい。どうしてこんなことをするのですか?
《大丈夫。大丈夫。私はもう大丈夫だから。リナージュが今はいるのが凄く心強い》
カオリの言葉。私も同様に感じているのが分かった。
カオリが私の中にいることが嬉しい。心強い。アイゼンよりも余程頼もしくて大切な存在だと感じることができる。
(私もです。カオリがいることで本当に助かっています。そうでなければあの時の悲しみに私は押しつぶされていたでしょうから)
《それは私も同じだね。あの時リナージュの体に乗り移って、意味が分からない状況になって、私はこの悲しみを和らげることができたから》
(そうだったんですね……。カオリからそんな雰囲気を感じ取ることができてなかったので、最初は迷惑だと思っていましたよ、ふふ)
《そ、そりゃそうだよね……ごめん……》
(いいんですよ、もうカオリの悲しみを知りましたから。それに今はカオリの体です。言ってましたよね? 知識を凝集した技術が発展していると)
《あ、うん。言ったね。これが私の世界なんだ。どう……?)
(どうもこうも、びっくりしすぎて腰が抜けてしまいそうですよ。目に映るすべてのものが……興味深いです……)
《あはは、私にとっては魔法がそれにあたるかな。えと、じゃ、あまり長居してるわけにはいかないから、目の前のご飯食べてよ》
(いいんですか? 実はどんな味がするのかすごく興味が沸いていたんです)
《勿論だよ。お金はちゃんと払ってるし食べなきゃ損。あの時は味なんてさっぱり分かんなかったけど、今見ればおいしそうだね》
(ええ、本当に。まるで美術品を見ているようです)
私はナイフとフォークを手に取って、まだ微かに湯気のあがるステーキに切れ目を入れた。
精緻に作りこまれた食器類ではあるが、その使い方に不便は感じない。
というよりカオリの知識があるので道具の使い方に余念はない。
感情的な感動は物凄くあるのですが。
「美味しい……!」
私は行儀悪くも思わず口に出していた。
柔らかな感触の肉質。解けるようにこぼれだす肉汁。少し甘みの強い香辛料の効いたソース。
まるで頭の中でスパークをおりなすように、味の重奏が私の心を溶かしていく。
《あっははは。でしょ? 味は私にも分かるみたいだね。こんなに美味しかったのか―》
(技術は料理にも関係しているんですね。こんな美味しい料理を作れるだなんて知れば、うちで抱えている料理人は全員頭を下げて教えを乞うでしょう)
《ま、素材の力も大きいとは思うけど。ここ目玉飛び出るほど高いし……》
(これが知識を凝集するということなんですか……)
私が目の前の料理を食べ終えると、まるで計ったかのように皿は下げられ向かいの席の料理も片付けてくれた。
勿論、少々の言葉は交わしたけれど、不快な思いを顔に表したりはしない感じの良い男性のウェイター。
次に現れたのはまるでお花畑をお皿に乗せたかのような、デザートのプレートだった。
(食べるのがもったいないくらいに綺麗ですね。こんなたくさんのフルーツが……)
《食べて食べて。頻繁には来れないけど……また良かったら……あ、そうか……》
(お金の事ですね。それカオリの知識と記憶が先ほど流れ込んできたから分かってます。ここを出たら話しましょう)
《そうなんだ? 私もリナージュの知識と人生がさっき流れ込んできたよ。もう一心同体だね》
(完全に言葉通りなのが、例えになってなくて中々愉快ですけれど)
彩られた円柱をスプーンで救い取って口に運ぶと、じゅわと甘い蜜が染み出し芳醇な香りが広がった。
思わず口元が緩んでしまいそうなそれは、悲しみを忘れさせてくれるよう。
(どれもこれも本当にありえないくらい美味しいです)
《よかったよかった、気に入って貰えて》
こうして食後に香り豊かな紅茶を飲み――これも素晴らしい味わいでした――違う世界での一時というものを体感した。
酷い心身の喪失感とそれに伴う倦怠感。
それを振り払うかのように聞こえてくる落ち着いた声音が私の意識を覚醒させた。
「こ、これは……!?」
目の前にまず広がったのは、精緻につくりこまれた白のテーブルクロスに、見たこともないような華やかな盛り付けの料理――の食べかけのもの。
揺らぐロウソクの炎が私の心に落ちつきを与えてくれたが、目に映る光景がありえなかった。
室内だというのは分かる。
けれど、どういうことだというのでしょうか?
見えるものすべてが細かすぎるほどに細かなつくり。
飲み物を運ぶウェイターの優雅な脚運び。
そして左方には夜景が広がっているのだけど、ここはいったい地上からどれだけ離れているというのですか?
煌びやかで色とりどりの光が眼下を飾る。
そのすべてが豆粒のような輝き。
私は王城に行ったことがあるけれど、最上階からの眺めですらこんなに高いことはない。
こんなに美しいことはない。
頭がおかしくなってしまいそうなほどに。
《リナージュ! リナージュでいいのよね!?》
先ほどから私に対して呼びかけてきているこの声。聞き覚えは全くありませんが、なんだか懐かしく心に染み入ってくるような。
《私はカオリだよ! カオリ! さっきまであなたの体を動かしていたカオリ!》
「カオリ……? カオリなのですか……? もしかして今私はカオリの体を……?」
《そうだよ。それより声が出てるから気を付けて。あっ! 人がやってきちゃった》
私に近付いてきているのは、頭をがちっと石膏像のように固めたウェイターの男性のようです。
穏やかに笑みを浮かべながら落ち着いた声色で尋ねかけてきました。
「お客様、大丈夫でございますか……? 先ほどから見ておりまして、少しご様子が気にはなっていたのです」
言いながらナイフをクロスの上にスッと置いてくれた。
そのまましゃがみ込むと落ちていたナイフを拾い上げる。
《あ、それ私が落としちゃったやつだ。大丈夫です、お騒がせしましたって言って謝っといて》
(分かりました)
私は立ち上がると小さくドレスの裾を持ち上げて腰を折ってみせた。
「申し訳ございませんでした。私は大丈夫ですので、お気になさらずに」
「そ、そうですか。何かありましたらお気軽にお声かけ下さい」
男性は少しだけ顔を赤らめると小さく頭を下げ、持ち場へと戻っていきました。
《すっごい。私ってそんな美しく頭を下げれるもんなんだ……》
(カオリもちゃんと礼をすることができてましたよ。
それより……一体どうなっているのでしょうか?)
《分からない。分からないけれど……多分アイゼンに婚約破棄されてリナージュの心がショートしちゃったんじゃないかな。
あの時の私と同じように》
(あの時のカオリ……? それは一体……?)
《ほら、目の前にも料理が用意されてるでしょ? そこには人、男の人がいたの》
(確かに気にはなっていましたが……。なぜその方は今はいらっしゃらないのですか?)
《婚約破棄……されて私は捨てられた。騙されていた。それで私の心はショートしてリナージュの体に乗り移っちゃったの》
(そ、それ……)
言いかけた瞬間だった。
私の体なのか頭なのか、それとも心に直接流れ込んでくるのかは分からないけれど、カオリの生きてきた全てと知識が流れ込んできた。
それと同時に私の目からは大粒の涙がこぼれる。
婚約破棄の辛さもコウジという男性に裏切られたことも。
いや、そもそも最初から騙す気だけで近付いてきた男性だったということも。
私とカオリが同じ境遇だったということを嫌でも知らされてしまった。
カオリが辛い目にあったって言っていたのは、嘘でも何でもなかったんだということを知らされてしまった。
「うぅ……」
私の口から嗚咽が漏れる。私もカオリの辛い思いを味わった。カオリも私の辛い思いを味わった。
二人の心は別々の体で同じ辛い思いを二度体験した。
神様がいるというのであれば恨みたい。どうしてこんなことをするのですか?
《大丈夫。大丈夫。私はもう大丈夫だから。リナージュが今はいるのが凄く心強い》
カオリの言葉。私も同様に感じているのが分かった。
カオリが私の中にいることが嬉しい。心強い。アイゼンよりも余程頼もしくて大切な存在だと感じることができる。
(私もです。カオリがいることで本当に助かっています。そうでなければあの時の悲しみに私は押しつぶされていたでしょうから)
《それは私も同じだね。あの時リナージュの体に乗り移って、意味が分からない状況になって、私はこの悲しみを和らげることができたから》
(そうだったんですね……。カオリからそんな雰囲気を感じ取ることができてなかったので、最初は迷惑だと思っていましたよ、ふふ)
《そ、そりゃそうだよね……ごめん……》
(いいんですよ、もうカオリの悲しみを知りましたから。それに今はカオリの体です。言ってましたよね? 知識を凝集した技術が発展していると)
《あ、うん。言ったね。これが私の世界なんだ。どう……?)
(どうもこうも、びっくりしすぎて腰が抜けてしまいそうですよ。目に映るすべてのものが……興味深いです……)
《あはは、私にとっては魔法がそれにあたるかな。えと、じゃ、あまり長居してるわけにはいかないから、目の前のご飯食べてよ》
(いいんですか? 実はどんな味がするのかすごく興味が沸いていたんです)
《勿論だよ。お金はちゃんと払ってるし食べなきゃ損。あの時は味なんてさっぱり分かんなかったけど、今見ればおいしそうだね》
(ええ、本当に。まるで美術品を見ているようです)
私はナイフとフォークを手に取って、まだ微かに湯気のあがるステーキに切れ目を入れた。
精緻に作りこまれた食器類ではあるが、その使い方に不便は感じない。
というよりカオリの知識があるので道具の使い方に余念はない。
感情的な感動は物凄くあるのですが。
「美味しい……!」
私は行儀悪くも思わず口に出していた。
柔らかな感触の肉質。解けるようにこぼれだす肉汁。少し甘みの強い香辛料の効いたソース。
まるで頭の中でスパークをおりなすように、味の重奏が私の心を溶かしていく。
《あっははは。でしょ? 味は私にも分かるみたいだね。こんなに美味しかったのか―》
(技術は料理にも関係しているんですね。こんな美味しい料理を作れるだなんて知れば、うちで抱えている料理人は全員頭を下げて教えを乞うでしょう)
《ま、素材の力も大きいとは思うけど。ここ目玉飛び出るほど高いし……》
(これが知識を凝集するということなんですか……)
私が目の前の料理を食べ終えると、まるで計ったかのように皿は下げられ向かいの席の料理も片付けてくれた。
勿論、少々の言葉は交わしたけれど、不快な思いを顔に表したりはしない感じの良い男性のウェイター。
次に現れたのはまるでお花畑をお皿に乗せたかのような、デザートのプレートだった。
(食べるのがもったいないくらいに綺麗ですね。こんなたくさんのフルーツが……)
《食べて食べて。頻繁には来れないけど……また良かったら……あ、そうか……》
(お金の事ですね。それカオリの知識と記憶が先ほど流れ込んできたから分かってます。ここを出たら話しましょう)
《そうなんだ? 私もリナージュの知識と人生がさっき流れ込んできたよ。もう一心同体だね》
(完全に言葉通りなのが、例えになってなくて中々愉快ですけれど)
彩られた円柱をスプーンで救い取って口に運ぶと、じゅわと甘い蜜が染み出し芳醇な香りが広がった。
思わず口元が緩んでしまいそうなそれは、悲しみを忘れさせてくれるよう。
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